リスナー参加の新企画!「夏に見たくなる映画」で選ばれたのは!?
RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演しているクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんは、毎週エリアのアートにまつわるイベントや注目の最新映画などを語っている。8月8日の放送では、先週発表された新企画実施した。番組側で発表するテーマにまつわる映画をリスナーの皆さんからお寄せいただき、そのなかの1本を三好さんが選んでレビューさせていただくというもの。今回のテーマは「夏になると見たくなる映画は?」だった。一体なにが選ばれたのか?
たくさんお寄せいただいたメッセージから
まず先週木曜日の放送での企画発表とテーマの公示から月曜日の締切まで、短期間にも関わらずリスナーの皆さんからたくさんの映画をお寄せいただきました。なかには個人的な思い出や三好に劣らぬ熱いレビューをお送りくださったリスナーの方もおり、本当に本当に嬉しかったです。メッセージすべて何度も拝読させていただきましたよ!
ラジオネーム【ゆらゆら】さんと【コロンビア】さんは、名作「太陽がいっぱい(1960)」のリメイクである1999年マット・デイモン主演版の『リプリー』。ゆらゆらさんについては熱いレビューまでお寄せいただき、僕も好きな映画で非常に悩ましかったのですが、今年4/25放送回で同じ原作をNetflixが新たにドラマ化した『リプリー』を紹介したこともあり、今回は選外とさせていただきました。
続いて【老婆の休日】さんからは、幼少期にご覧になった1959年『避暑地の出来事』。パーシー・フェイスの有名なテーマ曲や当時淀川長治さんが紹介されていた思い出、そして主演のトロイ・ドナヒューのイケメンぶりに惚れ込んだエピソードも交えてご紹介下さいました。【チェリーブロッサム】さんからは、当時の学校をサボって大好きなプレスリーに劇場へ会いに行った思い出とともに1961年『ブルーハワイ』を。このあたりは個人的にもぜひ見てレビューしてみたかったんですが、今では配信もされておらず、またDVDをレンタルしているお店自体も減っており、皆さんがこの番組での紹介後にすぐ見れない映画では、ちょっと勿体ないか…と思い、惜しくも選外に。
さらに嬉しかったのは僕が普段紹介する映画の傾向を理解下さったのか、まるで僕自身が選びそうな、ミニシアター系の名作を寄せて下ったリスナーさんもいました。【RIVER】さんはエリック・ロメール1986年の大傑作『緑の光線』、【群青】さんは2022年に発表され新たな夏映画のクラシックとなった大傑作『aftersun/アフターサン』。そして僕も同年の自分映画ランキングTOP10に入れるほど大好きだった青春夏映画2020年の傑作『アルプススタンドのはしの方』をお寄せいただいた方もいました。これらなんかは正直すぐにも飛びついて、いつもの長々レビューを始めたくなるほどだったのですが、今回新企画の第1弾ですから、いつもとはちょっと毛色の違う映画を選んでみたいという思いもあり、泣く泣く選外に。でも、めっちゃくちゃ嬉しかったです!
ほかにも『時をかける少女』『八日目の蝉』『若おかみは小学生!』『永遠の0』『稲村ジェーン』など、新旧、国内外、実写からアニメまで盛りだくさん。本当に悩ましいチョイスでしたが、皆さんとのこのやりとりだけでもまるで映画談義を交わしているようで、本当に嬉しく、早くも今後もこの企画続けたいな…と思うほど最高でした。皆さん本当にありがとうございました!
私たちはなぜ、映画『スタンド・バイ・ミー』を夏に見たくなるのか?
そうして今回選ばせていただいたのは、ラジオネーム【パパ】さんがお寄せくださった1986年の名作『スタンド・バイ・ミー』です。なーんだ結局ド定番かよ、と思うことなかれ、ここで衝撃の告白をさせていただきますが、実は僕この映画をきちんと見たことが一度も無かったんです笑。そんなで人様の前に出て映画評なんかさせてもらってるんだから映画ファンの皆さんに怒られそうなのですが、だからこそこの場を借りて見てみて、皆さんにフレッシュな気持ちでこの映画と出会い直すきっかけをお届けできればと思い、選びました。
さて『スタンド・バイ・ミー』は、今更あらすじの紹介をするまでもなさそうですが、改めてご紹介から。スティーブン・キングの短編小説を、『恋人たちの予感』『ミザリー』などを手掛けたロブ・ライナー監督が映画化したノスタルジックな青春ドラマの傑作です。
舞台は1959年のオレゴン州の小さな田舎町キャッスルロック。それぞれに家庭の問題を抱える4人の少年たちが、町から32キロ離れたところに、3日前ブルーベリーを摘みに行って戻らない少年の死体が放置されているという噂を聞き、死体探しの旅に出る。他愛のない会話を交わしながら過ごした少年たちの冒険は、その後の人生で何度も思い出し続けるような、かけがえのない2日間になるのだった——、というようなお話です。
この映画、海外ではcoming-of-age film、つまり子どもから大人になるまでの青春期を描いた映画のランキングがあれば必ず上位に食い込む映画でもあり、また2023年に日本で実施された「夏に見たい映画おすすめランキング」でも1位に選ばれた、いわば「青春」映画そして「夏」映画として定番中の定番となっている作品です。そこで、今回僕のレビューでは、どうしてそれほどみんなが「青春」そして「夏」ということを思う時に、この映画を連想してしまうのか、という点に注目してみたいと思います。それは、図らずしも僕が感じたこの映画の一番の魅力と繋がるところでもあります。
この映画の登場人物となる4名の少年たちはそれぞれが家庭に問題を抱えています。アルコール依存症の父と不良の兄を持つクリス。数ヶ月前に優秀な花形アメフト選手の兄を亡くしたことを受け両親からいっそう冷遇され孤独と劣等感を強いられているゴーディなど、それぞれが切実な環境に置かれており、彼らがこの世界で無邪気でいられるのは四人でいられるときだけです。そんな四人が「死体探し」の冒険に出る、というこの設定がやはり本作の肝になってきます。
この「死体」が表すものとは、何なのか。まずそれは少年たちが、もっと言えばこの映画自体が取り憑かれている「自分に有り得たかもしれない死」の予感です。本作をご覧になった色んな人々の感想には爽やかな内容のものが多いのですが、実際に僕が本作を見て驚いたのは、まるで画面に張り付いたようにずっと映画に漂い続ける「死の予感」でした。それは人物一人ひとりにも言えるもので、たとえば兄と比較され続け「どうせ死ぬならお前だったらよかったのに」と自分の存在のすぐそばに「死」を置くしかなかったゴーディ。戦争のトラウマで精神を病んだ父親から虐待を受け続けているテディ。命知らずの父親と兄に囲まれ、この世界に自分の居場所を見つけられないクリス。彼らのすぐそばには、自らに差し迫った予感として「死」が転がっている。だからこそ「死体」を探しに行くこととは、単なる幼い興味本位以上の切実さをもった、自分の「生」を実感し・取り戻すために必要なアクションであったように見えます。
そしてもうひとつ。この「死体を見つけに行く冒険」が象徴するものは、何より「少年期の終わり」です。彼らは背伸びして「食後の一服は最高だぜ」なんてうそぶきながらタバコをくゆらせ、あたかも1日も早く大人になりたがっているように振る舞いますが、実際のところは、四人でつるんでいられるこの期限付きの時間こそが何より心の支えであり、かけがえのないものであることも直感しています。大人になりたいけど、子どもであり続けたい。終わってほしいけど、終わってほしくない。この思いは、まさしくこの死体探しの旅を持ってひとつの区切りを迎えることになる。劇中の大半の時間をかけて描かれる旅の道行きに比して、死体が発見される場面があまりにあっけなく到来することは偶然ではありません。いつでも「終わり」の瞬間は、ドラマにすらならないほど呆気なくやってくる。そして、彼らが旅を終えて街へ戻った日が、アメリカの「労働者の日」の前日であった、という事実がそっと劇中終盤に告げられるとき、この旅は、彼らが少年であり得た日々の「終わり」であり、彼らが抱いてきた「大人になること」への幼い憧れとの決別でもあったことを観客は改めて痛感する。だからこそ、あまりに呆気なく到来したあの「終わり」の瞬間を、劇中の少年たちはただ了解し・受け入れるだけ、という非常にビターでありながら、しかし誰もが知っているあの感傷が特別なものになったのだと思います。そして、それは同時に、私たちのそうした「特別な時間」の意義とは、そのゴールや結論にあるのでなく、いつでもそこに至るまでのプロセスにこそあるのだ、ということも教えているようです。
私たちが夏の日差しのように強い光を浴びる時、そこに落ちる影もまた色濃いものとなるという事実。そして、いつか「終わり」が到来することを誰もが知っていながら、その魔法のような時間が一日でも一分でも長く続いてほしいと願うような、期限付きの特別な時間。それこそがこの「4人の冒険」であり、私たちにとっての「青春」であり、そして特別な休暇としての「夏」である。だからこそ私たちは夏という季節がやってくる度に、この映画を見たくなるのかもしれません。
いま私たちが迎えているこの一日だって、いつか振り返ったときに特別な時間だったと思い返すような一日なのかもしれない。特に夏という季節には、そう思わせる何かがある。もしそうした感覚に覚えがある、という方は、ぜひこれからの盆休みにでも改めてこの「スタンド・バイ・ミー」をご覧になってみてください。僕は昨日初めて鑑賞したあと、思わず大きな声をあげて「これめっっちゃくちゃ傑作じゃないか!」と叫んでしまいましたが、そんなことはもう誰だって知っていることですね笑。その品質は確約します。
ぜひこの夏にもう一度、少年たちの冒険の向こう側に、自分たちの期限付きの青春の、夏の、そして人生の特別さに、思いを馳せてみてください。
※放送情報は変更となる場合があります。
