「組織の壁を壊せるのは社長しかいない」昨年度“過去最高益”を達成した富士フイルムを支えるDXビジョンの3本柱とは?

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月4日(土)の放送は、富士フイルムホールディングス株式会社執行役員 チーフ・デジタル・オフィサー(CDO) ICT戦略部長(現、富士フイルム株式会社フェロー)の杉本征剛(すぎもと・せいごう)さんが登場。ICT戦略部の成り立ちや企業DXについて話を伺いました。


(左から)杉本征剛さん、笹川友里


杉本征剛さんは、1989年に九州大学大学院修士課程を修了後、富士写真フイルム株式会社(現・富士フイルム)へ入社し、30年以上にわたり、システム開発やAI/ICT分野の研究に従事。2016年にはインフォマティクス研究所(現・イメージング・インフォマティクスラボ)を立ち上げ、副所長に就任。2019年にはICT戦略推進室を設立し、同年11月に富士フイルムホールディングスおよび富士フイルムのCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)に就任。2020年に執行役員、2024年には富士フイルム株式会社の取締役に就任。富士フイルムホールディングスと富士フイルムのCDO、ならびにICT戦略部長を兼務。現在は富士フイルム株式会社フェローを務めています。

◆4つの事業セグメントと業績

富士フイルムグループでは、「ヘルスケア」「エレクトロニクス」「ビジネスイノベーション」「イメージング」の4つの事業セグメントでビジネスを展開しています。

ヘルスケアでは医療機器やバイオCDMO(医薬品の開発・製造受託)を手掛け、エレクトロニクスでは半導体材料やディスプレイ・タッチパネル向けなどの電子材料を開発・販売しています。ビジネスイノベーションでは、複合機・プリンターやITサービスなどを通じて各企業のDXを支援し、イメージングではチェキ(正式名称:instax)やデジタルカメラを展開しています。

こうした幅広い事業を通して、2025年度の連結売上高は約3兆3,500億円、営業利益は約3,500億円と、ともに過去最高を達成。グローバルで7万人を超える従業員が事業を支えています。

売上を牽引しているのは、ヘルスケアとビジネスイノベーションで、いずれの売上高も1兆円を超えています。一方で、「収益の面では、半導体材料を中心とするエレクトロニクスに加えて、チェキやデジタルカメラの売れ行きが好調なイメージングが、成長を支えています」と杉本さんは説明します。さらに現在は、バイオCDMO事業と半導体材料事業を「新規/次世代」「成長」事業分野と位置付け、「市場成長が見込めますし、高いシェアを獲得できる市場と見て、積極的に設備投資をおこなっているところです」と話します。

◆DXを支えるICT戦略部の役割

続いて、富士フイルムとデジタル技術の歴史について杉本さんに語っていただきました。富士フイルムは、1956年に真空管を使用した日本で最初の電子式コンピューターを開発し、レンズ設計のシミュレーション計算に活用しました。そのほかにも、医用画像情報システムやフルデジタルカメラを開発するなど、DXが認知される前からデジタル化に向き合ってきました。

しかし、2010年代にクラウドサービスやビッグデータの普及が急速に進み、AIの実用化も本格化したことで、杉本さんは「“いずれ個別最適化の限界が来るのではないか”という問題意識を持ちました」と振り返ります。各事業部が高い技術力を持っていても、それらが孤立したままでは、変化の激しい時代を勝ち抜く力を十分に発揮できません。そこで、技術やデータを横断的につなぎ、経営の方針を現場へ落とし込む役割を担う組織として、ICT戦略部を立ち上げました。

現在のICT戦略部は、DX推進に加え、ITインフラの整備や情報セキュリティも担当しています。杉本さんは、デジタル戦略を担うCDO、ITインフラやシステムを統括するCIO(チーフ・インフォメーション・オフィサー)、情報セキュリティを担うCISO(チーフ・インフォメーション・セキュリティ・オフィサー)の役割を1つの組織に集約していることが特徴だと語り、「それぞれに担当役員がつく企業さんも多いなか、この3つの役割を統合しているため、役割や責任は大きくて大変ですが、AIそのものだったり、AIに必須になるデータだったり、AIによる攻撃を想定したセキュリティ、この3つを三位一体として全体像を俯瞰して戦略実行できる。そこに最大の魅力を感じています」と強調します。

◆3本柱で進める富士フイルムのDX

富士フイルムは、2021年にDXを全社で推進するための「DXビジョン」を策定しました。その基盤は、土台となる「インフラ」に加えて、「製品・サービスDX」「業務DX」「人材DX」の3本柱で構成されています。

製品・サービスDXでは、AIなどを活用して製品やサービスの付加価値を高め、新たなビジネスや収益モデルの創出を目指しています。業務DXでは、生成AIなどを活用して従業員の働き方の抜本的な変革を実現し、より創造的な業務へシフトできる環境づくりを推進しています。そして、人材DXでは、多様なDX人材の育成・獲得に加え、データを活用した人材配置の最適化などをおこなっています。

また、同社のDX推進体制の特徴は、CEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)を議長とする「DX戦略会議」を設置している点です。杉本さんは、DXやAI導入が進まない最大の要因は、技術ではなく“組織の壁”であると指摘します。「それはなぜかと言いますと、DXやAI導入が、現場にとって一時的な痛みを伴う業務プロセスの変革であるということと、部門ごとの部分最適から、全体最適への組織横断による変化を起こさなければならないからです。その組織の壁を壊せるのは社長しかいないと思います」と強調します。

この体制を構築することによって、迅速な意思決定や全社的なガバナンス強化が可能となり、事業部門やコーポレート部門が連携しながら、効果的にDXを推進できるようになりました。

一方、多様な事業を抱える同社では、すべての事業を同じスピードでDX推進するのではなく、それぞれの特性に応じた進め方を採用しています。杉本さんは、「DXと事業成長の親和性が高くて、比較的すぐ成果が出やすい事業と、成果が出るまでに少し時間がかかる事業があります。この深度に時間差をつけること、その割り切りは非常に重要だと思っています」と説明します。

そのため、複数の事業で共通して活用できる技術やノウハウを蓄積し、それを土台として各事業に必要な機能を積み上げています。杉本さんは「例えば、2階建ての1階を共通部分、2階を個別対応が必要な部分と分けて開発しています」と言い、共通基盤を活用することで、DXの進捗に差がある事業でも効率的に取り組みを進められる仕組みを整えています。

また、各事業の進捗状況を管理するための「DXロードマップ」を作成し、それぞれの事業が現在どの段階まで目標を達成できているかを可視化するようにしました。次のステージへ進むために必要な取り組みを明確にすることで、グループ全体のDXを着実に前進させています。

次回7月11日(土)の放送も、引き続き杉本さんをゲストに迎えてお届けします。社内AIツール「AIHub」に関する話題など、貴重な話が聴けるかも!?

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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/
DIGITAL VORN Future Pix
放送局:TOKYO FM
放送日時:2026年7月4日 土曜日 20時00分~20時30分

※該当回の聴取期間は終了しました。

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もし「裁判員」に選ばれたら?やりたくなかった人は約40%…それでも約97%が「よい経験だった」と答えた理由とは?

杉浦太陽と松井玲奈がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・松井玲奈 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

8月16日(日)の放送テーマは、「実際はどうだった? 裁判員経験者の声」。最高裁判所 事務総局 刑事局の君塚知弥子(きみづか・ちやこ)さんから、裁判員制度について伺ったり、実際に裁判員を経験した人からの声を紹介しました。


(左から)松井玲奈、君塚知弥子さん、杉浦太陽



◆約97%が「よい経験だった」と回答

2009年から始まった裁判員制度は、国民のなかから選ばれた6人の裁判員が、3人の裁判官とともに刑事裁判に参加する制度です。裁判員は、原則として18歳以上の有権者のなかから無作為に選ばれます。最終的に裁判員に選ばれるまでには3回のくじがあり、全国で1年間に選ばれる確率は、全有権者のうち約1万6,600人に1人(約0.006%)です。なお、これまでに裁判員などを経験した人は約13万6,000人にのぼります。

この制度の目的について、裁判官として裁判員裁判の経験もある君塚さんは、「法律の専門家だけではなく、国民の皆さんの視点や感覚も裁判に生かすためです。また、裁判員の経験を通じて裁判への理解を深め、司法全体への信頼の向上につながることも期待されて始まったんです」と説明します。

裁判員は、3人の裁判官と一緒に公開の法廷でおこなわれる「審理」に出席し、検察官や弁護人が提出した証拠書類や凶器などの証拠物を調べたり、証人や被告人の話を聞いたりします。審理が終わると、非公開でおこなわれる「評議」に進みます。ここでは、裁判官と話し合いを重ねながら、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にするかを決めます。

ただ、すべての事件が裁判員裁判の対象になるわけではありません。例えば、殺人事件や強盗の際に人を死なせたり、けがをさせてしまった事件、人の住む家に放火した事件など、国民の関心の高い「重大な犯罪に関する刑事訴訟事件」を扱います。

そのため、裁判員にかかる責任は決して軽くありません。2025年に裁判員を経験された方におこなったアンケート結果によると、裁判員に選ばれる前の気持ちとして、約40%の方が「あまりやりたくなかった」または「やりたくなかった」と回答しています。しかし、実際に裁判員を経験した後は約97%の方が「非常によい経験だった」または「よい経験だった」と回答しています。

◆裁判員経験者の声を紹介!

裁判所では、実際に裁判員を経験した人を対象にアンケートをおこなったり、意見交換会を開いたりしています。そこでは、裁判員を経験したからこそ出てくる率直な意見も寄せられており、その声は裁判所のWebサイトでも公開されています。そこで、ここからは裁判員に関する素朴な疑問を裁判員経験者の声も交えて紹介していきます。

まず、松井は「心配になってしまうのは、『自分に裁判員が務まるのだろうか?』ということですよね」と素直に語ります。確かに、法律の知識がなければ、裁判の内容を理解するのは難しいようにも思えます。そんな疑問に対し、裁判員経験者は次のように話しています。

「私は法律の専門用語はまったく知りませんでしたが、検察官や弁護士さんからいただく資料は注釈もあって分かりやすかったですし、分からなかったことを評議の中で裁判官に聞くと全部教えてくださるので、全然問題はありませんでした」

これに、君塚さんも「審理や評議の場で分からないことや疑問があれば、質問していただいて大丈夫です。また、証人や被告人が法廷で話す内容をよく聞いて、疑問があれば裁判員の皆さんも裁判長に申し出たうえで、直接質問することができます」と補足します。

一方、裁判員になることで「トラブルに巻き込まれないだろうか」といった不安を感じる人もいるかもしれませんが、それに対しても対策が取られています。

<裁判員経験者の声>
「被告人に質問するときなども“恨まれるのではないか”という不安が最初ありましたが、服装は自由で、マスクや眼鏡を付けてもOK。呼ばれるときも『一番』『二番』という形で呼ばれて名前が出ないので、あまり心配する必要はなかったです」

裁判員の名前や住所など、個人を特定できる情報は公表されません。また、裁判所内で過ごす場所や移動するルートも、ほかの来庁者とは基本的に分けられていますが、来庁者が出入りしているエリアを移動する際には、必要に応じて職員が付き添います。

また、裁判員同士で話し合う評議について、「みんなと違う意見だったら、発言するのに勇気がいりそう」と感じる人もいるかもしれません。実際、君塚さんがこれまで担当した裁判員裁判でも、裁判員の意見が分かれる場面はあったそうで、「むしろ、最初からみんなが同じ意見ということはあまりありませんでした。私自身も、違った見方をしている裁判員の意見を聞いて、視点を変えて見てみたら事件の違う背景に気付かされて、自分の意見も変わっていくことがたくさんありました」と話します。

◆チームで導く判決

とはいえ、人の人生を左右する判断に関わる以上、責任の重さを感じるのも自然なことです。ここで、裁判員経験者からのこんな声を紹介します。

<裁判員経験者の声>
「人の人生に関わることを、自分一人ではなく、性別や年齢の異なる方々と話し合って、チームとして決めるという得がたい経験ができた」

判決は、裁判員が1人で決めるものではありません。裁判官はもちろん、ほかの裁判員と十分に話し合いながら、チームとして結論を導いていきます。君塚さんは、裁判員裁判の裁判官を務める際、相手の意見がいいと思えば乗り、自分の意見から自由に降りていい「乗り降り自由」という考え方を大切にしていると言います。そして、「世代や背景が違うメンバーで議論するからこそ、結論への道筋に厚みや深みができています」と話します。

一方、仕事をしている人にとって気になるのが、裁判員に選ばれた場合の“休み”についてです。従業員が裁判員に選ばれた場合、会社は法律上、その職務に必要な時間の休みを与えなければならないとされています。実際に裁判員を経験した方からは、こんな声もありました。

<裁判員経験者の声>
「職場ではいろいろな人がフォローしてくれた。貴重な機会であり、今回学んだことは仕事に生かせると考えている」

裁判員に選ばれたことで、普段の仕事についても気付きを得られた人が多いことから、約97%の方が「裁判員をやって良かった」と感じているのかもしれません。

最後に、君塚さんは「裁判員制度は、一定の職業や立場の方だけではなく、国民の皆さんに広く参加していただく制度です。そのため、裁判員裁判は『見て、聞いて、わかる裁判』を目指し、法律の知識がなくても安心して参加できるよう工夫されています。もし裁判員に選ばれたら、前向きにその一歩を踏み出していただければと思います」と話していました。

番組のエンディングでは、杉浦と松井が今回学んだ「裁判員制度」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。まず松井は“評議では「乗り降り自由」”とスケッチブックに書きました。続いて、杉浦は“裁判員制度は「見て、聞いて、わかる裁判」”と注目ポイントを挙げ、「裁判員経験者の声をもっと知りたい方は、最高裁判所のWebサイトをご覧ください」とコメントしました。


(左から)松井玲奈、杉浦太陽



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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・松井玲奈 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、松井玲奈
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm



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