パラノルディックスキーの阿部友里香選手に聞く!アスリートの妊娠・出産・育児とはどんなもの?
女性の妊娠、出産、育児…その経験は人生が変わるといっても過言ではない。アスリートはそれらをどのように乗り越え、戦っているのか…子育て歴12年になる本庄麻里子アナウンサーが、福岡を拠点にして世界で戦うママアスリートにインタビューした模様を、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」で報告した。
世界で活躍するママアスリート
先週(20日)、テニスの世界ランキングが更新され、大坂なおみ選手が173位から134位に上がりました。昨年7月に出産して、今年1月に1年3か月ぶりにツアー戦に復帰して、いまランキングが上がってきているところです。
「ママアスリート」、いろいろとすごい方がいらっしゃいます。
福岡ゆかりでいえば、柔道・谷亮子選手。出産後は、オリンピックで銅メダル。陸上、アメリカのアリソン・フェリックス選手は出産後の東京オリンピックで金1つ、銅1つメダル獲得。トータル5回のオリンピックで金7個を含む、11個のメダル獲得。妊娠中に、ということになると、テニスのセリーナ・ウィリアムズ選手は妊娠中に全豪オープン優勝。日本では、ゴルフの野呂奈津子プロが、おなかも少しでてくる妊娠6か月で、優勝してるんです!
私は子育て歴12年になりますが、正直、ヨロヨロと会社に行き、家の中はひどい状況なのに…アスリートともなれば、体が資本ですが、妊娠中の体の変化、産後の体のケアや、育児はどうしているのか、というのが気になる!実際のところはどうなのか?ぜひお話を聞いてみたい!と、調べたところ、ここ福岡県にも、いらっしゃいました。昨年4月に女の子を出産した、パラノルディックスキー選手の阿部友里香さん。日立ソリューションズ所属、これまで3大会連続でパラリンピックに出場し、いずれの大会でも入賞されています。
出産で「新たに生まれ変わる」
まずは、妊娠中のトレーニング。体を把握するため、スポーツ医学に詳しい先生のもとに通って検査をしたり、ジムトレーナーとメニューを相談しながら、続けていたそうです。予定日より早い出産だったそうですが、なんと出産した日にも、本当はジムを予約していたくらい、出産ギリギリまでされていたそうです。
また、阿部選手の場合は、国立スポーツ科学センターの女性アスリート支援プログラムを受けることができたので、こちらのプログラムでも、医師・トレーナー・理学療法士などからアドバイスをもらって、体のことを確認しながら妊娠中や産後のトレーニングしていたそうです。
本庄:産後は3週間でリフレッシュを兼ねてピラティスからやり始めたそうですが、自分自身で、体調が戻った、と思えたのは、いつだったのでしょうか?
阿部選手:最近ですね。それまでは、どこかしらにトラブルがでていたが、まったくなくなった、と思えたのは産後10~11か月後でした。心理サポートもあり、メンタルトレーナーからは「産前の体に『元に戻る』ではなく、『新たに生まれ変わる』と思った方がよい」と言われたんです。元に戻そうとすると、近づけようと自分を苦しめることになるからなんだとか。新しい自分に、と思った方が楽ですよ、と言われ、ああ、たしかにそうだな、と思いましたね。
日々のトレーニングは一緒に!?
「戻す」ではなく、「生まれ変わる」という発想に驚きました。日々のトレーニングは、家族や、保育園・自治体の育児サポートに預けたりしていたそうですが、たまに預け先に困ったときにはこんな風に工夫していたそうです。
阿部選手:通っているジムに連れていって、人工芝でゴロゴロさせておいて隣でトレーニングしたり、ベビーカーで大濠公園で一緒にランニングしたりしました。
あなたが散歩する横を、ベビーカー押しながら、颯爽と走っていたかもしれないですね!
そして、4か月で娘さんと、面倒を見てもらうためにお母さんを帯同して合宿に参加、11か月のときには海外遠征されたそうですが、ここで、「働くママ」あるある!「大事な仕事の日に限って、子どもが体調悪くなる」出発前に娘さんが新型コロナ感染、ママの阿部選手にもうつって、出発が遅れてしまったそうです。そのような中での試合だったので結果は残念だったが、そこでしか味わえない雰囲気があるので、参加できてよかった、とおっしゃっていました。
女性アスリートのキャリア形成の道を作りたい
ライフステージの変化を乗り越えながら、試合に復帰を果たした阿部選手ですが、女性アスリートのキャリア形成についてはこのように考えているそうです。
阿部選手:長い遠征もあるので、日本国内で冬のスポーツ現役中に出産するのは珍しい選択です。でも海外にはそういう選手がたくさんいます。アスリートとしても、女性としての人生も、どちらも選択して、キャリアを形成しているのを見てきたので、そういう選択肢もあるということを、後進にむけて私が道をつくりたかったというか、そういう人が一人でも増えたらいいな、と思ってやってきました。競技と子育てをやるのは大変ですが…聞いた話では、シンガポールでは家政婦が当たり前。家事をしていると、子どもとの少ない時間なのに、と思ってしまうんですよね。日本でも気軽に家政婦・ベビーシッターを利用できる環境が整ってくれば、「連れて行く」ではなく、「子どもを置いてくる・預ける」が当たり前になると、女性も働きやすくなるのではないかと思っています。
制度・サポートの仕組みも必要ですし、並行してベビーシッターなどを利用して良い、というような意識の変革も必要かな、阿部選手の話を聞いて感じました。
阿部選手、まずは、日本障がい者スキー連盟など、チームのサポート、コーチやスタッフの理解がありがたかった、ともおっしゃっていました。
また、国立スポーツ科学センターによる女性アスリート支援プログラムで、体調の管理・アドバイスを受けられたり、全部ではありませんが、一部交通費、宿泊費をサポートしてもらえるという制度などもあったそうです。
ただ、この「女性アスリート支援プログラム」を受けられるのは「国際大会で活躍が期待される選手たち」ということになるので、対象となるアスリートは限られていますし、阿部選手がおっしゃったような、ベビーシッターなどのサポートが、より充実していくと助かるなあ、と思っているのは、アスリートに限らないかもしれません。
最後に、阿部選手に、今後の目標を聞きました。
阿部選手:冬季競技は、2026年ミラノでのパラリンピック。残り2年でどこまで世界で戦えるまで、もっていけるか。母としても、パラリンピックに出て、メダルを獲得したいです!
ぜひ、がんばってほしい!エリアで頑張る女性アスリートのひとりである阿部選手をみんなで応援しましょう!今回は、日立ソリューションズ所属のパラノルディックスキー選手・阿部友里香さんにお話をうかがって、ライフステージの変化と女性アスリートについて、考えました。
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