長雨の頭痛やだるさは”多雨疲労”!? 気象病のサインと改善策
8月末から秋雨前線の影響などで雨の日が続いています。気象庁によると、関東甲信では9月の日照時間が観測史上最小、降水量も最多となっており、日照不足と長雨はまだ続く見込みです。台風の接近など不安定な天気の中で「なんとなく体がだるい」「頭痛がする」と感じることはありませんか。それは気象変化による「気象病」や、長雨による「多雨疲労」かもしれません。天候と不調の関係に詳しい、せたがや内科・神経内科クリニック院長の久手堅司さんに、原因や対策について教えていただきました。
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気圧の変化は耳で感じる
そもそも「気象病」とはどのようなものなのでしょうか。久手堅さんは次のように説明します。
「気象変化によって様々な体調不良が出ることで、気象変化とは何かというと、気圧、温度、湿度、あとは今回のように長期間雨が続いているような気象変化によって、頭痛、倦怠感、関節痛、首・肩こり、めまい、動悸やメンタル的な症状など、様々な症状が出るのを俗に気象病と言っていますね」
人間は気圧の変化をどのように感じ取っているのでしょうか。実は、気圧の変化を最も敏感に感じ取っている器官は「耳」だと言われています。
「気圧の変化を一番感じているのは耳だという研究発表が出ていて、耳の奥の『内耳』というところに渦巻き状の形のものがあるのですが、そこが気圧の変化を感じやすいのです。飛行機で陸上にいる時から上に上がった時などは気圧が変化するので、上に上がると耳が痛くなり、下がってくる時も耳が痛くなるじゃないですか」
耳で感じ取った気圧の変化は、その後どのように体調に影響を与えるのでしょうか。
「気圧の変化を一番感じているのは耳という報告なので、耳で感じて、その信号が脳に伝わります。そして脳から自律神経、つまり活動している時のモードである『交感神経』と、リラックスモードである『副交感神経』が自動で切り替わることによって、気象病のメカニズムが発動していると言われていますね」
自律神経が負担を強いられる「多雨疲労」
気象病の一種として、長雨が続く時期に起こりやすい「多雨疲労」というものがあります。多雨疲労について、久手堅さんは次のように解説します。
「多雨疲労に関しては、特に9月、雨も続いてますけど、夏の疲労があって、プラス長雨、あと気圧の変化とかで温度差が出たり、高湿度になったりすることによって出る気象病の1つのバージョンですね。大きい枠の中で気象病で、その中で長期間雨が続く時に起こるのは多雨疲労じゃないですか、というような話をしてますね」
湿度と気温は連動していますが、高湿度な状態が続くと人間の体にはどのような負担がかかるのでしょうか。
「高湿度になると人間は体温調整をしないといけないので、自律神経に負担がかかると。例えば、高湿度だと汗が出にくくて、より自律神経に負担がかかってしまうので。長雨で気圧の変化があったり、寒暖差、湿度という気象病の要因の3つですね」
このような負担が重なることで、日常生活にもさまざまな支障が出やすくなります。日常の生活がままならないという方も多いようです。
「気圧・温度・湿度の変化が長雨では出やすいので、そうなると自律神経が負担を強いられるので、疲れが抜けなかったり、だるかったり、様々な症状が出るということになりますね。朝起きられないとか、起きても動けない、あとは日中に眠気が強くなったり、頭痛がひどい、めまいがひどい、あとはむくみ、そして食欲がなくなったり、動悸がしたり、集中力も続かないとか、鬱っぽい症状が出るなど、様々な症状が出やすくなりますね」
女性やデスクワークは要注意
気象病になりやすい属性について伺うと、圧倒的に女性が多く、全体の7~8割を占めるそうです。
女性はホルモンの変動があるため、元々、頭痛や倦怠感が出やすい傾向にあります。そこに天気の影響が重なってしまうことで、より症状が強く出やすくなってしまうのだそうです。
また、性別に関わらず、ライフスタイルによっても気象病のリスクは高まります。特に注意が必要なのが、普段あまり体を動かさない「デスクワーク」を中心としている方です。
デスクワークの方は自律神経が整いにくく、同じ姿勢を続けることで首や肩が凝りやすいため、気象病の症状が出やすい傾向にあります。日頃から同じ姿勢での作業が多い方は、こまめに体を動かすなど、意識的に対策を取り入れることが重要と言えるでしょう。
天候の悪化を予測できるか
自分の不調が「気象病」や「多雨疲労」によるものなのかどうかを見極めるためには、2つのポイントがあります。まずはこの2つに当てはまるか、ご自身の体調の変化を振り返ってみてください。
「1つ目は『天気が悪い時に不調がある』。2つ目は『天候が悪化する前に、なんとなく「あ、これから雨が降るな」と天気の予測ができる』。この2つのうち、どちらかに該当したら気象病、もしくは多雨疲労の可能性があり、これでほぼ80%は判別できます」
該当した場合の対策としては、まず生活習慣を見直すことが大切です。
「深い睡眠を長く取っていただいて、午前中に起きて太陽光を浴びる。そして栄養や水分をしっかり取っていただく。あとはウォーキングやストレッチなど、軽く体を動かす習慣をつけるだけでも全然変わってきます」
さらに細かいチェックをしたい方は、久手堅さんの「せたがや内科・神経内科クリニック」のホームページにチェックリストがありますので、ぜひ試してみてください。
耳回りのマッサージが有効
基本的なセルフケアに加えて、すぐにできる対処法についても教えていただきました。気圧を感じる耳の周りをケアすることで、症状の緩和が期待できるそうです。

「まず気圧には耳が関係しているので、耳回りのマッサージが有効です。耳を横に引っ張ったり、前や後ろに軽く回したりして、イタ気持ちいいところを軽く押していただくと、耳回りがすっきりして血流も増えます」
また、頭痛がある場合や、食いしばりを防ぐためのマッサージも効果的です。頭痛があるならこめかみを押したり、食いしばりを防ぐために顎を緩めたりするのも良いそうです。
具体的な方法としては、奥歯を噛んで膨らむ場所に手のひらを当てて、円を描くように回すだけです。隙間時間で簡単にできるため、日常的に取り入れてみてはいかがでしょうか。
水を調整する利尿作用がある漢方薬
マッサージ以外にも頼れるものとして、「薬」の活用についても伺いました。天候不良による不調に対し、多くの医師が最初に処方する漢方薬があるそうです。
「五苓散という漢方薬なのですが、市販でも売っていますし、保険適用で使うこともある薬です。体の中の水分調整をする漢方薬なんですね。なぜ水分調整が必要かというと、気圧が下がった時に、先ほどお話しした飛行機の上に上がった際にペットボトルが膨らむのと同じように、人間の体も気圧が下がると若干むくむと言われているからです」
漢方の考えではそのむくみを「水」として捉えており、水を調整する利尿作用のある五苓散が使いやすいとのことです。
「実際にそれを使用して私が学会発表もしているのですが、そのデータではだいたい10人中7人くらいに有効性があり、副作用も比較的少ないという結果が出ています。気圧の変化で不調を感じる方は、それを第一選択として使って効果が出ることが多いですね」
実際のところ、多雨疲労の方も気象病の方も、納得のいく効果が出ている漢方薬だそうです。まずはセルフケアやマッサージ、市販のお薬などを試してみて、それでも改善せずに生活が辛いという時は、無理をせずに気象病の専門外来など、医療機関を早めに受診してください。長雨や台風などで気圧・気温・湿度が大きく変わる今の時期、自律神経を整えて乗り切っていきましょう。
(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)
