夏目漱石がひそかに恋した女性? ポスト樋口一葉? 明治の女流作家・大塚楠緒子の知られざる名作を発掘!!

ラジオ日本『わたしの図書室』では7月2日・9日・16日の3週連続で、明治の女流作家・大塚楠緒子の短編小説を紹介する。なにしろ夏目漱石が「美人だ」と言って妻ににらまれたというほどの美貌。そして、漱石の手ほどきを受けて、楠緒子は小説の分野で明治の文壇に大きな花を開かせた。朗読は日本テレビアナウンサーの井田由美。

大塚楠緒子ってどんな人?

大塚楠緒子(おおつかくすおこ)。この名前になじみがなくても、「お百度詣」という詩は知っているという人も多いのではないだろうか。日露戦争の時代に、出征した夫の無事を祈る妻の気持ちを詠ったこの詩は、当時、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」と並んで一世を風靡した。

大塚楠緒子は、1875年(明治8年)、東京の良家の子女として生まれ、幼いころから読書を好み、16歳で佐々木弘綱、信綱親子に師事して本格的に和歌を学ぶ。名門、東京女子師範附属高女(のちのお茶の水女子大学附属高等学校)を首席で卒業という才媛ぶり。その後も、和歌の才能を磨きつづけながら、楠緒子はしだいに小説へと筆を進めていく。短編小説を集めた初めての作品集「晴小袖(はれこそで)」は1906年(明治39年)、楠緒子が31歳のときに上梓された。また、樋口一葉が亡くなった後は、“ポスト一葉”として期待を集めた。

大塚楠緒子と夏目漱石

大塚楠緒子は、二十歳のときに、6歳年上で、秀才の誉れの高かった小屋保治を婿養子に迎えた。このときの婿候補には、夏目漱石の名も挙がっていたという。夫・保治と漱石は東大時代からの親友。「吾輩は猫である」に登場する美学者の「迷亭」は、大塚保治がモデルだと言われている。保治は、のちに東京大学で初めての美学の講座を持つ博士となるが、結婚した翌年から4年間、ドイツ、フランス、イタリアへ留学。その間、楠緒子は、ピアノや英語を学び、料理にいそしみ、美術への造詣を深めて過ごした。

また、結婚後には楠緒子も夫の友人・夏目漱石と交流を持つようになる。後日、「東京朝日新聞」に勤めるようになってからの漱石の推薦で、楠緒子は35回にわたる連載小説「空薫(そらだき)」を執筆。これが好評でさらに続編40回を連載した。連載中もしばしば漱石は楠緒子を励まし、指導をしつづけていたという。

しかし、1910年(明治43年)、楠緒子は病により、大磯の別荘で息を引き取る。36歳だった。漱石は、新聞で楠緒子の訃報に接し、「あるほどの菊投げ入れよ棺の中」という、有名な手向けの句を詠んでいる。才色兼備の楠緒子は、夏目漱石がひそかに恋した女性だとも言われている。

朗読する作品

【上下】 7月2日放送
夏の暑い日、荷車を引いて坂道を行く夫婦がいる。貧しくとも睦まじいその夫婦が見上げる豪邸で、豊かなのに幸せとは言えない男爵夫妻が口論をしている。さて、どちらが上でどちらが下か? 二組の夫婦のコントラストが見事。

【はがき】 7月9日放送
夫が親友に書いたはがきを、偶然、見てしまった妻。一枚のはがきがある夫婦に小旋風を巻き起こす。 倦怠期の夫婦のモヤモヤは、また別の一枚のはがきで解決する。

【交通遮断】 7月16日放送
ハイカラな西洋食料品店のカタブツ番頭さんが恋をした!? それをからかう店員たち。そんな気のいい仲間たちの日常をユーモラスに描き出す。

 

 

 

【放送内容】
ラジオ日本 木曜日 23時30分~24時00分
朗読:井田由美(日本テレビアナウンサー)
●7月2日:大塚楠緒子「上下」
●7月9日:大塚楠緒子「はがき」
●7月16日:大塚楠緒子「交通遮断」

わたしの図書室
放送局:ラジオ日本
放送日時:毎週木曜 23時30分~24時00分
出演者:井田由美(日本テレビアナウンサー)

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