戦争に対して、アートは何を示してきたか? 軌跡を辿る「ルートヴィヒ美術館」の展覧会が開催中
ドイツ・ケルンのルートヴィヒ美術館は、20世紀初頭から現代までの美術作品が収蔵される世界有数の美術館。そのコレクションの数々は、市民のコレクターによる寄贈を軸に形成されてきた。本展覧会では、ピカソやウォーホルの絵画をはじめ、彫刻、写真など計152点の作品を、寄贈にかかわった市民コレクターたちに焦点を当てて紐解いていく。
ここではオープニングに先駆けて行われた、内覧会のレポートをお届けする。
入ってまず私たちを出迎えるのは、ルートヴィヒ美術館の設立、そしてコレクションの発展において重要な役割を果たしたコレクターのヨーゼフ・ハウプリヒ、ペーター・ルートヴィヒの大きな肖像画だ。
ケルンで弁護士として活躍したヨーゼフ・ハウプリヒは、第二次世界大戦前の優れたドイツ近代美術作品を収集したコレクター。ハウプリヒはナチ・ドイツ時代に「退廃芸術」としてナチに没収された作品を購入し、第二次世界大戦中にケルンを襲った262回にもおよぶ空爆からも守り抜いた。戦後まもない1946年、そのコレクションをケルン市に寄贈し、戦争で文化施設を多く失くした当時のドイツに大きな希望を与えた。彼が収集した表現主義や新即物主義などのコレクションからは、20世紀初頭の近代社会の不穏な雰囲気、そしてそこに生きる人々の苦悩が感じられる。
パウラ・モーダーゾーン=ベッカー《目の見えない妹》 1903年頃 油彩/厚紙 32.2 × 33.5 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 76/2756. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c001546)
ヴィルヘルム・レームブルック《振り返る少女のトルソ》 1913/14年 着色された人造石 高さ:95.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 76/SK 0061. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, Michael Albers, rba_d031338)
カジミール・マレーヴィチ《スプレムス 38番》 1916年 油彩/カンヴァス 102.5 × 67.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01294. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_d033965_01)
アレクサンドル・ロトチェンコ《ライカを持つ少女》 1934年(プリント:1934年以降) ゼラチン・シルバー・プリント 40.0 × 29.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, Sammlung Fotographie ML/F 1978/1072. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, rba_c009362)
またアンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインなど、ルートヴィヒ夫妻が収集したヨーロッパ随一のポップ・アートコレクションも多数来日。大量消費を前提とした大衆文化を批評すると同時に美術とは何かを問いかけた作品たちからは、1960年代の社会やその時代を生きた人々の暮らしが垣間見えた。
そのほかにも、グルーバー夫妻の寄贈から発展した豊かな写真コレクションを楽しめるのも本展の醍醐味の一つ。時代を超えて受け継がれてきた、市民のアートに対する強い情熱が満ちあふれた展覧会となっている。
ヴォルス《タペストリー》 1949年 油彩/カンヴァス 54.0 × 73.0 cm Museum Ludwig, Köln / Cologne, ML 01167. (Photo: © Rheinisches Bildarchiv Köln, Peter Kunz, rba_d032855_01)
(写真右から)ルートヴィヒ美術館・イルマーズ・ズィヴィオー館長、トラウデン直美、国立新美術館・長屋光枝学芸課長
(文=J-WAVE NEWS編集部 強瀬 早穂莉)
開催概要
東京会場会期:2022年6月29日(水)〜2022年9月26日(月)
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7丁目22−2
展示室:国立新美術館 企画展示室2E
時間:10:00〜18:00
※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
休館日:毎週火曜日
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
展覧会公式HP:https://ludwig.exhn.jp
主催:国立新美術館、ルートヴィヒ美術館、日本経済新聞社、TBS、BS-TBS
協賛:損保ジャパン、ダイキン工業、三井不動産
後援:ドイツ連邦共和国大使館、J-WAVE、TBSラジオ
また本展は、京都巡回も決定している。
巡回展 京都会場
会期:2022年10月14日(金)〜2023年1月22日(日)
会場:京都国立近代美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
時間:10:00~18:00
※毎週金曜日は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、開館時間は変更となる場合があります。来場前に最新情報をご確認ください。
休館日:月曜日(ただし、2023年1月9日は開館)および年末・年始、1月10日(予定)
TEL:075-761-4111
主催:京都国立近代美術館、ルートヴィヒ美術館、日本経済新聞社、テレビ大阪、BS-TBS、京都新聞
協賛:岩谷産業、損保ジャパン、ダイキン工業、竹中工務店、三井不動産
後援:ドイツ連邦共和国総領事館