高齢者の孤独・孤立防止につながる「移動式地域食堂」
渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。5月21日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、「移動式地域食堂」について解説しました。
松田 今日は4月24日付の山梨新報で取り上げた記事を紹介します。独り暮らしの高齢者の孤独・孤立防止のために、県が今年から始めた「キッチンカー」を活用した「移動式地域食堂」のお話です。麻耶さん、山梨県の独り暮らしの高齢者数はどれくらいだと思いますか。
麻耶 県人口は約80万人として、65歳以上の高齢者が4人に一人、独り暮らしの方がそのまた4人に一人ぐらいでしょうか。それで計算すると、80万人÷16=5万人ぐらいでしょうか。
松田 いやー、いいところを突いていますね。県によると4月1日現在の県人口は約77万7000人。「777」、スリーセブンと覚えましょう。ただ、今後も減少は続きますが。で、昨年4月の高齢者数は25万4000人でした。両方のデータに1年のタイムラグがありますが、その上で計算すると、県民の約3人に一人が高齢者。このうち在宅独り暮らしの高齢者は4人に一人強で6万8000人です。東京ドームは5万人収容ですが、その1.36倍です。
麻耶 なるほど、そう考えると、多いと感じますね。
松田 はい。では、高齢者の独り暮らしは何が問題なのか。県の健康長寿推進課を取材すると、それが、将来の認知症や要介護の原因となっていきかねないという問題意識でした。担当者によると、「話し相手がいなく、独りで食事をし、やがて外出もしなくなると、心身ともに機能が低下し、要介護や認知症リスクが高まる。だから、高齢者が集まりやすい場所に、こちらから出向いて行って、高齢者の外出を促しています」とのことでした。そこで県は、半年間のモデル事業として今年1月から、富士川町と昭和町で、キッチンカーを派遣した「移動式地域食堂」を始めました。
麻耶 どのような事業内容ですか。
松田 富士川町の移動式地域食堂を取材してきました。現場を運営する町の社会福祉協議会によると、来月までの半年間で15回、地区公民館にキッチンカーが来て、交流の場を設けます。参加者は80~90代を中心に毎回20~30人だそうです。入口には保健師も常駐し健康相談などに応じます。70代の最年少の参加者に感想を聞くと、「家の食事と違うものを、知り合いとしゃべりながら楽しめるのがいい。これからも続けてほしい」とのことでした。
麻耶 モデル事業が終わった後、県はどう対応する予定ですか。
松田 夏に、今回の取り組みの成果と課題を市町村に伝えた上で、市町村の来年度予算にキッチンカーの事業費を盛り込んでもらう形で、全県展開を目指したい、としています。では、市町村に財源があるのか、ということですが、県の支援に加え、介護保険料を原資とする厚生労働省の予算なども使えば、市町村の負担率は約2割まで抑えられるそうです。
麻耶 高齢者の認知症・要介護予防へ、県内全域で対応を目指すということですが、どのようなことが課題になりますか。
松田 はい。取材では、社会福祉(介護技術)が専門の県立大人間福祉学部の伊藤健次教授にお話を伺いました。伊藤教授は、「県の事業は正しいアプローチ。今後の課題は『定着と普及』」とした上で、「補助金が切れ、単発で終わらないように、自立した取り組みとして多くの地域で継続しなければ、県全体としての効果は出ない。そのためには、地域で交流を促進する担い手の確保が必要。地道な取り組みを継続する中で担い手は増えていく」と指摘されました。
ただし、「担い手の確保は簡単ではない」そうです。そこで、「担い手自身も孤立しないように、同じ志の人同士の緩やかな連携が望ましい。『こういう場合、他の地域ではどうしているのだろう?』『それなら、こんなやりかたもあるよ』というような。並行して、あの手この手で施策を打てば、定着の芽が伸びていくのでは」と話されました。キーワードは「持続可能な取り組みと、その担い手の確保」。改めて孤立する高齢者のいない社会を目指したいと感じました。
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