【ラジオな人】ABCラジオ『よなよな…』200回記念!シンガー近藤夏子さんと、ABCアナウンサー北村真平さんにインタビュー!【前編】

大阪・ABCラジオで月曜から木曜まで、夜22時から3時間に渡って放送されている番組『よなよな…』。森脇健児さん、ダイアンなど、日替わりでじっくりとトークをする番組です。中でも、関西や中国地方を中心に活躍しているシンガーソングライター、近藤夏子さんと、ABCアナウンサーの北村真平さんがパーソナリティを務める水曜日は、小学生から80代の方まで、非常に幅広い層に聴かれています。2014年4月のスタート以来、1月24日(水)放送で200回を迎えたこともあり、幅広く支持される秘訣を伺いました。

祝、200回記念!

――夜のワイド番組で、これほど幅広い層にファンをもつ番組は非常に珍しいと思うんです。下は10歳ぐらいの小学生から、上は80歳を超えた人からもメールやハガキが届いてますし。

近藤:私たちも、なんで80歳以上の方まで聴いてくださっているのか分からなくて、理由を知りたいくらいなんです。夜だから学生さんが聴いてくれるのは分かるけど、80代の方に楽んでもらえるような会話を一つもしてないと思うんです。放送中に80代の方と電話で話した時に理由を聞いたら「二人が喋ってるのを聞いてるだけで、ええんよ」っておっしゃってくれて。

――近藤さんと北村さんは、会話が途切れないというイメージなんですけど、話そうと思ったことを紙に書いたりはしてますか?

近藤:一度もないです。タイトルコールをして「こんばんは〜」って挨拶をする直前まで、ほんまに何も考えてないんです(笑)。

――確かに。以前の放送で、本当に話すことがなかったらしくて、3時間の生放送のオープニングなのに「今週は、これといって話すことがないんですけど、北村さんは何かありました?」って言って放り投げたこともありましたよね(笑)。

近藤:そうそう、そんなこともありました(笑)。北村さんに喋ってもらっている間に、考えるっていう。この番組はほんまに自由で、私が支離滅裂な話をしてても、スタッフから「ああしろ、こうしろ」っていう指示がないんです。むしろ、ディレクター以外は私たちの話を聞いてなかったりしますからね。ガラスの向こうで写真を見せ合ったりして、普通に遊んでたりするし(笑)。

北村:ゆるい空間なんです。

2016年4月20日 桜の花を探しにいく企画

自由といえば、『よなよな…』水曜日では、街を歩きながらオンエアする企画が3度行われています。特に印象深いのが、2016年の4月20日に放送された、桜の花を探しに行く企画。桜のシーズンはとっくに終わっていましたが、「今年、お花見をできなかったから、二人で桜を探して写真を撮ってきてくれへん?」というプロデューサーの指令に答えるという企画でした。桜の花を求めて、夜の大阪市内をウロウロする二人。もちろん、咲き残った桜が本当にあるのか、プロデューサーを含めて誰も知りません。

近藤:全く台本がなくて、それを任せてもらえるのはありがたいけど、リスナーの皆さんにどんな感じで伝わっているのかが分からなくて「ほんまに放送で流れてるの?」って思いながらやってましたよ。

北村:移動中の車中からも放送してましたが、我々の会話が電波に乗ってるのかどうかも分からなかったですよね。私も近藤さんも、心のスイッチが入ってないと、無言か、放送で言えない話をしてますから。

近藤:そうそう(笑)。

 

電話は『よなよな…』水曜日には欠かせないアイテム。放送開始以来、恋愛、進路相談から、「自分が作った曲を聴いてほしい」「母親がインコを飼ってくれないので困っている」といった話まで、たくさんのリスナーとお喋り。

 

北村:「桜の花」を探しに行った時は、近藤さんは途中でトイレットペーパーを買いに行ってしまって、僕らが普通に外で待ってる…みたいなことがありましたし。

近藤:どうしても買いに行きたくなって、それで、北村さんには外で待っててもらいました。トイレットペーパーを買いに行っているのを、アナウンサーが外で待っているところも中継する番組なんて『よなよな…』だけですよ。

北村:ラジオ番組を担当するようになった頃、ラジオは音声だけでも伝わる企画をするのがセオリーって上司から言われたんですけど、『よなよな…』のロケ企画に関しては、そこを完全に打ち破ってます。

近藤:ただ、ラジオで場所を言うと、リスナーさんが集まってきてくれたのは嬉しかった。タクシーもどんどん集まってきてくれて。

北村:「番組にメールを送ったことがない」っていう人もたくさん来てくれたし。こういう触れ合いって、本当に良いですよね。

 

北村真平アナウンサー。トークの主導権は近藤さんが握っているように感じますが、恋愛や仕事に関して唯一無二の価値観を持っており、近藤さんのほうが掻き回されることも。

 

――ちなみに、桜の花を探す企画では、番組の終盤に乗ったタクシーの運転手が、ユニークな運転手だということが判明しました。

北村:その運転手さんは、その日の最後の乗客にバラを一輪渡すことにしていて、近藤さんにバラを渡してたんです。もちろん、仕込んでた訳ではなくて、本当に偶然の出来事でした。

近藤:素敵な運転手さんでしたよね。3時間ずっと中継してたから、私たちは愚痴っぽくなってたけど、運転手さんのおかげで、その日の『よなよな…』は良い感じでエンディングを迎えました(笑)。

二人の関係がうまくいく秘訣は、仲良くならないこと

――さて、番組でもよく話題に上りますが、『よなよな…』水曜日は、番組開始から200回、時間にして600時間も放送しているはずなのに、近藤さんと北村さんの間に心の壁のようなものがあって、番組開始当初からお互いの距離が縮まってないですよね。

北村:初回の放送の時に、近藤さんの名前を「近藤さん」と呼ぶか、「なっちゃん」と呼ぶか、という話になったんですけど、そもそも、そんな話をすること自体が“サムい”という話になって、そのまま「近藤さん」「北村さん」でいってますよね。ニックネームが付くこともなく。

近藤:「近藤さん」って呼んでくるのは『よなよな…』のスタッフだけですよ。他の番組の現場だと、初対面の相手でも「なっちゃん」って呼んでくれるのに。

北村:そもそも、近藤さんも私も「人のことに興味がない」っていうのも事実としてありますけど。

近藤:ただ、この前、ディレクターから初めて「二人は同じ話を何度もしてる」って言われたんです。普通だったら聞いてる相手が気付いて止めるものだけど、お互いに興味がなくて、話半分に聞いてることがあるから、相手が同じ話をしたとしても。気付かないという(笑)。

――このままいくと、10年後、どうなっていると思います?

北村:お互いの雰囲気も番組も変わらなそうですよね。

近藤:そうだとしても、私は結婚はしてたいけど(笑)。

北村:近藤さんは5年ぐらい彼氏がいないって言ってるけど、プライベートは謎だから、万が一、今の時点で8股くらいしてても気付かないと思います。

近藤:確かに分からんかも(笑)。でも、この前、放送が終わってから初めてスタッフを食事に誘ったんです。『よなよな…』のスタッフだけには壁を感じるからこそ、途中で帰っても怒られないんじゃないかと思って。

北村:近藤さんの方からいきなり誘ってきたからビックリして、「実は結婚してたとか、“重大発表”があるんじゃないか」と、スタッフの間でざわざわしてたんです。そしたら、特に何もなくて1時間で帰りましたよね(笑)。

近藤:そうそう。お腹が一杯になったから帰ろうと思って。

 

リスナーと電話で話した内容を元に、オリジナル曲を作って披露する「夏子ステーション(Nステ)」。シンガーソングライター、近藤夏子さんの本領が発揮されます(月に一度実施)。この日はドイツに靴の修行に旅立つリスナーへの応援歌を熱唱。曲の内容によっては号泣するリスナーもいます。

 

――なかなか、距離を縮めようとしなかった近藤さんと北村さんを含む番組スタッフ。それにはある理由があったそうです。

北村:近藤さんには言ってなかったんですけど、実は、昔、あるラジオ番組のパーソナリティを担当した時に、出演者同士で馴れ合いになってしまって、相手をニックネームで呼んだりしてたんです。そしたら、番組が内輪ノリっぽくなってしまって、短命で終わってしまったんです。続かなかった要因の一つがまさにその「馴れ合いになってたから」って言われて、それで『よなよな…』が始まった時に、距離感を大事にしようと思ったんです。

近藤:ほんまに!? 他のスタッフさんは、その話を知ってるの?

北村:近藤さん以外は知ってます。

近藤:マジで!? だから、『よなよな…』水曜日のLINEのグループに、私だけ入れてもらえないのか! そしたら、私がスタッフの皆さんを食事に誘ったのはアカンかったっていうこと!? 誘って距離が縮まったら、番組が終わってしまうっていうこと? 良かれと思って誘ったのに、番組が終わるのは嫌やから、もう誘わない(笑)。

―― 後編はこちら

番組概要

■放送局:ABCラジオ
■番組名:『よなよな…』
■放送日時:月曜日~木曜日 22時~1時

出演者プロフィール

■近藤夏子
2歳からピアノを始め、高校卒業後、大阪で本格的に音楽活動を始める。
ストリートライブで注目を集め、2010年にメジャーデビュー。
立ってキーボードを激しく叩くライブパフォーマンスで大きな話題を集めた。
現在は、テレビやラジオで多数のレギュラー番組を持ち、タレントとしても精力的に活動している。
2015年3月には、島根県大田市の観光大使に任命され、地元の愛唱歌を宮根誠司氏と共作。東京、大阪の両方に拠点を置き、「シンガーソングライター」の枠を超えて、近藤夏子にしか出来ない、マルチな才能で幅広く活動を続けている。

■北村真平
1984年10月11日生まれ
2008年ABC入社
担当番組:
上沼恵美子のこころ晴天』(ラジオ)
よなよな…水曜日』(ラジオ)
『おはよう朝日です』(テレビ)
『スタンダップ』(テレビ)
『キニナリーノ』(テレビ)

インタビュー


やきそばかおる

小学5年生以来のラジオっ子。
ライター・構成作家・コラムニスト

「BRUTUS」「ケトル」などのラジオ特集の構成・インタビュー・執筆を担当するほか、radiko.jp、シナプス「 I LOVE RADIO」(ビデオリサーチ社)/ J-WAVEコラム「やきそばかおるのEar!Ear!Ear!」/otoCoto「ラジオのかくし味」/水道橋博士のメルマ旬報など連載や、番組出演を通じて、ラジオ番組の楽しさを発信。

ラジコプレミアムを駆使しながら、全国のユニークな番組を紹介するツイキャス番組「ラジオ情報センター」(水曜21時~22時)も放送。全てを合わせると、年間でのべ800本のラジオ番組を紹介している。

カメラマン

倉科直弘(kurashina naohiro)

ブルース・ロックを愛する。草野球も少々。街と退廃と幸福について毎日考えています。
「MUSIC MAGAZINE」「Number」「ケトル」など、多数の雑誌に写真を掲載。大阪在住。
twitter: @kurabokurabo

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「小さなネジのズレが、いつの間にか…」“小説SMAP”に鈴木おさむ視点で描かれた、SMAP謝罪放送の1日

脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 4月13日(土)、4月20日(土)の放送ゲストは、ベストセラー作家への道を歩んでいる、元放送作家の鈴木おさむさんです。20日(土)の放送では、著書である“小説SMAP”こと『もう明日が待っている』(文藝春秋)にも書かれている、SMAP解散当時の様子などを中心にお話を伺いました。


鈴木おさむさん



1972年生まれ、千葉県出身の鈴木さん。19歳で放送作家としてデビューし、それから32年間、さまざまなコンテンツを生み出してきました。
2024年3月末をもって放送作家・脚本家を引退。現在は、「スタートアップファクトリー」を立ち上げ、スタートアップ企業の若者たちの応援を始め、コンサル、講演などもおこなっています。
3月27日(水)に刊行した著書『もう明日が待っている』は、発売2日で累計発行部数15万部を突破。同著の著者印税は、すべて能登半島地震の義援金として寄付されます。

またTOKYO FMでは現在、THE RAMPAGE from EXILE TRIBEのリーダー・陣さんとともに音楽チャートラジオ番組「JUMP UP MELODIES」(毎週金曜13:00~14:55)のパーソナリティもつとめています。

◆『もう明日が待っている』は「僕の目線」で書いた物語

茂木:鈴木さん、アイドルってなんでしょうね?

鈴木:アイドルって、日本特有のものじゃないですか。韓国もBTSが出てきたりしましたけど、やはり他の国にあるのはアーティストで、(アイドルは)日本独特の文化ですよね。

茂木:ということは、『もう明日が待っている』を読むと、日本のことがわかるかもしれないですね。

鈴木:そんな気がします。今回、僕が特に入り口として書きたかったのは、彼ら(SMAP)は91年デビューで、僕が92年に放送作家になっているのですが、そこから94~95年に彼らと知り合いました。

この小説にもけっこう書いたのですが、「SMAP×SMAP」(フジテレビ系)が1996年4月15日に始まりました。それまでアイドルの人がゴールデンタイム、そしてプライム帯で司会やメインをやることがなかったので、この番組をやる前に僕は、周囲から「絶対に当たらないよ」って言われていたんです。

茂木:それを、鈴木さんが当てたわけですよ。放送業界の“大谷翔平”ですよね。

鈴木:僕の力じゃないんですけどね。大谷翔平は(まさに当時の)SMAPです(笑)。

茂木:『もう明日が待っている』はあくまでも小説ですが、書けること・書けないこと、話せること・話せないことがあったと思います。振り返ると、あのタイミングでのSMAP解散は、何だったのでしょうか?

鈴木:みんなが40代になって、40代中盤を迎えるメンバーもいて、多分この先を考えるじゃないですか。そのうえでの本当に小さいネジのずれが、いろんな人が参加することによっていつの間にか大きくなっていた、みたいなことだと思うんですよね。でもそれは、長年のものでもなく、みたいな。

茂木:そうですか。『もう明日が待っている』の謝罪放送の章は、「文藝春秋」本誌に出たときに拝読しました。小説ですが「こういうことになっていたんだ」って、ものすごく話題になりました。あの1日のことは、やはりかなり濃密な記憶として残っていると思います。

鈴木:覚えています。だから、すごく大事にしたのは、あくまでも“僕の目線”で書くことです。夜中の2時に呼び出されて、そこから「明日、番組冒頭生放送でやるから」「え?」っていうところから始まっていくのですが、最初は「歌を歌うのかな」とか、「中居くん、何か言うのかな」とか思っていたら、どうやらそうではないということとか。

みんなの意見の食い違いがあって、結果、ふたを開けたらあの放送になるまでの過程があって。だから、あんないびつな形になるとは、わかっていないんですね。僕は文章をまとめなければいけない立場だったのですが、そのトーンとかもわからなかったんですよ。

茂木:これは、もともと原稿があって事務所に確認したところ、NGが出たということですね。

鈴木:僕の気持ちとしては、そんなに深々としたことをもはや言わせたくないし、メンバーもその思いだったろうし。だからある意味「今回お騒がせしてすみません」っていうことを言ってしまえば、「同じ文章を少し変えて話す」ぐらいがちょうどいいんじゃないかということで……。

だから、自分のなかではそれがアホな文章だってわかっていますよ。作家として見たら「こいつ実力ないな」ってきっと思うんですよ(笑)。でも、多分そうするのが一番いいだろうと思ったし、メンバーもそれを望んでいたと思うのですが、やはりこの小説で出てくる“ソウギョウケ”としては、「それでは許されない」というのがあって。だから僕の気持ちやメンバーの気持ちもあるんだけど、ソウギョウケのプライドもあるという。

茂木:ですよね。

鈴木:今、芸能界が変わってきていますが、あの当時(2016年)は、今と違って簡単に言うとまだ昔のルールがあったじゃないですか。そのなかでは、やはり「それは許されない」ということがあったので。

茂木:このなかで書かれているのが「組織というのはそういうものだ」と。我々視聴者からは、SMAPのメンバーは、一人ひとり個性が輝いていて素敵な存在に見えたんですけど、でもそのSMAPのメンバーも、また組織というものと無縁ではいられないということですよね。

番組では他にも、著書『もう明日が待っている』出版前の裏話などについて語る場面もありました。


(左から)鈴木おさむさん、茂木健一郎



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4月20日(土)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年4月28日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:Dream HEART
放送エリア:TOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜22:00~22:30
パーソナリティ:茂木健一郎

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