新型コロナで入国制限のサウジに入国した日本人記者の“タフネゴシエーションの一部始終”

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月5日放送)に中東に取材で滞在しているライターの土屋真光が電話出演。中東各国で実施されている日本人への入国制限の状況について解説した。

新型コロナウイルス~22の国と地域で日本人らが入国制限

外務省によると、日本を含む感染者が確認された国からの入国制限を実施しているのは、現在22の国と地域となっている。また、入国できても日本からの渡航者に医療機関での検査や経過観察などを義務付けているのは、39の国と地域となっている。

飯田)入国の一時停止措置や、記憶に新しいところでは、インドがビザを無効にするなどの措置を取ったということが伝えられています。それ以外にも太平洋諸国の島々が中心となりますが、中東ではイスラエル、イラク、クウェート、サウジアラビア、バーレーンなどが入国の一時停止、あるいは入国制限が行われているということです。この時間は制限されている国の1つ、サウジアラビアに直近で行って来たという、フリーライターの土屋真光さんと電話をつないでお話を伺います。いまはどちらにいらっしゃいますか?

土屋)いまは中東のドバイにおります。

飯田)直前でサウジアラビアに行かれたということですが、入国の制限措置が出る前に入ったのですか?

【新型コロナウイルス 関空警戒】サーモグラフィーで乗客の体温がチェックされていた=2020年1月23日午前、関西国際空港 ©産経新聞社

サウジアラビアに入る当日に入国制限が実施

土屋)日本を出発してから、サウジアラビアに入る当日に「日本人は入ってはいけません」という制限が出ました。

飯田)当日ということは、飛行機に乗れるか乗れないかという話になるわけですね?

土屋)そうですね。今回、ロンドンからカイロを経由してイラクに入る予定だったのですが、カイロで飛行機に乗るところでパスポートをチェックされて、「君はこの飛行機には乗れない」と言われました。最初は何が起こったのかまったくわからなくて、ビザを持っていると言ったのですが、そういう問題ではないのだと。

飯田)お達しが出ていると。

土屋)そうです。まさかそのようなところで言われるとは思いませんでした。ついさっき発効されたということでした。

飯田)普通でしたら、そこで「そうか」と諦めてしまいますが。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

競馬「サウジカップ」の取材記者として得られたサウジへの入国許可

土屋)そうですね。「そうか」と言って引き下がれるものでもありませんので、どうしたものかと思いました。もともとサウジアラビアの後、2月29日にいまいるドバイに来る予定ではいたので、一旦ドバイに移動しました。28日にドバイでこの後どうしようかと考えていたところ、「どうも日本人が行けるらしいぞ」という情報を得たのです。28日と29日に、サウジアラビアで「サウジカップ」という競馬の大きい大会があったのです。

飯田)あの武豊さんが勝った。

土屋)そうです。もともと僕はその取材に行くために、サウジアラビアに向かっていたのです。

飯田)なるほど。では、取材用のビザはあったわけですか?

土屋)はい。「サウジカップ」に行くオーナーや記者は、日本人でも入れたという情報が入って来たのです。

飯田)それならば、取材する俺だって行けるだろうと。

土屋)そうです。

飯田)飛行機のチケットはその時点で買ったのですか?

土屋)そこから改めて買い直しました。最終的には行けたのですが、「サウジカップ」のことが末端の職員にまで届いていなくて、「うちは行ける」「うちは行けない」という状況でした。

飯田)航空会社によってもいろいろ判断が分かれると。飛行機に無理やり乗っても、着いた先でまた入国できる、できないで揉めたのではないですか?

タフネゴシエーションの末、入国

土屋)はい。イミグレーションでもサウジカップの話は届いていませんでした。さらに、日本も入国制限を受けていますが、同じようにコロナウイルスが発生している国がたくさんあって、その他の国の人たちも当然、入国制限の対象になっているわけです。

飯田)空港にはそういう人たちがたくさんいたのですか?

土屋)そうですね。そうした人たちが溢れているなかで、職員もパスポートを見て日本だからダメ、どこの国だからダメと決めていたようで、簡単に帰れと言われてしまいました。「いや、調べてくださいよ」と言っても、向こうも手一杯ですから、なかなかやってくれないのです。

飯田)そこをタフネゴシエートしなければいけなかったわけですね。

土屋)そうなのです。1度ダメと言った職員は、なかなかいいとは言ってくれないので、次から次へといろいろな職員に訊いて、最後は空港の別のオフィスに行けと言われました。オフィスに行ったら10~20分くらい待たされまして、サウジカップの取材ならば、まだ効いているからいいよと言われて入れたということです。

「住民以外の出入りを禁じる」といった張り紙がなされた北京市内の「社区」の入り口 撮影日:2020年02月09日 ©産経新聞社

アジア人への差別はないが

飯田)なるほど。ヨーロッパなどでは、アジア人は差別されるということが言われていますが、中東各国の雰囲気はどうですか?

土屋)そうですね。アジア人だから差別されることはないと思うのですが、入国制限をしている人たちからすると、「入って来るな」というような空気は感じましたね。

飯田)各国とも感染対策はやっていますか?

土屋)それが、なかに入ってみると意外と何もしていません。ドバイに来たところで、僕が着いたときはなかったのですが、翌日くらいから日本人に対しては自主的なモニタリングをするようにという呼びかけがありました。長く住んでいてドバイの居住証のようなものを持っている人たちも、ドバイのイミグレーションを通るときに居住証で出入りできたものが、日本のパスポートを使うように言われていると聞いています。

飯田)国籍を明らかにして、何かあったときにいろいろ遡ることができるようにすると。

土屋)日本のパスポートには、どこに行ったのかという情報が入っていますので、そこでコントロールするのが狙いだと思います。

「一斉休校」~安倍総理が犯した最大のミス

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月5日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。安倍総理の要請した小中高校の一斉休校について解説した。

図書室で離れて座りながら静かに読書する児童たち=2020年3月2日 宇都宮市立中央小学校 ©産経新聞社

一斉休校~栃木県茂木町では学童保育も実施せず

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として政府が要請した小中高校などの臨時休校について、栃木県茂木町は学童保育の子どもの密度が学校の教室よりも高いなどとして、実施しないことを決めた。

飯田)要請を受けて10日から臨時休校ということを決めてはいましたが、教師やPTAなどで検討した結果、通常通りの授業を続けることになったようです。

新型肺炎、コロナウイルス感染防止対策で政府が全国小中高校に休校要請をしてから一夜明け、登校する小学生ら。今年度最後の登校になる可能性も=2020年2月28日、東京都世田谷区 ©産経新聞社

危機管理における4つの基本

鈴木)今回の休校については、是非が出ています。危機管理において大事なことを4つ挙げると、1番目に「最悪の状態を考える」、2番目に「少しでも早く手を打つ」、3番目に「情報公開」、4番目に法律で決められた範囲内でこれしかできませんということがたくさん出て来ます。そのときに総理が「政治決断する」ということです。官僚がいろいろ言ったり、法律の問題もあるかもしれません。でも「いま必要だから、自分が責任をとるからやれ」という決断。この4つだと思います。

【新型肺炎関連】薬局ではトイレットペーパー等が完売していた=2020年3月3日午前、大阪府東大阪市 ©産経新聞社

1月の時点で考え始めなければいけなかった「一斉休校」~あまりに唐突

鈴木)一斉休校という政治決断は、あっていいと思います。ただ、あまりにも唐突すぎます。本当に休校ということを考えていたのかと言いたいですね。新型コロナウイルスの問題が、中国の武漢で出て来た。よくわからないけれど何かが起きている…というのは1月の話です。民間企業の人は、そのときから大変なことになると動き出していました。しかし、なかなか政府は動きませんでした。本当はそのときから集団感染したらどうなるか、いろいろな想定を始めなければいけなかったのです。時期的にはこれから学校の卒業式があって、試験もある、入学式もあるような大事な時期に、教育現場は入って行く。しかし一斉休校のようなことがあるかもしれない。ではどうするのだと…これはもっと早い段階、1月くらいから考えていなければいけないのです。場合によっては、感染が拡がり始めた2月くらいの段階で、みんなに「シミュレーションしておいてくれ」という意味で、休校のようなことがあるかもしれないという情報を出す。最後に休校ですと言ったときには、共働きの家庭の収入がどうなるのか、学童保育がどうなるのか、全部セットで総理は出さなければいけません。

新型コロナウイルス感染症対策本部で発言する安倍晋三首相(手前)。感染拡大を防止するため、全国すべての小中高校や特別支援学校を3月2日から休校とするよう要請すると表明した=2020年2月27日午後、首相官邸 ©産経新聞社

危機管理の基本が守れていない

鈴木)この手順を踏んでいないということですよ。だからこのような大問題になるのです。つまり先ほど言ったような、危機管理の基本を守れていないのです。付け焼き刃的でしょう。「休校」と言って、では共働きの家庭はどうなるのか、補償はどうなるのかと、日替わりでどんどん問題が出て来ます。補償は最大7割、非正規も含むと言っていますが、まだ具体的にはわかりませんよ。フリーランスについてもどうなるのか。

飯田)フリーランスについては4日、菅官房長官が質問に答えて、これも対応して行きたいとおっしゃったようですが、政府が出した8330円には入っていないのですよね。

鈴木)そういうことを全部シミュレーションして、休校という政治決断をしたのだという順序ができていないことが、最大の問題だと思いますね。イベント自粛もそうではないですか。

飯田)全部要請という形をとっていて、そうすると法律の根拠は何なのだという話も出て来ますけれども。

飯田)有事なのです。そのときに「法律があるからできません」ではなくて、決断することです。ただ、そのときには説得力を持つものを備えて政治決断しなければいけませんよね。説得力を持つデータもそうだし、被害を被る人たちにどのような補償をするかということもセットでなければいけないでしょう。そこが最大のミスだと思いますね。

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