中小・零細企業のコロナ支援「ゼロゼロ融資」返済に不安という企業も
渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。5月18日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、新型コロナウイルス感染禍の中小・零細企業の支援策「ゼロゼロ融資」の返済について解説しました。
松田:今日は新型コロナウイルス感染禍の中小・零細企業の支援策「ゼロゼロ融資」のお話しです。山梨新報5月5日付の1面で報じました。ゼロゼロ融資は、2020年3月にスタートした実質無利子・無担保の融資のことで、これから年内にかけて借り手の店舗や中小・零細企業の返済が本格化します。ところが、「返済が不安」という借り手が結構多いのです。融資を受けていない人には直接、関係ない話ですが、ポストコロナ時代に県経済が直面する大きな課題として紹介します。
麻耶:経済全体の観点から、私たちも知っておいた方がいいかもしれませんね。それでは、ゼロゼロ融資の制度の経緯から教えていただけますか。
松田:コロナ禍の中小・零細企業の資金繰り支援のために3年前にスタートしましたが、融資は昨年9月までで終了、その後は無利子ではなく、低利融資に引き継がれました。ゼロゼロ融資の申し込みは、政府系金融機関の日本政策金融公庫か、または県の信用保証付(県信用保証協会が保証人になること)で、山梨中央銀行をはじめとする県内の民間金融機関から借りることができました。
麻耶:実質無利子ということですが、一般の融資とはどう違うのでしょうか。
松田:ゼロゼロ融資は、借りた当初の3年間は「実質無利子」で、この“実質”の意味ですが、借り手が金利を立て替え払いするが、半年後にその分が国から県経由で戻される仕組みです。金利(年利)は公庫が1%水準、民間金融機関が1.4%でした。3年間無利子なので、利払いは4年目からです。一方、元金返済は最長5年間据え置き――当初、最長5年間は元金返済が猶予され、6年目から返済します。ただ、多くの借り手は3年据え置き4年目から返済を始め、中には2年目から返済する借り手もいます。元金返済は毎月定額の均等払い。10年返済で元金返済3年据え置きなら、4年目から利払いと元金均等払いが始まり、7年で完済するわけです。
麻耶:今年の夏ごろから返済が本格化するということですが、融資件数や平均融資額などはどんな傾向でしょうか。
松田:融資件数は金融公庫が約7700件、山梨中央銀行が約5000件。平均融資額は金融公庫が1000万円水準、山梨中央銀行は1000万円~2000万円がボリュームゾーンです。融資先は公庫は、家族経営など従業員数5人以下が最多でした。山梨中央銀行は、こうした零細企業などに加え、資金繰りに困ってはいないが、まさかの時に備えて予防的に借りておこうという顧客も多かったそうです。つまり、当初3年は実質無利子なので、この期間中に全額返済してしまえば、資金調達コストはゼロで、3年間、いつでも使えるお金を手元に置いておける――いわば保険をかけているようなものでした。それから、業種特性では、最も資金を必要としたのは、金融公庫も民間金融機関も、やはり販売収入面で打撃が大きかったとされる「飲食と宿泊・観光業」のようでした。
麻耶:こうした中で「返済が不安」という借り手が少なくないということですが、すでに返済を始めた借り手はどのくらいおられるのでしょうか。
松田:民間調査機関の帝国データバンク甲府支店が今年2月に行った調査によると、回答した県内企業91社のうち、新型コロナ関連融資を現在受けている企業は64%。さらにこのうち、「すでに返済を開始した」が64%、「2023年6月までに返済が始まる」が14%、「同12月末までに返済が始まる」が17%で、年内までで計95%の企業が返済を始めます。
麻耶:ほとんどの借り手が返済を始めるのですね。完済の見通しはいかがでしょうか。
松田:「融資条件通りに全額返済できる」は76%、「返済に不安」は24%で4社に1社。この24%の内訳は「返済が遅れる可能性がある」(12%)、「金利減免や返済額の減額などの融資条件の変更を受けないと返済が難しい」(9%)です。帝国データバンク甲府支店では、「あきらめ型の休廃業や倒産の予備軍になる可能性がある」と危惧しています。
麻耶:できるだけそうならないようにする対応について、松田さんはどう思われますか。
松田:金融機関の対応策は「借り換え融資」と「融資の条件変更」の2つです。借り換えとは、たとえば、元金残高500万円で、売り上げが好転し始め、新規資金需要が発生した場合、700万円の借り換えで差額の200万円を事業資金に充てるというようなことです。条件変更とは、元金据え置きや返済の期間の1年延長するなどのことで、これはゼロゼロ融資の前から、金融機関が通常の融資で行ってきている手法です。さらに、山梨県は借り換え融資制度として今年1月、元金据え置き最長5年、返済期間10年の年利1.6%の低利融資を設定、「金融機関を通じ積極的に活用いただきたい」としています。コロナは今月8日から、感染症法の位置づけが、インフルエンザと同様の「5類」に引き下げられ局面が大きく変わりましたが、一方でコロナの経済的な影響は今も残っており、予断を許さない状況です。
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