自分のやりたいことを会社のお金で実現する~北口正人さん
TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中!
11月13日(日)放送後記
北口正人さん(Part 1)
1961年大阪生まれ。阪神電鉄入社後、ニューヨークのJAZZクラブ「Blue Note」の日本開業に尽力し、さらにはBillboardを日本に誘致してBillboard Japanの全事業を手掛けた人物です。
JK:私Billboardファンなの! すばらしいですよJAZZって。先日もニューヨークに行ったんですけど、やっぱりニューヨークはJAZZが基本! それを日本にお持ちになったわけだから、日本にとっては音楽革命ですよ。
北口:Blue Noteとの出会いは、30数年前に神戸の街づくりコンペがあったんですよ。その時私の尊敬する上司は、これから日本の音楽ファンも上質なライブを毎日聞く時代が来る、と。それでニューヨークに連れて行かれましてね。たまたまうちのグループ会社の社員がBlue Noteのオーナーを知ってて。その上司と向こうのオーナーが意気投合して、Blue Noteを持ってくることになって・・・僕らは現場で粛々と作業するんですけど。
JK:Blue Noteが来たときは、ニューヨークが日本にやってきた!って感じだったものね。もう何年になります?
北口:1988年ですので、30年以上前ですね。
JK:やっぱり定着してますね。でも日本とニューヨーク全く違いますよね。日本の方が洗練されてる(^^)
北口:JAZZクラブを日本に持ってくると、入場料も高くなっちゃうんですね。ですので、それなりの「ハレの場」を作らないとそれだけの料金は取れないかな、と思って・・・JAZZイコールおしゃれ、というイメージをずっと作っていった感じですね。
JK:お食事とライブ、シアターライブみたいなイメージですよね。クラシックの五嶋龍さんもニューヨークにいるんですけど、ニューヨークではやっぱりJAZZを知らないと、って言ってた。「ニューヨークはJAZZですよ!」って。
北口:その上司は電鉄の役員だったんですけど、特異な考えの持ち主で、僕たちはその人に育てられたという感じでした。
出水:鉄道会社が音楽事業を手掛けるというのはなかなか結び付かないと思うんですけど??
北口:これは後から聞いた話ですけど、実は神戸のコンペに負けまして。その上司はBlue Noteを大阪でやりたいという思いがあって、役員会で「これから阪神電鉄は大きな開発をする」とぶちまけたそうです。それまで阪神電鉄って、「石橋をたたいても割っちゃう鉄道会社」と言われて、何にもしなかったんです(笑) そういう社員の気持ちをブレイクしようと。阪神電車もこれから何かするんちゃうか?!という期待を社員に抱かせようというんでBlue Noteが始まった。
JK:夢ですね! Blue Noteで急に飛躍したって感じね!
出水:構想段階から、音楽事業をやったことがない皆さんでゼロから作る感じだったと思うんですが、何年ぐらい開業までにかかったんですか?
北口:契約してから1年ぐらいかかりました。
JK:最初に呼んできた方は?
北口:ジョージ・ベンソンです。
JK:すごい方よね! 次から次へと日本にやってきた。
北口:僕もJAZZが好きで、憧れてきたレジェンドが日本にやってきた。ディジー・ガレスピーとか、アート・ブレイキーとか・・・彼はうちが最後のステージだったんですよ。うちで1回だけショウをやって、ぶっ倒れて病院に運ばれて、僕たち1か月彼をケアしたんです。
JK:あらっ! これアート・ブレイキーについて本書けますよ! 最後ってすごいこと!
北口:いっぱい話も聞きましたし、背中も流しました(^^)僕たちってアーティストを呼んで公演してもらうだけじゃなく、昔は1週間滞在してたんですね。なので、アーティストと人間として付き合っていく。本当にいろんな話を聞きました。
JK:それにわがままでしょ? だいたいアーティストの人って。
北口:まぁそれは致し方ないというか。いい公演をしてもらうために僕らも頑張るんですけど・・・でも契約上、許せないことはNOって言います。

JK:Blue Noteが最初で、その後Billboardでしょ?
北口:東京のBlue Noteは本当にコンセプトが素晴らしく、今もずっとJAZZでやっていますよね。大阪と福岡と名古屋でもやりましたけど、マーケットが小さいのでJAZZだけでは難しい。JAZZのレジェンドもどんどん亡くなられて、いなくなる。そういうところもあって、もう少し広いブランドをやりたいなと思って、Blue Noteを経営してから10年ぐらいでしょうかね、Billboardを始めました。
出水:Billboardはアメリカで約100年の歴史を持つ音楽ブランドですが、こことのライセンシング契約や交渉は難しかったのでは?
北口:Billboardの出会いは偶然なんです。僕らとしてはもうちょっと広いジャンルを作りたいなと思って、100ぐらいの音楽ブランドを集めてきて、「イケる」「アカン」とか・・・最後に残ったのが3つやったんです。ひとつはHouse of Bluesっていう大きな会社で、もうひとつはチャートで有名なCash Box。最後に残ったのがBillboard。House of Bluesのオーナーに会いに行ったら、投資金額が結構すごくかかるなぁと思って、これでは日本では採算あわへんな、と。Cash Boxは日本語に換えると「金庫」じゃないですか。
JK:募金じゃないんだから(^^)Billboardは聞こえもいいわね。
北口:Billboardってアメリカでアーティストからリスペクトされているアウォードをやってるブランドなんですね。それでBillboardにしようと社内で決めたんですけど、ここだけコンタクト先が分からなかった。なのでホームページの問い合わせ窓口から、僕の名前で出すと相手にしてもらわへんと思ったので、顧問弁護士の名前でメールしたんです。そしたら2週間後に「1回会おか」って返事が来て・・・本当に偶然の出会い!
出水:へぇ~! 北口さんは様々な事業を手がけていますが、新しいことにチャレンジする時にご自身の中で決めていること、指針みたいなものはありますか?
北口:新規事業をするときは、4つ自分で決めていることがあるんです。新規事業って、アメリカのセオリーで行くと成功する確率は20%なんです。なので、「最初から上手くいかないことを前提にする」っていうのがひとつ。それから「止める基準を決めておく」。
JK:あ、先に決めちゃう?
北口:はい。僕は2年で利益が出なくて、将来性がないものは止めます。それから「事業のキモ」。Billboardだとアーティストを決めて、交渉して、連れてくる。そうしたキモの部分は全部直営でやるって決めてます。あとは新規事業って難しいので、「失敗した社員はいいポジションに戻す」。それをしないと、誰も新規事業しなくなる。
JK:そうよね! でも失敗は成功の素っていうから、失敗っていう大きな経験を持ってるわけでしょ? 二度と失敗しないために努力するわよね。まぁ一応ハンデはあるんだけど(^^;)その経験がある人とない人の違いって大きいかもしれない。
北口:サラリーマンって、事業に失敗したからって降格されることはないんですよ。サラリーマンだからこそ自分のやりたいことを、会社のお金を使ってできるんじゃないかな、って僕はずっと思ってました。
JK:今サラリーマンの方、聞いてて嬉しいと思いますよ(^^)
北口:そういうことも上司に教えてもらいました。
JK:外国のアーティストってそう簡単に呼べないですよね、経費だとか手続きだとか。
北口:エージェントと話をするときに「阪神電鉄は上場企業です」って言うじゃないですか。見向きもしてくれない。「じゃあ、君は何を したんだ?」って聞かれるんですよ。その人にちゃんとした実績があって、信頼関係があって、初めてちゃんとしたディールができる。それはすごく勉強になりました。
OA曲
M. エルネスト・ブロッホ作曲 「ニーグン」 / ヴァイオリン演奏:若尾圭良
M. Give Me The Night / George Benson
