ビリギャル小林さやか「ゆとり教育」は本当に失敗だったのか

写真左から田中里奈、小林さやか ©InterFM897

青文字系ファッション誌を中心に活躍中、モデルの田中里奈が、土曜の夜にInterFM897でお届けする『Feel the moment』。10月5日は、前回に引き続き、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大に現役合格した話」のモデルになった、「ビリギャル」こと、小林さやかさんをゲストにお迎えしました。

日本は、先生たちがもっと自信を持てるカリキュラムを用意すべき

田中里奈(以下、田中):今はどんな活動を?

小林さやか(以下、小林):年間100くらいの公演と、執筆活動の他に大学院にも通っていて。学習科学っていう、子供たちにどういう環境があれば思考力行動力を育てられるかって研究をしていて。笹塚中学校(東京・渋谷区)と協力して、2年研究して修士論文を書くっていう感じですかね。

田中:すごい。

小林:子どもたちのためにビリギャルってコンテンツをもっと利用したいと思っていて。意外とビリギャルって知らない人あんまりいないんだよね。海外に住んでる人も「アマゾン・プライム」とかで見てて知ってたりするし。これを子供達の未来のために使えないかなと思っていて。軸としては幸せな子供を増やしたいっていうのがあって、そのためにお母さんになってみたいとも思っているし、幸せなお父さんお母さんを増やしたいし、まず学校教育をいけてるものにしたいし。そういうところに興味を持って活動してます。学校教育ってなかなか変わりにくくて。

田中:知ってる。私大学が学芸大(東京学芸大学)で、教育畑にズブズブで小学校の時から小学校の先生になりたいと思ってたり、親戚(せき)に先生がいたり、気付いたら先生になりたいって思い込んで来て。教育にある意味向き合ってきたから。

小林:わかるよね。

田中:大学生になって教育実習に行けば行くほど混乱したし、何を教えてるんだろうとか。

小林:先生たちもかわいそうなんですよね。だから私は制度として変わるべきだと思ってきてて。先生たちがもっと自信を持てるようなカリキュラムを用意すべきだと思うし。フィンランドの先生とかは、5年のうちにどこかで教育のどこかを深めないと先生になれないってルールがあって。

田中:それってどういうこと?

小林:大学出て教職とったらそのまま入るじゃないですか、日本の先生たちって。あれさ、社会のこと知らないのに何を伝えるのかってところがあるじゃん。フィンランドは、好きなことでもいいし何か1つ深く掘り下げて研究をするの。そのあとに教壇に立つようになるので、教育のスペシャリストとして見てもらえるの。日本の先生だと親に色々言われたり、生徒からもオイ!とか言われるじゃん(笑)。そういうことがフィンランドは一切ない。尊敬されてる。授業が学校の商品だから、部活とかは外部のコーチの人とかがやる。だからブラックじゃないし。

田中:そこに専念できる。

小林:だから、授業のことを考えてちゃんと準備できる。すごく理にかなってるなと思っていて。

田中:経験値みたいな話は私も思っていて。教育実習の時から、先生になるんだったら本当にいろんなことを経験して先生になろうと思って読者モデル始めたし。目の前にあるものを全部100パーで頑張って経験した結果、4年後に教師という職業と向き合った時に価値観の差を感じたというか。そして違う形で子どもにアプローチできたらいいなとかそういう感じになっちゃったんだけど。

小林:私の周りにも先生になりたかった人たちがいるんだけど、社会のことを知ってから子どもたちに接しようって言ってた人たちは、そのまま他の職業に就いちゃうんだよね。だから、極端かもしれないけど、先生たちだけで教えられることって限られてるから、色んな人が学校に出入りできる環境になればいいなと思ってる。だから、里奈ちゃんの話を聞いて触発される子も多いだろうし。

「先生」という人たちが好きじゃなかったけど見方が変わった

小林:去年、札幌新陽高校ってところにインターンしに行っていて、4ヶ月、生徒でも先生でもない立場で学校に入るって経験をしたの。

田中:何をしたの?

小林:特に何もしてないの。暇なときは空いてる席に座って、生徒の目線で授業を聞いてみたり。

田中:授業やりづらそう(笑)。

小林:たまに先生に頼まれて授業やったりとか。保健体育の授業で話したり。

田中:あ、海外では人を学校に入れるところって多いのかな?

小林:海外ではそうだし日本でも進んでるところはやってるかな。私のいた札幌の高校は、ソフトバンクの孫(正義)さんの秘書をやられていた荒井優(あらい・ゆたか)さんという方が今、校長先生やってるの。なんでかっていうと、新井さんのおじいちゃんが作った学校で。60年くらいの歴史のある私立高校なんだけど、元々は女子校で、近くの男子校の連中をカツアゲするような子が通ってたヤンキー校だったの。札幌の最後の砦って言われてたぐらいの学校で、誰も行きたがらないっていう。年間50人くらい退学者出るみたいな(笑)。

田中:すごいとこだね(笑)。

小林:そこで声がかかったのが今の校長の優さんで。私、優さんがフェイスブックで書いてる校長日誌が好きで、それを読んでたの。私、中学校3年の時に通ってた学校で停学処分にされた時に、そこの校長に「君は我が校の恥だな」って言われたの。校長だかなんだか知らないおじさんに。「私の何を知ってんだよ」ってすごくムカついたんだけど。だから校長先生ってイメージがそんな感じだったの。でも優さんの書く校長日誌は、先生とか生徒とか、庭に咲いてる花の話とかそんなのばっかりで、いいなと思って見てたの。ある日、「ビリギャルってこういう話で~」って、面識がなかったけどロングメールを送ったの。そしたらすぐ会ってくれて。そのご縁で高校に呼んでもらって、4ヶ月滞在することになったんだよね。その活動が今に影響されてるところがありますね。

田中:先生とはどんな感じだったの?

小林:毎日飲みに行ってて、今はただの友達みたいな感じになってるけど。私、先生という人たちがあんまり好きじゃなかったのね。ギャルで目の敵にされてたからだけど。メイク落としシート持って走って追いかけてくるようなやつばっかりだったし(笑)。先生の友達がいっぱいできて、「学校の先生たちってこういうことを考えてるんだな」とか、「意外といいやつ多いな」って感じで。生徒のこと考えて生徒の話ばかり職員室でしていて、見方がすごく変わった。

田中:それまでは嫌なイメージ、割りと引きずっていた?

小林:引きずってた。申し訳ないんだけど。そういうもんなんだなって思っちゃってた。そのイメージが外れたっていうのは大きかったですね。

田中:確かに一気に世界広がりそうですね。

小林:やっぱり先生たちが教育には重要なので、まずは先生たちを理解してあげないと。日本の教育イコール先生たちの非難みたいになっちゃう人も多いじゃないですか。確かに課題はたくさんあるけど、そう思われてる先生が一番辛いと思ったし。好きで先生たちもそういうことをしてるわけじゃないし。だから、生徒たちの環境を整えるためには、制度が変わると一番いいかなってところにたどり着いたんだよね。

田中:確かにバチッとハマってない感はあるよね。

小林:先生たちも「これ意味あんのかな?」って思ってやってることがすごくたくさんあるから。そんなの誰にとっても良くない。

田中:でもここ数年で世の中の雰囲気って急激に変わっている気がして、それでうまいところにハマるといいね。いろんな分野で今までになかった発想が出てきてるから。

社会に出ていくことが怖かったけど、すごく楽しいっていうのを伝えたい

小林:今、教育が変わるぞって言われてるけど、前にゆとり教育っていうのがあったじゃない。あれはかなり文科省(文部科学省)も考えを凝らして出した政策だったんだけど、今は、失敗だったって言われてるじゃない?だけどもうちょっと続けてたら、またちょっと違ったかもしれないし。ゆとり教育ってただ楽させてあげようじゃなくって、子ども達に色々考えさせるために、詰め込むんじゃなくって余白を残して好きなことに使えるように始めたものだから。そのメッセージが伝わりきらなくって。

田中:表面だけで、本当の意味が理解される前に終わっちゃったみたいな。

小林:そうそう。学校の先生と文科省とか制度を作ってる人たちとの意思疎通ができなくて現場が理解できなかったから、子ども達にも伝わらなかった。今アクティブラーニングとか教育指導要領が変わるみたいな波があるけど、これが、学校の先生が理解できないとゆとり教育の二の舞になるかもしれなくて。これをもっと学校の先生たちに丁寧に落とし込まないといけない。

田中:本質的なところに問題はあると思うから。

小林:シンプルな話なんだけど、だからこそ難しいというか。だから学校教育はめちゃくちゃ大事。

田中:教育によって形作られて今の私の考えもあるし。

小林:学校とか塾でどの選択肢が正しいか見つける、答えを探す、クセがついちゃったよね。

田中:答えのあることが当たり前だし、4つ選択肢があって1つの答え以外は間違いなんじゃないかとか、人生の選択でもこの選択で間違うんじゃないかとか、大学の講義とか研究って答えがないものだから、向き合い方がわかんなくって。10年くらいかかってそれを溶かしていって。塾の勉強に最適化しちゃってたって苦しみを背負ってたから。

小林:私は、小中高は暗記って部分も大きい。知識っていう武器がないと社会に出て戦うのは難しい。大学では、その武器をどう使うかを学ぶ場所だと思っていて。大学から答えのない問題に取り組んでいく。社会に出て働くっていうのは、答えのない問題を協力してやっていくから、そういうことも学校としては準備していかなきゃいけないじゃん?排除するのではなく個性を伸ばすのも大事だと思うし、答えのない問題に対してみんなで解を見つけていく、それに対して対価をもらうのが働くってことだと思うんですよね。世の中必ずしも答えのあるものじゃないんだと教えつつ知識を吸収していって、大学からは答えのないものを見つけて行こうねっていう。

田中:もっと早く気づきたかったな。

小林:暗記力、行動力、思考力も一緒に育んでいって、最終学歴じゃなくて最新学習歴を更新していくっていう。死ぬまで学び続けるってことが幸せだし、そうして生きていかなきゃいけないんだっていうのをリアルに伝えないと。子供達が勘違いしちゃう。

田中:そうだよね。小さい頃思ってたことと真逆だよね。当時の自分に出会えるならどんなアプローチする?

小林:そうだなあ。坪田(信貴)先生に出会えたから、慶応に受かった時から人生が変わったんじゃなくて坪田先生に出会った時から人生が変わったと思っていて。社会に出て生きていくってことって学生の時は怖かったけど、すごく楽しいよっていうのを伝えたい。今できることっていっぱいあるよって。テストのための暗記は意味ないけど、日本史を”知る”とかってことはこんなに楽しいんだってことを伝えたい。

Feel the moment
放送局:interfm
放送日時:毎週土曜 24時00分~24時30分
出演者:田中里奈
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メール:feel897@interfm.jp

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