朴槿恵前大統領の実刑確定~なぜ韓国では大統領がまともに引退できないのか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。韓国の朴槿恵前大統領に懲役20年の実刑が確定したニュースについて解説した。

韓国の朴槿恵大統領(韓国・ソウル)=2016年11月29日 AFP=時事 ©時事通信社

懲役20年の実刑が確定した韓国・朴槿恵前大統領

収賄などの罪に問われた韓国の朴槿恵前大統領に14日、懲役20年の実刑が確定した。前任の李明博元大統領に続き、長期の服役となる。韓国の政界では2022年3月の大統領選を見据えて、早くも赦免、恩赦の是非が議論されているということだ。

飯田)朴さんは懲役20年、いま68歳でいらっしゃるということですので、88歳までですか。

演説する文大統領=2020年09月19日 YONHAP NEWS/ニューズコム/共同通信イメージズ ©共同通信社

まともに引退した大統領がいない韓国~健全な政治の姿ではない

宮家)私と同じ歳ですからね、あと20年入っているというのは普通考えられないですよ。前大統領ですよ。世の中には大統領で自分に恩赦を出す人もいるかも知れませんが、それは置いておいて、韓国の大統領の任期が5年になって、一期になってしまったので、レームダック化が激しくなっています。民主主義がうまく機能しているという言い方もあるかも知れませんが、韓国にはまともに引退した大統領がいないではないですか。捕まるか、いなくなってしまうか、どちらかでしょう。

飯田)そうですよね。

宮家)それは健全ではないですよね。やはり恩赦はやらなくてはいけないと思いますが、もう1度前大統領を安易に訴追するようなやり方を考えないといけないのではないでしょうか。こんなことをやっていて、エネルギーがすべてその政争の方に向いてしまっている。でも大統領には国民のためにやらなくてはいけないことが他にあると思います。

飯田)分断がより進むという方向に行ってしまう。

宮家)こんなことを繰り返していて、健全な民主主義が定着するのだろうかと思います。もちろん、悪いことをしたならば仕方ありません。しかし、こういうお金の問題は、日本もそうですが、透明性が大事です。政治家はお金が必要ですから、お金を献金するのは、当然なのです。政治家がお金をもらうのが、すべて悪いということではない。アメリカでも多くのお金を集めていますよ。

ホワイトハウスのローズガーデンで行われた、新型コロナウイルスに関する記者会見でのトランプ米大統領 2020年5月11日 ワシントン (Photo by Brendan Smialowski / AFP) AFP時事 ©時事通信社

アメリカでは「どの業界の誰がいくら払ったか」を公表

飯田)スーパーPAC(パック)など、いろいろな方法で。

宮家)アメリカが他国と違うところは、「どの業界の誰がいくら払ったか」がすべてわかるところです。公表するわけです。お金を貰っていますから、議員も議会のなかで、特定の業界を徹底的に擁護します。お金を貰って擁護して、それを公表して、あとは選挙民が判断するのです。日本の場合、韓国の場合も同じかも知れませんが、秘密にやってしまったら、それはフェアではない。それをすべて公表して、最終的に「それがおかしいお金なのかどうかを選挙民が判断する」というのが、本来民主主義の正しい姿だと思います。そうしないと、お金を集めること、もらうことがすべてダメになってしまう。そうなれば、韓国ではみんなアウトですよ。

飯田)そうですよね。そうでなければ、もうすべて公費でと。「公務員なのか」という話になってしまいますよね。

「三・一独立運動」を再現(さいげん)した行進に参加した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領(だいとうりょう)(中央左)=2018年3月1日、ソウル(共同) ©共同通信社

透明性を確保するような法律をつくるべき

宮家)アメリカでは、大統領選を公費でやることもトライしたけれど、現実にはそんなに簡単ではないですよね。政治とお金の話は永遠の問題、課題ではあります。しかし、私は透明性がいちばん大事だと思います。真の透明性を確保するような法律をつくることによって、すべて曝け出して、その上で、この人はいい政治家だったのかどうかを選挙民が次の選挙で決める、というのが筋だと思います。

飯田)そういう仕組みをつくらないと、再発防止にならないですよね。ずっと繰り返されているわけですものね。

宮家)そして、怨念だけが残るわけですから、必ず次はやり返します。そうすると、この報復の連鎖は絶対に止まらないではないですか。

飯田)文在寅政権はやり返せないようにするために、検察改革とか、司法の方を改革しようとしていますね。

宮家)あれもいかがなものですかね。法治国家とはとても思えないし、その弊害というのは変なところで日本にも悪影響が出て来ています。最近も変な裁判の判決が出て来たわけですから。ということは、やはりそこは何十年か試行錯誤をやって、韓国の民主主義も見直すべきところは見直して、少し成熟して行かれたらいいのではないかと思います。

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軍事パレードを行うしかない北朝鮮の苦しい現状

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月15日放送)に内閣官房参与で外交評論家の宮家邦彦が出演。1月14日に軍事パレードを行った北朝鮮について解説した。

北朝鮮の第8回朝鮮労働党大会で開会の辞を述べる金正恩党委員長=2021年1月6日、平壌(朝鮮中央通信=共同) ©共同通信社

北朝鮮が軍事パレードを実施

北朝鮮が1月14日夕方から夜にかけて、平壌の金日成広場で軍事パレードを行ったことがわかった。1月12日に閉幕した第8回朝鮮労働党大会を記念したもので、金正恩総書記が閲兵したとのことだ。

飯田)ラヂオプレスによりますと、北朝鮮メディアが軍事パレードを確認したということです。

宮家)大体、こんなことをやっている暇があるのですかね、北朝鮮には。発表はないけれども、北朝鮮でもコロナが蔓延しているはずです。事実上、国内の動きが止まっているはずなのに、党大会だからやらなくてはいけないのかも知れませんけれども。夜のパレードですか、あそこは今寒いですよ。

飯田)そうですよね。

宮家)兵隊さんは、寒いなかを行進させたりして何のためにやっているのかと思いませんかね。

飯田)どういう意図なのでしょう?

宮家)彼らには彼らの世界があって、「こんなすごい武器をつくったぞ。撃てるんだぞ。見ろ」ということでしょう。

飯田)「こんな大きなミサイルもつくったぞ」と。

19日、米デラウェア州で記者会見するバイデン前副大統領(ゲッティ=共同)=2020年11月19日 ©共同通信社

手詰まり状態の北朝鮮

飯田)トランプ政権のときは、それまでの強硬姿勢が一変して一時対話路線になりましたが、アメリカの政権が交代してどうなるのでしょうか。

宮家)トランプさんの決断で一変というか、あれにはみんな驚いたわけです。首脳会談を本当にやれるのかと思っていたら、本当にやってしまった。うまく行くわけないだろうと思っていたら、やはりうまく行かなかった。あれは何だったのだろう。スポットライトを浴びるだけだったのか、という悲惨な結果になりました。おそらく金正恩さんは、文在寅さんに言われて「米朝交渉はうまく行くかも知れない」と本気で思ったのでしょうね。「核施設かどこかを1つ爆破すれば、アメリカは経済制裁をやめるのだから、うまく話をしてくれ」と文在寅さんには言いながら、文在寅さんはトランプさんに「彼らは核兵器を破棄しますよ。もう少し話してくれれば非核化ということになりますから、ぜひ対話をやってください」などと言ったのでしょう。しかし、会ってみたら、「やはり話が違うではないか」ということがわかった。それに1年以上もかかったのです。もう北朝鮮は手詰まりなのでしょうね。だからパレードをやって、いままでのやり方でまた乗り切って行こうということなのでしょうけれども、北朝鮮の軍人さんはかわいそうですね。今戦ったら負けますからね。

飯田)暴発などはありませんか?

宮家)暴発はないと思います。暴発しても米韓軍に1発でやられますから。核兵器なんて撃てないのですよ。撃とうとした瞬間にやられますよ。韓国の正規軍の装備だけ考えても、しっかりしていますから。北朝鮮は、戦った瞬間に体制が終わるということがわかっているから、絶対に暴発しないのです。挑発するフリをするけれども、絶対に戦争をする気はないということです。

10日未明に平壌で行われた軍事パレードに登場した新型大陸間弾道ミサイルとみられる兵器。10日付の北朝鮮の労働新聞が掲載した(コリアメディア提供・共同)=2020年10月10日 ©共同通信社

バイデン政権に交代するタイミングで北朝鮮がミサイルを撃つという見方も

飯田)なるほど。バイデン政権に変わるかどうかのタイミングでミサイルを撃つのではないかという専門家もいますが。

宮家)相手はトランプさんではないですからね。しかもバイデン政権の関係者はその道のプロがみんな帰って来るのです。そんなことをしても、トランプさんのように簡単に騙されることはないと思います。

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