ひとつの児童相談所の管轄が「130万人」を超える…今、抱えている問題とは

先日、児童虐待防止対策の強化に向けて、児童福祉法や児童虐待防止法などの改正案が国会に提出されました。しかし、虐待による死亡事件が後を絶たない状況です。そんななか、千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛さんが亡くなった事件で問題視されたのが児童相談所の対応でした。この事件は、児童相談所に相談をしたにも関わらず、その内容がちゃんと引き継がれず、児童相談所が保護したにも関わらず、力及ばず子どもが虐待死してしまった、という内容でした。

児童相談所とはどんな施設なのか。長年、児童虐待を取材する朝日新聞編集員の大久保真紀さん迎え、児童相談所の実態について話を訊きました。

4月2日(火)のオンエア:『JAM THE WORLD』の「UP CLOSE」(ナビゲーター:グローバー/火曜担当ニュースアドバイザー:青木 理)
http://radiko.jp/share/?sid=FMJ&t=20190402202125


■児童相談所の問題「管轄する範囲」「専門性がない」

児童相談所は子どもに関するありとあらゆる相談を受け付ける機関です。本来は親から相談を受ける機関で、養護相談、障害相談、非行相談、しつけや不登校などの育成相談、保険相談など、さまざま相談に対応しています。

青木:親が子どもの問題について相談したい場合は、児童相談所に行けばいいんですか?
大久保:はい。行ってもいいし、電話で相談もできます。たとえば「発達障害の子どもと、どう接していいかわからない」「ちゃんと育っているか心配」などの相談も受け付けます。今、市町村でもこのような相談窓口がありますが、児童相談所は原則として子どものありとあらゆる相談を受け付けています。

しかし、日本は人口あたりの児童相談所の数が少ないそう。

大久保:現在、日本では計212カ所に児童相談所が設置されています。ただ、この数は諸外国と比べて少ないです。単純に比較すると、日本は60万人に1カ所、イギリスは37万人に1カ所、ドイツでは16万人に1カ所という状況です。しかも東京や千葉、神奈川は児童相談所の数が少なく、先日虐待で亡くなってしまった栗原心愛さんを対応した千葉県柏市の児童相談所の管轄人口は130万人超です。
青木:130万人ですか! その数をひとつの児童相談所がみているわけですね?
大久保:そうです。政令指定都市など人口があまりに多い地域もそうですし、北海道の地方都市など人口は多くなくても広い場所、地域的に離れているところだと、通報があってもすぐに児童相談所の人が飛んでいけない。そのため、もう少し管轄する範囲を見直す必要があります。

また、児童相談所で働く人たちの専門性にも問題があります。

大久保:基本的に児童相談所で働いているのは、都道府県や政令指定都市の職員です。その職員が任用資格を持っている場合に、児童福祉司と呼ばれる職員に任用されます。
青木:児童福祉司に任用されないと、児童相談所で対応することができないわけですか?
大久保:できなくはありませんが、主に児童福祉司が対応しています。たとえば見習いで1年は児童相談所にいて、その後、児童福祉司になるケースもあります。また、都道府県によりますが、児童相談所には一般行政職として採用される人と、福祉職として専門職採用される人がいて、専門職採用された人が全国で75パーセントです。しかしながら25パーセントは一般行政職となります。

加えて、児童福祉司のスタートラインの専門性は高くなく、勤務年数も3年未満が44パーセントと経験が浅いという問題もあると大久保さんは指摘しました。


■児童相談所にある「48時間ルール」

児童相談所に児童虐待で相談する場合、どのようなケースが多いのでしょうか。

大久保:学校や保育園などで、子どもが顔を腫らせているのを見つけて、その子に訊いたら「お父さんに殴られた」と答えたから通報する場合もあります。また、親が「子どもが泣いてどうしようもなく、殺してしまいそうです」とSOSで通報する場合もあります。あるいは近所の人が「隣の家で親が子どもを叱りつけて、子供がいつも泣いている」という通報もあります。

そういった通報を受けると、児童相談所は原則的に48時間以内に子どもに直接会い、子どもの安全を確認する「48時間ルール」を設けています。

青木:子どもの安全を確保する権限はどこまであるんですか?
大久保:親が同意しなくても職権で子どもを保護することができますので、児童相談所には絶大な権限があります。子どもを保護した場合、親に「虐待が疑われたため、あなたの子どもを保護しています」と話し、児童相談所に来てもらいます。そのあと、事実確認をして、虐待が認められた場合は親に指導することになります。

メディアなどでは児童相談所の対応が問題視されているなか、大久保さんは「たしかに児童相談所の不手際があることも事実だが、児童相談所が全て悪いとは言えない」と話します。

大久保:児童相談所では人員が足りない、お金も足りない、専門性も足りないなどの問題があるため、もっと児童相談所に人と専門性を備える必要があります。お金の面にしても、日本が子どもの虐待対応にかける公的資金はアメリカの30分の1、オーストラリアの3分の1と非常に低い水準にあります。また、子どもを一時保護したあと、親元に帰せない場合は、里親や施設など次の場所に移動させる必要がありますが、その先が日本は海外に比べて非常に少ないです。

もっと詳しく知りたい方は、児童相談所で活動する児童福祉司たちに1カ月にわたり密着し、虐待対応の最前線を追った大久保さんの著書『ルポ 児童相談所』もぜひ手に取ってみてください。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時−21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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杏が興味津々の「寝食を忘れてのめり込める本」 大倉眞一郎が渾身の一冊を紹介

J-WAVEで放送中の番組『BOOK BAR』(ナビゲーター:大倉眞一郎・杏)。毎週ナビゲーターの2人が「今読むべき本」として、おすすめの本を持ち寄っています。最終回となる3月30日(土)のオンエアでは、リスナーのメッセージをもとに、大倉と杏が本を紹介しました。


■短時間でサクッと読めて気分転換になる1冊

まずは、杏と同じ3姉妹のお母さんからのメッセージを紹介しました。

自分の時間があまり取れません。夜も娘と寝落ちして、朝に「また、やってしまった」の繰り返し。『BOOK BAR』で紹介していた本を図書館で借りたり、買ったりしていますが、なかなかそれが読めずストレスになるばかりです。娘たちはもちろんかわいいし、手がかかるこの時間はいくばかりもないということはわかっています。贅沢な悩みなのです。ただ、少し今の生活から抜け出してみたい。短時間でサクッと読めて気分転換になるような本はありますか?

:わかる。子どもの寝かしつけで一緒に寝落ちするのは寝てるんじゃないの、あれは気絶。これは声を大にして言いたい。だから、疲れも取れないし、そのあと起きて「仕事とか家事とかをやらないと」って思っても、脳みそが働かなくてだるい感じになってしまう。
大倉:いったん気絶しちゃうとね。
:不本意な気絶なんです。そんなときに「一緒にゴロゴロしてていいじゃん」なんて言われたら……。
大倉:「そんなこと一言でも言ってみろ」ってなるよね。

そこで、杏が紹介したのはキム・ウンジュさん著、ヤン・ヒョンジョンさんがイラストを担当した『+1cm(プラスイッセンチ) たった1cmの差があなたの世界をがらりと変える』です。

見開きでひとつのトピックが完結しているこの本は、かわいいイラストとともに、いろいろな問いかけをしています。たとえば、「空色」と言えば何を思い浮かべるか、というもの。

:だいたいの人は空色を水色と答えますが、朝焼けはオレンジだし夕焼けはちょっと赤く、曇り空はグレーで夜の空は黒ですよね。そんな「とらわれない発想をちょっとしてみて」っていう。「想像してみて」とか「ちょっと発想を変えてみて」っていうメッセージです。

この本はストーリーがなく、気分転換にパラパラと読める本なので、「忙しいと思うけど合間合間に読めるんじゃないかな」とおすすめしました。
 


■大倉「この本を読まずに死ねない」

続いて、48歳の主婦で図書館の司書として働いていたこともある読書家リスナーからのメッセージを紹介しました。

はじめて読む作家の本を手に取るものの、心を揺さぶられなくなりました。読書をしてガッカリすることが何よりも苦手なので、ついお気に入りの本を再読したり、同じ作家の本を読んでばかりいます。なんとなく似たような、同じような話ばかりで、最近「寝ないで読み切ってしまった」ということがなくなりました。そこで、時間と現実と寝食を忘れるような一冊を教えてください。

そこで大倉が紹介したのは、半村 良さんの伝奇小説『妖星伝』。

大倉:この本を読まずに死ぬな。死ぬのはこの本を読んでからでしょ、という本です。
:寝食を忘れてのめり込める本なんですね。
大倉:100パーセント自信があります。

現在は3巻の文庫本として発売していますが、もともとは7巻の単行本であり、各巻で文字の色がちがうという非常に変わった本でした。

大倉:この本の内容は、地球というこんな星になぜ生まれてきてしまったのか。これだけの命が咲き乱れているなか、お互いにむさぼり食い合いながら成り立っているのはなぜか、ということから半村さんが大風呂敷を広げてストーリーを展開しはじめます。歴史も絡むし、ちょっとエッチな部分も入るし、ありとあらゆるエンタテインメントがこの本に詰まっています。
:時代モノでもあるんですか?
大倉:一応舞台は江戸なんだけど、その前の時代から、そしてその後の時代まで、「これ一体、どうするつもり?」っていうくらいの本です。スーパーエンタテインメントだけど最後は哲学の話になります。

大倉は「ジャンルは関係なくのめり込んでほしい」とリスナーにおすすめしつつ、この本を杏にプレゼント。杏は「持ち歩くには難しい厚さだから、家で没頭します」と喜んでいました。

 

 

大倉眞一郎・杏


■杏「本って果てがない」

11年にわたりお届けしてきた『BOOK BAR』も今回で最終回。大倉と杏はこれまでを振り返るとともに、「これまで番組を続けてこられたのは、みなさんのおかげ」と感謝を伝えます。

:まだまだ紹介できていない本もたくさんあるし、読んでいない本もたくさんあるから、本って果てがないですね。
大倉:はじまりがあるから終わりがあるけど、終わりがあるからはじまりもあります。
:私と大倉さんは、実はお互いが紹介してきた本をほとんど読んでいないんです。これからは、その本たちを読んでいく新しい世界がはじまりますね。

4月からは、大倉と原カントくんがナビゲートを務める、好きなものがブクブクと溢れ出す番組『BKBK(ブクブク)』がはじまります。オンエアは火曜26時30分から27時。こちらもお楽しみに!

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【番組情報】
番組名:『BOOK BAR』
放送日時:土曜 22時−22時54分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/bookbar/

 

 

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