能登半島地震で浮き彫りになった「地方の課題」

近畿大学教授の浦上拓也氏が2月8日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。能登半島地震で壊滅的な損傷を受け、未だに続く水道網の断水について語った。

【能登半島地震】給水支援を行う自衛隊員=2024年1月20日午前、石川県穴水町(鴨川一也撮影) ©産経新聞社

能登半島地震発生から1ヵ月以上、未だ約3万7500戸で断水続く

発生から1ヵ月が経過した能登半島地震で被害の大きかったインフラのなかでも、特に深刻なのが水道。なかでも輪島市や珠洲市などではほぼ全域で断水するなど、7つの市と町を合わせて約3万7500戸で断水が続いている。

広範囲の被害に対して対応する職員が少ない

新行)発災してから1ヵ月以上が経ちます。断水が長期化しているのはなぜでしょうか?

浦上)能登半島の北部で大きな地震が発生しましたが、能登半島北部の自治体は小規模で、水道事業体の職員も10名前後です。水道を利用するエリアは広域ですので、広い範囲で大きな被害があるにも関わらず、職員数は10名前後の小規模な組織であることが影響しています。また、道路が陥没または隆起しており、その下に埋まっている水道管も多くが破損してしまっています。道路も寸断されて被災箇所に人や車が入れず、時間が掛かっています。現在では全国からいろいろな方が応援に駆けつけていますが、通水には時間が掛かっている状況だと思います。

浄水場から復旧を進める

新行)復旧に向けた作業は、どんな手順を踏んでいくのでしょうか?

浦上)大きな被害を受けると広域的に被害が派生するので、水源に近い浄水場などから復旧を進めます。一方、水道管が破裂していると、通水しても漏水が起きて水が漏れてしまいます。そのため、すべての箇所の整備を終えて試験的に水を流し、水が確実にご家庭へ届くことを確認してから、やっと作業が完了するような段取りになると思います。

地方の課題が浮き彫りになった能登半島地震

地政学・戦略学者 奥山真司)大きな地域のなかで人口が少ないと、システム的にメンテナンスの部分も大変ですよね。そのような構造的な問題であるという認識でよろしいでしょうか?

浦上)土壌の状態が脆弱であるため、どれほど耐震性の高い水道管であっても今回のような地震には耐えられず、破断してしまいます。人口密度の低いところでは、人口に対して水道管の距離が長くなります。しかし自治体は小規模ですから、少人数で復旧工事を進めようとしても難しい。人手が足りないのです。全国から応援が駆けつけても、道路が寸断されているため時間が掛かる。今回の地震では、地方における課題が浮き彫りになったと思います。

小規模の自治体で発災した際、「どのように応援を受け入れるか」を考える必要がある

新行)今後の対策としては、何が考えられるでしょうか?

浦上)今回のように土壌が脆弱だと、どれだけ耐震化を進めても水道管は破断しますし、浄水場も大きな被害を受けます。「壊れるものは壊れる」ということを理解し、危機管理体制を十分に考えなければいけません。しかし人が少ないと、危機管理体制を持った組織を構築するのも難しいので、小さな自治体ほど近隣の自治体と協力して広域連携を進める。国はそこに財政支援を含め、しっかりと関わって応援していく。今後はそれが求められるのではないでしょうか。

新行)連携して動くことまで予め考える。

浦上)今回反省しなければいけないのは、小規模の自治体で発災したとき、どのように応援を受け入れるのかということです。その準備がなされていなかったところは大きな反省点だと思います。自治体は広域的に連携を図り、万が一発災した場合、どのように外部からいち早く応援を受け入れるのか、きちんと考えていく必要があります。

新行)発災したときの水道について、都市部での課題は何かありますか?

浦上)都市部に関しては、これまで阪神・淡路大震災や大阪北部地震、熊本地震、東日本大震災などの教訓を活かした体制がきちんと整えられています。その意味でも、都市部では十分な危機管理体制が整っていると思いますが、やはり地方に行くほど課題があり、まだまだ整備しなければいけない段階だと思います。

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「何の努力もせんでも儲かりますよ、円安なんだから」上場企業の7割120社が増益

5月2日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、上場企業の増益に関するニュースについて意見を交わした。

藤井氏「可能な限り、トリクルダウンをしてもらいたい」

1日までに発表された2024年3月期決算を集計したところ、7割に当たる120社が増益となった。増益社数の比率は過去10年で2番目の水準で、好業績企業の裾野が広がっている。

純利益が増えた企業の比率は前の期比14ポイント増の69%と、22年3月期(73%)以来の高水準となった。行動制限や半導体不足といった新型コロナウイルス禍に伴う制約がなくなり、鉄道や空運、食品、機械など幅広い業種で増益企業が増えた。

寺島アナ「上場企業の業績が好調だというデータがでてきましたね」

藤井氏「上場企業って何社あるかっていったら約170社ですよ? 日本の企業どんだけあると思っとんのやと。こんな一部の話はどうでもええとは言わないが、大半の国民は無関係ですよ」

寺島アナ「そうですね、東証プライム上場する173社ですからね?」

藤井氏「そうですよぉ。何の努力もせんでも円安になっただけで。何度も言いますが、2割円安になったら2割総売りが上がるんですよ。総売りが上がる一方で、国内の物資の調達費は一定だからね? すぐには変わらないから、だから原価はほとんど一緒でしょ? で、総売りだけが伸びるでしょ? そしたら2割総売りが伸びたら、純利益は2倍とか3倍とか4倍とかになるんですよ。だからそりゃあ儲かりますよ、円安なんだから」

寺島アナ「だからここだけ見てちゃダメだっていうことなんですよね」

JR東日本、JR西日本、JR東海の3社の純利益合計は前の期比7割増えた。 JR東海はインバウンド収入が新型コロナ禍前を86%上回った。JR東海は「(今期も)この勢いは衰えない」と話す。

円安も輸出企業を中心に利益を押し上げた。日米金利差を背景に対ドルの平均レートは前の期比9円円安の145円と約34年ぶりの円安水準となった。輸出採算が改善したり、外貨建て取引の差益が膨らんだりした。値上げや訪日客需要の取り込み、為替の円安などが利益を押し上げている。

藤井氏「こうやって輸入企業だとかインバウンド企業が儲かってきてるんですから、まぁ起こらないですけど、可能な限りトリクルダウンなるものを若干だけでもしてもらいたいですね」

寺島アナ「滴り落ちるようにと?」

藤井氏「あんま落ちないんですけど、できるだけ落としてほしいですね」

寺島アナ「まぁ、だって滴り落ちなかったら価格転嫁もできやしないぞ、っていうような苦しい経営をずっと続けなくてはいけないっていう状況が続くわけですものね?」

藤井氏「これが上場企業の場合は株主資本主義なんて最近は言いますけど、株主の配当金の中にダァーッと流れていくんですよね。で、株主の配当金を出してるのは誰かといったら外国人の投資家だとか、要するに大金持ちだけですからね。この増えた分が大金持ちに回る構造があるんですよ。これをちゃんと賃金だとか取引先に対して豪気にお金を使っていくようにしてくりゃあいいんですけど、トリクルダウンさせないでトリクルアップさせている状況ですな」

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