笑福亭鶴志さんは豪快で厳しくて弟子想い『hanashikaの時間。』
『hanashikaの時間。』木曜日の「TSURUJIの時間。」は、6代目笑福亭松鶴師匠の最後の弟子、笑福亭鶴二さんが、弟子時代のことなどをお話しするコーナーです。
5月14日(木)のこのコーナーでは、5月8日に亡くなった、兄弟子の笑福亭鶴志(かくし)さんを偲んでのお話となりました。
「今夜は、先日亡くなりました、ほんとに厳しくもあり、精神論みたいなことをずっと(自分に)教えてくれました、笑福亭鶴志兄さんが他界されまして、その話を...。」
少し声を震わせながら話を始めた鶴二さん。鶴志さんが亡くなった翌日には、内海英華さんにお電話をされていたそうです。
兄弟子 笑福亭鶴志さんの思い出
最後にお仕事を一緒にされたのは、「ゆとりーと寄席」(東大阪で毎月行われている寄席)。
「僕が(鶴志兄さんに)羽織りを着せてたら、兄さんが『6時を回りました。こんばんは。笑福亭鶴二です』(「hanashikaの時間。」のオープニングの鶴二さんの台詞)と言うて、『こんなんでええか~』と僕にサービスしてくれるんですよ。僕が『お兄さん、聴いてくださってるんですか』て言うたら『聴いてるで~』て言うて。『ありがとうございます』て言うたら『お前な、「ゲストの時間。」な、お前がゲストにしゃべらさなあかんがな。お前ばっかりしゃべって、どないすんねん!』て。本当、最後までアドバイスというか、気にかけてくださっていました」としみじみ話しました。
鶴二さんが30歳を超えた頃、鶴志さんにお願いして始めることになった「二人会」。「二人会はええけど、おまえどれくらいオレとやるつもりやねん」と聞く鶴志さんに、その「どれくらい」という声にびびってしまい「え、え、え、え、...一年!」と言ってしまった鶴二さん。鶴志さんは「一年!一年おまえとふたりでやんのんか」と驚きつつも「それやったら今から計画をたてなあかん」と、ネタを24本書くように言われたそうです。
鶴二さんが持ちネタを書いて見せると、鶴志さんはごっつう怒らはって、「なんで持ちネタばっかり書くんや。二人会やるんやったらオレに挑んでくる、新ネタを出すいう気はないんか!」と言われ、鶴二さんは月に一本ネタおろしをすることになったそうです。
鶴二さんは、鶴志さんに稽古をつけてもらおうと、鶴志さんの自宅に行きますが、45分ほど稽古をすると「もうええわ、あともうどっかでやれ」と言われ、その後は、お酒の席となったそう。
「2回見てもらったネタなんかありませんよ」と言う鶴二さんに「それだけ横でよう聴いてるいうことやけどな」と頷く英華さん。「(お酒を飲むのも)それが稽古やから、向こう(鶴志さん)の」と鶴志兄さんの人柄に思いを馳せました。
そして、その45分稽古の翌日、鶴二さんがそのネタを浪花座で披露すると、それが面白かったという話が鶴志さんの耳に入り、上機嫌の鶴志さんは「先生がええからや」と大満足。その時の鶴志さんの笑顔を思い浮かべるように、鶴二さんが話します。
豪快な鶴志さんから教えられたこと
豪快なことで知られる鶴志さん。
新ネタを1年間、毎月1つずつおろすことになった鶴二さんですが、鶴志さんは「お前にばっかり言わへんで、お前が新ネタで来るんやったら、オレかて何本かおろす」と新ネタを出すことにされたそうです。そして鶴志さんが3回目に「猿後家」の新ネタをおろされた時のこと。
本番で、途中で噺を忘れてしまった鶴志さん。しばしの無言の後「お客さん、この次、なんやと思います? ...いや、どこやと思います?」とお客さんに問いかけます。「さあ、わかりません」と首をかしげるお客さんに、「まあ、いろんなとこがおまんねん」などと返しつつ、ごまかしているうちにネタを思い出し、持ち直して最後まで乗り切られたそうです。
そして舞台を降りてこられた鶴志さんは、鶴二さんに「ネタおろしいうのはあんなもんやねん。だいたいお前はビビりすぎやねん。ネタおろしで間違えたからいうて、命とられるわけやあらへんで。お前はなんでもそうやねん。礼は楽屋で尽くすもんや。舞台へあがったら、座布団へ乗ったら、な? 、日本一やと思わんか、アホんだら。」と言われたそうです。
その時の鶴志さんの舞台を振り返り「『ビビリで失敗したらどうしよう』ばかりで頭がいっぱいの自分にそう言ってくれたんですよ」と鶴志さんの教えを振り返りました。
そんな鶴二さんに「そら鶴志兄さんやないと言われへん」と大笑いする英華さん。
「次の月から『間違うてもええねん、自信持ってしゃべったらええねん』と思うようになったら、僕、良うなったんですよ!」と鶴二さん。
「ほんで兄さんが言うにはね、『見てみい、先生がええからや』...って。」と、また二人で爆笑しました。
尽きない思い出
鶴二さんが鶴志さんの運転手をしていた頃「おまえと心中する気あれへんねん!」と怒られたエピソードなど、思い出は次々に溢れてくるようです。
「がたいが大きくて豪快な鶴志兄さん、(僕と)タイプが違うと言いながら、かわいがってもらって、あちこち連れて行ってくれた。」と振り返りました。
コーナーの時間が残りわずかになる頃、鶴二さんは「こんな話をしていたらキリがないんですが...」と、この時間が終わるのを惜しむように言い「笑福亭鶴志兄さんのご冥福をお祈りします。」と声を詰まらせながらコーナーを閉じました。
鶴二さんががどれほど鶴志さんを慕っていたかを感じる時間でした。
鶴二さんの思いがあふれる、鶴志さんの思い出話、タイムフリーでどうぞお聴きください。
※該当回の聴取期間は終了しました。