冨田勲に教わったこと…シンセサイザープログラマー・松武秀樹が明かす

J-WAVEで放送中の番組『TRUME TIME AND TIDE』(ナビゲーター:市川紗椰)。3月9日(土)のオンエアでは、シンセサイザープログラマー、プロデューサーの松武秀樹さんがゲストに登場。シンセサイザーに興味を持ったきっかけや、今後の目標を伺いました。


■アナログシンセサイザーの仕組み

松武さんは、電子音楽家・冨田勲のアシスタントを経て、「モーグ・シンセサイザー」のプログラマーとして、ロック、ポップス、CM音楽などのレコーディングに参加。「YMO第4のメンバー」として数々のレコーディングやワールド・ツアーにも帯同したことで知られています。

現在のシンセサイザーは音がメモリ化されていますが、アナログシンセサイザーはボタンや記憶装置が一切ありません。どのような仕組みなのでしょうか。

松武:アナログシンセサイザーは三つの要素があるんです。一つ目は「発信機」で、二つ目は「フィルター」。音色を加工する装置で、音がブライトになったりダークになったりします。三つ目は、鍵盤を押したら音が鳴って、離すと消える、という「アンプ」の装置ですね。この3つの組み合わせで音を作っています。原理は簡単なんですが、なかなか気に入った音を作ることができない。既存の楽器の音に近づけるために、シンセサイザープログラマーが要求に応じて音を作っています。

現在のデジタルシンセサイザーは、ほとんどに記憶装置が入っているので、気に入った音を作っておくことができたり、用意されている音を加工することができるそうです。現在のシンセサイザーはレトルト食品に似ている、と松武さん。

松武:例えば、レトルトカレーは温めるとカレーになります。それに辛めのパウダーを入れて自分なりの味にするところは、今のシンセサイザーに似ているかもしれません。
市川:アナログの頃は、スパイスから調合しないといけない?
松武:そうですね。材料から用意しておかないといけない。カレーライスを作るなら、じゃがいもやにんじんを自分で切るしかない。
市川:カレーの例え、わかりやすいです。


■冨田勲に教わったこと「音のデッサンできないとダメ」

松武さんは20歳くらいのころに、冨田勲さんのアシスタントになりました。松武さんの父が音楽業界にいて、冨田さんの事務所の社長に「電気と音楽を分かっている息子がいるんだけど、雇ってもらえないか」という話をしたそうです。松武さんがシンセサイザーを知るきっかけになったのは、大阪万博でした。

松武:高校生の頃に大阪万博が開催されていて、大阪に泊まり、レコード屋さんに行きました。バッハの曲を奇天烈な音で演奏しているアルバムがあり、「これは何ですか?」と訊いたら、「ウォルター・カルロスがシンセサイザーという楽器で演奏しているんだ」と教えてくれたんです。そのままレコードを買って、家で聴いていたんですけど、「どうやったらこの音が作れるんだろう」と思っていて。当時はネットもないので、シンセサイザーという形もわからず、楽器屋さんに行って写真を見せてもらいました。「こんな物で複雑な音が作れるんだ」というのが最初のきっかけですね。「将来はこういう楽器で仕事ができるといいな」と思っていました。

そして偶然、松武さんが入社した年に、冨田さんがシンセサイザーを買うことになりました。先生が寝ている夜中に自由に触ることを許されたそうですが、音の出し方などは教えてくれなかったと話します。

松武:先生はわざと教えてくれなかったんだと思います。つまり、「僕と同じ音を作ってもしょうがない」と。自分で自分の楽器を作る装置なので、「自分で楽器を作りなさい」という感じですよね。冨田先生が唯一教えてくれたことは、「デッサンできないとダメだよ」ということ。
市川:デッサンですか?
松武:絵の設計図ですね。「音を行き当たりばったりで作るんじゃなくて、音のデッサンを考えてから、音を作りなさい」と言われました。
市川:日頃からどんな音を聴いても分析する癖がついているんですか?
松武:当時は外に出て、車の音や雑踏の音など聴きまくったというか、歩き回りました。


■仕事をしたいアーティストはレディ・ガガ

松武さんが今後やりたいことや目標について伺うと、「自分の脳波やDNAを音にしたい」と答えてくれました。

松武:ボケ老人にならないためには、自分のDNAの音を作ってずっと聴いていること。脳波でそういうことを研究している方がたくさんいるんです。何かの病気になったけど、自分のDNAと脳波の音を混ぜ合わせることで、病気の進行が遅くなるとか。そういうことにシンセサイザーを使えたらと思いますね。健康でいたいと、みんな考えていると思うので、少しでもシンセサイザーが役に立てばいいなと。
市川:一緒に仕事をしてみたいアーティストはいますか?
松武:レディ・ガガとやってみたいです。一曲でいいから、プログラマーとして呼んでくれないかな。

最後に、「YMOの次の世代が出てきてくれないかなと思っています。海外でシンセサイザーがメインのバンドはそんなにいないですから、日本じゃないとできないと思います」と未来への期待も明かしました。

【番組情報】
番組名:『TRUME TIME AND TIDE』
放送日時:毎週土曜 21時−21時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/timeandtide/

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「これを言ったら嫌われるかも…」そんな悩みを抱える人に、ジェーン・スーが斬新なアドバイス!

J-WAVEで放送中の番組『JUMP OVER』(ナビゲーター:松居大悟)。3月17日(日)のオンエアではジェーン・スーさんをお迎えして、舞台『みみばしる』の話や、リスナーの悩みに答えました。


■『みみばしる』をTBSラジオで広めてくれたワケ

松居は、スーさんがパーソナリティを務めていたコミュニティFM「ソラトニワ」のラジオ番組に、映画のPRを兼ねて数回出演したことがあります。その後も食事に行ったり、共通の友達もいるなどご縁があります。早速、『みみばしる』の感想を訊きました。

スー:ラジオの話だから観に行こうと思ってたら、相談にのる人の話でしょ。「突きつけるわー!」って思って。相談にのることで、いろいろな人に真実を突きつけていって、パーソナリティとしてどうなのかということを問う舞台に、月曜から金曜まで(ラジオで)相談にのってる私を、普通は誘わないよ! と思って。
松居:(笑)。
スー:でも、ラジオリスナーもそうだし、ラジオ番組をつくる側の人にとっても、ぐっとくるものはありましたよね。いろいろな局の人も来たのよね。混ぜてくれてありがとう。コミュニティFMのゲストに呼んでおいてよかった(笑)。
松居:いや本当にあそこからですよ。それからスーさんが帯番組をやるようになって。
スー:びっくりだよね。深刻な人材不足(笑)。

スーさんは、TBSラジオのご自身の番組で、舞台『みみばしる』についてたくさん触れてくれました。

スー:まずはリスナーに観てほしかったんだよね。ステージの上にリスナーの人たちが、それぞれ自分が聴いている場所という設定で上がってくるじゃないですか。その時点でぐっときて戻しそうになって。
松居:(笑)。
ジェーン・スー:舞台の一番すごいところって、映画とかライブとかと違って、限られたスペースでどうやって多次元のものを表すかっていうところがあるじゃない。観てるほうの想像力も試されるし、つくり手の発想力も試されるけど、オーディションで選ばれたガチなリスナーもいることにぐっときちゃって。そうやって、みんなが聴いてくれてるんだと思って。
松居:そうですね。

スーさんが放送で感想を言っているのを聞いて、劇場に足を運んだリスナーもいました。

スー:ラジオはずっと(存続が)「危ない」って言われるようになってから長いの。だから全然大丈夫だと思って。
松居:まさに「ラジオは人を動かす!」って思いました。劇団の舞台をやる時、リスナーの人はきちんと観にきてくれるんです。
ジェーン・スー:新しいメディアがいっぱい出てきたけど、ラジオを聴いてる人は一定数いるわけです。そういう人たちが「聞いててよかった。リスナーであってよかった」と思う舞台だったので、それで番組で言ったんです。

実は、『みみばしる』で主演を務めた本仮屋ユイカさんは、スーさんの番組のファンです。そこで、スーさんが2回目に観に来た時に、松居が舞台裏に案内しました。本仮屋さんを驚かそうと、本人には秘密でした。

スー:本仮屋さんが私のことに気づいて、「うわーー!!!」って驚いてしゃがんじゃったの。それって、完全に逆じゃん。本仮屋さんに会って、私が興奮するんだったらわかるけど。時空が歪んでたよね(笑)。
松居:本仮屋さんのほうが主演女優なのに(笑)。


■相手に「嫌う隙」を与えない方法

後半は「愚痴は踊る」と題して、リスナーからの相談に答えました。ここでは紹介された相談の一部を紹介します。まずは、現実とSNSの関係で悩んでいるという人からの相談。

「私が通っていた中学・高校はSNSに写真を載せることにとても厳しく、生徒の顔が写っていることがバレると問題になりました。私の中では、他人の顔が映った写真は、載せる前に写ってる人に聞くのが当たり前で、自分の顔は載せない、という考え方で過ごしていました。しかし、先日、習い事で一緒だった他校の人のSNSを見たら、鍵がついていないアカウントに私の顔が写っている写真が載っていました。その人とは大して親しくもないのにと驚いたと同時に、SNSに自分や知人の写真を載せることに抵抗がないのが、本当は普通なんだと初めて学びました。春から大学生になるので、写真を撮る機会がこれから増えてくると思います。その時に『自分の顔はSNSの公開アカウントに載せないで』と言ったら、嫌われたり、面倒なやつと思われて、人と繋がるきっかけを失ってしまうのではないか、でもSNSに顔を載せるのは怖い、と悩んでいます」

この相談に対してスーさんは「きちんとした学校だね!」と感心。

スー:まずは、インターネットに対するリテラシーを教えてくれた学校に感謝だね。顔を載せるのが普通というわけではないですよ。18、9歳だと「自分以外の人が普通なのかな」って思っちゃうところもあるかもしれないけど、そんなことはない。“普通”っていう言葉ほど脆弱なものはないですよ。人によって普通は違うから。
松居:そうですね。
スー:この問題の解決方法は二つあります。一つは顔が隠れるポーズで逃げること。手のひらを広げて顔を隠すポーズとかね。もう一つは、18、19歳の子だったら、相手も100パーセント嫌われたくないですよ。だから、強めに言う。「あ、ちょっと、写真載せちゃう系?」みたいな。オドオドして言うと、相手にこっちを嫌う隙を与えちゃうから(笑)。
松居:あはは(笑)。
スー:こっちから嫌うくらいのテンションで。「嫌う」と「嫌われる」はせめぎ合いだから。
松居:なるほど! さすが。
スー:人のラジオはラク!(笑)


「全く興味のなかった会社に就職して十数年。人に注意したり、指示をするのが苦手なのに、そういうポジションになってしまいました。年上の方も多いので顔色を伺ったり、ミスをした人にも『何回、同じミスをするんだ』と思うけど『気をつけてください』と言うのが精一杯です」

松居:僕は演出家だけど、「どうしたらいいですか?」って聞かれたら、僕が逆に「どうしたらいいですかね?」って聞くんです。自分が「こうしてくれ」って言ったら、そうするしかなくなるのが嫌で、みんなが意思を持ち始めるのが好きなんです。みんなが“駒”になるのが嫌だから、「どうしたらいい?」って聞かれたら「俺も分からない」って言って、一番の雑魚キャラになります。
ジェーン・スー:正しいね! 助けてもらうことでみんなの自主性を出すんだね。それが出来るのは素晴らしいよ。
松居:嬉しいな。初めてスーさんに褒めてもらった!
ジェーン・スー:でも、全く興味のなかった会社に十数年勤められただけでも、表彰モノですよ。私は興味のある会社に入って8年で辞めちゃったからね。
松居:(笑)。
ジェーン・スー:でもやっぱり、さっきのSNSの相談もそうだけど、嫌われたくないんですね。
松居:僕みたいな感じでいいのかもしれないですよ。
ジェーン・スー:ウチの番組のスタッフは、私のいない飲み会でボロクソに言ってると思うよ。でも、それを含めてギャラだと思ってるから(笑)。
松居:(笑)。
ジェーン・スー:30歳をこえてたら、みんな同い年ですから。言いたいことは言った方がいいかもしれないですよ。

とアドバイスしました。そのほか「親の金遣いが荒く、なくなると妹に借りている。自分が迷惑をしているわけじゃないけどモヤモヤ……」という相談を取り上げました。スーさんはどう答えるのか、ぜひradikoで聴いてみてください。

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【番組情報】
番組名:『JUMP OVER』
放送日時:毎週日曜 23時−23時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jumpover/

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