物価高と教育環境悪化……フランスの抗議デモと暴動を、ロバキャンが読み解く

フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。10月22日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、現在世界を揺るがしているフランスのデモや暴動などについて、詳しく解説した。
ロバート キャンベル「週末から日本の新聞やテレビをにぎわせているパリを中心とするデモ行進と、暴動ということについて少し今日考えたいと思っています。
皆さんいろんなSNSや映像など、たくさん見ていると思うんですけれども、フランス全土で抗議活動が盛んに行われています。
パリに焦点を絞ってみると、中心部を行進する人たちは、給与所得の改善ですとか、マクロン大統領の退陣を求めるプラカードを掲げて歩いているわけですね。
プラカードを読むことで、大体どういう要求をしているかということは分かるわけですが、フランスでは2月からアメリカとイスラエルがイランを攻撃、つまりイラン情勢を受けて、ガソリン価格が今年に入って36%も上昇していることです。
また、材料費ですとか輸送費が嵩んで物価高につながったり、これはアメリカでも日本でも言えることですけれども、市民生活を圧迫しているわけですね」
武田砂鉄「はい」
キャンベル「しかし財政破綻を抱えるフランス政府は、歳出削減を迫られていて、有効な対策を示せていないまま、1年近く過ごしているわけです。
これが社会全体を覆う基礎的な問題ということですけれども、若者たちについて言いますと、教育環境が非常に劣悪になり、その改善に関して高校生の抗議デモが今月10月に入ってから顕在化していまして、政府はそれに対して教員の増員などを表明しています。また、医療費や年金を削減することも検討しているという中で、若い人もそうではない人たちも、等しく強く反発をしているわけですね。
『これは大変なことだ』ということを、本当に動画などを見ていて感じるわけですけれども、フランスでは例えば2018年から2年間、物価高などに抗議する反政府活動、いわゆる『黄色いベスト運動』が思い出されると思います。
これは低賃金で働いている労働者たちが中心に、政党政治からちょっと離れたところから始まったわけですけれども、実は今回のデモも黄色いベスト運動の人たちや、それに関わった人たちがそもそも学生と一緒になって組織し、それからネット上で参加を呼びかけていたということが分かるわけですね」
武田「うん」
キャンベル「それと重なって先ほど10月と言いましたけれども、正確には9月の下旬ぐらいからですね、高校生たちのデモというものがフランス全土に拡大していて、複合的な動きや背景があって、そこがこの1週間合わさってマグマが噴き上がってきたということがあるわけです。
で、一つ原因として注目したいと思っているのがちょうど10年間の任期を来年の4月に終えることになっているマクロン大統領です。来年5月に大統領選挙があるわけですけれども、2017年に最初の選挙に立った時に、『自分は左派でも右派でもない』と訴えて、極右といわれるルペン氏を破ったわけですね。
長く分断されていた国を一つにまとめて、『有権者が二度と過激主義に投票する理由を持たせない』と約束したんです」
武田「はい」
キャンベル「経済政策では自由市場を徹底して推進する方針を掲げていまして、企業がフランスに投資しやすくするという目標で、低コストで事業を展開できるような環境を整え、そしてそこから雇用が生まれれば経済成長につながるということで、これはアメリカでも特に共和党が抱えるポリシーに近いわけですけれども、しかし実際にはマクロン氏は、この9年間で法人税や給与関連税を引き下げ、富裕税も廃止しているわけですね。
しかしこういう政策が経済成長を本当に押し上げることに寄与したかというとそうではなくて、むしろフランスの債務が膨らみ続ける原因につながっているようなことがあるわけですね。これはある意味アメリカが抱えている問題と共通するわけですけれども、一つには今申し上げましたようにフランスでは、街頭での抗議活動というものは政治の日常風景となっています。
生活費の高騰ですとか学校環境の悪化に抗議して、今月に入って特にこの週末の間に数え方に違いはありますけれども、50万人から80万人の人たちが平和に街に出て、様々な表現で政治に対する抗議をし、学生たちがとにかく自分の学校が、建物の老朽化で本当に危険であるとか、先生たちが不足していて物理学の授業が半年間も休講しているような状況を訴えて、一緒になったということがあるわけですね」
武田「トイレが使えないままになっているとかね。そういうレベルでの教育環境の厳しさなわけですもんね」
キャンベル「日本でもそれは地域によって教育資源がどれくらい投資されているかということが、財政的に税金がどれくらい取れているかということに左右されることがありますが、フランスやアメリカもそうですけれども、それだけではないんですよね。本当にその地域の財政状況と教育への投資は直結しますから、負のスパイラル……世代を超えて教育機会や経験格差というものを生み出しているということが、これは全国民が不公平ということに対するプロテストになっているというわけです」
このあとも、ロバート キャンベルさんによるフランスの現状レポートは続きました。
