『オートリバース』文庫化記念! J-WAVE『BITS&BOBS TOKYO』ナビゲーター・高崎卓馬インタビュー

1980年代にアイドル親衛隊として過ごした2人の少年の姿を描き、ジャニーズJr.内のユニット、HiHi Jets・猪狩蒼弥さんと作間龍斗さんが主演を務め、2020年に民放ラジオ99局とradiko(ラジコ)で放送・配信された青春ラジオ小説『オートリバース』。その原作である『オートリバース』文庫化を記念し、radikoでは原作者である高崎卓馬さんにインタビューを行いました。

これまで役所広司さんや佐藤健さん、伊藤沙莉さんら豪華俳優陣が登場し、さまざまな世界に誘ってくれるラジオドラマが話題! 現在レギュラー放送中の高崎さんがナビゲーターを務める『BITS&BOBS TOKYO』(J-WAVE)スタートの経緯やラジオドラマへのこだわり、昨今の"推し活"ブームについての思いなどを伺いました(取材は12月上旬)。

『オートリバース』詳細

高崎卓馬氏への前回のインタビューはこちら

レギュラー番組 J-WAVE『BITS&BOBS TOKYO』について

手間がかかるけど面白い!ラジオドラマがレギュラー化した理由

――2021年から担当されているJ-WAVEの番組『BITS&BOBS TOKYO』(毎週金曜25時〜放送)スタートの経緯を教えてください。

コロナ禍に見舞われた直後ぐらいに担当した3時間の特別番組『J-WAVE SPECIAL SHORT SHORT』(2020年5月4日放送)がきっかけですね。J-WAVEではラジオドラマをあまり放送している印象がなかったのですが、とあるバーを舞台にしたショートドラマを制作しました。コロナが広がり始めた頃だったので、役者さんは全員リモート出演で、先に送った台本に沿って読み合わせをして、リハーサルはなし。「せーの!」で読んでいく、ほぼ一発録りのスタイルで収録しました。その特番の評判が良くて、自分自身もやっていて面白かったんです。

ラジオドラマは、台本を書いて、役者さんを呼んで……と、準備から収録までのプロセスがトーク番組と比べて5倍くらいかかってしまう。手間がかかって大変なのですが、だからこそやってみると余計に面白くて。「レギュラーでラジオドラマの枠をやらないか」というお話をいただきました。

ラジオドラマってかなり自由にさまざまなことができるんですよね。例えばセリフで「ここは宇宙」と言ったら、宇宙の話になるし、「江戸時代」と言ったら江戸時代の話になる。だからラジオドラマだったら、スターウォーズだって低予算で作れちゃうんです。それが最大の面白さでもありますね。

しょうもないものをちゃんと愛せている人ってかっこいい

――タイトルの『BITS&BOBS』にはどんな意味があるのでしょうか。

イギリス英語でポケットの中にある1円とか2円とか何も買えない"はした金"のことらしいです。今もずっと使われている言葉かどうかは分からないですけど、そういう慣用句があるそうです。

背景を語ると、書店で小説やフィクションがどんどん奥の売り場に置かれてしまっていて。目のつきやすい場所に置いてあるのは、人生の成功のためのノウハウが書かれた本、いわゆる人生の質を上げるための参考書が手前に置かれているのを見て「そんなに必死に質を向上させなきゃいけないんだっけ?」という気持ちになったんです

そして「しょうもないものをちゃんと愛せている人ってかっこいいな」と思ったんですね。例えば路上観察学会の林丈二さんという方は、ヨーロッパ旅行で靴底にはさまった石を、ただ面白いという理由で採集して宝石のように並べていたりしましたが、そういうものに今とても惹かれる自分がいて。「自分だけが面白がれるものをちゃんと見つけられる人ってすごく豊かに生きているな」と思い、「そういうことをテーマにしたラジオ番組をやらないか?」と、J-WAVEの人と話をしていてこのタイトルに決まりました。

ラジオドラマの軸に出来る主人公キャラ・長澤樹さん

――ドラマパートには、17歳の女優・長澤樹さんがレギュラー出演されています。

ラジオドラマが始まる前に長澤樹さんの評判を聞いていて、直接会いに行きました。とても興味があったんですね。会った時は16歳だったのですが、とても腹が据わっていて驚きました。「こういう人がいい俳優になるとうれしいな」と思いました。

ほぼ同じそのタイミングでJ-WAVEから話が来ていたので、「そうだ、彼女を軸にしていこう!」と決めました。彼女にとっても、とんでもない俳優さんたちと毎月共演して、色々な人の役の作り方や演じ方を直接吸収できる演技の学校のような感じになっているんじゃないかなと。実際この1年で彼女の演技、どんどんよくなってます。呼吸や間が上達していくのを間近に観られて、続ける歓びにもなっています。

豪華俳優陣への驚きのブッキング方法

――ラジオドラマのキャストがとにかく豪華。初回は大森南朋さん。その後は役所広司さん、佐藤健さん、伊藤沙莉さんら実力派俳優が多数出演されています。ブッキングが大変そうですが……。

以前一緒に仕事をしたり、ちょっと気になったりした方に突然連絡しています。「この日なんですけど空いてませんか?」って(笑)。役所広司さんに連絡をしたらOKの返事が来て、「やった!」と。でもその後「やばい! 収録が2週間後だ! 台本がない!」という状態からスタートします(笑)。役所さんと長澤さんの2人で何をやると面白いか。さらに「BITS&BOBS」というテーマで掛け合わせて……。そこから奥さんが亡くなって、ずっとつけてなかった結婚指輪を突然つけたくなっちゃったお父さんの話が生まれたり。

台本は役者さんを決めてから書いています。「この方がやると面白そうだな」という形で4話分を、いわゆる当て書きしています。伊藤沙莉さんには、”外国から来たタクシー運転手役”をむちゃぶりしてみました。佐藤健さんには、”声を佐藤健さんのものに整形した青年”を演じてもらいました。声だけ整形ってとんでもないですけど、めちゃくちゃ面白かった。そういう風に考えて遊んでいます。

「ピアノが上手い人がフラッと来て、パッと弾いて帰っていくみたいな感じ」で、収録しています。「マイクがあるスタジオに俳優たちがフラッと来て、パッと読んで、サッと帰る」……ラジオドラマは、セッションみたいなものですごく楽しいので、終わった後には「面白かった!」と言って帰ってもらいたいんですよね。

脚本家・山田太一さんのエッセイを理想形にしたトーク

――高崎さんのトークパートでは、聴くたびに気付きがあるような話題が多いですね。

雰囲気で言えば、バーで飲んでいて「そういえばさ〜」みたいな。まさに「BITS&BOBS」という、”ポケットの中の小銭”のような些細な話題が多いです。番組のトークは、ドラマ『ふぞろいの林檎たち』などを手掛けた脚本家・山田太一さんのエッセイが僕の中の理想としてありますね。山田さんは「みんながいいと思っているもの以外の部分に光を当てる」という書き方をしているんです。

山田さんのエッセイには、山田さんのドラマのアイデアのメモみたいな、種の種の種が詰まっているような感じで。「こういう目線で生きているから、ああいうドラマができるんだな」と、社会の中で線路に乗り切れていない人にスポットライトを当てる作品が多くて。『ふぞろいの林檎たち』には三流大学出身で一流大学出の人にコンプレックスを持つ主人公が登場しますし。僕が番組で話していることも後々ラジオドラマになることがあるかもしれないですね。そういうネタの断片みたいなものも語っています。

いつも同じ感じで流れているという“いいマンネリ”

――レギュラー番組を持ってから気づいたラジオの良さなどはありますか。

毎回聴いてくれている人がいて、感想などが届くことはうれしいですね。不意に会った人やすれ違った人が「昨日聴いたよ」と言ってくれるのも面白くて、レギュラーの良さだなと感じています。

いつも金曜の夜になると流れているという、“いいマンネリ”というか。ラジオとかテレビってどこか自分の中のバイオリズムを整えてくれるような気がします。僕も1週間に1回、神田伯山さんのラジオを聴くと整うんですよ、特にちょっと疲れてる時とかに。ラジオってリセットボタンみたいなところがありますよね。自分の番組もそういう風になるといいなと思っています。

『オートリバース』文庫化について

HiHi Jetsのおかげで小説とラジオ未体験の10代に届いた

――高崎さんの小説『オートリバース』は、2022年12月に文庫化。80年代のアイドルブームの中で親衛隊に入った2人の青春を描くストーリーで、2020年にラジオドラマ化された作品でもありますね。

HiHi Jetsメンバーの猪狩蒼弥さんと作間龍斗さんがラジオドラマに出演してくれました。彼らのおかげで「初めてラジオを聴いた」、「初めて小説を読んだ」という10代のファンの方がとても多くて、それがすごくうれしかったですね。「今まで生きてきて小説を読んだことがなかったけど、読んでみたら超面白かった!」という感想もいただきました。

好きなアイドルのラジオってめちゃくちゃ楽しいじゃないですか。すぐそばにいる感じがするから。ステージの一番前の席で見ているような興奮だと思うんですよね。それを10代の子たちが体験してくれているというのが一番うれしくて。今回文庫化されることで、友達にも薦めやすくなるし、まだ読んでいなくてこれから読むという人にも手に取りやすくなったなと思っています。

ラジオも小説も頭の中で画を浮かべる作業、想像力が絶対必要なメディアなので、自分の想像力を使った没入感の快感を味わう人がちょっとでも増えればいいなと。想像力は没入感のスイッチだと思っていて、例えばラジオから流れる音を聴いていて宇宙船の画が浮かんだら、その頭の中は宇宙になっているはずなので、それはVRでは勝てないと思うんです

個人的には小説を書くのが一番好きなので、今回の文庫化は「また何か書いていいよ」というチケットを半分もらえたような感じもしています。

推し活でラジオドラマ『オートリバース』テーマ曲を作った!?

――今回文庫化にあたり「彼らに捧げるドラゴンフライ」を書き下ろされました。

「ドラゴンフライ」は、ラジオドラマ『オートリバース』のテーマ曲で、HiHi Jetsが歌うことを前提にして歌詞を書きました。まだブレイクしていないアイドルを超一流アイドルに押し上げていくファンの力というのが『オートリバース』では一番重要なポイントなので、それをリアルにしたいという想いもありました。彼らがときどきこの曲をライブで披露しているので、「曲が生まれた背景をみんな知りたいだろうな」と思って書き下ろしました。

ラジオドラマ『オートリバース』は「アイドルのファンをアイドルが演じている」という変な構造じゃないですか(笑)。たぶん猪狩さんと作間さんにとっても、本来追っかけられる側の人が追っかける側を演じたことは「ファンと自分の関係を深いところで理解するきっかけになったんじゃないか」と感じています。

個人的に僕も推している側の1人なので「彼らがとてつもない国民的アイドルになればいいな」って心から思っています。この曲も"推し活"として、応援歌的なつもりで書いているところもあります。彼らもいつか大きな海を越えて行ったらドラゴンフライになるんじゃないか……というのもベースになっていますね。

推し活について

昭和も令和も変わらない“推し” の文化

――昨今は"推し活"ブームと言われていますが、この現象をどんなふうに見られていますか。

『オートリバース』に登場する80年代に“推し”という言葉は当然無く、ファンや親衛隊と呼ばれていました。“推し”という言葉がここ何年かで出てきた時に、「当時と変わらない、同じだな」と思ったんですよね。テレビなどメディアの中にいる人を好きになって、その人を”推す”という行為で元気をもらったり、逆にあげたりしている関係って全然変わらないんだなと。

僕のHiHi Jetsに対する“推し”は、いわゆる熱狂的な推しというよりは「こういう人たちが国民的なスターになるとみんなが幸せになりそうな気がする、時代のいろんなことが整いそうな気がする」という想いですね。それが僕の推しの原動力です。

――今は"推し活"のツールも発達していますね。

SNSなどのテクノロジーが進化して、都会も地方も関係なくどこに住んでいても比較的同じ距離で応援できるようになりましたね。僕が学生だった頃の推し活ツールはやっぱりラジオ。小説の中でも書いたんですけど、ラジオは唯一「素のアイドルの声が聴こえるメディア」で生々しかった

ちょっと遅刻してきたりとか、ダルいとか言っていて(笑)。そういうことってテレビでは絶対放送されないし、雑誌では編集されているじゃないですか。当時は生放送も多かったし、編集されていない状態のものが聴けるのはラジオしかなかったんです。すぐそこにいる感覚もよかったですね。母親にバレないように袖口からイヤフォンを通してこっそり聴いていました(笑)

――最後に、radiko news読者へのメッセージを一言お願いします。

ラジオも小説も”画がない”。頭の中で「画や映像を浮かべてみること」、「聴くこと」はすごく楽しい経験なので、ぜひ皆さんにやって欲しいなと思います。

【番組紹介】J-WAVE『BITS&BOBS TOKYO』

BITS&BOBS TOKYO
放送局:J-WAVE
放送日時:毎週金曜 25時00分~25時30分
出演者:高崎卓馬 / 長澤 樹
番組ホームページ
公式Twitter

Twitterハッシュタグ「#babt813」

※放送情報は変更となる場合があります。

【高崎卓馬氏プロフィール】
JR東日本「行くぜ、東北」、サントリー「ムッシュはつらいよ」など数々の広告キャンペーンを手がける。著書に、「表現の技術」(中央公論新社)、小説「オートリバース」(中央公論新社)、絵本「まっくろ」(講談社)などがある。J-WAVE『BITS&BOBS TOKYO』ではMCを担当。

この記事を書いた人

高田りぶれ(たかだ・りぶれ)

山形県生まれ。ライターなど。放送作家のキャリアを生かし、テレビ・ラジオ番組のおもしろさを伝える解説文を年間150本以上執筆。趣味は観ること(プロレス、サッカー、相撲、ドラマ、お笑い、演劇)、遠征、料理。

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