世界初の移植手術で、目が見えるようになる!?

きょうは、世界から注目される、再生医療に関する最先端の研究について、9月24日TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」(月~金、6:30~8:30)の「現場にアタック」で、レポーター田中ひとみが取材報告しました。

9月23日は「網膜の日」。秋分の日を境に夜が長くなり、網膜の病気の人は目が見えにくく出歩ける時間が短くなります。そこで、秋分の日に近いこの日が「網膜について考える日」として制定されたそうです。

その網膜がダメになって目が見えなくなっていく病気「網膜色素変性症」について、この秋、世界で初めてという画期的な手術が、神戸アイセンター病院で行われることがわかりました。どんなものか、神戸アイセンター病院・研究所の高橋政代さんに伺いました。

★この秋にも、iPS視細胞の移植手術へ

神戸アイセンター病院・研究所 高橋政代さん
「iPS細胞から網膜を作る技術は2011年頃に開発された。お皿の中で作った網膜を短冊状に切って、それを移植するという治療を、初めて行う。網膜の病気は様々あるが、「変性疾患」と呼ばれる、光を受け取る最初の細胞である「視細胞」が悪くなって減っていってしまうという病気は、治療法が全くない状況。ただ、新たに作った視細胞を網膜の裏側に移植して、新たな視細胞が光を受け取って脳まで伝えて物を見えるようにする。今まで全く治療法のなかった網膜の病気の、初めての治療法。」

▼眼球の断面図


既に、厚生労働省の専門部会が実施を了承していて、もうすぐ、世界初の「視細胞」の移植手術が「臨床研究」として行われます。

▼壁紙のようにペタッと貼りついた薄い膜(赤色で示したもの)が、「網膜」です


▼網膜の中にある一部の細胞が「視細胞」です

どこに何を入れ込むかという手術の説明の前に、まず簡単に目の構造から説明すると…、眼球の裏側(脳みそ側)に、壁紙のようにペタッと貼りついた薄い膜があるのですが、これが網膜です。この網膜には数種類の異なる細胞が詰まっていて、そのうちの一つが今回の「視細胞」です。

この「視細胞」は、光の刺激を電気信号に変える働きを担当しているんですが、網膜色素変性症の人は「視細胞」が段々機能しなくなり、暗い所で目が見えにくくなり、やがて目が見えない状態になる。普通、転んで怪我をして血が出ても皮膚が治るように、一般的な細胞は傷ついても再生しますが、この視細胞は再生できず、治療法はないとされてきました。つまり、失明してしまうと治りません。

ところが、今回、健康な「視細胞」をiPS細胞から作り、移植することで、また機能が正常に働く=見えるようにする、というのが、高橋さんの研究内容になります。

★網膜を育てて視力を回復

では、うまくいくとどれくらいで見えるようになるのか、高橋さんに聞いてみました。

神戸アイセンター病院・研究所 高橋政代さん
「網膜の再生と言うと、パッと見えるようなイメージをされるが、今回移植する細胞はとても未熟な、まだ胎児の網膜状態なので、移植後に視細胞として働くところまで育てる必要がある。その期間が多分、半年位かかる。移植してから半年から1年で徐々にその部分が光を感じたり、形が見えたりと、そういうことを想定している。」

手術後にパッと見えるわけではないけれど、1年くらいかけて細胞を育てて、視力を回復していくということで、今回の臨床試験はその第一歩。移植の安全性を確認するのが目的、ということでした。

まずは2人の患者で試験して、拒絶されずに定着するか、がん化しないかなどを時間をかけて確認していき、これが成功したら、企業が行う治験で人数を広げて、機能の効果を実証していく流れになるそうです。

研究として確立したので、今は、医療として確立させていく段階に入ったという形です。

★「息子の顔が見たい」という願いをiPSに託す

世界中の患者さんから問い合わせが来たり、大きな賞も受賞するなど、注目される手術ですが、ではこの動き、病気を持つ当事者はどう感じているのか。11歳の時に網膜色素変性症と診断されて、現在は、失明されたという、兵庫県在住の前川裕美さんにお話を聞くことができました。

前川裕美さん(兵庫県)
「やっと、待ちわびていた時が来たという気持ち。この病気だと診断されてから30年は経っているのですごく長かった。治療法がないと言われた時の絶望感は、何歳でもすごいショックだと思うんです。生きている間に息子の顔を見たい。生まれた時から見たい。できるだけ写真撮って、動画撮って、と言うようにしていて、特別じゃない時でも、2歳の息子はその時だけだし、5歳の息子もその時だけ。もし見えるようになったら、写真や動画を見ながらニヤニヤしたい。」

前川さんは、ちょうど7年前、お子さんが生まれる少し前に、失明したそうです。今回の手術の対象には選ばれなかったそうですが、「治療法がない」から「治療法がある」に変わることが非常に大きなインパクトいうことで、この臨床研究手術に大きな期待をかけていました。

いつか見えるようになる日のために、今の息子さんの姿を撮りためているとおっしゃっていました。

田中ひとみの「現場にアタック」

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愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「変動続くドル円相場“円安から円高転換の理由”と“為替介入効果”」を解説

本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

5月8日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「変動続くドル円相場“円安から円高転換の理由”と“為替介入効果”」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保


◆ゴールデンウィークのドル円相場 為替介入はあった?

浜崎:今回、宗さまには「変動続くドル円相場“円安から円高転換の理由”と“為替介入効果”」について、お話しいただきます。

やしろ:このゴールデンウィークに為替市場が大きく動きました。ゴールデンウィーク前半の4月末には、一時1ドル160円超えの円安 までなりましたが、あの時の理由は何だったのでしょうか?

宗正:1ドル160円は、約34年ぶりの円安水準です。為替市場の仕組みは、公園のシーソーと同じ原理で、どちらかが上がれば、もう一方は下がります。ドル円相場の上げ下げはアメリカと日本のどちらかの国に理由がある時です。ゴールデンウィーク前半の1ドル160円超えの円安は、日本の方にその理由がありました。

ゴールデンウィーク直前の4月26日まで、日銀の金融政策決定会合が2日間に渡って開かれました。そこで日銀総裁の植田さんから 「今の円安が物価の上昇に大きな影響を与えている訳ではない」という発言がありました。
日銀は前月の3月にマイナス金利政策を解除して、17年振りに事実上の利上げをしたばかりです。それもあって「4月の利上げは無いだろう」とマーケット参加者の多くは思っていましたが、そこまで言うのであれば「当分の間は無いんじゃないか」と(いう印象を与えた)。ただでさえゴールデンウィークはマーケット参加者が少ないので、上下に振れやすいですから、そこで一気に1ドル160円を超えたということです。

やしろ:その後、一転して急に円高方向に動きが変わったので、為替介入があったんじゃないかという噂もありました。実際には、為替介入はあったのでしょうか。

宗正:政府日銀は介入の事実は今のところ明らかにしていません。そのため断言はできませんが、あのドル円相場の動きを見る限り、十中八九、介入はあっただろうなと思いますね。

ゴールデンウィーク前半、3連休の3日目。1ドル160円を付けた直後、わずか数時間で 154円台まで円高が進みました。財務大臣が日銀に指示を出して、今回であればドルを売って円を買う為替介入が無ければ、あのような動きにはならないと思いますね。

◆2回おこなわれた為替介入

やしろ:ゴールデンウィーク中に(ドル円相場の大きな動きは)2回ありました。後の方の動きも為替介入があったということでしょうか?

宗正:十中八九そうでしょうね。2回目の方の円安の動き、あの時はアメリカの方にその理由がありました。日本ではゴールデンウィーク真ん中の、4月30日から5月1日。このタイミングで、アメリカの中央銀行FRBはFOMC(連邦公開市場委員会)という、要は日銀の金融政策決定会合に当たる会合を開いて、アメリカ金利を高い水準のままの据え置くことを決めました。つまりアメリカの金利が高いということは、ドル高ですよね。

やしろ:ドル高ということは、円安がさらに進んでしまう方向ですね?

宗正:そうなんですよ。その決定を政府日銀が見てか聞いてか、「いやいや、これはまずいだろう」ということだと思います。FOMCが終わったわずか2時間後に市場介入らしき動きがありました。

やしろ:それでゴールデンウィーク中に為替市場が大きく2回動いたんですね。単に為替介入といっても、その形にはいくつかあるそうですが、具体的にどのような形があるのでしょうか。

宗正:大きく3つあります。1つは実際には介入をしないのに、口先だけでマーケットを牽制する口先介入。

やしろ:「介入をやるぞ、やるぞ」と言われて、皆がそれに合わせて警戒して動くと。

宗正:はい。よく報道なんかで政府や日銀関係者が、「これ以上の円安は断固たる措置を取る」と言っていますよね。「措置を取る」と言っておきながら、実際には取らない。あれが口先介入です。

2つ目が、事前の通告は勿論しないで、日本単独で介入する「単独介入」というのがあります。1つの国だけが介入をおこない、介入の前後でその事実も明らかにしないため、覆面介入とも呼ばれます。

そして3つ目が、これが一番効果的な介入で「協調介入」。複数の国がそれぞれのマーケットで同時に介入します。

やしろ:そういう介入の方法があるんですか?

宗正:記憶に残るのは、2011年の東日本大震災 の時です。当時は今とは逆の円高で、1ドル75円台と史上最高値をつけました。あの時、大地震で大きな被害を受けた日本に、経済的な2次被害をこれ以上背負わせることはできないと、G7のメンバー各国が為替介入で協調して歴史的な円高から救ってくれたんです。

協調介入の結果、円高だったのが一気に円安方向に動きました。ただ、その時の協調介入が10年半振りですから、余程のことがない限り複数の国で同時に介入する協調介入はしないことが分かります。

◆為替介入の効果はどれくらい続く?

やしろ:今回の為替介入では、一時期の円安から確かに円高に向かいましたが、効果はどれくらい続くものなのでしょうか。

宗正:今回、あったとすれば日本一国による単独介入、覆面介入だと思います。その場合の効果は限定的です。言ってみれば時間稼ぎにしか過ぎないでしょうね。
先ほどお話しした東日本大震災の時の為替介入は、円高から円安の方へという動きですよね。今は逆に円安から円高方向に持っていかなきゃいけない。円高を防ぐ介入の場合には、円を売ってドルを買うんです。円は日本の通貨ですから、いくらでも調達できるので、無制限の介入が可能です。

ところが今回のように円安を防ぐ介入は、ドルを売って円を買わなきゃいけない。先ずは手持ちのドルを売る必要があるので、無制限に介入できる訳ではありません。

やしろ:どれくらい事前に用意しているのでしょうか。

宗正:最近は円に換算して、約45兆円でした。つまり自ずとドル売りの上限が決まってきます。現在、ゴールデンウィーク前半の為替介入に5兆円使ったと言われています。後半の介入が3兆円で、すでに計8兆円も使っているんですよ。これを踏まえれば、ここから先の介入原資に大きな余裕はありません。
政府日銀は日々24時間、為替市場の動きを見ながら、断続的に為替介入を続ける可能性もあると私は思っていますが、介入原資が限られるので、投機筋がそこにつけ込む可能性がありますよね。

やしろ:時間が経てば、再び円安の流れに戻る可能性があるということですね。私たちの生活への影響は、どれくらいありますでしょうか。

宗正:すでに現在(放送日の5月8日) 、1ドル155円台の半ばを超えて後半に入りました。今日だけでも1円以上(円安が)進んでいる。為替市場は、結局のところ2つの国の金利差に収れんします。ドルと円、アメリカと日本に、どれくらい金利差があるのか、結局はここですね。

一時的な円高がゴールデンウィーク中にありましたが、中長期的には円安の流れを想定しておいたほうが良いと思います。短中期的には様々な経済指標の動きを受けながら行ったり来たりもしそうですが、アメリカが金利の引き下げに踏み切るまでの間、大きな流れは円安でしょうね。そうなると、この秋からのもう一段の物価高というのは避けられない。せっかく実現した賃上げ、そして定額減税くらいは、軽く物価上昇で吹き飛んでしまうでしょうね。

やしろ:そんな感じなんですか。恐ろしいですね。

宗正:特に問題は原油です。原油はほぼ輸入ですし、(私たちが生活で利用する)目に見えるもののほとんどが原油からできています。ただでさえ中東情勢が不安定で、原油価格が上がっているのに、円安でダブルパンチです。

◆円安がさらに進んだ場合の懸念事項は…

やしろ:以前、為替はなかなか予想がしづらいというお話をしていただきました。僕の周りでは、「1ドル180円くらいまで行ってしまうのでは?」ということを言う人がいるのですが、そういう可能性はありそうですか?

宗正:可能性は0(ゼロ)ではないですよね。日本は金利を上げると言いながら、まだ0%をちょっと超えた位です。アメリカは金利を下げるかもと言いながら、なかなか下げない。今は5%超なので、日米で5%以上も金利差がある状態です。

やしろ:そんなにあるんですね。円安の流れに戻った場合、宗さま的に気になるポイントはありますでしょうか。

宗正:昔から「輸出立国日本」というこの単語、よく聞きますよね。円安は日本のプラス要素だと言われていた時代もありました。ただ日本企業による海外の現地生産比率は高くなって、円安効果は昔ほどではありません。それでも輸出関連企業の多くは、輸入コストの上昇分をある程度は円安による輸出効果でカバーできます。

ところが日本国内の売り上げ割合が多くを占める中小企業にとって、原材料やエネルギーの輸入コストが高くなる一方で、相殺できるものがほぼ無い。しかもコストの上昇分を、すぐに簡単に価格に上乗せできないんですよね。

中小企業の数は、国内企業全体の99%で、従業員の数で言えば約7割ですから、そこへの影響が私はすごく気になります。要は収益構造が違いますから、そうそう簡単に変えられるものでもない。この辺りは政府になんとかしてもらいたい、それが政治だと思いますね。

やしろ:いつもだったら、色々なことがあったとしても、宗さま的には前向きなお話や力強い言葉をいただけますけれども、今回の円安に関しては懸念事項のほうが多そうですね。

宗正:これが金利のある時代に生じる一つの事象です。経済知識の有無によって損得が生まれる、人生も大きく変わる時代に入りました。

やしろ:ありがとうございます。宗正彰の愛と経済と宗さまと。AuDeeにて毎月10日20日30日に配信です。宗さま、今月もありがとうございました。

宗正:ありがとうございました。


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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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▶▶「2024年ゴールデンウィーク、円高方向に転換のその訳」の配信内容を「AuDee(オーディー)」でチェック!

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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/

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