世界7,000言語の約半数が消滅危機…22歳の「言語ハンター」が言葉を守るために見つめた世界

(左から)パーソナリティの小山薫堂、巴山未麗さん、宇賀なつみ
◆50カ国以上を巡った22歳・現役大学生の原点
スタジオに現れた巴山さんを見て、まずその若さに小山と宇賀は驚きを隠せません。小山が「お若い! だって50カ国以上を回ったと聞いていたので。今おいくつですか?」と尋ねると、巴山さんは「今、22歳」「現役大学生」と爽やかに答えます。
巴山未麗さんは、2003年東京生まれ。現在、慶應義塾大学に在籍中です。小学生の頃にフランス語に魅了され、高校時代には実際にフランスへ留学しました。そこで出会ったセネガル人たちとの交流から、西アフリカなどで話される「ウォロフ語」の響きに引き込まれていきます。
セネガルでは公用語こそフランス語ですが、日常会話の多くはウォロフ語が使われており、学校の授業についていけない子どもたちがいるという現地の課題を知った巴山さん。なんと18歳のとき、ウォロフ語からフランス語を学ぶ学習アプリ「ルックスタディ」を開発します。小山が「18歳でアプリなんか開発できるものなんですか?」と驚くと、「私は全然エンジニアとかじゃなかったんですけど、現地のセネガル人の優秀なエンジニアをたまたま見つけて、その人とタッグを組んで始めました」と、持ち前の行動力で形にしたエピソードを明かします。
その後、優勝賞品が世界一周航空券という「世界一周コンテストDREAM」に応募。「そのときに、少数言語とかなくなりそうな言葉を守りたいから、世界一周したいってめちゃくちゃなことを言っちゃって」とアピールしたところ、見事チャンスを掴み取ります。しかし現地での滞在費は出ないため、自らホームステイ先を開拓。なんと50カ国以上を巡りながら、一度も宿泊費を払うことなくすべて無料で民家に泊めてもらい、現地の言葉を集めていったといいます。これには宇賀も「すごーい! 羨ましい!」と感嘆の声を上げました。
巴山さんが特に心を動かされたセネガルのウォロフ語は、文字をほとんど使わずに生活する人々によって育まれた言葉です。「文字よりも音で感じるみたいな文化があって、その言語を初めて知ったとき、これまで自分が思っていた言語のイメージがガラッと変わって、すごくワクワクしたのを覚えています」と振り返ります。
◆世界の言語の9割は文字を持たない
現在、世界には約7,000ぐらいの言語が存在すると言われていますが、そのうち9割は文字を持たない言語なのだそう。日本国内でも、アイヌ語や沖縄語、宮古語、八丈語、八重山語など独自の言語として登録されている言葉があります。
さらに話題は、日本語特有の感覚や、他言語に宿る奥深い感情表現へ。巴山さんは自身の経験から「友達とかと話すときのタメ口系の言葉が訳しづらいなって感じることが多い」といいます。海外の友人と恋バナをしていた際、「ソース顔が好き」というニュアンスをうまく説明できず、「ソース顔とか醤油顔、塩顔とか、犬顔、猫顔とかって、日本語以外でうまく言えないなと思って」と笑います。
一方で、日本語の気持ちに寄り添う海外の言葉もあります。例えば、昔のことを思い出して胸がキュッとなる感覚を表すルーマニア語の「ドール」を紹介。巴山さんはこうした言葉の魅力を伝えるべく、一般社団法人kotohaを通じて「この気持ちに名前があったら展~恋の語彙力、アップデートしよ?~」などの展示会も展開しています。
また、チリ・アルゼンチンの先住民族ヤーガン族のヤーガン語「マミラピナタパイ(お互いに同じことを思っているけれど、それが言い出せない2人の関係)」という言葉も紹介。数年前に最後の話者が亡くなり消滅してしまった言語ですが、K-POPグループのILLITがこの言葉をテーマにした楽曲を歌うなど、エンターテインメントを通して新しい形で残り続けていることの喜びを語りました。

「この気持ちに名前があったら展~恋の語彙力、アップデートしよ?~」Tシャツ
◆世界7,000言語の約半数が消滅危機
番組の後半では、消滅危機に瀕する言語や、急速に進化するAI翻訳との向き合い方にも話が及びます。約7,000ある言語のうち、およそ半数が消滅の危機にある現状のなか、「世界中の人と瞬時に通訳されて話せる世界は来るのか?」という問いに対し、巴山さんは自身の考えを明かします。
「すべての言語が完璧に自動翻訳される時代は来ないと思っています。そもそも、言語を完全に翻訳すること自体が難しいためです。例えば『お疲れ様』を他の言語に置き換えることはできても、日本社会における文脈やニュアンス、人間関係の機微まで瞬時に反映できるような翻訳技術は実現しないと思っています。だからこそ、翻訳によって言葉の壁がなくなるというよりは、むしろ違いが見え始め、互いの壁を意識するきっかけになるのではないかと考えています」と巴山さん。
この深い洞察に感銘を受けた小山は、ある斬新な企画を提案します。それは、「新語・流行語大賞」の発表に合わせて一般社団法人kotohaが1年のニュースを総括し、「今年、地球上の誰もが共通して使いたい言葉」を一つ提案するというもの。たとえば、カナダ先住民族のイヌクティトゥット語にある「アイルナマット(変えられないことを気にしない)」のような言葉を取り上げ、その背景にある文化ごと世界中で分かち合っていく。そんなアイデアに、巴山さんも「めちゃくちゃいいですね! 実践してみようと思います」と目を輝かせました。
最後に、今後の夢について巴山さんは次のように語ってくれました。「いま消えつつある言葉の消滅を完全に食い止めるのは、決して簡単なことではありません。それでも、言葉が広がっていく道は様々にあるはずです。AIが急速に進化する今だからこそ、近い将来、少数言語や『簡単には翻訳できない言葉』が若者の間でカルチャーとして流行って、日常に溢れていく。そんな未来が訪れたら嬉しいですね」。言葉の背景にある人々の温もりや世界の多様性を、まっすぐな視線で見つめ続ける巴山さん。その情熱と探求の旅は、これからも多くの人々に新たな気づきとワクワクを届けてくれそうです。
<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY'S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/post/
番組公式X:@sundayspost1
