村上春樹「日本語の歌詞をじっくり聴くのも、たまにはいいものですね」原由子、高田渡…“日本語”楽曲特集を振り返る

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。2月25日(日)の放送は「村上RADIO~今日はすべて日本語の歌詞です~」をオンエア。洋楽が流れることが多い「村上RADIO」では、全て日本語の曲でお送りするのは放送開始以来初の試み。日常的に洋楽を聴いているという村上さんが、ときどき無性に日本語の歌を聴きたくなるときがあるそうです。そんなときに聴いている音楽の中から、村上DJが厳選した曲をお届けしました。
この記事では後半2曲、高田渡「鎮静剤」、原 由子&稲村オーケストラ「愛して愛して愛しちゃったのよ」、さらに“今日の言葉”と寺山修司について語った概要を紹介します。



◆高田渡「鎮静剤」
フォークシンガー、高田渡さんがマリー・ローランサンの詩にメロディーをつけて、歌います。タイトルは「鎮静剤」。画家のマリー・ローランサンが詩も書いていたって、僕は知らなかったんですが、これがいいんです。その歌詞につけた高田さんのメロディーもとても素敵です。

これは『日本に来た外国詩…。』というタイトルのCDに入っているのですが、これ、なかなか聴き応えのあるアルバムです。ラングトン・ヒューズから、ジャック・プレヴェールから、エミリー・ディッキンソンまで、日本語に訳された外国語の詩を、全部で15曲歌っています。そして、そのほとんどに高田さんがメロディーをつけています。他にも紹介したい曲がいくつもあるんですが、今日はこの「鎮静剤」を聴いてください。

ちなみに高田さんは1949年1月1日生まれ。僕と誕生日が11日しか違わないんですね。2005年に56歳で亡くなっています。
このCD、中古屋さんのバーゲンで買ったんだけど、なんか安くて申し訳ないなあみたいな感じがします。

◆原 由子&稲村オーケストラ「愛して愛して愛しちゃったのよ」
最後は、ぱっと明るく行きましょう。お馴染みサザン・オールスターズの原由子さんが歌います。和田弘とマヒナスターズの大ヒット曲「愛して愛して愛しちゃったのよ」のカバー。アレンジがとにかく素晴らしいですね。映画「稲村ジェーン」のサウンドトラック盤に入っています。バックバンドは稲村オーケストラです。



<クロージング曲>
Quincy Jones「Setembro (Brazilian Wedding Song)」

日本語の歌詞をじっくり聴くのも、たまにはいいものですね。お楽しみいただけましたでしょうか?
今日のクロージング音楽はクインシー・ジョーンズの演奏する「セテンブロ」です。美しいメロディーですね。副題は「ブラジリアン・ウェディング・ソング」となっています。
    


今日の言葉は寺山修司さんの言葉です。さっきかけた「ふしあわせという名の猫」の歌詞を書いた寺山修司さんです。

花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生だ

実はこれは寺山さんの作った詩ではありません。古い中国の漢詩を、井伏鱒二さんが意訳したものです。でも寺山さんが紹介して有名になりました。僕も大学生のときに寺山さんの本を読んでこの言葉を初めて知りました。人生のつらい局面を、この詩の一節に何度も助けられて生きてきたと、寺山さんはどこかで告白していました。
そして彼はその「返歌」というのでもないけど、これと対になるリリックを残しています。こちらは寺山さんのオリジナルです。

さよならだけが人生ならば
また来る春は何だろう

いいですね。また来る春を待ちましょう。それではまた来月。

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2月25日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 3月4日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO~今日はすべて日本語の歌詞です~
放送日時:2月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
村上RADIO
放送局:TOKYO FM
放送日時:2024年2月25日 日曜日 19時00分~19時55分

※該当回の聴取期間は終了しました。

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EV市場に変調……アクセルをふかしはじめた日本勢への影響は?

政策アナリストの石川和男が5月19日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送Podcast番組「石川和男のポリシーリテラシー」に出演。米EV(電気自動車)大手テスラが、減収減益や人員削減に追い込まれるなど変調をきたすEV市場について専門家と議論。今後の日本がとるべきEV政策やメーカーの戦略について提言した。

※画像はイメージです

米EV大手テスラは4月15日、世界で従業員の10%以上を削減すると発表。同社の今年1-3月期の決算は、前年同期に比べ4年ぶりの減収減益となったほか、EVの販売台数も9%減となった。一方、安値攻勢をかける中国メーカーBYDの今年1-3月期決算は、純利益が前年同期に比べ11%増、販売台数は13%増となったものの、伸び率は減少した。

この現状について、ゲスト出演した自動車業界に詳しい経済ジャーナリスト井上久男氏は「中国では今、景気低迷を背景にした価格競争からEVの値引き販売が起きている。今年3月に中国のスマホ大手シャオミが出したEVが、かなり評判がよく、まさに走るスマホ。テスラより安い価格で市場投入してきており、中国のEV大手BYDが“シャオミ潰し”に動くなど、中国勢同士で競争が起きていて第二のEV競争が始まっている。テスラはそれに巻き込まれている」と解説した。

日本勢について井上氏は「まだ商品をほとんど出せていない。値引き競争したくてもできない。それが不幸中の幸いで、値引き競争に巻き込まれずに済んでいる」と指摘。あわせて「EVが新しいもの好きな人たちの間である程度一巡して、いわゆるキャズムのような状態になっている。充電環境の悪さや、補助金がないと高くて買えないなどの理由から、再び世界でHV(ハイブリッド車)が売れ始めている」と明かした。

一時はEVに関して出遅れが指摘された日本メーカーだが、井上氏によると「テスラやBYDが引っ張ってきた、この4年くらいのスピードが早すぎた」とのこと。井上氏が取材した大手国内自動車メーカーの経営陣は「(EVが)想定内の普及スピードに戻ってきた」と話したという。

井上氏は「中国では“賢い車”、車のスマート化が加速している。日本メーカーは中国勢に比べると、まだスマート化に関するノウハウは少ない」とも述べ、トヨタと中国SNS大手テンセント、日産と中国ウェブ検索大手バイドゥが提携したように、車のスマート化技術の強化が重要だと指摘した。

そのうえで、今後日本メーカーが世界のEV市場で勝てる価格について聞かれた井上氏は「市場によって違うと思うが、アメリカであれば補助金なしで400万円くらい(1ドル150円程度を想定)のEVを出せば売れると思う」と述べる一方、「日本国内では150万円くらいだと思う。国内は軽自動車が中心のマーケットになっていて、可処分所得も伸びず、高齢者も増えるなかで国民の足となっている。地方に行けば一人一台。ガソリンスタンドも減少する中、軽自動車のEVでもう少し安いものが出れば爆発的に売れると思う」との見通しを示した。

最後に石川は「(今のEV価格競争を)日本が傍観者として見ているのは、実はいいこと。日本メーカーは、競争を見極めたうえで売っていくことができる。最終的に日本メーカーが大事にしなければならないのは価格戦略。いいものが売れるのではなく、売れるものがいいもの。メーカーが価格戦略を立てられるよう、国も支援策をふんだんに出して、国策として日本のEVメーカーを育てていくべきだ」と持論を述べた。

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