中国企業ロゴ問題 全貌を明らかにし、委員の選定基準を厳格に行うべき

政策アナリストの石川和男が3月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。内閣府の資料に中国国営企業のロゴマークの透かしが入っていた問題について解説した。

Photo taken on June 24, 2021 shows the State Grid of China in Yichang, Hubei Province.=2021(令和3)年6月24日、クレジット:CFOTO/共同通信イメージズ ©共同通信社

内閣府資料に中国国営企業ロゴ問題

飯田)再生可能エネルギーに関する内閣府のタスクフォースの資料のなかに、中国国営企業のロゴが埋め込まれていた問題がありました。

日本の太陽光発電導入は世界第3位

石川)日本の太陽光発電は産業として成長しました。急成長するといろいろな弊害があって、太陽光は開発規制が厳しくなるなど、最近は「少しやりすぎた」というところもありますが、思い切ったおかげで日本の太陽光発電導入はここ10年で世界第3位になったのです。

「うしろに中国がいるのではないか」と思わせることが問題 ~なぜ中国のロゴマークが入ったのか

石川)中国、アメリカに次いで日本が3位です。あっという間にドイツを抜いてしまった。太陽光発電の産業を育てるという意味ではよかったのですが、今回、資料を提出した「自然エネルギー財団」事業局長の大林ミカ氏に関しては、あまりにもそちらの方に傾斜していました。中国のロゴマークがあったので、「うしろに中国がいたのではないか」と疑う人もたくさんいると思います。なぜ提出した資料のなかに、中国国営企業のロゴマークが入ってしまったのか。おかしくないですか?

「中国の意向が反映されているのではないか」という疑いを持たれることが問題

石川)問題の本質は、パワーポイント資料やPDFなどの技術的な話ではありません。中国という仮想敵国になり得るような国の、国営企業のロゴマークが入った資料を堂々と出してしまった。かつ、太陽光について言うと、太陽光パネルの製造国は中国が飛びぬけて多く、日本はその大半を中国から輸入しているのです。

飯田)そうですね。

石川)つまり大林氏は、中国を利するような情報を発しているわけです。太陽光政策としては悪くありません。しかし、特に国家安全保障を考えると、「中国当局の意向が反映されたのではないか」という疑いを持たれてしまいます。

関係者の選定基準を厳しくするべき

石川)もう1つ、「そういう人」とわかっているにもかかわらず選んだことが問題です。なぜそうなったのかという経緯をつまびらかにしないと、関係者全員が疑われてしまいます。太陽光がダメなのではなく、仮想敵国の意見が反映されるようなことをやってしまったのが問題です。ここにもっとフォーカスを当てて再発防止を考えるべきです。政府の検討会や審議会などを開き、政策に影響を及ぼすような人員の選定基準をきちんと決めなければならない。

飯田)選定基準を。

石川)国会で議論して、法律に明記するぐらいの大きな話だと思います。これを機に与党だけでなく、野党も含めて定めるべきです。

審議会や検討会などで全貌を明らかにし、政府の委員選定基準を厳格に行うべき

飯田)人員の選定に関して、どういう基準でやるのか、あるいはどこまでバックグラウンドを調べるのかなど、さまざまな審議会や意思決定に関わるようなものは各省庁に無数にあるわけですよね。

石川)多くの場合はそれほど問題ないと思います。しかし、今回のような問題が出たときは、再発防止を徹底するべきです。大林氏の会見を聞いていると、「外国のことを政策に反映する意図はない」という趣旨の発言をされていますが、そう言うに決まっているではないですか。

飯田)ここで「中国の意向を反映させていた」とは言わないですよね。

石川)「彼女の言っていることは本当か?」という話になっても、そんなものはわかりません。

飯田)内心(の自由)に関わることですし。

石川)彼女の言っていることが本当か嘘かは、どちらでもいいのです。「中国の意向を踏まえているのではないか」というリスクがあるわけですから、最悪のケースを想定して、「これからどうするか」を考えなければならない。審議会や検討会などで全貌を明らかにし、政府の委員選定基準を厳格に行うべきだと思います。

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日本経済の今後は「規制改革がどれだけできるか」による

政策アナリストの石川和男が3月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3月28日の参議院本会議で可決・成立した2024年度予算について解説した。

2024年3月28日、冒頭に発言する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202403/28kaiken.html)

2024年度の予算成立 岸田総理は会見で2つの約束を示す

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岸田総理)国民の皆さんに「物価高を乗り越える2つの約束」を明確に申し上げます。まず今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現します。そして、来年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させます。

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2024年度予算は3月28日の参議院本会議で、自民・公明などの賛成多数で可決・成立した。一般会計の総額は112兆5717億円で、12年ぶりに前年度を下回ったが、過去2番目の規模となった。また、2024年度の税制改正関連法も可決・成立し、6月から1人当たり4万円の定額減税を実施する。

飯田)今後の日本経済について、どうご覧になりますか?

石川)総理がインタビューで今年(2024年)の物価上昇を上回る所得の実現と、来年(2025年)以降は物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させると言っていますが、以前からやって欲しかったことです。ただ、予算は3月末までには必ず成立するのです。

予算が成立したことで物価上昇を上回る所得の実現や物価上昇を上回る賃上げにはならない

石川)予算が成立したのは普通のことです。今回の予算成立が、総理の言う「物価上昇を上回る所得の実現」や「物価上昇を上回る賃上げ」につながることには、論理的にはなりません。なぜなら予算の仕組みというのは、社会保障や公共事業の比率などを除けば、はっきり言って毎年0コンマいくつの単位でしか変わらないのです。ですから、予算成立をもって「こうなる」ということは、理屈としてはありません。

飯田)予算が成立しただけでは。

石川)総理の宣言として「予算が成立して来週から新年度です」という政治的な抱負を語ったのは、国民に対する政権与党からのメッセージだと思うので、それ自体はいいと思います。ただ「実行できるか」と考えると、いわゆるデフレ脱却、インフレだと単純に思いがちなのですが、結局は物価が上がったあとに賃金や雇用などの指標が上がらないといけないのです。

コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻が起き、エネルギー価格が高騰し、潤ったのは一部の業界だけ

石川)例えばここ数年はコロナ禍があり、その後、ロシア・ウクライナ戦争になってしまい、エネルギー価格が高騰して、電気代やガソリン代が上がった。それだけを見れば物価上昇ではないですか。でも、それで喜ぶのは一部の潤った業界だけです。

飯田)一部の。

石川)しかし、多くの国民生活は賃金が上がらないのに電気代、ガソリン代が上がったので困ってしまい、補助金をつけることになりました。エネルギーを例として言うと、あれは輸入品なのです。だから輸入価格が上がって、物価が上がる。その結果、我々のお金は外国に出てしまい、嬉しくも何ともないわけです。こういうものが始末のよろしくない物価上昇です。例えば国内で資源などが取れて、大きく循環して物価が上がるのであれば、みんな「よかった」となるのですが、そうではありません。

国内で回せるエネルギーに変えることで「よき物価上昇」の一部が実現できる

石川)日本の場合はエネルギーコストが国民生活に響くわけですが、自給率が極めて低いので、高めなければならない。そのためには化石燃料の量を減らし、原子力発電や再生可能エネルギー発電など、国内で回せるエネルギーに変えていく。それなら、総理のおっしゃった「よき物価上昇」の一部が実現すると思います。

太陽光のように今後、規制改革ができるかどうか

石川)もう1つは、みんな忘れていると思うのですが、安倍政権のときに「3本の矢」がありました。

飯田)3本の矢。

石川)補助金や金融政策、日銀のバズーカ砲。もう1つは規制改革、俗に言う規制緩和です。補助金をばら撒くとか、バズーカ砲という方法は簡単なのです。ところが3つ目の規制改革は、それらに比べてとても難しい。規制改革とは、需要の構造を変えることです。これまで既得権で潤っていたところを「他の人にも開放し、市場を活性化していく」というものです。最近の例で言うとライドシェアですが、当然タクシー業界は反対しますよね。他が入ってきたら自分の儲けが減るので。

飯田)「苦労して2種免許を取ったのだから」と。

石川)ライドシェアの議論は今後も続いていくと思いますが、1つの最近の例です。こういうことを、いろいろな分野で行わなければいけなかったのに、できなかった。しかし、太陽光はそれができたので、太陽光(発電)が増えたのです。そういうことを思い切ってもっとやれば、総理の言う「よき物価上昇」が起こるでしょう。そのために予算がどのくらい出るのか注目するべきだと思います。

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