高市首相答弁と中国の反発 高市首相の発言撤回拒否は当然

渡辺麻耶が木曜日のDJを担当するFM FUJIの番組『Bumpy』(毎週月曜~木曜、13:00~18:50)。11月13日のオンエアにフリージャーナリストの松田宗弘さんが出演し、「高市首相答弁と中国の反発」について解説しました。

松田: 今日は山梨新報の明日9日付で掲載するコラム「極超短波」で取り上げた「日中関係」についてお話しします。Bumpyでコラム記事を紹介するのは初めてかもしれません。コラムは、取り上げたテーマについて、記者の考えを書くので、その主観・意見が一般記事よりも、かなり出ます。私は年明けの第1週は毎年、コラムを書いており、今日は年初からちょっと重いテーマになりますが、「高市首相答弁と中国の反発」に絞ってお話します。

麻耶:「日中関係」をテーマとされたところから伺えますか。

松田:昨年11月7日の衆院予算委員会で高市早苗首相の台湾有事に関する答弁が、物議を醸しました。私は通常、日中関係を取材・報道しているわけではないですが、現役記者として、大騒ぎしている新聞・テレビの批判的な報道には違和感を感じ、ならば、年明けのコラムで見解を書こうと思いました。そのために、事実関係を精査した上でお伝えします。

麻耶:改めて、高市首相の答弁内容を教えていただけますか。

松田:衆院予算委員会で、高市早苗首相は、立憲民主党の岡田克也元幹事長から、台湾有事に関し日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたる具体例を問われ、「戦艦を使って武力の行使を伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る」と答弁しました。その後、中国は猛反発し、全国紙の見出しは「存立危機 踏み越えた首相」(11月8日、朝日)、「存立危機事態と首相 答弁の重み自覚すべきだ」(11月12日、毎日社説)などとリベラル系(左系)のメディアは批判を強めました。

麻耶:この答弁で、マスコミ発表の内閣支持率にも影響が出たのでしょうか。

松田:11月25日付産経記事で見出しが「台湾有事答弁『適切』61%」の一面トップ記事によると、存立危機事態発言を巡る騒ぎがあっても内閣支持率75・2%と極めて高かった。保守系(右系)の産経よりリベラル系の共同通信の調査でも11月に69.9%だったのが、12月20~21日実施の調査でも67.5%と高支持率を維持。特に台湾有事に関する質問では「不用意だったとは思わない」が57%。高市答弁を国民の過半数が支持したことが分かります。

麻耶:中国の反発も大きなニュースになりました。実際にはどうだったのでしょうか。

松田:11月10日の木原官房長官の会見で中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事が自身のXで「汚い首は斬ってやるしかない」と発信し、日本政府は適切な対応を強く求めました。中国は以降、日本への中国人の渡航自粛、中国国内でのイベント中止、日本産水産物の輸入停止、さらに12月6日には沖縄の公海上空で、中国軍機が自衛隊機にレーダー照射。一歩間違えれば、交戦状態になりかねない一触触発の「暴挙」で、米軍なら撃墜しているという報道も見ました。さらに、12月29~30日、中国は台湾を包囲する大規模な軍事演習を行いました。中国は台湾の北部と南部の海域に地上からロケット砲を発射する長距離火力実弾射撃を実施したほか、東部の海域で駆逐艦や無人機などを展開した、とされます。

麻耶:このような経緯を見ると、首相答弁を国民の過半数が支持するのも分かります。松田さんはどう思われますか。

松田:首相答弁は、中国が台湾侵攻し、阻止に米軍が動いたとき、米軍を自衛隊が支援できる「存立危機事態」を説明しただけのことで、中国が発言撤回を求めても応じる必要はなく、高市さんの撤回拒否は当然でした。そもそも、自衛隊は、中国が先制攻撃し米軍が防衛出動しない限り米軍支援はしません。日本は専守防衛だからです。つまり、中国は先制攻撃の権利を高市答弁で牽制・否定されたとして激怒しているに等しい。私の知る限りでは、日本の新聞やテレビから、そういう報道はほとんど聞きません。そうだとすれば、そこが問題でしょう。もう1点。台湾の北は台湾海峡、南はバシー海峡で、日本が輸入する中東からの原油のほとんどがここを通るそうです。台湾が中国の管理下に入ると原油輸入が阻止され、1970年代の石油ショックの再来になりかねない。経済面からの存立危機です。新聞、テレビは、起きている事態のこういう核心部分を正確に、繰り返し報道すべきと改めて思います。

Bumpy
放送局:FM FUJI
放送日時:毎週月曜~木曜 13時00分~18時50分
出演者:藤本えみり(月)、上野智子(火)、石井てる美(水)、渡辺麻耶(木)
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ボブ・ディランの歌詞は「翻訳不可能」⁉ 村上春樹と柴田元幸が語る、シンプルな英語だからこその難しさ

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」。11月3日(火・祝)は、特別番組として『村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~』をオンエア。今回は早稲田大学国際文学館の開館5周年を記念し、10月1日に小野記念講堂で開催された公開録音イベントの模様をお届けしました。

盟友である翻訳家の柴田元幸さんを迎え、進行役の坂本美雨さんとともに「音楽で仮定法を学ぶ」をテーマに白熱の翻訳談議を展開。ビーチ・ボーイズやエディット・ピアフなどの名曲に乗せて英語表現のニュアンスを紐解いたほか、方言・スラングの訳し方やAI時代における翻訳の未来、参加者からのQ&Aまで、言葉と文学の魅力が詰まった贅沢な時間となりました。

この記事では、この記事ではオープニングトークと、前半2曲について語った内容を紹介します。


(写真左から)坂本美雨さん、村上春樹さん、柴田元幸さん



◆Bread「If」

村上)では次いきますね。次は文字通りの「If」。これはもう仮定法以外ではありえないという選曲です。ブレッドが歌います。

<ブレッドの曲が流れる>

村上)この曲は僕が選んだんですけど、これ、歌詞がいいんですよね。

柴田)さっきの「If I Were a Bell」がすごくコミカルな比喩の連発だったとすると、こっちはちょっと教養がかっているんですね。いちばん初めのところが「If a picture paints a thousand words」、もしも絵というものが千の言葉を描けるなら、という言い方。なんで千かっていうと、「A picture is worth~(~の価値がある)」「A picture is worth a thousand words(一枚絵を見せれば千の言葉の値打ちがある/千の言葉と同じくらい多くのことが一枚の絵で伝わる)」という決まり文句があります。それを踏まえてるんですよね。

村上)あとは「If a face could launch a thousand ships(一つの顔が千の船を出帆させられるなら)」これは(ホメロスの叙事詩)「オデュッセイアー」の……。この間、映画「オデュッセイアー」を観てきて、その中でも出てましたね。ヘレネー、すごくきれいな人が千の船を進水させるんですよね。

柴田)ギリシャのあの辺はみんな海に国が面しているから、いくさに行くというと、まず船に乗るわけですね。美女ヘレネーを争っていくさが始まる。そうすると船がバーッと出るっていうことで、「The face that launched a thousand ships」という、その千の船をローンチ、出帆させた顔という決まり文句があるわけです。

村上)あと僕が好きなのは「一度に2ヵ所にいられるものなら、君と一緒に明日と今日にいたい。ずっと君のそばで」。これはロマンチックですね。

柴田)これは気が利いてますね。やっぱりデヴィッド・ゲイツという人は本当に秀才型ですね。

◆Bob Dylan「If Not for You」

村上)次は「If Not for You / Bob Dylan」。これは柴田さんの選曲ですね

柴田)高校の授業で多分みなさん習いますよね。If it were not for~(もし~がなかったら)、そういうフレーズがあるわけですけど。ずいぶん長いですよね。実際には、こういうふうに「If not for」という三語に縮めて、同じく「もし~がなかったら」という言い方に日常ではなることが多いです。まさにそれを使ってディランが「If Not for You(君がいなかったら)」という曲を作っています。

村上)僕が最初にこの曲を聴いた時、まだ高校生か何かで、「If not for you」がどういう意味かちょっとよくわかんなかったですね。

柴田)これは本当にフレーズの意味を知らないとわかりにくいですね。「If it were not for you」が「If not for you」というシンプルなフレーズに直されているということ。そして、この曲でやっぱり見事だと思うのは、ディランは音もすごいシンプルですけど、言葉もシンプルなんですよね。

村上)「If not for you, my sky would fall」は、エディット・ピアフも同じようなことを歌ってましたね。

柴田)確かに。簡単な言葉なんだけど、過激なことを言ったりもするんですね。あと「But it would not be new / If not for you(君がいなかったら、虚しく朝の光を待ってるだろう、朝の光が来ても、その光は君がいないから新しくないだろう)」と。new(ニュー)とyou(ユー)の韻の踏み方とか、こういうのは本当にもう翻訳じゃ全然よさを出せないですよね。

<ボブ・ディランの曲が流れる>

村上)なるほど。本当にボブ・ディランの歌詞って翻訳不可能なものが多いですよね。

柴田)かえって「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」とか、難しい言葉を使ってくれるほうが訳しようがあるんだけど、この時期のアルバムとか、「ニュー・モーニング」か、あと「ジョン・ウェズリー・ハーディング」とか、あのあたりのシンプルな構成で作った歌は、本当にシンプルさこそが一番訳しにくい感じですね。

村上)僕が仮定法に興味を持つようになったのは、翻訳をやるようになってからです。仮定法をどう訳すかというのがすごく大事なんだなというのがわかってきたんですよね。
学校の時はあまり興味を持てなかったんですよね。嫌だなと思ってたからね。でも、仮定法を理解してないとうまく理解できないんですよ。

柴田)要するに、そこに書かれていることが事実か事実じゃないかっていうのが、文法のサインからわかるわけですよね。

村上)あとif~で、~wouldとかcouldだとわかりやすいんだけど、前がない場合が多いんですよね。だから、それは仮定法がわかってないとなかなか訳しづらいんですね。

◆The Beach Boys「Wouldn't It Be Nice」

村上)次は柴田さんの選曲でビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」。

柴田)これはですね、「Wouldn't it be nice(素敵じゃないか)」という、ご存知の方も多い曲だと思うのですが、ちょっと珍しいバージョンでお聴きいただきます。

<ビーチ・ボーイズの曲が流れる>

村上)素敵な曲ですよね。

柴田)素晴らしいアカペラ・バージョンで聴いていただきました。これはもちろん「Wouldn't it be nice(素敵じゃないかい)」というところが仮定法ですが、「Wouldn't it be nice if...」まで一緒に覚えていただくと、使い方がすごく広がります。itっていうのはいわゆるあんまり文法用語は使いたくないんですけど、仮主語っていうやつで、長い話をしたいときにとりあえずitと言っておいて、その後詳しく言うという仕組み。「Wouldn't it be nice if...(もしこうこうこうだったら、それは素敵じゃないだろうか)」という言い方ですね。要するに、今はまだ自分たちは子どもで自由が利かないけど、大人になったら何でもできるのにという、そういう楽天的な歌なんだけど、やっぱりビーチ・ボーイズがやるとどこか陰りがありますね。

村上)あの、状況説明をしますと、1960年代の半ばの歌ですよね。当時は結婚しなければセックスはできないということだったんです。だからこの歌では高校生同士のカップルで、このまま大人になれたらすぐに“やれる”のにね。という“やれる”って、言っちゃいけないのか、すぐに仲良くなれるのにね、ということが切実なんですよね。

柴田)そうですね。僕が一番好きなところは「Maybe if we think, and wish, and hope, and pray(もし考えて願って望んで祈ったら), it might come true(実現するかも)」。もうちょっと待てば実現するんですけど……。

村上)might come trueなんですね。

柴田)どこか物事がうまくいかないかもしれないというのが見えちゃってるような響きですね。ブライアン・ウィルソンの生きた人生とか、そういうこともつい考えてしまうので、余計そういうふうに思うのかもしれないんですけどね。

村上)でもこれはやっぱりすごく心がこもった歌だと僕は思います。

柴田)長年聴いていると本当にそう思うようになりました。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO「翻訳夜話」スペシャル~音楽で仮定法を学ぶ~
放送日時:2026年11月3日(火・祝) 14:00~15:55
出演:村上春樹、柴田元幸、坂本美雨
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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