【ラジオな人】浜松から全国へ!K-mix の大人気番組『ピンソバ』バカボン鬼塚さん、高橋茉奈さんにインタビュ ー!【前編】

数あるローカル制作の番組の中で、「この2人にインタビューをしてほしい!」という要望が特に多かった番組『K-mix FOOO NIGHT ピンソバ』。ラジオファンに人気のバカボン鬼塚さんと、K-mixの若手アナウンサー・高橋茉奈さんがタッグを組み、月曜日から木曜日の19時から、約3時間の生放送を行なっています。お2人にじっくりとお互いの魅力や、『ピンソバ』の魅力についてお聞きしました。前後編にわけてお送りします。

――本日はお会いできて光栄です。『ピンソバ』は2017年4月にスタートして以来、バカボンさんと高橋さんの、楽しくて奇妙なコンビが噂で広まり、今やラジコで全国から聞かれる番組になっています。そこでまずは、バカボンさんから見た、高橋さんの第一印象をお訊きしたいんですが。

高橋茉奈(以下:高橋):え~!? 何を言われるんだろう? こわい! こわいです!

バカボン鬼塚(以下:バカボン):僕は今は故郷の静岡に住んでるけど、5年くらい前、東京に住んでいた時からK-mixで特別番組を担当していました。その2~3回目くらいの時に、茉奈ちゃんがニュースを読むことになっていて、先輩のアナウンサーが「新人の高橋茉奈です」って紹介してくれました。そしたら茉奈ちゃんが「ニヤニヤ」と笑ったんです。

高橋:(笑)。

バカボン:まだ茉奈ちゃんが入社して3~4ヶ月ぐらいの頃のことで、普通は緊張して固い笑顔で挨拶するものだけど、あまりにもニヤニヤしてたから、新人だと思わなくて。「ベテランで、こんな子いたかな?」って思ったんですよ。「K-mixの方はだいたい紹介していただいたはずなんだけど。こんな子いなかったな。外のニュースキャスターの方かな」と思ったんです。というのも、ニュースの読み方がものすごく落ち着いていたので。ところがニュースを読み終わったら、再び「ニヤニヤ」しながら去っていったんです。

高橋:(笑)。

バカボン:今だから言うけど「いずれレギュラー番組を始めるなら、この子がいいかな」と思っていました。そのあとで何度か、特番を一緒にやりました。

――その頃、高橋さんはどんな様子でした?

高橋:暴走するに任せて、右も左も分からない状況でした。初めてバカボンさんと一緒に特番をさせていただいた時は、“バラエティのキング”みたいな人とやらせてもらえるなんて思ってもみなかったので、アシスタントみたいな立場でいこうと思ってたんです。でも、初めての特番でいきなり、元カレの話をすることになって

バカボン:早速、トークが暴走してました(笑)。特番とレギュラーの違いがあって、レギュラーをやるんだったら個性を出させないといけないけど、特番は瞬発力が重要だから、とにかく聞いた人にインパクトさえ与えられれば成功なんです。元カレの話以外に、お酒の話もしてたからね。やさぐれて、家でワンカップ飲んでたっていうんで。

高橋キャラクターを全開にされちゃったって感じですね。出す気はなかったんですよ。

バカボン:いや、出す気満々だったよ(笑)。

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――高橋さんから見た、バカボンさんの第一印象は?

高橋:初めて担当させて頂く時に、「バカボンさんってどういう方なのかな」と調べたんです。YouTubeとかも端から端まで見てたら、バンドをやってることとか、あとは『おに魂』(NACK5)(※1) のことも知りました。

バカボン:掘ると、いろいろ出てくるからね(苦笑)。

高橋:ライブ映像とかを見てると、格好いい帽子とか被って、凄くダンディ系のイメージでした。でも初めてお会いした時、寒い日だったのにずっとTシャツ姿だったんです。バンドの時のイメージと全然違って、ラフな感じで「おはよう」って言ってもらえたから、緊張がほぐれました。

バカボン:Tシャツになったのには理由があるんですよ。テンションを上げて喋る芸で始めちゃったんで、アクションが凄くて、長袖を着てても途中でまくる癖があるんです。あと、暑いからまくり上げて喋ってて、うっすらと汗をかいた状態で戻すと気持ち悪いから、袖もいらないと思って。それで、一年中Tシャツでいいかなって思ったんです。スーツみたいなもんです。この姿が一番ラクで(笑)。

――『ピンソバ』オリジナルTシャツも、半袖で格好いいですよね。

バカボン:僕が自腹で見本を10枚ぐらい作って、スタッフに配って着てもらったんです。それを直接“上の人”に「こういうTシャツを作りましたけど、予算はいかがでしょう」という感じで予算を出していただきました。ありがたいことに、販売すると完売する状況です。「B.O.K.」は僕のアーティストのマーク。「東京スカパラダイスオーケストラ」のグッズが好きで、スカパラはデザインを変えずに Tシャツの色だけを変えていて、それが「なかなかいいな」と思って取り入れました。何か広告を入れたい時は背中に入れてます。このデザインだったら普通に街を歩けるし、声をかけられるから、歩く広告塔です。無言でも分かっちゃうし、喋ってても分かっちゃうし、むしろバレたくて(笑)。

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人気コーナーは、悪ふざけから誕生

――確かにバレてなんぼですね。高橋さんは『ピンソバ』がスタートしてどうでした?

高橋:特番は何度か一緒にやらせて頂いてたので「バカボンさんは、こういうのが好きなんだ」っていうのがなんとなく自分の中でもあったんですけど、私もバカボンさんも帯番組は初めてだったから、特番とは違ってましたね。4日間あるから体力的なこともあるし、「リスナーさんはどういうバランスで聞きたいんだろう」とか、そういうのも考えたんですけど、始まったら考える暇がなくて、とにかく必死でした。『ピンソバ』は台本が真っ白で、始まった当初はコーナーもほとんどなくて。今は2人で悪ふざけをする中で「キューちゃんリクエスト」(※2)や「お風呂コント」(※3)が始まったり、色々なスポンサーがついてくださるようになりました。

バカボン:「キューちゃんリクエスト」は、完全に茉奈ちゃん発だったんですよ。

高橋:ちょうど9時にかかっていたBGMに乗せて「キュッキュキュキュー」って言い始めたんです。確か、バカボンさんはメッセージをさばいてたりして、かまってくれなくてヒマだったから歌ったんだと思います(笑)。

バカボン:それがきっかけで始まったコーナーです。ウチの番組は作家がいないので、最初から細かくコーナーを作っちゃうと、それに縛られちゃって楽しんでもらえないんです。まずは更地にしておいて、そこに後からいろいろな家を建てようと思いました。何も決まってない状態でメールを読んで、ひたすら脱線したり、トークを膨らませることから始めました。2人で喋るのはラジオの基本中の基本だし、それだけで十分楽しくなります。それに、茉奈ちゃんは間がすごくいいんです。

高橋:(ニヤニヤ)

バカボン:茉奈ちゃんは、歌ったり叫んだり、話が脱線することで、いろいろなことが生まれてくる、ということを感じ始めたみたいです。面白いラジオって、間と掛け合いのリズムや、タイミングだったりするじゃないですか。そういった点を、茉奈ちゃんは最初に体に入れられたのがよかった。そうなったら怖いものがない。3時間を制することができるので「どうしよう」という迷いはなくなります 。自分の間とリズムをもってすれば、どんな大物タレントも掌握することができます。

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作ったキャラクターは、ラジオだとバレちゃいます

――実は、初めて高橋さんにお会いするにあたって、高橋さんは普段から『ピンソバ』の時のように明るいのか、放送時はあくまでも仮の姿であって、普段は大人しいのか……どっちなんだろうと思っていました。お会いした瞬間からラジオのままで、安心しました。

高橋:さすがに普段は『ピンソバ』や「ニュース」の時ほどは脳みそを使っていませんが、普段の雰囲気と変わらないと思います。

バカボン:たまに、カフ(マイクのスイッチ)を下ろすと全く喋らないパーソナリティもいますが、僕が色々とやってきて分かったのは、マイクの前で自分を“作る”人はいるけど、それって絶対にバレるんです。ラジオで一番大事なのは、パーソナルな部分。普通にやってることをそのままラジオでやればいいのであって、マイクの前で作っちゃうとそういうキャラに寄せていくでしょ。プライベートとラジオでの自分を分けるのもいいけど、長く愛される番組は、いつもと同じ目線が良いと思います。『ピンソバ』は帯番組だし、自分を作ったところで一番きついのは体力なんです。でも、せっかくだから、そこもちょっとネタにしちゃおうかと。これもすごくラジオ的で、たとえば茉奈ちゃんが「蛍の光」のメロディーを歌い出すと「今、シャッターが下りてます」って僕が解説するんです(※4)。途中でシャッターの動きが止まったら、「シャッターが真ん中まで降りてるけど、まだ店内に電気がついていて人がいるから、シャッター越しに会話してます」って言うと、リスナーの皆さんに楽しんでもらえますね。

――1日3時間、週に4日も高めのテンションで放送しているのは、改めて考えると凄いですね。

バカボン:K-mixは年に1度、聴取率を調べる週間(レーティング)がありますけど、ウチの番組では「毎日がレーティングにしよう」というのを合言葉にしています。東京でやっていた時もその気持ちでした。「レーティングの時だけ特別なゲストを呼んだり、特別なプレゼントを出してどうするんだ」って思うんです。むしろ、「レーティングの時よりも、今週の方が面白い」っていうのを目指してやってきました。番組開始から1年が経って、ようやく体が慣れてきたかなと思います。

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理想は“自分が聴きたい番組”

――『ピンソバ』はリスナーの番組への愛情も深いですよね。お2人のイラストを描いてきてくれる人がいたり、「番組プレゼントためのプレゼント」を送ってきたりする人がいたり。このノリの良さは、どこからくるんでしょうか?

バカボン:僕らはTシャツとステッカー以外のグッズを作ったことがないんです(笑)。

高橋:番組が始まる時に、バカボンさんが「番組はリスナーと企むもの」とおっしゃっていて、これは面白いと思いました。

バカボン:それは僕がずっと、ぼんやりと思ってたことなんです。確かラジオ関係者だったと思うけど、誰かがTwitterで「優れたラジオ番組は、パーソナリティとリスナーが企んでる」って書いてたの。僕は目標とする番組はあるけど、みんな70~80年代の番組で、今は無い番組だからどうしようと考えた時に、理想は「自分が聴きたい番組」だと思ったんです。そしたら、久米宏さんが全く同じことを言ってたの。「ラジオを始めた時に、目標が無いので、自分が一番聴きたい番組を作った」って。久米さんは「こういうレポーターがいたらいいな」と思って、永六輔さんの番組でレポーターをやっていたそうです。やっぱり、行き着くところは同じなんだなって思いました。

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――スタジオでは、バカボンさんと高橋さんが向かい合って座っていてて、高橋さんは外を背にしていますが、この並びは最初からですか?

バカボン:まず、僕は「対面して喋りたい」て言ったんです。横に並ぶやり方もあるけど、横に並ぶとお互いが見合う感じになって、お客さんを無視して喋ってしまう可能性があります。それで、上岡龍太郎さんと笑福亭鶴瓶さんの『パペポ TV』(読売テレビ)(※5)のような感じで、お客さんを感じつつも、お互いの顔を見て喋るっていうのをやりたかったんです。茉奈ちゃんを窓側にしてるのは、茉奈ちゃんの顔をスタジオの外の皆さんに見せたくないからです。「茉奈ちゃんが可愛いから見に来る」っていう風にしたくなくて、あくまでもトークで勝負したかったんです。最初の頃は「少ししたら入れ替わろうかな」と思ったけど、見に来る人も理解してくれてるみたいだし、茉奈ちゃんもサービス精神が旺盛だから、たまに外を振り返るし。それが嬉しくて、みんなが喜ぶという感じになってます。この座り方がベストかな。リスナーの皆さんに見られつつ、トークでは集中したいし、対面だとお互いの呼吸も分かりますから。例えば僕が喋っていて、向かいの表情を見たら「この話、興味ないんだな」とかも分かるので(笑)。

高橋:ななめ下を見始めたりとか(笑)。

バカボン:「今日は疲れてるな」とかもすぐ分かるので、そういうのを突っ込むことで、キャラクターも膨らみます。

高橋:鼻水が出てる時もありますからね。外のガラスに向かってなくて良かったと思います(笑)。

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“相方を生かす”番組に

――バカボンさんにとって、『ピンソバ 』での高橋さんは、どういう存在ですか?

バカボン:僕は基本的に、茉奈ちゃんをアシスタントにしたくなくて、やはり“相方”なんです。男女2人で喋る場合は、絶対に2人が際立っていかないといけない。むしろ、容姿以外のパーソナルな部分で、女性のほうにスポットが当たるようになると、番組はだいたい勝ちますね

高橋:名言きましたね!

バカボン:これは、長年ラジオをやらせていただいて、自分ですごく学んだことです。ラジオパーソナリティはひとりしゃべりが多いし、一番いいのはひとりでも面白く話せることだから「早いうちにやらなきゃいけない」と修行してた部分もあります。ですがその当時、タレントさん以外の“ラジオパーソナリティ”と呼ばれている人たちの2人しゃべりを聴いていて、「お互いに、相手の話をあまり聞いていない」と思いました。でも、僕が駆け出しの頃から聴いていた『吉田照美のやる気 MANMAN!』(文化放送)(※6)では、照美さんが目立っているように感じるけど、よく聞くと照美さんが小俣さんを際立たせているんです。そこで、「自分がやるなら基本はこれだ」と思い、下敷きにしました。それからは“相方を活かす”芸に、自分をシフトしました。

――私も『吉田照美のやる気 MANMAN!』を聞いてましたが、小俣さんと高橋さんは同じ路線にいる気がします。

高橋:えー! そうなんですか!? (ニヤニヤ)

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まるで生放送の本番さながらに盛り上がるトーク! サービスたっぷりに答えてくださるお二人のインタビューは、後編に続きます。

―― 後編はこちら

※1:バカボン鬼塚と玉川美沙のコンビで『The Nutty Radio Show 鬼玉』として 2003年にスタートした番組。(その後『おに魂』に改題)。10代を中心に人気を博し、中でも大喜利をモチーフにしたメインコーナー『今日のマル決』は『マル決本』として書籍化された。

※2:キューちゃんリクエスト:ラテン調のリズムに乗せて、リスナーから寄せられたものまねや大喜利のような無茶振りに、即興でこたえるコーナー。

※3:お風呂コント:おじいさんとおばあさんが、入浴をしている設定で行われるコント

※4:高橋さんは疲れてくると、「蛍の光」のメロディーを口ずさみながら、手でシャッターを下ろすまねをすることがある。

※5:『鶴瓶・上岡 パペポ TV』1987年4月から1998年3月まで放送された人気トーク番組。

※6:1987年から2007年にわたり、20年間放送された午後のワイド番組。吉田照美と小俣雅子との夫婦漫才のようなかけあいが絶妙で、この番組のファンを公言していた福山雅治は最終回にサプライズ出演した。

番組概要

20180109145448

■放送局:K-MIX SHIZUOKA
■番組名:『K-mix FOOO NIGHT ピンソバ』
■放送日時:月曜日~木曜日 19時~22時
■番組サイト:https://www.k-mix.co.jp/pinsoba/

インタビュー

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やきそばかおる

小学5年生以来のラジオっ子。ライター・構成作家・コラムニスト。

「BRUTUS」「ケトル」などのラジオ特集の構成・インタビュー・執筆を担当するほか、radiko.jp、シナプス「I LOVE RADIO」(ビデオリサーチ社)/ J-WAVEコラム「やきそばかおるのEar!Ear!Ear!」/otoCoto「ラジオのかくし味」/水道橋博士のメルマ旬報など連載や、番組出演を通じて、ラジオ番組の楽しさを発信。

ラジコプレミアムを駆使しながら、全国のユニークな番組を紹介するツイキャス番組「ラジオ情報センター」(水曜日 21時〜22時)も放送。全てを合わせると、年間でのべ800本のラジオ番組を紹介している。

Twitter:@yakisoba_kaoru

カメラマン

やきそばかおる / ラジコ編集部

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三島由紀夫「立派な『近代ゴリラ』になりたい」“伝説の討論会”で魅せた、紳士的でユーモラスな言動とは?

禁酒法の時代に、こっそり営業していたBAR「SPEAKEASY」。2020年の東京の街にも、そんなひそかなBARがありました。月曜から木曜の深夜1時にオープンする“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。各界の大物ゲストが訪れ、ここでしか話せないトークを展開するとか、しないとか……。

TOKYO FMの番組「TOKYO SPEAKEASY」7月22日(水)のお客様は、現在公開中のドキュメンタリー映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」の豊島圭介監督と刀根鉄太プロデューサー。ここでは映像の力、一触即発の状況で敵対する相手から“笑い”とる三島由紀夫の魅力などについて語りました。

▶▶この日の放送内容を「AuDee(オーディー)」でチェック!


(左から)豊島圭介監督、刀根鉄太プロデューサー


▼映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」の解説▼
1969年5月13日に東京大学 駒場キャンパス 900番教室でおこなわれた、作家・三島由紀夫と東大全共闘との“伝説の討論会”を軸に構成したドキュメンタリー映画。2019年に発見された当時の記録映像を修復し、関係者やジャーナリストらの証言を交えて全貌が明らかになる。ナレーションは東出昌大が担当。

*  *  *

豊島:討論の書籍(「討論 三島由紀夫vs.東大全共闘―美と共同体と東大闘争」(著)三島由紀夫、東大全共闘)を読んだのですが、映像を観ると(書籍では)半分くらいしか(真意が)伝わっていないことが分かります。書籍には、討論での発言が全部書いてあるのですが。映像の力というか。

例えば、三島由紀夫が討論の冒頭10分くらいの時間をもらって、自己紹介を兼ねて宣戦布告ではないですけど、「君たちと僕には共通点があるんだ。暴力を否定しないところである」みたいな話から始めて、ところどころで笑いを取ってくるんですよね。

刀根:つかみが上手いですよね。例えば、書籍には「自民党の政治家から頼まれて、暴力反対決議というのをやるから署名してくれと」と書かれてあって、ここに「(笑)」がついているんですけど、なんの笑いなのか分からなかったけど(映像を観たら理解できました)。

三島は敵とされている学生側(東大全共闘)からの笑いを、ちゃんと待つんですよね。そして、何とも言えない顔をして「私は生まれてから一度も暴力に反対したことがないから、署名ができませんと返事をした」と続ける。そして、またウケるという。

豊島:その辺が、ちょっと知的なことに対してプライドのある学生の心をくすぐるようなギャグを放り込むので、学生たちもつい笑っちゃうんですよね。

あと、東大全共闘が三島を揶揄するような「近代ゴリラ」と書いたポスターを(構内に)貼って、三島を待ち受けるわけですけど、三島は「『近代ゴリラ』として立派な『近代ゴリラ』になりたい」と言ってまた笑いを取る。

会場で笑いが起きるということは、相手の緊張を解くことでもあるし、自分がより言いたいことを言いやすく、やりたいことをやりやすい環境にさせる。三島は写真集の被写体になり、映画にも出ているような人だからかもしれませんが、自分をどういう状況に置いて、どういう発言をして、どういうふうに振る舞うと、自分が輝くのかということを、ものすごく理解している人だなと、この映像を観て思いました。

刀根:Wikipedia(ウィキペディア)的に言うと、“三島由紀夫の項目”が多すぎるので全体がボヤッとしか分からなくなってしまうのですが、この討論だけを掘っても相当おもしろい。逆に、そうしないと三島が見えてこない。ここだけ掘っても、まだ全然分からないんですけどね。三島は本当に頭が良い。そして魅力的。

豊島:この映画を鑑賞してくださった方々の感想をSNSなどで見るのですが、よく見かけるのが「紳士的な言葉の交わし合いがあって驚いた」と。単純な分け方をすれば、右翼・左翼という敵同士なわけで、もっと相手を罵り合うような討論を想像していたと。

実際にそうですよね。三島は当時44歳、相手は10代後半~20代前半の学生たち。言ったら子どもみたいなものですよ。その人たちを相手に、まずは真摯に人の話を聞き、自分のなかで咀嚼した上で、丁寧に返すって姿を学生たちの前で見せるわけです。学生たちもかなり面食らったのではと思います。

刀根:あの場で少しでも否定的なスタンスで入ったら、本当に殴り合いが起きたかもしれない。それと、三島が討論に行く前、「近代ゴリラ」のポスターを見てニヤリとする写真が残っているじゃないですか?「近代ゴリラ」というフレーズを、わざわざ冒頭の演説で入れて笑いを取って、どんどんみんなに興味を持たせつつ。

豊島:あと、映像で残っていることが素晴らしいと感じたのが、例えば……対立するスタンスの三島由紀夫と芥正彦さん(あくた・まさひこ:東大全共闘主催者として三島由紀夫を招聘。現・劇団ホモフィクタス主宰者)が、議論を交わした後にタバコを交換して火を点け合う姿があったり。

刀根:豊島さん、あの場面が本当に好きですよね。ロマンチストですよ。

豊島:好きですけど、そんなことはない。僕はある種、冷静にあそこを編集していますからね。ロマンチストな人がこれをどう理解するか楽しみだなと思って編集していました。

*   *   *

来週の「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は……

8月5日(水)馬場康夫さん(ホイチョイ・プロダクションズ代表)×石原隆さん(テレビプロデューサー)
8月6日(木)三枝成彰さん(作曲家)×和田秀樹さん(精神科医)

がご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!

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▶▶ 三島由紀夫は、いかに生きたのか…詳しい放送内容は「AuDee(オーディー)」で!

スマホアプリ「AuDee(オーディー)」では、スペシャル音声も配信中!
★ダウンロードはこちら→http://www.jfn.co.jp/park
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<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00~26:00
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/speakeasy/

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