マルチに活躍する、いとうせいこうの思考に迫る!「ひとつ手を加えたら、すごくよくなる」

J-WAVEで放送中の番組『INNOVATION WORLD』(ナビゲーター:川田十夢)。4月から番組がパワーアップ! 20時から2時間生放送に拡張してオンエアしていきます。4月5日(金)のオンエアでは、マルチクリエイター・いとうせいこうさんが登場。いとうさんのファンで親交の深い川田が、その鋭い思考や性格に迫りました。


■自分を追い詰めることが好き

川田といとうさんの出会いは10年ほど前。子ども向けテレビ番組の収録でした。

川田:リハーサルしたとき、せいこうさんは、その場はおどけてるんですよ。でも、そのあと「カメラはこうして」とか、おどけているなかで修正箇所を把握していて「なんだ、この人は」って思いました。
いとう:俺は新しいものがすごく好きだから、把握は早いんだよね。
川田:その“瞬間理解力”や“瞬間翻訳力”が非常に長けていますよね。
いとう:それはうれしいね。俺はわからないうちに「それはですね」って言っちゃうのが好きなの。「それはですね」のあと、何にもないなか、一瞬で考えて捉まえるのが好きなの。自分を追い詰めることが好きだから、そのときはそういうことがあったんじゃないかな。


■「人を活かす」という考え方

川田は「『虎の門』(テレビ朝日)とか『熱血!スペシャ中学』(スペースシャワーTV)とか、振る舞いがめちゃくちゃカッコいいし、出演者がみんなおもしろく見える」とせいこうさんの印象を語ります。

いとう:やっぱり俺はおもしろいことが好きだから、「ひとつ手を加えたらすごくよくなる」とか、人を活かすのが好きなんだよね。『虎の門』だったら、芸人が生放送でいちばんおもしろいことを言えるには、どの秒数がいいかって考えていた。
川田:秒数ですか。
いとう:そう。あとどれくらい追い詰めるといいか、この芸人は1秒待てばおもしろいことが出てくるかもとか、それが好きなんだよね。
川田:『虎の門』に出た人たちは、水を得た魚のように自分の言葉を発するようになったし、それから芸人としておもしろくなりましたしね。
いとう:そう評価してくれることが、いちばんうれしいですね。

いとうさんの「手を加えたらすごくよくなる」という考えは「編集作業」に近いのだとか。

いとう:自分でものを作るときは、より編集を少なくするけど、それにしても、どういうタイトルで、どういう文体で、誰の立場から書くのかはいちばん大事なところだから、それは編集的な感覚。テレビは完全に編集だよね。
川田:そうなんですね。
いとう:ラジオもそうで、いま話している川田くんが、2つ3つくらいよいことが言えるといいなと思いながら、探して会話しているから。
川田:せいこうさんは小説家ですごい文体を持っているのに、その文体から離れてまわりの人の文体を探せるじゃないですか。それって多くの人にはできないことだと思います。
いとう:ひとつの文体を持っているほうが偉いと言われてしまうのが、昭和から培ってきた感覚だけど、僕の好きなイタリア文学とかロシア文学とか海外の文学者は、同じ文体で書かない人が平気でいるわけよ。俺はそういう人に影響を受けちゃっていて、日本語から外に出たいといつも思っているから、そうなるのかもしれないね。
 

川田十夢、いとうせいこう

 


■バカリズムが初めて「笑いの話」をした一冊

いとうさんは著書『今夜、笑いの数を数えましょう』(講談社)を2月に上梓。この本は、笑いの第一線で活躍する倉本美津留さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、バカリズムさん、枡野浩一さん、宮沢章夫さん、きたろうさんの6人と、笑いの本質について語り明かした対談集です。

いとう:笑いのことを、ある程度は論理化しているだろうなと思った人たちに、どういう笑いの論理を持っているのかを訊きたかったんです。いままで読んできた笑いの本はだいたいおもしろくなくて、それはズバリと当たっている感じがしないからでもあって、そこを当てたいし、同時に笑いながら論理も読んでほしいという、ダブルに贅沢な感じ。
川田:いとうさんは現場の笑いも取りながら、読み物にしてもなお残ることをやっているから、さすがだなと思います。
いとう:そこが勝負じゃないかな。笑いを語るとうるさく言ってくる人もいるけど、ここまで実際的に笑いを解き明かした人はなかなかいないから。結局、これは笑いの本だけど表現論なので、泣かせたいってことに通じてもいいし、カッコいいって思わせたいってことにも通じてる。テレビ局やラジオ局の周りの本屋で売れてるらしくて、業界の人がよく読んでくれているんです。
川田:本当に貴重な本でしたね。バカリズムさんがここまで笑いの話をするのは初めてですよね。笑いのロジックもそうだし、大喜利を答える順番まで話している。
いとう:普段、バカリズムはここまで手の内を明かさないからね。この本をつくっていると、他の人にも笑いについて訊きたいなと思っちゃうね。

いとうさんの『今夜、笑いの数を数えましょう』を、ぜひ手にとってみてください。

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【番組情報】
番組名:『INNOVATION WORLD』
放送日時:毎週金曜 20時−22時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/innovationworld/

 

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「2019年本屋大賞」実行委員が語る、アツい読書体験ができる一冊

発表されたばかりの「本屋大賞」。J-WAVEで放送中の番組『GOOD NEIGHBORS』(ナビゲーター:クリス智子)の4月10日(水)のオンエアでは、同賞の実行委員を務める、編集者で本屋さんの原カントくんが登場。おすすめの一冊などを伺いました。


■広告代理店から本屋の運営に

原さんは、博報堂ケトルに在籍し、さまざまなコンテンツビジネスに関わっています。下北沢の「本屋B&B」も、仲間たちと立ち上げました。「原カントくん」という不思議な名前は、水道橋博士とメルマガの仕事をする際に「君は取りまとめ役だから原監督だ。でも監督にはなれてないからカントくんだ」ということから定着したのだとか。

9日に発表された「本屋大賞」の実行委員もつとめています。全国の書店員さんが選ぶ本屋大賞、今回は全国493書店、623人の投票のなかから選ばれました。大賞に選ばれたのは瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』(文藝春秋)です。

:本屋大賞は、1次投票と2次投票があるんです。1次でノミネート作品を決め、2次で決選投票をして決めます。日本の(過去1年の)小説の中から10作品がノミネート作としてまず選ばれますが、実は瀬尾さんの作品は1次の時点で1位でした。なので安定の結果だったのかなと。
クリス:原さんの予想はいかがだったんですか?
:瀬尾さんは本屋大賞を受賞したことがなかったんですが、毎回書店員さんから愛される作家さんで、本命かなと思っていました。
クリス:本屋大賞をいただくのは、作家のみなさんにとっても嬉しいことですよね。
:会場には書店員さんが遠いところからいらして、わざわざ瀬尾さんの『そして、バトンは渡された』の手書きポップをもってくる方もいて、それを見ると作家さんもぐっとくると思います。その幸せな顔を見れるのは、僕も幸せな仕事をしているなと思いますね。

本屋大賞が立ち上がったのは16年前。当時、出版不況の時期に書店員たちが立ち上がって生まれた賞です。従来あった芥川賞や直木賞のように作家が大賞を決めるのではなく、読者に近い書店員が決めるという意味で読者からも支持を得ています。本屋大賞を受賞すると本の売上げが上がるだけでなく、メディアからの注目や、映像化など出版以外の広がりもあるのだそうです。


■おすすめポイントは?

・『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ

:簡単にいうと、7回親が変わる女子高校生の物語です。誰とも血がつながってなくて、なぜそうなったかは読んでいるうちに明らかになるんですけど、最近、児童虐待やイジメなど痛ましいニュースが多いなかで、瀬尾さんなりの優しい筆致で「家族とはなんなのか?」「幸せとはなんなのか?」ということを描いている作品です。ストーリーだけ聞くと悲惨なストーリーかなと思いますが全然そうではないんです。すごいポジティブな話で、読み終わると幸せの涙が流れる、そんな作品になっています。

ノミネート作品のなかから、原さんのいち押しの作品は……。

・『熱帯』森見登美彦

:4位になった『熱帯』を推したいです。森見登美彦さんは本屋大賞に何回もノミネートされているんですが獲れていなくて、ご本人も辟易しているのじゃないかと思うんですけど、『熱帯』は文字の樹海に入っていくような、すごく疲れるんですけどやめられない。ストーリーが読んでいてもわからなくて、文字を浴びていく感じで読み進めていくと、知らないうちに不思議な体験をしていくという。ぜひGWの10連休に読んで向き合ってみてもいいかと思います。アツい読書体験ができます。


■街に根ざした本屋

原さんは自身が運営する下北沢の本屋B&Bについて、「街に根ざした本屋をやりたかった」とはじめた理由を語ります。

:デートするときとかの待ち合わせ場所にも本屋って使われますよね。そういうときに「下北沢に行ったらB&Bで待ち合わせしようよ」となったらいいな、と。正直何も買わなくていいので、来ていて偶然の発見がある、そんな本屋になればいいなと思って始めました。
クリス:でも、できれば買ってほしいですよね?
:できれば買っていただければ……(笑)。

さらに「B&B」という名称にはこんな由来も。

:B&Bって「ビールとブック」なんです、立ち上げたメンバーが全員、単純にビールと本が好きだったということで。
クリス:今、ビールを先に言いましたよね(笑)。
:はい(笑)。新しいスタイルの本屋を目指したいと思っていて、本だけじゃなくてトークイベントを毎日やっています。ひとが集まるからには語り合ってほしいし、お酒が潤滑油になるんじゃないかということで、本とビールを売っていくというコンセプトのお店になっています。

街に根ざす憩いの場としての本屋B&Bでは、トークイベントを毎日開催。作家さんから芸人さんまで多彩な方々が毎日登壇しています。スケジュールは公式サイトをチェックしてみてください!

また、原さんは大倉眞一郎さんと、J-WAVEで4月から始まった火曜深夜26時30分からの新番組『BKBK』でナビゲーターを務めています。こちらもお聴き逃しなく!

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※PC・スマホアプリ「radiko.jpプレミアム」(有料)なら、日本全国どこにいてもJ-WAVEが楽しめます。番組放送後1週間は「radiko.jpタイムフリー」機能で聴き直せます。

【番組情報】
番組名:『GOOD NEIGHBORS』
放送日時:月・火・水・木曜 13時−16時30分
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/neighbors/

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