変形菌を知ることは「生き物が自己を知ること」、変形菌のディープな世界

The Dave Fromm Show ©InterFM897

2月28日のInterFM897『The Dave Fromm Show』内「嘉衛門 presents The Road」のコーナーは、10年以上「変形菌」と暮らし、研究を続けてきた増井真那さんをお招きしました。知られざる変形菌ワールドへようこそ。

変形菌を学ぶことは、生き物にとっての「自己」を知ること

Dave Fromm(以下、Dave):変形菌が動きに人間よりも優れた才能を持っているという話をオカルトコーナーで取り上げたことがあるんですが。

増井真那(以下、増井):そうですね。人間が作ったのと変形菌が同じような道を辿るってお話しですね。

Dave:他にも神戸大学とイギリスの大学が共同で研究して、変形菌を使ってロボットを操作したとか。こういう研究もあるんですね。

増井:変形菌の動きにも最近注目されてきていて、それを応用した変形菌ロボットだったりも、研究が行われるようになってきています。

Dave:一番研究熱心なのはどこの国なんですかね?

増井:日本は変形菌がよく見つかる変形菌大国ということで、昔から研究がされてきてはいるんですけど、変形菌研究者自体がそこまで多くなくて。何年かに一度世界中の変形菌研究者が集まって国際変形菌学会というのが開催されるんですけど、その会場もそんなに広くはないので、ここの国が抜きん出ているみたいなことはないと思います。強いて言うなら、日本の変形菌研究者は多いというくらいですね。

Dave:研究で最近わかったことってあるんですか?

増井:僕の研究からだと、変形菌の能力として、一匹が二匹になったり、それがまた一匹にくっついたりとかっていうのは知られていて。くっついたり離れたりが自由自在だからこそ、自由自在にくっついたり離れたりできるんじゃないかって考えられていたんです。でも僕の研究から、そうではなくてしっかりとくっつける相手とくっつけない相手を見分けることができるというのを発見しました。

Dave:日本に変形菌が400から500種類ぐらいあって、その種類が違ってもくっつくんですか?

増井:そういうことではないですね。同じ種類同士でないとくっつかないです。

Dave:でも、その中でも好き嫌いがあると。

増井:そうなんです。面白いのは同種の中でも自分と近しいものでないとくっつけないっていうところだったり、判断をするときの方法なんかも僕の研究から少しずつ明らかになってきています。

Dave:なるほど。種類は別でも食べるものは基本的に一緒?

増井:そうですね。この種類のバクテリアを食べるとか、そういうところまではわかってないですね。飼育できる状態がアメーバの変形体なんですけど、この状態はあまり見つからなくて。よく見つかるのが、キノコの胞子を飛ばして子孫を残す子実体っていうものに返信しちゃってからの状態で。そうなってくると何を食べてどこで生きていたかっていうのは、分からなくなってしまうのでそういう部分はわかっていないです。だからこそ新しい種類の変形体を見つけてくるとそれが何を食べて、どういう環境にしてあげればいいのかっていうのが全くの手探りで。

Dave:自然の中には、存在していて勝手に生きているわけですよね。育てる時にそんなに神経質にならないといけないんですか?

増井:はい。温度が急激に2度とか3度変わっちゃうとそれだけで死んでしまうこともあったりするので、かなり気を使わなければならないですね。1日でも放っておくと調子が悪くなってそのまま死んでしまうことがあるので、こっちが調子悪くても毎日お世話してあげるしかないんです。

Dave:自然の中で育っているのは、どうやったら見られますか?公園とかの中でも見つけられますか。

増井:ありますね。見つけるのは難しいんですけど、我々が見つけられる以上に地中の中にはたくさんいるんだと思います。飼育できるアメーバのような状態のものは朽木の中だったりとか、土の下の方にいるので見つけるのは難しいんですけど、そういうところの方が環境の変化が少ないので彼らに取って過ごしやすいんだと思います。

Dave:長年、変形菌の研究をしていて得したことってあります?

増井:昔から自然が好きではあったんですけど、この変形菌を探すってなると普段目をつけないような場所を見るので、面白い光景が見られたりするんですよ。例えば蛇が川を泳いでるとか、蝙蝠(こうもり)の膜の部分が夕焼けで透けてるとか、自然の面白くて普段目にかけないようなものがたくさん見られるようになってきました。

Dave:今後、研究で何か応用できるようなことってありますか?

増井:変形菌が薬になるんじゃないかっていうのを考えられていたりはするんですけど、自分の研究では変形菌を使った自己と非自己を研究しているんです。これは21世紀最大の課題とも言われているもので。宇宙が生まれた時には生き物がいないので、自己と非自己は存在しないわけじゃないですか。そういう時から一体どこで自己と非自己が生まれて、それは生き物にとって一体どういうことなのかっていうのはまだわかっていないことですし。我々の免疫って自己と非自己を判断する機能なんですけど、それもまだよくわかっていなくて。もっと身近なところだと、最近は自分ってなんだろうって考えている人が増えてきているように感じるので、そういったところに特殊な自己と非自己を持っている変形菌を調べることで知識になると考えています。

Dave:なるほど。今後やってみたいことはあるんでしょうか。

増井:研究を続けていきたいのと、変形菌の研究だけじゃなく僕がどうしても解明したいことは生き物にとっての自己とは何かということなので他の生き物について自己と非自己を研究している人とか、人間の自己と非自己は社会学者や哲学者の人とか、色々な人たちと関わり合ってみんなで生物にとっての自己を解明するようなことを、大学生になって以降は進めていきたいと思います。

写真左からDave Fromm、増井真那 ©InterFM897
The Dave Fromm Show
放送局:interfm
放送日時:毎週月曜~金曜 16時00分~19時00分
出演者:Dave Fromm
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