日本経済の今後は「規制改革がどれだけできるか」による

政策アナリストの石川和男が3月29日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。3月28日の参議院本会議で可決・成立した2024年度予算について解説した。

2024年3月28日、冒頭に発言する岸田総理~出典:首相官邸HPより(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202403/28kaiken.html)

2024年度の予算成立 岸田総理は会見で2つの約束を示す

—–

岸田総理)国民の皆さんに「物価高を乗り越える2つの約束」を明確に申し上げます。まず今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現します。そして、来年以降に物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させます。

—–

2024年度予算は3月28日の参議院本会議で、自民・公明などの賛成多数で可決・成立した。一般会計の総額は112兆5717億円で、12年ぶりに前年度を下回ったが、過去2番目の規模となった。また、2024年度の税制改正関連法も可決・成立し、6月から1人当たり4万円の定額減税を実施する。

飯田)今後の日本経済について、どうご覧になりますか?

石川)総理がインタビューで今年(2024年)の物価上昇を上回る所得の実現と、来年(2025年)以降は物価上昇を上回る賃上げを必ず定着させると言っていますが、以前からやって欲しかったことです。ただ、予算は3月末までには必ず成立するのです。

予算が成立したことで物価上昇を上回る所得の実現や物価上昇を上回る賃上げにはならない

石川)予算が成立したのは普通のことです。今回の予算成立が、総理の言う「物価上昇を上回る所得の実現」や「物価上昇を上回る賃上げ」につながることには、論理的にはなりません。なぜなら予算の仕組みというのは、社会保障や公共事業の比率などを除けば、はっきり言って毎年0コンマいくつの単位でしか変わらないのです。ですから、予算成立をもって「こうなる」ということは、理屈としてはありません。

飯田)予算が成立しただけでは。

石川)総理の宣言として「予算が成立して来週から新年度です」という政治的な抱負を語ったのは、国民に対する政権与党からのメッセージだと思うので、それ自体はいいと思います。ただ「実行できるか」と考えると、いわゆるデフレ脱却、インフレだと単純に思いがちなのですが、結局は物価が上がったあとに賃金や雇用などの指標が上がらないといけないのです。

コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻が起き、エネルギー価格が高騰し、潤ったのは一部の業界だけ

石川)例えばここ数年はコロナ禍があり、その後、ロシア・ウクライナ戦争になってしまい、エネルギー価格が高騰して、電気代やガソリン代が上がった。それだけを見れば物価上昇ではないですか。でも、それで喜ぶのは一部の潤った業界だけです。

飯田)一部の。

石川)しかし、多くの国民生活は賃金が上がらないのに電気代、ガソリン代が上がったので困ってしまい、補助金をつけることになりました。エネルギーを例として言うと、あれは輸入品なのです。だから輸入価格が上がって、物価が上がる。その結果、我々のお金は外国に出てしまい、嬉しくも何ともないわけです。こういうものが始末のよろしくない物価上昇です。例えば国内で資源などが取れて、大きく循環して物価が上がるのであれば、みんな「よかった」となるのですが、そうではありません。

国内で回せるエネルギーに変えることで「よき物価上昇」の一部が実現できる

石川)日本の場合はエネルギーコストが国民生活に響くわけですが、自給率が極めて低いので、高めなければならない。そのためには化石燃料の量を減らし、原子力発電や再生可能エネルギー発電など、国内で回せるエネルギーに変えていく。それなら、総理のおっしゃった「よき物価上昇」の一部が実現すると思います。

太陽光のように今後、規制改革ができるかどうか

石川)もう1つは、みんな忘れていると思うのですが、安倍政権のときに「3本の矢」がありました。

飯田)3本の矢。

石川)補助金や金融政策、日銀のバズーカ砲。もう1つは規制改革、俗に言う規制緩和です。補助金をばら撒くとか、バズーカ砲という方法は簡単なのです。ところが3つ目の規制改革は、それらに比べてとても難しい。規制改革とは、需要の構造を変えることです。これまで既得権で潤っていたところを「他の人にも開放し、市場を活性化していく」というものです。最近の例で言うとライドシェアですが、当然タクシー業界は反対しますよね。他が入ってきたら自分の儲けが減るので。

飯田)「苦労して2種免許を取ったのだから」と。

石川)ライドシェアの議論は今後も続いていくと思いますが、1つの最近の例です。こういうことを、いろいろな分野で行わなければいけなかったのに、できなかった。しかし、太陽光はそれができたので、太陽光(発電)が増えたのです。そういうことを思い切ってもっとやれば、総理の言う「よき物価上昇」が起こるでしょう。そのために予算がどのくらい出るのか注目するべきだと思います。

radikoのタイムフリーを聴く

子ども子育て支援金制度、アメリカ大統領選挙、日本経済の今後は? ニッポン最強の論客たちが徹底討論「飯田浩司のOK! Cozy up! 激論!横浜ベイサミット! in 神奈川県民ホール」

ニッポンと世界の今が分かる朝のニュース番組『飯田浩司のOK! Cozy up!』の討論イベント第2弾『ニッポン放送開局70周年記念 飯田浩司のOK!Cozy up! 激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール』が28日、神奈川県民ホールで開催された。青山繁晴、飯田泰之、片岡剛士、小泉悠、須田慎一郎、中川コージ、馬渕磨理子、峯村健司、宮崎哲弥ら最強の論客陣とともに、政治経済から外交、安全保障まで幅広いテーマで徹底討論。激動の国際情勢の中で、日本はどこへ向かうべきなのか、激論を繰り広げた。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

ニッポン放送開局70周年記念「飯田浩司のOK! Cozy up! 激論!横浜ベイサミット! in 神奈川県民ホール」4月28日(日)神奈川県民ホール

『飯田浩司のOK! Cozy up!』の番組イベント「激論!横浜ベイサミット! in 神奈川県民ホール」がきょう28日(日)、神奈川県民ホールで開催された。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

セッション1は自民党参議院議員の青山繁晴、ジャーナリストの須田慎一郎、評論家の宮崎哲弥が登壇。「東シナ海周辺の外交防衛問題」、「衆議院補欠選挙の結果が与える影響」、そして「自民党という政党が今後どうあるべきか」などをテーマに激論を繰り広げた。中でも、会場が盛り上がったのは、政府が少子化対策として進めている「子ども子育て支援金」制度に関する話題。青山繁晴が、この制度の問題点を指摘すると、会場からは大きな拍手が上がり、昨今、支持率が下がっている自民党・岸田政権について、実際に不満を持っている方が多くいるというのが、感じられる一幕となった。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

続く、セッション2では明治大学教授の飯田泰之、PwCコンサルティング合同会社チーフエコノミストの片岡剛士、東京大学先端科学技術研究センター准教授の小泉悠、IIMインド管理大学公共政策センターフェローの中川コージ、経済アナリストの馬渕磨理子、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員の峯村健司が登壇。経済・安全保障・外交防衛の論客が並ぶ中、多くのテーマが取り上げられた。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

まずは、今秋に予定されている「アメリカ大統領選挙」をめぐる動きから。バイデン大統領再選か、トランプ大統領返り咲きか…外交防衛、経済面など、多角的に議論が交わされた。ポイントになったのはアメリカと中国をめぐる関係値で、それに絡んでくる、ロシアやインドといった、環太平洋の外側にある国々がどうとらえているか、という点。今回のイベントでは、ロシアに詳しい小泉悠、中国・インドに詳しい中川コージ、中国・台湾に詳しい峯村健司などがそろったことで、「1つのテーマに対して、日本の周辺にある国がどのように考えているのか」ということが立体的に理解できる討論になった。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

このほか、日本の経済についても特に深い議論が繰り広げられた。経済学者・飯田泰之、元日銀の政策委員会審議委員の片岡剛士、経済アナリストの馬渕磨理子が、お互いの得意分野で解説をすることで、普段の放送ではたどり着けない部分まで、議論が進んだ。「二酸化炭素排出量の問題」「電力供給の安定供給」「雇用問題」などが密接に関係してくる部分などは特に聞きごたえのある内容となった。

また、「円安は悪なのか」という話については、経済の専門家ならではの解説が続き、1ドル158円台に突入した今の日本経済について、今後がどうなっていくのかという話では、時折会場からも大きな拍手が上がっていた。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

そのほか、外交防衛・安全保障の問題、日本の政局の問題などにも議論は波及していき、気づけば、予定時間から大幅に伸びて3時間半、最後は大きな拍手で終演を迎えた。

飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール
飯田浩司のOK!Cozy up!激論!横浜ベイサミット!in 神奈川県民ホール

 

Facebook

ページトップへ