村上春樹 亡くなった大学時代の友人が残した1枚のLP 映画『ミス・ブロディの青春』の主題歌「ジーン」を聴いて昔を偲ぶ
この記事では、後半3曲について語ったパートを紹介します。

「村上RADIO」
◆Sacha Distel「Toute La Pluie Tombe Sur Moi "Raindrops Keep Falling On My Head"」
◆Al Martino「Jean」
1969年のオスカーは、先ほども言いましたように、バカラックの『雨に濡れても』が獲得しました。これについては何ひとつ文句もありませんが、この年には強力なライバルが2曲ありました。ひとつは映画『ミス・ブロディの青春』の主題歌「ジーン」、そして『真夜中のカウボーイ』の主題歌「うわさの男」です――といっても「うわさの男」はなぜかノミネートすらされませんでした。どうしてかな?
ロッド・マッケンの作曲した「ジーン」はとても美しいメロディーを持った曲で、僕は大好きです。マギー・スミスの主演する映画も面白かったですしね。
アル・マルティーノの歌で「ジーン」を聴いてください。このアルバム、亡くなった僕の大学時代の友だちが残してくれたものです。まだずっと若い頃に命を絶ってしまって、そのレコード棚からこのLPを1枚形見にいただいてきました。ときどきターンテーブルに載せ、針を落として、昔を偲(しの)んでいます。
まずは受賞曲の「雨に濡れても」をサッシャ・ディステルがフランス語で歌います。これがなかなかいいんです。
それからアル・マルティーノの歌で落選曲「ジーン」。
◆Steve Lawrence「My Foolish Heart」
ここまでが1960年代のloserたちですが、せっかくだからスティーブ・ローレンスのアルバム『くたばれアカデミー賞』から1曲聴いてください。
1949年に受賞を逃した名曲「マイ・フーリッシュ・ハート(愚かなり我が心)」です。ビル・エヴァンズの名演でも有名な美しい曲です。
それでは、この年にどんな曲がオスカーを獲得したのか?「Baby, It's Cold Outside(外は寒いよ)」という曲です。コミカルな楽しい曲なんですけど、「マイ・フーリッシュ・ハート」の方がやはり深みがあるよなと、僕は思います。
スティーブ・ローレンスが歌います。「マイ・フーリッシュ・ハート(愚かなり我が心)」。
<番組概要>
番組名:村上RADIO~くたばれ、アカデミー賞~
放送日時:9月27日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
