元宇宙飛行士・野口聡一「家族が届けてくれた。とても前向きな曲」宇宙遊泳で選んだジブリソングとは?
提供:J-WAVE
野口が登場したのは、10月25日(日)からスタートしたJ-WAVEの新番組『J-WAVE SELECTION Panasonic ENERGY SILENT HEROES』(ナビゲーター:秀島史香)。さまざまな分野で活躍する人をゲストに迎え、「支える/支えられる」をテーマに話を聞くプログラムだ。
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高校時代に見たスペースシャトルが夢の原点に
初回となる10月25日(日)の放送では、元宇宙飛行士の野口聡一をゲストに迎えた。野口は東京大学大学院を修了後、航空宇宙分野のエンジニアを経て、1996年に宇宙飛行士候補者に選出。2005年にはスペースシャトル「ディスカバリー号」で初めて宇宙へ飛び立ち、国際宇宙ステーションでは日本人として初めて船外活動を行った。
その後、ロシアのソユーズ宇宙船や、2020年にスペースXが開発したクルードラゴンにも搭乗。計3回の宇宙飛行を経験し、宇宙で過ごした時間は通算340日以上を記録した。2022年にJAXAを退職してからは、教育や研究、企業活動など幅広い分野で活躍している。
番組ではまず、野口が宇宙飛行士を目指したきっかけについて話を聞いた。
野口:私は高校生のころ、茅ヶ崎に住んでいました。高校1年生のときに、たまたまテレビでスペースシャトルの打ち上げを見たんです。それまでも図鑑や理科の授業で、月面着陸や宇宙に行くという話は知っていました。でも、実際のニュースで、人がロケットに乗って宇宙へ飛び出していく様子を見たとき、「これは現実なんだ。本当に今この瞬間に起こっていることなんだ」と感じました。海の向こうのアメリカの出来事でしたが、こういう仕事は面白そうだなと思ったのがきっかけですね。
野口は高校3年生の進路相談の際に、将来就きたい職業として「宇宙飛行士になりたい」と書いたという。当時はまだ日本人宇宙飛行士がひとりもいなかったため、「担任の先生も困ってしまったんですよね」と振り返った。
野口:もし、先生から「何を書いているんだ、ふざけるな。ちゃんと大学を書け」と言われていたら、もしかしたらそこで終わっていたかもしれません。でも「そうか……。そうすると、どうすればいいんだろうね」と受け止めてくださり、「宇宙に行くためにはロケットのことなどを勉強したらいいんじゃないか」という感じで、航空宇宙工学を勧めてくれました。少なくとも、最初から「そんな現実離れしたことはやめろ」とは言わなかった。そこは大きかったですね。親も「へえ」といった反応でしたが、「公務員になって、真っ当な人生を歩んでくれ」とは言われませんでした。そういう意味では、最初の一歩で出鼻をくじかれなかったことは、本当に幸運だったと思います。
宇宙から見えてきた地球の資源の大切さ
訓練を積み重ね、3度のミッションで通算340日以上を宇宙空間で過ごした野口。実際に軌道上で生活するなかで、電気や水、酸素など、地上では当たり前のように使っている資源への意識はどのように変わったのだろうか。野口:宇宙で生活し始めると、すぐに気づくというか、強烈に意識に刻まれるのは、すべての資源が有限だということです。僕たちが今吸っている空気には窒素と酸素がありますが、宇宙ステーションではどちらも有限な資源としてきちんと管理しています。空気がなくなってしまったら、僕たちは生きていけませんから。窒素も酸素も地上から高圧ボンベで運んできます。自分たちが呼吸するためにどれくらい必要なのかを毎日確認し、計算しながら、あと何日使えるのかを把握しているんです。
秀島:すべて管理のもと、行動するんですね。
野口:水も当然、有限です。しかも、宇宙に水を持っていくにはかなりのお金がかかるんですよ(笑)。水は重たいから、輸送費がかさむんですよね。そこで、宇宙ステーションでは水をほぼ100パーセントリサイクルしています。つまり、僕たちが生きていくために必要な資源は、すべて有限なんです。これを地球に置き換えて考えてみると、窓の外に広がる地球には、水も空気もエネルギーもたくさんあるように見えます。でも、目の前にある「青いボール」のなかにしかないわけですよね。無限にあるように見えても、極めて限られた資源のなかで生かされている。その点は、宇宙でも地球でも同じだと思います。
秀島:一度離れてみると、地球が小さな入れ物のように見えて、そのなかにある大切な資源には限りがあることがわかりますが、使い切ってしまったら終わりだということも、離れてみないと実感できないのかもしれませんね。
野口:そうですね。そこにある境界線というか、限界は越えてみないとわからないんだと思います。たとえば、自分が育った故郷の街を飛び出してみると、その街のよさと限界の両方が見えてきますよね。普通は、限界の先を意識して「もうここにはいられない」と思い、若者が外へ出ていくわけです。でも、実際に出てみると、故郷のよさがわかる一方で、自分がいた場所がいかに小さな世界だったのかにも気づきます。さらに、日本を飛び出してみることも同じです。島国である日本を離れると、日本という国のよさがわかると同時に、その限界も見えてくる。そういうことなのかなと思います。
宇宙飛行士の朝を彩った音楽の贈り物
一度の宇宙飛行には、実際にどれほどの人々が関わっているのだろうか。野口によると、一度に宇宙へ行くのは4~7人ほどだが、直接やり取りをするサポートスタッフだけでも100人を超えるという。さらに、「表からは見えない場所でミッションを支えるチームも含めると2,000人、3,000人という規模になる」と説明した。秀島:地球から宇宙へ届けられるものといえば、先ほどのお話にあった水や、さまざまな補給船で運ばれてくる物資がありますよね。実は、音楽も届けられていたそうですね。NASAのスペースシャトル時代には「ウェイクアップコール」といって、地上の管制センターから音楽を流し、宇宙飛行士に朝の目覚めを知らせる習慣があったと伺いました。
野口:おっしゃるとおりです。スペースシャトル時代、管制センターのあるヒューストンから、朝一番のコールを入れていたんです。いわば朝礼のようなもので、「ここから仕事が始まるよ」と知らせるタイミングですね。単に「こちらヒューストンです」と呼びかけるだけではつまらないので、昔から音楽を流して目を覚ましてもらおうということをやっていました。それが、あるときからリクエストできるようになったんです。
秀島:ラジオみたいですね!
野口:宇宙飛行士本人がリクエストすることもあれば、地上で留守宅を守る家族が、その飛行士のために曲を届けることもありました。
秀島:それもグッときますね。
野口:とてもいい仕組みだったと思います。
秀島:野口さんは、どんな曲で目覚めていたんですか。
野口:僕がリクエストしたのは、ジブリ映画『となりのトトロ』のオープニングで流れる『さんぽ』という曲です。これは、僕が1回目の宇宙飛行で船外活動、いわゆる宇宙遊泳をするときに、「これは宇宙の散歩だ」と考えたんですよね。家族が届けてくれました。とても前向きですよね。
秀島:いい選曲ですね! 他にはどんな曲があるんでしょうか?
野口:もう1曲は、当時とても流行していたSMAPさんの『世界に一つだけの花』です。槇原敬之さんが作った曲ですね。当時、槇原さんが『EXPLORER』というCDを出していて、宇宙飛行士の格好をされていたんです。そのご縁で、企画を通じてお会いする機会があり、「この曲も宇宙に持っていきます」といった話をしたんです。「ナンバーワンじゃなくて、オンリーワンになる」というメッセージが、当時の僕の気持ちにとても合っていました。
宇宙飛行で学んだことを次の世代に伝える
今回の放送テーマは「支える/支えられる」。家族やチームメンバーのサポートに感謝している野口に対し、今度は自分が誰かを支えなければならないと感じた瞬間について尋ねた。野口:この仕事は、実際に宇宙へ行った人から学んだり、宇宙にいるときの振る舞いを見て、まねをしながら身につけたりする部分がとても多いんです。1回目の宇宙飛行では先輩たちについて、弟子のような立場で育ててもらいました。それが2回目、3回目と経験を重ねるにつれて、今度は自分が学んだことを後輩に伝え、支えていく立場になっていきました。特に3回目の宇宙飛行では、ビクター・グローバーさんという新人の宇宙飛行士がチームに加わりました。彼は非常に優秀な人でしたが、当然ながら宇宙での経験はありません。そんな彼をチームの仲間として支え、引き上げていく必要がありました。彼は本当に気持ちのよいナイスガイで、一緒に仕事をしていて楽しい人でした。自分が過去2回の宇宙飛行で学んだことを、今度は後輩に伝えていける。そういう意味で、とてもやりがいのある仕事だったと思います。
秀島:3回、宇宙へ行った野口さんだからこそ、後輩の姿を見て「あのころの自分もこうだったな」と思ったりすることも、たくさんあったのではないでしょうか。
野口:そうですね。自分がどこでつまずいたのか、最初のころは何がわかっていなかったのか、ということは覚えていますからね。そういう意味では、自分が失敗したときのことも思い返しながら、後輩に伝えるようにしていました。
秀島:次の世代を支える立場として、基本的なことから、ご自身がうまくいかなかった経験まで、きちんと伝えていくわけですね。
野口聡一の最新情報はX公式アカウント(@Astro_Soichi)まで。
『J-WAVE SELECTION Panasonic ENERGY SILENT HEROES』では、さまざまな分野で活躍する人をゲストに迎え、仕事や活動、作品を通じて誰かに支えられた経験や、人生に対する思い、未来への展望などを聞く。番組後半では、現代の暮らしを支えるテクノロジーを生み出した人物のストーリーをリーディング形式で届ける。今後のオンエアは、11月22日、12月27日、日曜の22時から。
