モキュメンタリー、ヒトコワ…今人気のJホラーを掘り下げ「陰謀論との共通点」とは?

フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄 ラジオマガジン』。7月6日は、月曜レギュラーでドイツ出身の翻訳家・エッセイストのマライ・メントライン氏と、番組パートナーの西村志野アナウンサーを交えてトークを繰り広げた。

――怖そうな音楽が流れる――

西村「ここからは前半レギュラーのラジマガコラム。月曜日はマライ・メントラインさんの『マライの気になる世界のアレ!』です。怖い音楽が流れてきましたけど、今日はどんなお話でしょうか?」

マライ「今日は「ホラーと陰謀論の急接近」です。皆さんホラーはお好きですか?」

武田「西村さんはとにかく大嫌い」

西村「怖いです。この音楽から怖いです」

武田「ボクは、いつもホラーみたいな音楽聞いてますからね、デスメタルとかブラックメタルとか。こういう音流れてもなんとも。非常に自然というかね。日頃いつも家で流れてるようなテイストだなと思うので」

マライ「なるほど、日本のホラーって言えばJホラーですよね。ハリウッドではホラーといえばモンスターが迫ってくる恐怖だったりするんですけど、Jホラーはちょっと違うんですよね。日常のすぐ横に異界があるんじゃないか…西村さんがちょっとビビり出したんですけど大丈夫ですか?(笑) 要するに、見えないものがそこにあるだけではなくて、日常が既に壊れているかもしれないって恐怖ですよね」

武田「なんか、窓が閉まってるのにカーテンがファーっと揺れてるみたいな、そういうシーンから入るっていうの、ありますもんね」

マライ「有名な作品がたくさんあるんですけれども、海外でもすごく人気なのが、例えば『リング』シリーズですよね。メディアとか映像とか呪いの拡散が出てきますね。そして『呪怨』。これは家とか土地とかに、そういうものが残ってるんじゃないかなっていうもの。また『残穢』って小説は――映画にもなったんですけど――ワタシの周りだと読んでる人がたくさんいるんですけど、とにかく自分の家に置きたくない本だったりするんですよね。別の人に「あげるよ」みたいな。(笑) っていうぐらい怖いんですよ。あと『回路』。インターネットと孤独とか死者との接続とか。こういうJホラーがめちゃくちゃ有名だと思います。Jホラーは記録とか映像とか都市伝説とか噂とかと相性がいいんですよね。そこに何かあるかもしれないという感覚ですからね。昔だと『2ちゃんねる』から生まれた有名な都市伝説とか怖い話もいっぱいあるんです。なんですけど、日常と異常の境い目が曖昧だからこそ、オカルトとかホラーは陰謀論とすごく接続しやすいといえるんですよね」

武田「何でも言えちゃうっていう感じがホラーと陰謀論の共通点ではありますもんね」

マライ「そうなんですよ。で、最近、ホラーの中で伸びてるジャンルがあるんですね。それがヒトコワとモキュメンタリーです。令和の怪談ブームっていうのが実は起きていて、2020年頃のコロナ禍に、みんな家で退屈していた時、本格的になったと言われています。今ではYouTubeで怪談チャンネルがたくさんあります。イベントも、怪談バトルみたいなものがあって、ものすごく多様化してきました。で、心霊っぽいホラーの他に、ネット怪談とか、ヒトコワ、都市伝説、フェイクドキュメンタリーとかが出てきて、伸びてるのがヒトコワとモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)というもの。西村さんはヒトコワって知ってます?」

西村「ええっ?」

マライ(笑)

西村「人が怖い?」

マライ「そうです。人が怖いっていうものなんですね。だから、一番怖いのは幽霊ではなくて、実は人間だったっていう話なんですよ。実際に起きた事件のように感じる――作られた話なんですけど――。そういう動画にはコメント欄とかで犯人探しとか裏読みをする考察班っていう人がいるんですね。もう一つ人気なのが、モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)というものなんですけど、これは知ってますか?」

西村「わからないです」

武田「モキュメンタリーは本当に流行ってますよね」

マライ「流行ってるんですよ。これは、ドキュメンタリー風のホラー番組ですね。最初に、これはフィクションですって入るんですよ。入るんですけど、その後の展開でリアルに感じて、「これは本当なんじゃないの?」って思ってくるのがフェイクドキュメンタリーの特徴です。見た目は本物の報道映像っぽいんですよ。だから、ウソなんだろうけど、ちょっと本当なんじゃないかなみたいな感覚が、今のネット空間と非常に相性がいいわけなんですね。よくあるパターンはロストフッテージ系ですね。どこかのテレビ局の倉庫にVHSテープが置いてあって、何も書いてないけど変なオーラが出てて、再生したら、わけのわからない映像で、これは何だろうと若いディレクターが調べに行きましたみたいな感じで始まるんですよ。これ系は、海外にも実は昔からあるんですね。例えば、1980年のイタリア映画『食人族』。あと1999年の『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』」

武田「ありましたねえ…」

タグ

村上春樹 亡くなった大学時代の友人が残した1枚のLP 映画『ミス・ブロディの青春』の主題歌「ジーン」を聴いて昔を偲ぶ

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。9月27日(日)の放送は「村上RADIO~くたばれ、アカデミー賞~」をオンエア。今回の放送では、「アカデミー主題歌賞にノミネートされながら、惜しくも受賞を逃した名曲」を特集。受賞作の影に隠れながらも今なお世界中で愛され続ける1960年代の名曲を中心に、村上さんこだわりのアナログ盤音源でお届けしました。ヘンリー・マンシーニやバート・バカラックといった巨匠たちの楽曲をはじめ、賞の裏側にあるドラマや村上さん自身の思い出、さらには昨今話題の「AIと創作活動」についての貴重なトークまで、時代を超えて愛される音楽の魅力にあふれたひとときとなりました。
この記事では、後半3曲について語ったパートを紹介します。


「村上RADIO」



◆Sacha Distel「Toute La Pluie Tombe Sur Moi "Raindrops Keep Falling On My Head"」
◆Al Martino「Jean」


1969年のオスカーは、先ほども言いましたように、バカラックの『雨に濡れても』が獲得しました。これについては何ひとつ文句もありませんが、この年には強力なライバルが2曲ありました。ひとつは映画『ミス・ブロディの青春』の主題歌「ジーン」、そして『真夜中のカウボーイ』の主題歌「うわさの男」です――といっても「うわさの男」はなぜかノミネートすらされませんでした。どうしてかな?
ロッド・マッケンの作曲した「ジーン」はとても美しいメロディーを持った曲で、僕は大好きです。マギー・スミスの主演する映画も面白かったですしね。
アル・マルティーノの歌で「ジーン」を聴いてください。このアルバム、亡くなった僕の大学時代の友だちが残してくれたものです。まだずっと若い頃に命を絶ってしまって、そのレコード棚からこのLPを1枚形見にいただいてきました。ときどきターンテーブルに載せ、針を落として、昔を偲(しの)んでいます。
まずは受賞曲の「雨に濡れても」をサッシャ・ディステルがフランス語で歌います。これがなかなかいいんです。
それからアル・マルティーノの歌で落選曲「ジーン」。

◆Steve Lawrence「My Foolish Heart」

ここまでが1960年代のloserたちですが、せっかくだからスティーブ・ローレンスのアルバム『くたばれアカデミー賞』から1曲聴いてください。
1949年に受賞を逃した名曲「マイ・フーリッシュ・ハート(愚かなり我が心)」です。ビル・エヴァンズの名演でも有名な美しい曲です。
それでは、この年にどんな曲がオスカーを獲得したのか?「Baby, It's Cold Outside(外は寒いよ)」という曲です。コミカルな楽しい曲なんですけど、「マイ・フーリッシュ・ハート」の方がやはり深みがあるよなと、僕は思います。
スティーブ・ローレンスが歌います。「マイ・フーリッシュ・ハート(愚かなり我が心)」。

<番組概要>
番組名:村上RADIO~くたばれ、アカデミー賞~
放送日時:9月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

Facebook

ページトップへ