いま地元産「漬物」が道の駅から消えている!

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)内のコーナー「CLOSE UP TODAY」(毎週木曜、17:35~)。6月13日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、地元産の漬物をめぐる問題について解説しました。

松田:今日のテーマは、山梨県の地元産漬物が県内の「道の駅」や、「農産物直売所」の店頭から6月1日から激減してしまった、というお話です。5月31日付の山梨新報1面で「地場産漬物の灯消すな」という見出しの記事を報じました。地場産とは地元産のことで、その解説です。

麻耶:えーっ? そうなってしまうと、観光客にも地元の方にも、影響が大きすぎますよね。「あそこの道の駅の、あの農家さんのあの漬物が欲しい」という人は結構、いると思われますが。まず、現状から伺えますか。

松田:なぜ、激減したかというと、3年前に施行された「改正食品衛生法」という法律が、3年間の経過措置を経て6月1日から、完全施行され、これにともない、野菜農家や零細の漬物生産者は「多額の設備投資」が必要になったのですが、それに耐えられない生産者は、涙を飲んで、漬物製造を辞めざるを得なくなったということなのです。

取材では県内11の道の駅・農産物直売所に撤退の状況を聞きました。たとえば、北杜市の道の駅3カ所に聞くと、「生産者10軒中、製造継続は5軒」が2カ所、15軒中2軒が1カ所。峡南地域の農産物直売所は、「継続」は10軒中1軒だけ。「継続」が7軒中2軒は山梨市の道の駅。2軒中2軒が撤退――つまり「全滅」が富士吉田市と甲州市の道の駅。6軒が全滅という道の駅もあった一方で、村の漬物製造設備を再活用して生き延びた「道の駅 こすげ」は15を超える全生産者が「継続」となりました。ただし、これは稀なケースです。ほとんどの道の駅などが悲鳴を上げています。

麻耶:ちょっとショックです。そうなった背景に法律改正があったということですが、もう少し詳しく教えていただけますか。

松田:食品衛生法の改正の理由は、2012年8月に札幌で起きた、「白菜の浅漬けによるO157の食中毒事件」だったのです。この時8人が死亡しました。山梨県漬物協同組合の長谷川正一郎理事長に、この事件の背景について解説をしていただきました。それによりますと、「本来、漬物は強い塩で押したり、乳酸発酵させたりで、食中毒菌がいても乳酸菌が勝つから基本的に安全だった。ところが、塩分の取り過ぎが、健康面から悪者になっていく中で、漬ける日数が短い『浅漬け』により、食中毒事件が起きてしまった」ということでした。

麻耶:食品衛生の点で必要な法律の改正だったのですね。では、生産者への影響ですが、さきほど「多額の設備投資」と言われました、実際にはどうだったのでしょうか。

松田:法改正のポイントは、食中毒を引き起こさない製造設備が必要ということで、漬物製造に「許可制」が初めて導入され、その許可要件して、製造設備に「施設基準」が創設されました。県の衛生薬務課によると、施設は家の台所と共用できなくなり、つまり、独立した水道・排水設備を備え、手指洗浄用と材料洗浄用の別々のシンクや、レバー式等の手指洗浄用蛇口などが必要となり、取材によると、これらの設備費用総額は300万円水準でした。単価200~300円の漬物の製造販売で、新たに300万円の投資を求められれば、「撤退やむなし」となるのも当然です。

麻耶:大変、厳しいですね。しかし、何とか漬物の製造を再開する手立てはないのでしょうか。

松田:まず、製造設備導入の直接の補助金は県にも市町村になく、農林水産省に活用できそうな古くからある補助制度がありました。複数の農家などによる「共同加工場」を整備するのに使えるものです。県農政部の示唆で農水省に確認すると、地域振興を目的とした「農山村漁村発イノベーション事業」の中に「定住促進・交流対策型」という補助事業がありました。

定住人口や交流人口を増やす「活性化計画」を、県または市町村が策定し、これを農水省が審査し、認定されると、事業費の2分の1が補助されます。生産者や道の駅などの販売業者が申請するのではないので、ここは要注意です。あくまで、自治体が、実際には県よりもむしろ市町村が、申請します。たとえば、「地場産漬物の製造販売で、直売所の近くに漬物の共同加工場を整備して事業拡大を図る」といった事業計画を策定、申請します。

ただ、この補助金は、県内27市町村の中で、地域振興の必要度が高い「振興山村」の19市町村でしか使えません。それでも7割の市町村で使えるので、少しは展望が開けます。

麻耶:確かにこの補助制度がうまく活用できれば、「灯(あかり)」が見えてきますよね。制度活用の課題を松田さんはどう思われますか。

松田:今回の取材を通じ、道の駅や直売所で、この補助制度を知っているところはありませんでした。そこから推測すると、市町村もこの補助制度の存在をほとんど知らないのではないか。もし、知っていれば、道の駅などに、市町村からそうした提案があってもいいはずですが、実際に聞かれませんでした。とすれば、まず、市町村はこの補助制度を調べて、主体的に共同加工場の整備に取り組むべきでなないか。農水省の補助に、県や市町村が補助を上乗せできれば、実現性はさらに高まります。農水省によれば、この補助金は、道の駅全体の大規模な施設整備にも使えるもので、漬物製造に特化した小規模施設の申請は全国で例がないが、「申請はできます」ということです。

漬物と言えば、秋田の「いぶりがっこ」、長野の「野沢菜漬け」、京都の「しば漬け」、福岡の「高菜漬け」、山梨は「甲州小梅漬け」などが思い浮かびますが、地場産漬物の窮状は全国共通。製造再開向けた市町村の対応が問われています。

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:鈴木ダイ(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
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東京大学の弾き語りサークルの先輩・伊沢拓司 が生登場! 『キタニタツヤのオールナイトニッポンX(クロス)』

シンガーソングライター・キタニタツヤがパーソナリティを務める『キタニタツヤのオールナイトニッポンX(クロス)』(毎週月曜24時~)。ニッポン放送のスペシャルウィーク初日にあたる10月21日(月)に、QuizKnockの伊沢拓司が生出演することが決定した。

キタニタツヤ、伊沢拓司

キタニタツヤと伊沢拓司は、東京大学の弾き語りサークルの後輩・先輩という関係性。今回、大学卒業以来、初めての対面となる。

弾き語りサークルの部室から、『オールナイトニッポンX(クロス)』のスタジオに場所を移した今。どんなトークが繰り広げられるのか、聴き逃せない。

伊沢拓司を迎える『キタニタツヤのオールナイトニッポンX(クロス)』は10月21日(月)24時から生放送。番組はラジオ・radikoのほか『オールナイトニッポン』のサブスクアプリ「オールナイトニッポンJAM」でも生配信。さらに「オールナイトニッポンJAM」プレミアムプランでは過去放送分のアーカイブや、限定のアフタートークも聴くことが出来る。

キタニタツヤ、伊沢拓司

【番組概要】
■番組タイトル:『キタニタツヤのオールナイトニッポンX(クロス)』
■放送日時:2024年10月21日(月) 24時~24時58分
■パーソナリティ:キタニタツヤ
■ゲスト:伊沢拓司
■番組メールアドレス:kitani@allnightnippon.com
■番組X:@kitani_annx
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