茂木健一郎「自分と他人を“比較”するのは健全」悩みを抱える相談者に脳科学視点でアドバイス

脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。
TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。
4月6日(土)の配信では「他人と比較して焦る気持ちの対処法」に関する質問に答えました。


パーソナリティの茂木健一郎



<リスナーからの相談>
私は今、大学院で勉強する日々です。しかし、友人たちに遅れをとっているように感じて、焦る気持ちがあります。こうした焦る気持ちを落ち着かせたいのですが、脳科学で解決できないでしょうか?

<茂木の回答>
脳科学的な視点から見ると、「比較する」のは健全なことです。相談者さんは今大学院で勉強していて、お友達はお友達で別の人生のステージを歩まれていると思うのですが、比較したときに、「友達と違うな」とは感じると思います。

問題なのは、そのときに「後れを取る」という認識を持ってしまうことです。実際には、それぞれの道を進んでいるんですよね。私は(大学時代に)物理の学部と、そのあと法律の学部で2年間勉強して、大学院に行きました。大学院を出て博士号を取ったときは、30歳になっていたと思います。そのときの友達は、当然社会人になっているので、みんなと比較したときに「違うな」とは思いましたが、後れを取っているとは思わなかったです。

そういう脳の解釈や、ある事実があったときにどう解釈するかは、前頭葉の働きが関係しています。特に、自分を客観的に見る「メタ認知」が大事なのですが、そのなかでも最近研究上注目されているのが、「Reappraisal(再解釈)」と呼ばれる機能です。

相談者さんは今、後れを取っているという解釈をしているわけですよね。その解釈を変えて、「私は私のプロジェクトをやっている」と考えてみてはいかがでしょうか。お友達は仕事というプロジェクト、相談者さんは研究というプロジェクトを進めているのであって、そこには多くの共通点があります。目標があって、やるべきことがあって、限られた時間のなかでそれをこなしていきますよね。

また、他の人と協力や議論をしたり、いろいろな文献やデータを集めて解析したりもするでしょう。実は、会社で仕事をされている方と、相談者さんのやっていることはあまり変わりません。自分と他人の違うところだけじゃなくて、共通点も見つけていくと、焦りはなくなっていくと思います。

では、前頭葉の解釈を変えるためにはどうすればいいのでしょうか。よく言われる例ですが、コップの水が「半分しかない」というのは別の見方をすると、「まだ半分ある」ということになります。多角的に自分の状況を見るということが大事なのですが、そのきっかけになるのが、「自分と違う人生を歩んでいるお友達と話すこと」です。

「隣の芝生は青く見える」とは言いますが、自分が想像していた以上に友達は仕事が大変で悩んでいるかもしれません。また、友達によっては、ひょっとしたら「私も大学院に戻って研究しようかな」と考えている可能性もあります。他人と比較することで、自分の人生を多角的に見る訓練ができます。

僕自身の人生の経験からも言えることなのですが、人生のどこかの2年、3年、4年というのは、あとから振り返るとなんの意味もないぐらい小さなことなのです。そのときどきに自分がやりたいこと、やるべきことをやっていることのほうが、よほど大事だと思うのですよね。

ですので、相談者さんもぜひ前頭葉の再解釈、この働きで自分の今の状況をポジティブに解釈いただきたいです。後れを取るというよりは、違うことをやっている、だけど共通点もずいぶんあると捉えてみてください。そういう形で少しずつ自信につなげて、落ち着きを取り戻していただけたらなと思います。

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音声版「茂木健一郎のポジティブ脳教室」
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<番組情報>
番組名:茂木健一郎のポジティブ脳教室
配信日時:毎週土曜 22:30配信(予定)
パーソナリティ:茂木健一郎
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経済ジャーナリスト・町田徹が毎週注目すべき国内外のニュースを徹底解剖。日本経済が抱える問題の本質、激動の国際情勢の行方について、時に冷徹に、時に熱く、語ります。

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