「相手の立場に立つことが大事」。内藤剛志、不寛容の社会に提言。

野村邦丸アナウンサーが大将を務める「くにまる食堂」(文化放送・毎週金曜9時~13時)。5月23日(木)、最初のコーナー「ニュース一番出汁」では、パートナーで俳優の内藤剛志さんと、東京都が「カスハラ(カスタマーハラスメント)防止条例」の基本方針を取りまとめたという記事について議論を交わした。

野村邦丸アナ「今日のニュースはこちら。これ色んなところで報じられていますけど、読売新聞からです。
東京都がきのう、顧客らから理不尽な要求をつきつけられるカスタマーハラスメント、いわゆる『カスハラ』の防止条例制定に向けた基本方針を取りまとめました。これ民間事業者……例えばコンビニとかのお店だけでなくて、役所や学校などあらゆる職場でカスハラを禁じ、防止に向けた都や顧客、事業者の責務を明示したということです。この方針をもとに条例案を策定し、今年秋の都議会での成立を目指すということですが……これ役所はまだ窓口があってわかるけど、学校でのカスハラはどうなってるのかって言いますと、一時期話題になったモンスターペアレントを指しているのでしょうかね」

内藤「不寛容っていうか、人を赦さない社会になりつつありますよね。どちら側もそうかも知れないけど、上品ぶるわけじゃないですが、ご飯を食べに行ったりして飲食店で『水!』とか言う人、いるじゃないですか」

邦丸「(ぶっきらぼうに)『水っ!』って感じでね」

内藤「あれ、もうやだな~。普通に『水ください』って、丁寧語ぐらいでいいと思うのに、意外と命令口調でパッと言う人いるでしょ? わりとドキッとしますね」

邦丸「私も『何様だと思ってるんだ!』っていう気にはなりますよね」

内藤「で、またお店の人がブチ切れる映像がこの頃あったりして、何か不寛容で相手を赦さないというか、相手に対する想像力が無い。相手の立場に立ったらどう思うかって考えたら大体は解決出来ると思うんですけど……どうなんですかね?」

そんな内藤さんは顧客だけではなく、事業者の方にも問題があると指摘する。

内藤「僕はタクシーに乗るのも苦手なところがあって、そういうことになりがちじゃないですか。タクシーに乗って行き先を告げても返事をされない運転手の方もいらっしゃるので。すると『あれ?』って思って。たかが5分10分の空間の中で、すごく嫌な思いをしてしまうってこともあって。それが万能薬じゃないけれど、ちょっと相手の立場に立てばわかることじゃないかな?」

邦丸「今タクシードライバーさんもそういうこともあって、ちゃんと受け答えとか、かなり研修などやってらっしゃるって聞いたことがありますけども」

内藤「こないだ僕乗ったら、こういう番組のラジオをかけてる人が居たんですよ(笑)」

邦丸「昔のタクシーはそうでしたよね、ラジオがんがんかけてましたよ」

内藤「今はなんか、お客さんが乗ってると切らなきゃダメで、降りるとまたかけるそうですね。だからここ終わってタクシーに乗った瞬間に『今聴いてました!』って言われましたもん(笑)。あと、俺、乗った時にバレることが多いんです、声でね」

邦丸「そりゃそうだ!(笑)」

内藤「なんだけど、乗っている時は何もなくて、降りる時に『頑張ってください!』って言われる。これは……カッコいいですね!」

邦丸「嬉しいでしょう! さりげない一言で、お互い気持ちよくなりますよね」

内藤「あと『頑張ります!』って言われたこともあるんです。長い距離乗ってたんですよ。色んな話をしてて、彼は都会に出て来てやっていると。で、目的地着いて、降りて、スーッと窓が開いて『内藤さん!』って呼ばれたから『ハイ』って言ったら『俺、頑張ります!』って。すんごい嬉しかった。だからこの『頑張ります!』は僕の中では『宝』です!」

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ボブ・ディランの歌詞は「翻訳不可能」⁉ 村上春樹と柴田元幸が語る、シンプルな英語だからこその難しさ

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」。11月3日(火・祝)は、特別番組として『村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~』をオンエア。今回は早稲田大学国際文学館の開館5周年を記念し、10月1日に小野記念講堂で開催された公開録音イベントの模様をお届けしました。

盟友である翻訳家の柴田元幸さんを迎え、進行役の坂本美雨さんとともに「音楽で仮定法を学ぶ」をテーマに白熱の翻訳談議を展開。ビーチ・ボーイズやエディット・ピアフなどの名曲に乗せて英語表現のニュアンスを紐解いたほか、方言・スラングの訳し方やAI時代における翻訳の未来、参加者からのQ&Aまで、言葉と文学の魅力が詰まった贅沢な時間となりました。

この記事では、この記事ではオープニングトークと、前半2曲について語った内容を紹介します。


(写真左から)坂本美雨さん、村上春樹さん、柴田元幸さん



◆Bread「If」

村上)では次いきますね。次は文字通りの「If」。これはもう仮定法以外ではありえないという選曲です。ブレッドが歌います。

<ブレッドの曲が流れる>

村上)この曲は僕が選んだんですけど、これ、歌詞がいいんですよね。

柴田)さっきの「If I Were a Bell」がすごくコミカルな比喩の連発だったとすると、こっちはちょっと教養がかっているんですね。いちばん初めのところが「If a picture paints a thousand words」、もしも絵というものが千の言葉を描けるなら、という言い方。なんで千かっていうと、「A picture is worth~(~の価値がある)」「A picture is worth a thousand words(一枚絵を見せれば千の言葉の値打ちがある/千の言葉と同じくらい多くのことが一枚の絵で伝わる)」という決まり文句があります。それを踏まえてるんですよね。

村上)あとは「If a face could launch a thousand ships(一つの顔が千の船を出帆させられるなら)」これは(ホメロスの叙事詩)「オデュッセイアー」の……。この間、映画「オデュッセイアー」を観てきて、その中でも出てましたね。ヘレネー、すごくきれいな人が千の船を進水させるんですよね。

柴田)ギリシャのあの辺はみんな海に国が面しているから、いくさに行くというと、まず船に乗るわけですね。美女ヘレネーを争っていくさが始まる。そうすると船がバーッと出るっていうことで、「The face that launched a thousand ships」という、その千の船をローンチ、出帆させた顔という決まり文句があるわけです。

村上)あと僕が好きなのは「一度に2ヵ所にいられるものなら、君と一緒に明日と今日にいたい。ずっと君のそばで」。これはロマンチックですね。

柴田)これは気が利いてますね。やっぱりデヴィッド・ゲイツという人は本当に秀才型ですね。

◆Bob Dylan「If Not for You」

村上)次は「If Not for You / Bob Dylan」。これは柴田さんの選曲ですね

柴田)高校の授業で多分みなさん習いますよね。If it were not for~(もし~がなかったら)、そういうフレーズがあるわけですけど。ずいぶん長いですよね。実際には、こういうふうに「If not for」という三語に縮めて、同じく「もし~がなかったら」という言い方に日常ではなることが多いです。まさにそれを使ってディランが「If Not for You(君がいなかったら)」という曲を作っています。

村上)僕が最初にこの曲を聴いた時、まだ高校生か何かで、「If not for you」がどういう意味かちょっとよくわかんなかったですね。

柴田)これは本当にフレーズの意味を知らないとわかりにくいですね。「If it were not for you」が「If not for you」というシンプルなフレーズに直されているということ。そして、この曲でやっぱり見事だと思うのは、ディランは音もすごいシンプルですけど、言葉もシンプルなんですよね。

村上)「If not for you, my sky would fall」は、エディット・ピアフも同じようなことを歌ってましたね。

柴田)確かに。簡単な言葉なんだけど、過激なことを言ったりもするんですね。あと「But it would not be new / If not for you(君がいなかったら、虚しく朝の光を待ってるだろう、朝の光が来ても、その光は君がいないから新しくないだろう)」と。new(ニュー)とyou(ユー)の韻の踏み方とか、こういうのは本当にもう翻訳じゃ全然よさを出せないですよね。

<ボブ・ディランの曲が流れる>

村上)なるほど。本当にボブ・ディランの歌詞って翻訳不可能なものが多いですよね。

柴田)かえって「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」とか、難しい言葉を使ってくれるほうが訳しようがあるんだけど、この時期のアルバムとか、「ニュー・モーニング」か、あと「ジョン・ウェズリー・ハーディング」とか、あのあたりのシンプルな構成で作った歌は、本当にシンプルさこそが一番訳しにくい感じですね。

村上)僕が仮定法に興味を持つようになったのは、翻訳をやるようになってからです。仮定法をどう訳すかというのがすごく大事なんだなというのがわかってきたんですよね。
学校の時はあまり興味を持てなかったんですよね。嫌だなと思ってたからね。でも、仮定法を理解してないとうまく理解できないんですよ。

柴田)要するに、そこに書かれていることが事実か事実じゃないかっていうのが、文法のサインからわかるわけですよね。

村上)あとif~で、~wouldとかcouldだとわかりやすいんだけど、前がない場合が多いんですよね。だから、それは仮定法がわかってないとなかなか訳しづらいんですね。

◆The Beach Boys「Wouldn't It Be Nice」

村上)次は柴田さんの選曲でビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」。

柴田)これはですね、「Wouldn't it be nice(素敵じゃないか)」という、ご存知の方も多い曲だと思うのですが、ちょっと珍しいバージョンでお聴きいただきます。

<ビーチ・ボーイズの曲が流れる>

村上)素敵な曲ですよね。

柴田)素晴らしいアカペラ・バージョンで聴いていただきました。これはもちろん「Wouldn't it be nice(素敵じゃないかい)」というところが仮定法ですが、「Wouldn't it be nice if...」まで一緒に覚えていただくと、使い方がすごく広がります。itっていうのはいわゆるあんまり文法用語は使いたくないんですけど、仮主語っていうやつで、長い話をしたいときにとりあえずitと言っておいて、その後詳しく言うという仕組み。「Wouldn't it be nice if...(もしこうこうこうだったら、それは素敵じゃないだろうか)」という言い方ですね。要するに、今はまだ自分たちは子どもで自由が利かないけど、大人になったら何でもできるのにという、そういう楽天的な歌なんだけど、やっぱりビーチ・ボーイズがやるとどこか陰りがありますね。

村上)あの、状況説明をしますと、1960年代の半ばの歌ですよね。当時は結婚しなければセックスはできないということだったんです。だからこの歌では高校生同士のカップルで、このまま大人になれたらすぐに“やれる”のにね。という“やれる”って、言っちゃいけないのか、すぐに仲良くなれるのにね、ということが切実なんですよね。

柴田)そうですね。僕が一番好きなところは「Maybe if we think, and wish, and hope, and pray(もし考えて願って望んで祈ったら), it might come true(実現するかも)」。もうちょっと待てば実現するんですけど……。

村上)might come trueなんですね。

柴田)どこか物事がうまくいかないかもしれないというのが見えちゃってるような響きですね。ブライアン・ウィルソンの生きた人生とか、そういうこともつい考えてしまうので、余計そういうふうに思うのかもしれないんですけどね。

村上)でもこれはやっぱりすごく心がこもった歌だと僕は思います。

柴田)長年聴いていると本当にそう思うようになりました。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~
放送日時:2026年11月3日(火・祝) 14:00~15:55
出演:村上春樹、柴田元幸、坂本美雨
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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