いとうせいこう「ダブで社会的なメッセージを伝えたい」
InterFM897で毎週金曜よるに放送しているダンスプログラム『TOKYO SCENE』(DJs: MC RYU, YonYon)。9時台のゲストコーナーには、いとうせいこうを中心にDUBFORCEのメンバーで構成される、いとうせいこう is the poetが登場。
世界一のメンバーで構成された、いとうせいこうのダブバンド
MC RYU:いとうせいこうさんは、俺らからしたらヒップホップのパイオニアでいらっしゃったわけですが、そのせいこうさんが今まさかダブに注目してるとは思わなかったんですよ。
いとうせいこう(以下、いとう):ヒップホップをやってた当時からダブは、1曲はやってたんですよ。当時からジャマイカ人的な乗せ方みたいなのもやってたし。でも89年にラップの2枚組アルバムをだして東阪2カ所でライブをやった時に、ヤン富田さんとDUB NASTER Xさんが音やってて。そしたら2人が音楽で突っ走り始めちゃって、「いとうくん好きにやってていいよ」って。当時フリースタイルなんてないし、自分の曲の一節をやるんだけど、ラップだと決まった小節数をやらなくちゃいけなくて音楽にならないんですよ。で、これ何なんだって思って1回ラップやめて。十何年して、亡くなっちゃった朝本浩文の追悼イベントで集まったメンツの中で詩を読む機会があったんです。そしたら全員が言葉にものすごく反応して。僕が十何年悩んできたことはこれで解決するんだって思ったのが、is the poetの始まりでした。
MC RYU:いとうさんのヒップポップへの道ってどういう形で始まったんですか?
いとう:ラジオでFEN(現AFN:米軍放送)を聴いてた時に、聴いたことない祭囃子みたいなビートが聴こえてきて、何だこれは!?って思ったのが始まりで。言葉を色々乗せてくのはカントリーでも色んなのでやってたからあの感じなんだけど、なんかが違うな、面白いなと思って構造を勉強しました。ミュージシャンじゃない人でも音楽をやれるのがヒップホップじゃないですか。ダブはエンジニアがやれるものじゃないですか。で、やっぱり僕そういうのが好きなんだなと思って。
MC RYU:僕らとしては、いとうさんがまだ前へ突っ走ってくれてるのがすごく嬉しいわけですよ。それが、Watusiさんとってところがさらに嬉しくて。
Watusi:このバンドはライブやった時に入ってくれた人が自動的にメンバーになるの。OKAMOTO'Sみたいなもんよ(笑)。
MC RYU:そういうことなんですね。じゃあダブとヒップホップの一番の違いって何ですか?
いとう:今は特に完全に一緒になっちゃってますよね。初めてトラップの乗せ方聴いた時にジャマイカンだなと思って。これレゲエの感じあるな、トーン同じだし同じこと繰り返すし。しかもすごい短い時間で。だから結局同じところに帰るんだなと。
MC RYU:なるほどね。僕最近のヒップホップってトラックがミニマル(最小限)で、ラッパーにすごくプレッシャーかかってる気がするんですけど(笑)。今のラッパーの子たちみんな頑張ってますよね。スキルすごく高いし。でもその中で見てみるとダブってメッセージ一番伝えやすいですか?
いとう:そうですね。Linton Kwesi Johnsonって偉大な人がロンドンにいて、社会的なことを踊れるように演説して。それを最初に聞いた時に本当に素晴らしいなと思ってたから、自分も日本語でそれをやってみたいと思ってたし、やってたつもりだったけど、今回はもっとその場のアドリブを全部やっていいというか。(龍山)一平もWatusiさんも(屋敷)豪太さんもDub Master Xもみんな、僕が同じ曲を同じようにやるとは誰も思ってないから。むしろ変えてくれよ!くらいに思ってるから、その日に思ったこととか何でも言えるわけですよ。
MC RYU:曲作りはラップみたいに書いていくんですか?アドリブが多いんですか?
いとう:アドリブですね。というかiPadに自分の詩とか過去の詩とか人の俳句とか演説とかいっぱい入ってて、それを音楽きいて僕が次々切り替えていくって感じです。
Watusi:打ち合わせなくて、本番で勝手にいろんなところからサンプリングして出すから、次のネタ入ったなと思ってこっちでも次に行って。ネタを行ったり来たりしながら、あ、サビに行くんだなって思ったら、せーのでサビになだれ込むっていうのをずっと聴いてる。
いとう:だいたい一平が最終的に終わらせろよって役やらされるから、彼のキーボードかわいそうなんですよ(笑)。
龍山一平(以下、龍山):みんなが勝手にいなくなっていって、ああ俺が終わらすのかって感じ。
MC RYU:屋敷さんは?
いとう:僕はドラムの前にいてiPadでなんか読んでるじゃないですか。で、ここで一息入れたいなって思った時に、ストンと一息入っちゃうんですよね。何で!?って。その後、急にみんなサでビにドンと入ったり、何でこのメンバーはそういうことができるんだろって。
MC RYU:さすがだね!俺から言わせてもらえば世界一のメンバーですから。
いとう:本当にそう思います。
社会的なことをきちんとやる、Bob Marleyのように
MC RYU:せいこうさんが、今一番、歌いたいところってどういうことなんですか?
いとう:基本的に社会的なことをきちんと、体にくるようなやり方でやりたいと思っていて。それで踊れて、考えかたも変わるってすごいことじゃないかなと。やっぱり自分は、Marvin GayeやBob Marleyがすげえと思ってきた部分がそこだったから。僕らがやることで、それが広まっていくといいなと思っています。
MC RYU:なるほどね。ちなみに今せいこうさんが影響を受けてるアーティストいますか?
いとう:Cornel Westっていうアメリカの黒人の大学教授がいるんですけど、よくデモで捕まったりしてて。その人が黒人の歴史とかの講義みたいなものをいろんなヒップホップアーティストとコラボしてアルバム出してるんですけど、それを聴いた時にCornel Westに勝ちたい!と思って。
MC RYU:お願いしますよ、せいこうさん。ぜひやってください!
いとう:それには、それをわかってくれるこのメンバーがいないとできないっていう。
MC RYU:Watusiさんはどんなことを歌いたいですか?
Watusi:今クラブが弱ってるっていうけど、面白いやつはいっぱいいるじゃない?現場にいく人はわかってるけど、それをもっと発信したくて。これを何とか世界に発信して、3、40年後には(海外の人が)日本は面白いなって思うようにしたい。
MC RYU:じゃあ今度はキーボード担当の龍山さんはどうですか?
龍山:やっぱり貧困とか差別とかが表に出る時代になってきたから、目の前にいる人に手を差し伸べていくっていうのをみんながやっていければいいのかなということを思ってて。
いとう:一平は本当のお坊さんだからね。
MC RYU:言うこと違うね(笑)。
龍山:音楽も目の前にいる人に対してやるものだから、その気持ちでそういうのをやっていければな、と思いました。
- TOKYO SCENE
- 放送局:interfm
- 放送日時:毎週金曜 20時00分~23時00分
- 出演者:MC RYU、 YonYon
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