怖い話を聞きたいなら…『怪談ラヂオ』夏だけではありません

『怪談ラヂオ~怖い水曜日』 写真左から、ひづきようこ、松山勘十郎、木原浩勝、佐々木孝昌

例えばスポーツの話に興味を示さない人がいても、この話にはなんだかんだ言いながらもほぼすべての人が興味を示すというのが「怪談」。

日本唯一の怪談専門ラジオ番組『怪談ラヂオ~怖い水曜日』(ラジオ関西)には、おどろおどろしい音楽や効果音はない。「ほんまもん」の怖い話がここにある。

「小学生のころ、自分のふしぎな体験を話す先生がいた。戦争体験を持つ先生もいたし。わー不思議という以上に不思議すぎて怖かった。おばけが出る話が怖いというわけではないんだ」と悟り、不思議な話、怖い話を集め始めるようになったというのが、番組パーソナリティーを務める怪異蒐集家・木原浩勝。怪談を集め始めて今年で51年になる。

木原は現場に足を運び、自分の目で見て耳で聞いて、疑問に思ったことは確かめる。話を聞くうちに相手がしどろもどろになることがある。なぜか。それは相手が「実際に経験した話ではなく、聞いた話だから」。そのとき何を思ったのか、どんな行動をとったのか、具体的なエピソードが欠けている。そのピースを埋めることができたら、「ほんまもんの怪談」となる。

番組では、リスナーから寄せられた「体験談」を、同じくパーソナリティーを務める「歌う怪談女」ひづきようこ、「怪談プロレスラー」松山勘十郎が読み上げる。事前の打ち合わせなどなく、このとき初めて話に触れる木原は、「この話はここがおかしい」と、自らが話を蒐集するときと同じスタンスで斬っていく。

木原の容赦ない指摘に「厳しすぎる」との声も寄せられるが、多くは「いい指摘をしてもらった」と前向きな声という。体験談の考察や分析に重きを置くのも、単に投稿を紹介して無条件に怖がるだけの「聞いたまんま怪談」番組ではない証拠。番組が始まって7年。寄せられる「話」のクオリティーは上がっている。どこかで聞いたような話はひとつもない。

ひづきと松山も、もともと怪談に興味があったが、番組を通してその見方が変わってきたという。ひづきは「これまでは誰かの話を100パーセント信じていた。でも番組を通して、ここはおかしいんじゃないかと思うようになった。知りたかったことを深堀りできる」といい、松山は「伝える側になって(話の中で何かが足りないんじゃないかなどの)気づきを与えてもらったのが一番大きい。拙者の人生で新しい体験」と話す。

おどろおどろしい、いかにも「怖い話」のトーンで番組は始まるが、怖さを前面に出さないよう少し軽めのトーンで進んでいく。でも話は「怖い」。佐々木孝昌ディレクターは「本当に怖いことは何か。本当に不思議なことは何かを追求する」と話す。放送できずカットした部分も、YouTubeやポッドキャストで配信する。日本のみならず、カナダやベルギーからもメールなどが届くという。

「怪談はコミュニケーションツール」と話す木原。その和は世界にも広がっている。

怪談ラヂオ~怖い水曜日
放送局:CRKラジオ関西
放送日時:毎週水曜 21時30分~22時00分
出演者:木原浩勝、ひづきようこ、松山勘十郎
番組ホームページ

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