「半七捕物帳」の岡本綺堂が少年向きに書いた冒険活劇! 悪徳商店主に酷使されながらも、知恵と勇気でピンチを切り抜けるみなしご丈治。
それは、雨の夜だった…「ネズミも捕らぬ猫など捨ててこい!」と主人に命じられた少年・丈治は、あわれな白猫のタマを抱えて店を飛び出した……愛する白猫と、やがて日本をも離れた少年は、あるときは海賊と、あるときはワニザメと闘いながらわが道を行く! 10月1日、8日放送の『わたしの図書室』。奇想天外な冒険譚の楽しい朗読は、日本テレビアナウンサーの井田由美。
少年と白猫の大冒険!「白猫」
今回、番組で紹介する「白猫」は、日本版シャーロック・ホームズ「半七捕物帳」や、奇譚を集めた「青蛙堂鬼談」などで知られる岡本綺堂が少年向きに書いた物語。児童文学の月刊誌や全集が全盛期だった明治30年代に、児童向け出版では有名だった金港堂書籍から〈金港堂お伽噺シリーズ〉の一冊として発表された。当時の価値観、“勧善懲悪”や少年たちへのメッセージ“立身出世”を反映した、メチャクチャ元気が出てくる冒険活劇だ。
物語は……街外れにある、舶来物を扱う店で小僧として働くみなしごの丈治は、ある日、主人から店で飼っている白猫のタマを捨ててくるように命じられる。「ロクに鼠も捕らない役立たず」と、捨てられてしまうタマ。優しい丈治は、夜になってもどうしてもタマを捨てられず、往来でほろほろと涙を流すのだった。しかし、捨てる神あれば拾う神あり! その様子を見かねた親切な貿易商の男に、丈治はタマと共に引き取られ働くことになる。数年後、一人前の番頭となった丈治は真っ白で綺麗な猫となったタマと貿易船に乗り込んだ。ところが、その船が海賊に襲われ、丈治たちは海に投げ出されてしまう。やっとの思いでたどり着いた大きな岩。食べ物もない岩の上で途方に暮れる丈治だったが、同じ岩に泳ぎ着いたタマが思いもかけない方法で丈治の危機を救うのだった……。
ぞぞっと怖い!「旅館(ホテル)の手帳」
2週目(10月8日)の後半には、岡本綺堂のホラー短篇「旅館(ホテル)の手帳」を朗読。アメリカ・ヴァージニア州の片田舎に建つホテルが舞台。親の代からの「入らずの間」で起こる怪奇現象を描いている。逃げた男を恨んで死んだ女の怨霊か? 呪われた部屋として長く閉ざされてきた一室を、商売繁盛を願う新しい主人の大英断で、ついに開放することとなった。久しぶりに部屋に入った主人は、そこに一冊の不思議な手帳を見つける。そして、客が泊まったその夜……。
岡本綺堂は、時代物、怪奇譚も多いが、一方で、外国文学の翻訳・翻案ものも多く残している。プーシキンやディケンズ、モーパッサンなど世界中の怪談を翻訳した「世界怪談名作集」や中国の怪談の翻訳集「中国怪奇小説集」などは今でも広く親しまれている。「旅館の手帳」も翻案もののひとつと思われるが、原点は不詳。
多才な作家・岡本綺堂
1872年(明治5年)、東京・高輪に生まれた岡本綺堂は、父親の影響で幼い頃から芝居や歌舞伎に親しんで育つ。現在の都立日比谷高等学校を卒業後、勤務した新聞社で劇評を担当する傍ら、戯曲や小説を執筆。歌舞伎役者の二代目市川左團次に書き下ろした「修善寺物語」「鳥辺山心中」「番町皿屋敷」を代表とする戯曲が評判を呼び、新歌舞伎を代表する劇作家となる。その後、コナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」に刺激をうけ、岡っ引きが探偵のように事件を解決する「半七捕物帳」シリーズで、小説家としての人気を不動のものにした。また、「三浦老人昔話」「青蛙堂鬼談」といった怪奇ものも得意で、生涯に196編の戯曲と100作以上の読み物を発表している。作品の多くは江戸が舞台となっているが、綺堂が描く江戸は考証的にも正確だといわれ、その情緒豊かな描写で現代でも人気を博している。
【放送内容】
放送日:10月1日・8日(木)23時30分~24時00分
朗読作品: 岡本綺堂「白猫」「旅館(ホテル)の手帳」
朗読:井田由美(日本テレビ・アナウンサー)
- わたしの図書室
- 放送局:ラジオ日本
- 放送日時:毎週木曜 23時30分~24時00分
- 出演者:井田由美(日本テレビアナウンサー)
※放送情報は変更となる場合があります。