松尾潔「ジャニーズ問題はメディア全体のあり方が問われている」

音楽プロデューサー・松尾潔氏

ジャニーズ事務所前社長による性加害問題で、同事務所の藤島ジュリー景子社長が見解を動画と文書で発表して1週間。ジャニーズ事務所所属タレントがキャスターを務める報道番組はどう伝えたか。音楽プロデューサー・松尾潔さんはRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で「ジャニーズ問題はメディア全体のあり方が問われている」とコメントした。

ジャニーズ事務所社長の動画公開から1週間

先週もこの番組でコメントしましたが、ジャニーズ事務所が見解を発表したあとの1週間について、今朝は時系列を追いつつ、僕の見解を添えたいと思います。

まずおさらいします。先週僕は、藤島ジュリー社長の謝罪動画と文書での見解発表を受けて、創業以来の「トップは表には出ない」という事務所の方向性を変えて顔を出したことは評価する一方、自社サイト内で動画と文書で回答を掲載しただけでは十分ではないと話しました。

加えて、記者会見をすべきだし、第三者委員会も必要ではないかとも話しました。それから1週間、いろんな動きがありましたね。

NHK『クローズアップ現代』が民放の報道姿勢に疑義

5月17日、NHKの『クローズアップ現代』が、“誰も助けてくれなかった”というタイトルで、ジャニーズと性加害問題を特集しました。かつて事務所に所属していた方の新たな証言もあったし、コメンテーター(松谷創一郎氏)はフジテレビとテレビ朝日を名指しして、民放テレビ局の報道姿勢に疑義を呈しました。

NHKの番組で民放局が名指しで批判されることは珍しいと思います。でも裏を返せば、この問題は一事務所の不祥事で済まされるものではなく、それを報じるテレビ、さらにメディア全体のあり方が問われていると痛感するできごとでした。

近藤真彦「もう知ってるでしょ」

近藤真彦さんが、大分県日田市で開かれるフォーミュラカーレースのPRで、大分県庁に表敬訪問したときの囲みの会見で、「もう知ってるでしょ、隠しごとなしに正々堂々と話さないと、みなさん納得しないでしょ」と話していましたね。近藤さんはジャニーズの“長男”として40年ほど君臨していたわけですが、その立場でのあの発言は藤島ジュリー景子社長への呼びかけですよね。

これはかつて近藤さんとジュリー社長が『3年B組金八先生』でクラスメートとして共演していたことを考えると、しみじみとしてしまう話でした。

この国全体で膿を出すべきフェーズに

でも、実際にジュリー社長に面と向かって何かを言える人はいないんだろうなという、彼女の孤独も想像してしまいます。ただ、裸の王様ならぬ裸の女王みたいな経営者に同情するにしても、日本を代表するエンタメ企業のトップとして、今の姿勢は疑問です。ご自身の影響力をもっと考えてほしいと思います。

「創業者がワンマンで、ゆえに会社も大きくなったんですが、変なルールが残っていましてね」みたいな会社があるでしょう? そういうことはどこにでも転がってる話だと思います。もしかしたら「うちの父親がそうだ」という人が、リスナーの中にいるかもしれませんね。でも、正すべきところは正しましょう。先週話したように、やっぱりこの国全体で膿を出していくというフェーズに入っているんじゃないでしょうか。

東山紀之「後輩たちに待ってもらった」は報道の自由の侵害

21日の朝、テレビ朝日の報道番組『サンデーLIVE』でキャスターをしている東山紀之さんが、2分近くにわたってコメントをしました。かなり練り上げられた文章でしたね。

先週、事務所から喜多川氏に関する公式見解が出されましたので、私自身の考えを伝えさせていただきます。この件に関しましては、最年長である私が最初に口を開くべきだと思い、後輩たちには極力待ってもらいました。彼らの心遣いに感謝します。

東山さんは、近藤真彦さんが退所した後の、ジャニーズ事務所の“長男”として「最年長である私が最初に口を開くべきだ」と語っています。これは15日の日テレ『news zero』で、この問題に関するコメントを回避した櫻井翔さんを気遣っての発言と取れますし、実際そうなんでしょう。

でも、「後輩たちには極力待ってもらいました」って、これはおかしいと思いませんか? 名指しこそしていませんが「櫻井さんが15日に話さなかったのは、僕が待ったをかけていたんだ」という意味での発言だとしたら、それはテレビ朝日のキャスターが日テレのキャスターに待ったをかけたということであり、報道の自由の侵害にあたるのではないでしょうか。

「とんでもないこと今やってるんだよ。分かってるの?」という疑問を抱かざるを得なかったですね。いっそのこと、これを機に“キャスターごっこ”はみんな辞めたらどうかと思います。そもそも僕は、キャスターを名乗る人が民間企業のCMに出るような状況はおかしいと思っているので。

それはジャニーズ事務所に限った話ではなく、他のタレントキャスターも同じ。エンタメ番組であれば構いませんが、そのキャスターが伝えるニュース全体の信ぴょう性が低下します。

メディア・音楽団体は共同声明を

繰り返しになりますが、今回の問題は一事務所だけのことではありません。このタイミングで、朝日、読売、毎日といった大手新聞社、テレビのキー局、さらに音楽業界4団体が共同声明を出すべきです。そうしないと、この国のエンターテインメントビジネスの地盤沈下は避けられないと僕は思っています。すでに液状化しているぐらいのイメージです。

僕もその末端にいる人間として、大変な危惧を抱いています。スピーディーな解決も誠意のうちです。藤島ジュリー景子社長の英断を求めます。

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、松尾潔
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※放送情報は変更となる場合があります。

ニッポン放送とISARIBI、 吉田尚記アナウンサーのマネジメントで業務提携 ~吉田尚記をISARIBIがプロデュース~

ニッポン放送とISARIBIは2025年4月以降、ニッポン放送アナウンサー・吉田尚記のマネジメントにおいて業務提携を行うこととなった。

吉田尚記アナウンサー

ISARIBIはREAL AKIBA BOYZなど、人気インフルエンサーのマネジメントをはじめとし、多くの企業等の広告プロモーションを手がけるクリエイティブエージェンシー。秋葉原を主軸に活動しており、アニメやゲーム関連のプロモーションを得意とする同社と、吉田尚記の活動とは親和性が高く、今回の業務提携に至った。

4月以降、吉田尚記のニッポン放送以外の各メディアやイベント、講演に出演する際のマネジメントとプロデュースをISARIBIが務める。

吉田尚記はニッポン放送のアナウンサーでありながらアニメなどサブカルに造詣が深く、数多くのメディアやイベントへ出演してきた。近年はウェルビーイングやコミュニケーション、リスキリングなど活躍の領域を広げ、2025年4月からは東京大学大学院にも通学する。

今回の業務提携においては、吉田尚記はニッポン放送社員のまま、より一層ニッポン放送以外での活動を広げていく。

【ISARIBI株式会社概要】
■設立:2020年4月
■所在地:東京都千代田区外神田 3-11-11 VORT Ⅵ秋葉原 8F
■事業内容:クリエイティブエージェンシー
■役員:代表取締役 榊原敬太
■取締役副社長:田川浩巳

■吉田尚記(よしだ・ひさのり)プロフィール

1975年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。ニッポン放送アナウンサー。2012年第49回「ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」受賞。ラジオ番組でのパーソナリティのほか、テレビ番組やイベントでの司会進行など、レギュラー番組以外に年間200本ほど出演。またマンガ、アニメ、アイドル、デジタル関係に精通し、VTuber一翔剣、「マンガ大賞」発起人など、アナウンサーの枠にとらわれず活動を続けている。なお、2024年には東京大学大学院に合格し、2025年4月から東京大学大学院情報学環・学際情報学府・社会情報学コースへ入学。研究テーマは、『推し活はウェルビーイングをもたらすのか?~「ももいろクローバーZ」のファンとウェルビーイングの関係に注目して』。

共著を含め14冊の書籍を刊行し、ジャンルはコミュニケーション・ウェルビーイング・メディア論・アドラー心理学・フロー理論など多岐にわたる。著書の『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)は国内13.5万部、タイで3万部を突破するベストセラーに。2025年2月に、人類学者・奥野克巳先生(立教大学)との共著を出版。

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