関西のレコードショップ、イベンターによる音楽シーン大予想座談会(前編)

FM802『MIDNIGHT GARAGE』の毎年年始恒例企画「音楽シーン大予想座談会」。

関西のレコードショップやイベンターの皆さんと昨年の音楽シーン振り返りと今年の音楽シーン予想を座談会形式でお話ししています。
今年も、FLAKE RECORDS DAWAさん、HOLIDAY RECORDS 植野さん、タワレコ梅田NU茶屋町店 浦野さん、キョードー大阪 神戸さんをお迎えしました。

1月18日、1月25日の2週にわたって座談会の模様をオンエアしていきます。
まずは18日の放送で、2020年の振り返りから。

 

ネット界隈で支持を得るアーティストが多かった2020年

DAWA:ライブは中止や延期が相次ぎ、大きなアーティストたちは発売延期になることもありましたが、自由に動けるアーティストたちに関しては、YouTubeで音源を発表したり、宅録したり、カバーを公開したり発信の量はかなりあって、キャッチし切れていない、という印象。 

浦野:タワレコは、4月の初めから1か月半ほどお店を閉めていて、そんなの初めてでしたね。
5月ごろリリース予定だったものが7月にかわったり、発売中止になったり、という対応もありましたし、お店での展開がない分、その間はオンライン販売にお店から商品出荷の対応をしたり、という今までにない仕事をしましたね。

植野:HOLIDAY! RECORDSは、もともとライブハウスで普段活動するようなアーティストの自主盤を販売するのが主なので、昨年はライブハウスでライブができない状況で、ライブでのCD発売ができないから、CDを作らないという状況になり販売するCDが減った感じがしました。

神戸:ライブが止まってすさまじい1年でした。振り返るとあっという間でしたね。
夏明けに久しぶりにイベントでライブを見たときには、しびれましたね。仕事で毎週のようにライブの現場に行ってこれまで当たり前になってしまっていましたが、久しぶりに見て「やっぱこれやな!」と思いました。

昨年は、ライブができなかった分、TikTokやSNSなどのネット界隈で支持を得たアーティストが多かったと感じました。瑛人YOASOBIRin音、とか。その前の年は、Official髭男dismKing Gnuなどが盛り上がりましたが、イメージががらっと大きく変わった2020年だと感じました。

DAWA:今名前の挙がったアーティストたちはライブもあまりしていないですもんね。

浦野:ネットで上がったものが拡散されるときに、有名な人がリツイートしたりという今までにもあった形の拡散は、引き続き広がる要素ではありますが、それに加えてSNSのフォロワー数の多い音楽アカウントが取り上げることでぐっと広がる速さがはやいというのを感じました。
SNSの強さを余計に感じましたね。
インスタで分かりやすく「こんな夜に聞きたい曲」とかまとめているアカウントとか、インディーズアーティスト応援している一般の方のアカウントとか。とっかかりのない人たちにとって的を得たセレクトになっているんでしょうね。見せ方や発信がうまいSNSアカウント(主にInstagram)からの広がりを感じましたね。

植野:YouTubeやTikTokにも同様のことをしている人いますね。昨年TikTokを始めてみましたが、時間が溶けていきますね(笑)TikTokからヒットが生まれる時代の始まりの1年だったと感じましたね。

浦野:HOLIDAY! RECORDSのアカウントがあるんですか?

植野:あります…!(笑)踊っているわけじゃないですよ!(笑)

DAWA:これまで僕らは検索して音楽を見つけていましたが、それがちょっと変わった感じしますね。たとえば居酒屋でも、インスタで写真を見て見つける、という人たちが増えてきて、写真のみの情報で「おいしそう!」とお店を見つける、というのをききますが、インスタで音楽をみつけるのもそれと同様で切り口が全然違いますね。人脈も関係ないし、アルバムが何枚目、とか、新人とか関係ないし。
その分消費が早いのかな、と飽きるのが早いのかもしれないな、とは感じます。物語を知って好きになるのとは違って、思い入れを持てないのかもしれないな、と。
 

植野:ただ、即効性はすごいですよね。TikTok内でのヒット曲をしょっちゅう聞くことになるので、気づいたら口ずさんでいる、というような。

浦野:動画にオレンジスパイニクラブがBGMとして流れている、とか、ですよね。

植野:イントロが短くて歌詞が直接的で、サビが強い、みたいなのは特徴ですね。

土井:出会い方が変わったというのは、単純に媒体が変わった、というだけではないんですね。脳のどこに入り込むか、みたいなところも違いますね。

DAWA:昨年は発信する人も増えたんじゃないですかね。素人さん、というか、ミュージシャンではない人が。

植野:TikTok内の弾き語りをアップしているアーティスト志望の人が話題になったり、みたいなこともありますもんね。

DAWA:アーティスト発掘を仕事にしている人たちもTik Tockチェックしているみたいですね。才能がある人がたくさんいるみたいです。

浦野:ここで話題に挙げている頃には、もうTikTokではない別の媒体になっていっている可能性もありますよね(笑)

土井:TikTokは出会いの場になっているんですね~

DAWA:音楽に利益をもたらしているとは思いますね。次元は違うかもしれませんが。

 

30代たちがSubway Daydreamにキュンとしている…?


土井:2020年個人的によく聴いていた曲を教えてもらえますか?

DAWA:R4という大阪のバンドがいて、彼らはまだ1・2曲発表したぐらいなんですがバンドのスタジオ練習ができない期間に、ソロで宅録で作ったという曲をもらって、これが衝撃的でよく聴きましたね。
ボーカルHiroki Arimuraのソロ・プロジェクトnon albiniです

 non albini 「Kyoto feat. Lil Soft Tennis」

DAWA:彼は高校時代にFLAKEによく出入りしていて、当時は面識なかったのですが、その後イギリスに留学していて、帰ってきてから紹介してもらったアーティストで、本人から音源をもらって、昨年カセットでリリースしました。ビデオも個人で作ってましたね。
個人的にSpotifyで去年一番再生した曲がこれですね。

浦野:フィーチャリングのLil Soft Tennisは、昨年の座談会でDAWAさんが名前をあげてましたよね。

植野:浦野さんともかぶっていますが、Subway Daydream「Twilight」

植野:イントロがThe Cure の 「Friday I'm In Love」を思わせるようなフレーズで、全体的にギターポップ感があるバンドで好きです。ほとんどこのバンドもライブができていないですね。でも曲がアップされてそれが話題になって、という感じですね。

DAWA:Subway Daydreamはうちでも取り扱っています。

浦野:ライブはまだ2回ぐらいだと思いますね。
珍しいですね。おそらく音源を出した時にはまだライブを1回もやっていなくて。音源が出てそれで一気に我々やお客さんたちも知る、という広がり方今までなかったような気がしますね。

DAWA:バンド名もいいですよね。(笑)昨年この座談会で紹介したLaura day romanceと似た位置にいる感じがしますね。

神戸:声がすごくいいですよね。浦野さんと植野さんにSubway Daydreamを教えてもらって一度聴いてめちゃくちゃ気に入りましたね。

浦野:30代ぐらいの人が10代のころに聴いていた音楽に近いところがあるんですかね。懐かしさと、「今やってくれてありがとう」みたいな感じがありますね。ちゃんとキラキラ感もあるし。

DAWA:ちゃんとギターポップですもんね。

 

土井:私が去年出会えてよかったなと思っているのは、碧海祐人(おおみまさと)さんですね。
不思議な魅力のある人ですね。パソコンで音を作るのと、ギターを弾くのが並列というか、どちらかではなく、どちらも使って作る、というのがショックでしたね。言葉の選び方も難しくて、面白いですね。

神戸:メロディーも絶妙ですよね。

植野:HOLIDAY! RECORDSでも扱っていました。

土井:Vaundyが出てきたぐらいのインパクトがありました。

神戸:大阪で一度昨年ライブをしましたが、想像していた以上にいい声で仕上がってましたね。

 

ラップとJ-POPの境目がなくなり、ラッパーとシンガーソングライターやバンドとのコラボもたくさんあった2020年

土井:歌とラップの境目がないものって増えていますかね?

神戸:多くなった印象ですね。
2019年もこの座談会で植野さんがクボタカイとか紹介していたと思いますが、HIP HOPとJ-POPの境目がなくなってきたなというのと、昨年はコラボが多かったですね。
KID FRESINOカネコアヤノとか、BIMNo Busesとか、空音クリープハイプとか、今まで予想しなかった組み合わせがありましたね。

DAWA:HIP HOP界隈はもともとコラボがめちゃくちゃ多いですが、バンドとかシンガーソングライターとのコラボが多かったかもしれないですね。
BIMNo Busesめちゃくちゃよかったですね。それこそ、実際に会わずにリモートでトラックのやり取りして、というこの時期ならではの作り方があったのかもしれないですね。

土井:海外ではこれまでも多かった作り方ですよね。日本でももっと自由にできればいいのに、と思っていました。

DAWA:確かに海外はもともと距離が離れていたり、1曲を作るのにトラックを作る人、サビだけを作る人、サウンドメイクする人と何人も関わって曲を作ることが確立されているから珍しいことではないのかもしれないですね。
バンドで一発どりする美学とはまた別の。このコロナ禍で、日本でもマネージメントの縛りとかが少し緩くなってきた、 みたいな可能性もありますね。

植野:コラボすることで、サブスクでの表示で名前が2つになるからサブスク上で存在感を出しやすいというメリットもありそうです。

土井:確かに。サブスクで出会って、コラボレーション相手の楽曲を聴くようになることってありますよね。

DAWA:簡単に飛べますしね。狙ってやるものではないですけど。


座談会前編はここまで。
2020年を振り返ってお話しいただきました。次回1月25日の『MIDNIGHT GARAGE』では、座談会の後編をオンエア。2021年注目したいアーティストについてお話していきます。
メモ必須の放送になること間違いなし。ぜひお楽しみに!

MIDNIGHT GARAGE
放送局:FM802
放送日時:毎週月曜 24時00分~24時00分
番組ホームページ
公式Instagram

※該当回の聴取期間は終了しました。

特集3回目 プロデューサー瀬尾一三が語る「中島みゆき」プレイリストを公開!『J-POP LEGEND FORUM』

音楽評論家・田家秀樹が日本の音楽の礎となったアーティストに毎月1組にスポットを当て、本人や当時の関係者から深く掘り下げた話を引き出す1時間『J-POP LEGEND FORUM』。
「中島みゆき」をフィーチャーした第3回目の放送。1988年以来「中島みゆき」とタッグを組みつづけているプロデューサー/アレンジャー/音楽監督の瀬尾一三さんが、12月にリリースされた2枚組セレクション・アルバム「ここにいるよ」の全曲を解説。3回目の今回はDISC-2「寄り添い盤」の前編。「中島みゆき」の優しさや温かさについてのお話です。

「中島さんは色々な面を持っているので、優しく側にいてくれるような歌も書くと思えば、どん底に突き落とすような曲も書く両極端な人なんです(笑)。でも突き落とすような曲でも、芯の部分はとても温かい人なんです。最終的に彼女は救いの手を伸ばしている人で、この曲(アザミ嬢のララバイ)は本当に菩薩のような中島みゆきさんですね。」

「アニバーサリーが嫌いみたいです。何周年と銘を打って出すのがあまり好きじゃないみたいで。」
「自分たちでそれをやってしまうと、曲や作品が書き止まっちゃう感じがあって。僕が彼女と仕事をするようになって常に考えているのが、彼女の曲をスタンダードにしたいということで。何周年記念として企画を立てて、そこに曲をあてはめるというのは僕の考えにはなくて、中島みゆきを時空も時代も超えていつでも聴いてほしいという想いで作っています。」

続きはラジコ・タイムフリーでどうぞ!!

■第3回(1/18放送)プレイリストを公開‼
M1. アザミ嬢のララバイ
M2. 泣きたい夜に
M3. 愛だけを残せ (remix) 
M4. 悪女
M5. あした
M6. タクシードライバー
M7. with 

■中島みゆき『ここにいるよ』特設ページ

■第2回(1/11放送)お聞き逃しの方は 【”読む”J-POP LEGEND FORUM】Rolling Stone Japan

※第4回 「中島みゆき」特集 最終回(1/25  21:00~22:00放送)もお楽しみに‼

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