新型コロナ分科会メンバー・岡部信彦 「人の病から社会の病になった」
ニッポン放送「すくすく育て 子どもの未来健康プロジェクト」(8月9日放送)に、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会メンバーであり、川崎市健康安全研究所・所長の岡部信彦が出演。新型コロナウイルスについて詳しく語った。
淵澤由樹(アシスタント):改めて、新型コロナウイルスとはどんな病気なのか、詳しく教えてください。
岡部:コロナウイルスは、もともと鼻かぜのウイルスなのですが、一部には動物のコロナウイルスもあります。それがどういうわけか、人間にうつりやすいように変化しました。インフルエンザとよく似ているところもありますね。でも、少し厄介だったり、症状が重くなりやすい場合があります。ものすごく心配する必要はありませんが、警戒はしなければいけません。しかも新しいウイルスですので、しっかり様子を見て行くことが、いま必要な段階だと思います。
淵澤:岡部さんは、新型コロナウイルスについて「正しく恐れて」と呼びかけています。その意味を改めてお聞かせください。
岡部:感染症は、ウイルスの正体が目の前に現れるわけではないので、どうやってうつって行くのか、どうやって自分のところに来るのか、あるいはどういう結果になるのかということが、なかなか目には見えません。そのため、不安を強く感じやすいのです。でも、すべてがブラックボックスにあるのではなく、研究するうちにだんだん新しいことがわかって来ます。それを知った上で、過度に恐れることなく、過度に大丈夫だと思うのでもなく、正しく科学的に、冷静に見る必要があります。いざというときにきちんと対応するのが、私の言う「正しく恐れる」という意味です。ただ、立場によって恐れ方は違います。一般の方、医療関係者、政治・行政に関わる人など、それぞれに「正しい恐れ方」があると思います。
淵澤:岡部さんは、新型コロナウイルスを「人の病から社会の病になった」とも表現されています。この言葉には、どのような意味があるのですか?
岡部:病気がだんだん拡がって行くと、正しく恐れることができずに、不安が先行します。感染症は、人の動きが止まれば感染拡大も止まるのですが、社会は人が動かなければ成り立たないので、そのバランスが難しい。いろいろな争いごとが起きるため、医療的な処方箋だけではなく、社会的な処方箋が必要になって来る。だから、人の病気としての「病」ではなく、「社会の病気」になってしまったと感じています。人の病気は医療がきちんと対応しなければいけませんが、社会の病気の場合は、 みんなでその病気を何とかして行こうという力が必要だと思います。