”×”はどこ!?ネットの不快広告、なぜなくならない
ネットの安全を揺るがすニュースが続いていますが、いま、ほかにも苦情が急増していることがあります。毎日目にする、ネットの「広告」です。JARO(日本広告審査機構)に寄せられた苦情は、昨年度1万2000件を突破し、過去最多に。その6割以上が「ネット広告」でした。皆さん、ネットの広告に不満を抱えているようですが、何が不満なのか、街で聞きました。
「×ボタン」がいない!?
ニュース記事とか見て開くと、必ず「×」を押さないと元の記事が読めない。どこを押せば広告が解除できるのかわからなくて見るのを諦める…。
「閉じるボタン」がどこにあるかわかんない。僕結構ゲームするんですけど、ゲームの時に出てくる広告が全然消せないのがすごい最近ムカついてますね。めっちゃ負けますよそれのせいで。テトリスとかやってて出てくるんですよね。
広告が出てきて、×ボタンがない。色々ページ、スクロールもしたんですけど、×ボタンがそもそもいなくてリロードし直すことが度々あります。×ボタンがいないです。あとちっちゃすぎて「当たり判定」がなさすぎて、クリックして知らんサイトに飛ばされる。5ミリ以下の時ない?なんか長方形の5ミリの長方形以下の時って絶対指で押せなくないですか?指を細くすればいいのかみたいな。絶対私「×」押せてるもん。それにちょっとイライラする。

スマホやパソコンでサイトを開くと、画面いっぱいに広告が表示されることがよくあります。その広告を一旦閉じて、ニュース記事やサイトを見たいのに、「×ボタン」が見つからない。中には「×」に見せかけた矢印(「>」のような記号)や、「CLOSE」と書かれた文字をナナメに配置して見にくくしたり、うっかり広告に触れるように作ってある広告が増えているんです。
実際、JAROに届いた苦情のうち、「閉じられない」「広告が画面をふさぐ」という苦情は、前の年の1・6倍でした。さらに、広告のイラストやデザインも問題になっていて、口の中のわざと汚いイラストを載せたり、性的なイラストなど、「怖いもの見たさで見てしまう」という心理を突いてくるものも多いようです。
でも、無理やり別のページへ連れていかれたら、その商品まで嫌いになりそうです。そんなことをして何の意味があるのか。ダークパターン対策協会の代表理事、小川 晋平さんに聞きました。
広告を載せるサイトにも収入が
ダークパターン対策協会・代表理事・小川 晋平さん
そのウェブサイト自体を運営している媒体社=ニュースサイトとかは、クリックされただけで収入が入ってきます。本当は媒体社が、ちゃんとチェックして出させないようにするのが正しいんですけど、そこは機能してなくて。しかもクリックされたら、勝手にお金がチャリンチャリン入ってくるので、媒体社的にはうれしいわけですよね。そこがメインの広告収入になってたりする。それをクリックした結果、あくどいウェブサイトに誘導してくると。で、誘導してきた中で一件でも契約したら一件当たり何千円とか報酬を得ることができるんですね。一定数騙される人がいる。

広告が押されるほど、載せているサイトにお金が入る仕組みがあります。小川さんが教えてくれた例では、1回押されるごとに「0・数円」。さらに飛んだ先で商品が売れれば、誘導した人に「数千円」の報酬が入ります。金額や条件は広告によって違いますが、載せる側にも利益が生まれるんです。
それなら、サイトにしっかりして欲しい!と思いますが、そう簡単ではないようです。今のネット広告は、見に来た人の年齢や性別に合わせて入札が行われ、一番高い値段を付けた広告が自動で表示される仕組み。サイト側も出てくる広告を選べないことが多く、中身まで責任を持ちきれないのが実情です。配信する会社を替えたり断ったりする余地はありますが、すぐにお金になる広告に頼らざるを得ない懐事情もあるようです。
しかも、「飛んだ先でお試し価格に惹かれて買ったら、実は定期購入だった!」や、「やめたいのに、解約の窓口が見つからない!」など、広告が入口になって思わぬ支払いにつながる場合もあると教えてくれました。こうしたダークパターンによる被害額は、年間「2・4兆円~3・2兆円」にのぼると言われていて、もはや私たちが「我慢すればいい」というレベルでもなさそうです…。では、こうした広告を規制できないのか。消費者問題に詳しい弁護士の住田 浩史さんに伺いました。
閉じにくい広告は自主規制頼み 載せる側・配信する側にも法規制を
弁護士・住田 浩史さん
一応、広告を規制する法律としては、我が国では「景品表示法」という法律がある。これはあくまで、「嘘」や「大げさ」「値段について誤った表示をしている」など、広告の中身に着目した規制はあるが、「閉じるボタンをわからせないようにしている」とか、そういった広告の画面の作り方・デザインを規制する法律は実際はないというのが現状。ですから、広告の規制っていうのは、「プラットフォームを通じた広告規制」も本当は必要なんですけれども、実はそこの観点が日本の法改正の議論の中では決定的に欠けている部分。つまり、プラットフォームが「騙す」画面設計自体を本当は禁止しないといけない。まあ自主規制で「そこは頑張ってください」というまでに留まってますね。
広告を「載せる側」はいまも自主規制に頼る部分が大きいのが現状のようです。一方で、お話にも出た「法改正」について、消費者庁はいままさに、ネット通販などのルールを定める「特定商取引法」の見直しを検討していて、今月31日まで、一般から意見を募集しているんです。ただし、9月に公表された案には、「知らないうちに契約させる」、「やめたいのに、やめさせない」といった手口への規制が盛り込まれていますが、「×印」のような見せ方をどんな基準で取り締まるかは、具体的に書かれていないようです。
一方でEUでは、SNSなどの運営会社に人をだます画面の作りを禁じているとのこと。住田さんは日本でも「載せる側」にまで踏み込まないと、今の実態には追いつけないと話していました。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』より抜粋)
