村上春樹「小野リサさんが歌うと、人柄っていうか、湿っぽくならないところがいいですね」“ボサノヴァの女王”のカバー楽曲の魅力を語る

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。2月25日(日)の放送は「村上RADIO~今日はすべて日本語の歌詞です~」をオンエア。洋楽が流れることが多い「村上RADIO」では、全て日本語の曲でお送りするのは放送開始以来初の試み。日常的に洋楽を聴いているという村上さんが、ときどき無性に日本語の歌を聴きたくなるときがあるそうです。そんなときに聴いている音楽の中から、村上DJが厳選した曲をお届けしました。
この記事では中盤3曲、les 5-4-3-2-1「YESTERDAY」、ジミー入枝とザ・キングタウンズ「憧れのハワイ航路」、小野リサ「爪」について語った概要を紹介します。



◆les 5-4-3-2-1「YESTERDAY」
「レ・ファイブ・フォー・スリー・ツー・ワン」というちょっと変わった名前のグループが歌います。曲のタイトルは「イエスタデイ」、でもビートルズの曲とはぜんぜん無関係のオリジナル曲です。リード・シンガーは松野アリミ、プログラムはサリー久保田、ギターはここでもまたナポレオン山岸です。
このアルバム、1995年にリリースされていますけど、どこでどうしてこのCDを手に入れたのか、ぜんぜん記憶にありません。正直言ってこの手の音楽って僕はそんなに聴かないんだけど、でもこのアルバムは全体の雰囲気が気に入って、ずっと手もとに置いています。

◆ジミー入枝とザ・キングタウンズ「憧れのハワイ航路」
しつこいようですが、ここでまた雰囲気ががらっと変わります。ジミー入枝とザ・キングタウンズは以前にもこの番組で一度かけたことがあります。そのときは「君恋し」をかけたんですけど、そのときどっちにしようかとさんざん迷ったのが「憧れのハワイ航路」でした。今日はいい機会なので、こっちをかけます。

ジミー入枝とザ・キングタウンズは鹿児島のローカル・ドゥワップ・バンドですが、この「ドゥーワップde昭和歌謡」はなかなか素敵な出来のアルバムになっています。鹿児島のおっさん4人が楽しんで、肩寄せ合ってドゥワップをやっているっていう雰囲気が、ひしひしと伝わってきます。いいですよね。

オリジナルの「憧れのハワイ航路」は昭和23年に岡晴夫さんの歌でヒットしました。映画にもなりまして、主演は岡晴夫と美空ひばり。ひばりさんはまだ子役ですが、2人でがんがん歌いまくります。監督はコメディの巨匠・斎藤寅次郎、タイトルは「憧れのハワイ航路」なんだけど、ハワイのシーンは紹介フィルムみたいにちょっと出てくるだけで、東京の下町が舞台の母子ものです。当時の日本は貧乏だったから、ハワイ・ロケなんて夢の夢だったんですね。

◆小野リサ「爪」
次は小野リサさんが「爪」を歌います。爪を嚙(か)むのはよくないわ……。1958年にヴァイブラフォン奏者の平岡精二さんが作曲した曲です。ペギー葉山さんの歌でヒットしました。アレンジとピアノ演奏はビル・カントスです。2019年の録音です。
けっこうしんみりした歌詞なんだけど、小野リサさんが歌うと、人柄っていうか、湿っぽくならないところがいいですね。歌謡曲っぽくない、というか。

----------------------------------------------------
2月25日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 3月4日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:村上RADIO~今日はすべて日本語の歌詞です~
放送日時:2月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
村上RADIO
放送局:TOKYO FM
放送日時:2024年2月25日 日曜日 19時00分~19時55分

※該当回の聴取期間は終了しました。

タグ

EV市場に変調……アクセルをふかしはじめた日本勢への影響は?

政策アナリストの石川和男が5月19日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。米EV(電気自動車)大手テスラが、減収減益や人員削減に追い込まれるなど変調をきたすEV市場について専門家と議論。今後の日本がとるべきEV政策やメーカーの戦略について提言した。

※画像はイメージです

米EV大手テスラは4月15日、世界で従業員の10%以上を削減すると発表。同社の今年1-3月期の決算は、前年同期に比べ4年ぶりの減収減益となったほか、EVの販売台数も9%減となった。一方、安値攻勢をかける中国メーカーBYDの今年1-3月期決算は、純利益が前年同期に比べ11%増、販売台数は13%増となったものの、伸び率は減少した。

この現状について、ゲスト出演した自動車業界に詳しい経済ジャーナリスト井上久男氏は「中国では今、景気低迷を背景にした価格競争からEVの値引き販売が起きている。今年3月に中国のスマホ大手シャオミが出したEVが、かなり評判がよく、まさに走るスマホ。テスラより安い価格で市場投入してきており、中国のEV大手BYDが“シャオミ潰し”に動くなど、中国勢同士で競争が起きていて第二のEV競争が始まっている。テスラはそれに巻き込まれている」と解説した。

日本勢について井上氏は「まだ商品をほとんど出せていない。値引き競争したくてもできない。それが不幸中の幸いで、値引き競争に巻き込まれずに済んでいる」と指摘。あわせて「EVが新しいもの好きな人たちの間である程度一巡して、いわゆるキャズムのような状態になっている。充電環境の悪さや、補助金がないと高くて買えないなどの理由から、再び世界でHV(ハイブリッド車)が売れ始めている」と明かした。

一時はEVに関して出遅れが指摘された日本メーカーだが、井上氏によると「テスラやBYDが引っ張ってきた、この4年くらいのスピードが早すぎた」とのこと。井上氏が取材した大手国内自動車メーカーの経営陣は「(EVが)想定内の普及スピードに戻ってきた」と話したという。

井上氏は「中国では“賢い車”、車のスマート化が加速している。日本メーカーは中国勢に比べると、まだスマート化に関するノウハウは少ない」とも述べ、トヨタと中国SNS大手テンセント、日産と中国ウェブ検索大手バイドゥが提携したように、車のスマート化技術の強化が重要だと指摘した。

そのうえで、今後日本メーカーが世界のEV市場で勝てる価格について聞かれた井上氏は「市場によって違うと思うが、アメリカであれば補助金なしで400万円くらい(1ドル150円程度を想定)のEVを出せば売れると思う」と述べる一方、「日本国内では150万円くらいだと思う。国内は軽自動車が中心のマーケットになっていて、可処分所得も伸びず、高齢者も増えるなかで国民の足となっている。地方に行けば一人一台。ガソリンスタンドも減少する中、軽自動車のEVでもう少し安いものが出れば爆発的に売れると思う」との見通しを示した。

最後に石川は「(今のEV価格競争を)日本が傍観者として見ているのは、実はいいこと。日本メーカーは、競争を見極めたうえで売っていくことができる。最終的に日本メーカーが大事にしなければならないのは価格戦略。いいものが売れるのではなく、売れるものがいいもの。メーカーが価格戦略を立てられるよう、国も支援策をふんだんに出して、国策として日本のEVメーカーを育てていくべきだ」と持論を述べた。

Facebook

ページトップへ