ロバキャンが、市民権を得た「肉肉しい」という言葉から連想したこと

フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。10月15日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、「肉肉しい」という言葉に見える性差の話や、アメリカ中間選挙における「肉の話」などについて語った。
ロバート キャンベル「まず、西村さんに聞きたいんですけれども、イベントに行ったり、球場に行くとお弁当を選ぶシーンが多いと思うんですけれども、お肉の弁当と魚の弁当が2つあるとすると、どちら?」
西村志野「昔はお肉一択だったんですけど、最近は魚が増えてきました」
キャンベル「砂鉄さんはどうですか?」
武田砂鉄「僕、ADをした時に、スタッフがニ、三十人いる時には肉と魚をどういうバランスで用意するかっていうのは結構ADで大切な仕事で、多分まあ7:3ぐらいで肉を出しといて、それでも魚が余るような現場でしたけどね」
キャンベル「そうかそうか、なるほど、ありがとうございます。データに基づいた答えをいただきました。
私は火曜日にちょうど砂鉄さんが戻ってきて、僕はちょっとラジコで番組を聞きながら過ごしていたんですが、僕の夫がちょっと風邪を引いて具合を悪くしたので、栄養になるものを食べてもらおうかなと思って、近所のスーパーに行ったら『塚田農場の黒牛バーグ弁当』というものがあって、凄く美味しそうな、グレービーソースがついているものですけれども、買って帰ったらパッケージを見て彼が僕に、『このコピーが面白いですよ』と言うんです。で、読んでみると『噛むごとに肉を感じる、とても肉肉しい肉バーグ』とあるんですね。
4回くらい肉が出てくるコピーで、実際に美味しかったんですよ。彼も『美味しい』と言ってくれたんですけれども、この『肉肉しい』という言葉が、肉の噛み応えとか油分とかが、『結構言葉として、最近割と市民権を得てるんだな』ということを感じていたんですよね」
武田「はい」
キャンベル「実はもう一つ『憎』と書いて、憎たらしいとか憎らしいという『憎々しい』という言葉がありますが、結構これは古い言葉でして、18世紀後半に洒落本という江戸時代の小説のジャンルがあって、そこが初出なんですね。
で、『肉肉と』や『肉肉とした』っていうのが、実は13世紀の説話集『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)という作品に、『にくにくと返事しければ(にくらしく返事をしたので)』っていうことが初出という風になっていて、反復することによって意味が増強されるという、『若々しい』とか『騒々しい』とか日本語によくあるんですけど、僕はそこからちょっと連想しました。
それは、この『肉』っていうのが、男性に向けて『この肉肉しい』とか『牛肉イコール男性性』とか『マスキュリニティ(男らしさ)とミート』っていうことを思ったんですね。
それをちょっと深掘りをしようかなというふうに思ったわけですが、まずこの『肉肉しい』という言葉を整理すると、2010年代の後半から、食レポとかブログから染み出してくるというか、見えるようになっていて、Googleでちょっと調べましたけれども、2018年にSNSとCMによる爆発的な普及というものが起きまして、なんと2018年の三省堂の辞書を編む人が選ぶ『今年の新語』のベスト10に『肉肉しい』が入っているわけです。
さらに新明解国語辞典にもあって、つまり現代語に強い辞書にはすでに採録されているということで、『肉肉しい』が2つ並ぶことになったんですね。
で、僕の印象では『肉肉しい』は男性がよく使う言葉とか、女性がちょっと避けるとかということでは全然ないわけですし、夕方のニュースで食レポートがたくさんありますが、女性のアナウンサーが『肉肉しく』『本当に肉汁がほとばしるような』などと女性向けに表現していて、だから肉を食べるということがひょっとして日本においては性差ってそんなにないのかなというふうに思うんです」
武田「そうかもしれないです。そこまで意識をされるものではなくなってきたのかもしれませんけど、どうだろうねえ?」
キャンベル「かもしれないなということは感じますね」
この後、ロバート キャンベルさんのお話は、この「肉肉しい」に関連した、アメリカの中間選挙の話題になっていきます。どんなふうに話が展開するのか、気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。
