米大統領選~トランプ大統領の再選は防げないか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。ビル・デブラシオ ニューヨーク市長が大統領選に立候補を表明した報道について解説した。

ビル・デブラシオ – Wikipediaより

NYのビル・デブラシオ市長がアメリカ大統領選に立候補を表明

2020年のアメリカ大統領選挙に向けて、民主党の有力な政治家であるニューヨークのビル・デブラシオ市長が立候補を表明した。民主党の候補者指名争いに名乗りを上げたのはこれで23人となっている。デブラシオさんは現在58歳、ニューヨーク市長選挙のときに姿を見せた奥様はアフリカ系アメリカ人の黒人の女性。デブラシオさんはヒラリー・クリントンさんの上院議員1期目、2000年の選挙参謀やニューヨーク市長に継ぐナンバー2のポスト、市政監督官を経て2013年ニューヨーク市長に当選した。現在2期目で就学前の教育の拡充や最低賃金の引き上げなどに取り組み、トランプ政権の不法移民対策に強く反発している。

飯田)民主党の候補者指名争い、23人というのはすごいですね。

宮家)少し異常な状況ですよ。彼らからすれば、あの市長でも議員でも何でもなかったトランプさんだって大統領になれるのだから、私でもやれるという人が23人もいるわけだと。これは大問題でしょう。前も申し上げたことなのですけれど、アメリカの大統領選挙では、基本的に民主党は1つではないのですよ。民主党は50個あるのです。共和党も50個ある。それは各州に独立した政党があるから、下手したら名前も違います。

ジョー・バイデン(2013年)(ジョー・バイデン – Wikipediaより)

大統領選挙~絞られない民主党候補者

飯田)名前も違うのですか?

宮家)微妙に違います。だから1党が50州に支部を持つというよりも、一昔前は4年に1度、大統領選挙のために50の民主党と50の共和党が競い合って、50個がどうやって合体するか、それを競うのがアメリカの大統領選挙でした。いまでも私はそう思っています。しかし共和党はトランプさんという人がいて、トランプ流ソフトウェアだからプログラミングが狂っているところがあるのだけれども、一応は50の共和党が合体しているのです。そこで民主党側はどうかと言うと、後1年少しで選挙だから、そろそろ絞られて来ないといけないのだけれど、今でも23人も出ている訳ですからバラバラではないですか。本当に合体できるのかと。ニューヨーク市長は立派かもしれないけれど、そんなに簡単に大統領選挙で勝てるものではありません。全国に支持が、もしくは組織がなくてはいけないのです。しかし民主党は右から左までいるので。いちばん有力だと言われているのは前の副大統領のバイデンさんなのだけれど、バイデンさんもいいお年だし。

飯田)もうかなりご高齢だと言われていますよね。

宮家)サンダースさんはもっと上でしょう。この2人が争っているのだったら、とてもではないけれど合体などできませんよ。僕はいまの状況を見ていると、トランプさんはバイデンさんが出て来ることをわかっていて、必ず叩きに来ると思いますね。

飯田)もう既にツイッターでやっています。

トランプ米大統領の一般教書演説を聞き、立ち上がって拍手をするペンス副大統領(後列左)と、着席したままのペロシ下院議長(同右)=2019年2月5日、ワシントン(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領に2期目の可能性

宮家)彼がいちばん強敵だから。しかし私が心配しているのは、民主党がバラバラになってしまっていて、トランプさんの2期目の可能性が出てくることだと思います。こんなことをやっていていいのかという気はしますけれど、これがいまのアメリカの政治の実態です。

飯田)民主党のなかを制するには極端な、ヒラリー系の意見を言わなくてはいけないのですけれど。

宮家)特に予備選のときには、極端な、偏った意見を持った人たちが政治的には活動が活発ですから、候補者はある程度左に寄って行かないと票が出ない。逆に穏健な中道の人たちは静かにしているから、残念ながらなかなかバイデンさんのようなまともな人が出にくくなっているのは事実だと思います。これは昔からそうですけれど。

飯田)そうすると別のテーマとして、マイノリティであるとか、そういう方が強い。

宮家)それはそれで大切なテーマだとは思うのだけれども、大統領選挙を勝たなくてはいけないのはまた別の話ですよね。やはり真ん中をしっかり押さえられないと選挙に勝つのはなかなか難しいと思います。

飯田)23人をこれからどう絞って行くのか。

宮家)本当に絞られるか、心配ですよ。

飯田)絞られない可能性もある。

宮家)そうしたら分裂です。

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ファーウェイ締め出しはアメリカの対中制裁

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月17日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。米中貿易摩擦について解説した。

ファーウェイのショップ=2018年12月9日、中国・深圳(共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領がアメリカ市場から中国のファーウェイを締め出し

アメリカのトランプ大統領は5月15日、アメリカ企業に対して安全保障上の脅威がある外国企業の通信機器の調達を禁じる大統領令に署名した。名指しは避けつつも中国通信機器大手ファーウェイなどが念頭にあると見られている。

飯田)これはきょう(17日)一面トップが3紙ございまして、毎日新聞、産経新聞、東京新聞と、どうなのでしょう。これは大きなニュースですか?

宮家)これは単なる貿易問題、もしくは技術の、5Gの話などではないと私は思っています。いつも言っていることですが、米中の大国間同士のどちらが世界を仕切るかという覇権争いです。こういうことは、冷戦時代には米ソでありました。その後、アメリカが1人勝ちをした時代が10年くらいあって、更に中国がだんだん追いついて来て、また大国間同士のライバル関係が復活した。更に悪いことに、アメリカが変な大統領になってしまったものだから、アメリカの力が随分落ちたように見えるので、その分、言い方が難しいのだけれど1930年代のように、いろいろな間違った判断が繰り返される時代になってしまったのだと思っています。現在の混乱はその一環としてあるものです。1930年代に日本はABCD包囲網などをやられたではないですか。それと同様、今回はファーウェイだけの問題ではなくて、要するにアメリカの対中制裁ですよ。経済制裁、もしくは締め付けです。この米中の覇権争いはかなり本格化していて、後戻りできないところまで来ていると私は思っています。
日本の経済的な判断はもちろん大事です。情報のシステムをどう構築するのか、コスト、技術はどうするか、しかしそれだけではないというように考えなくてはいけない。もう少し戦略的な判断が必要だろうと。それを企業に求めるのは難しいけれども、国家としては戦略的な判断が必要な時期になっていると私は思います。

飯田)1930年代の事を思い起こすと、ブロック経済で各国が自分たちの陣営で固まろうとした。

宮家)そう。昔の技術だと、やはり目に見える地域的な色彩が強かったですよね。しかし、いまは物理的な地理の問題よりもデジタルの世界、サイバーの世界で中国中心の1つの経済圏、デジタル経済ブロックですよね。それとアメリカ中心の経済圏がある。後は残りの部分があって、それがこれから草刈り場になるということです。

飯田)残りの部分がどちらになるかと。

宮家)ええ。中国はもう既に、グレートファイアーウォールと英語で言うのだけれど、壁を作っているわけです。冷戦時代、鉄のカーテンが昔あったではないですか。今はデジタルカーテンですよ。

飯田)なるほど。

パリで記者会見に臨む(左から)欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長、習近平・中国国家主席、マクロン仏大統領、メルケル独首相(フランス・パリ)=2019年3月26日 写真提供:時事通信

簡単に降りられない習近平氏~この争いは10年、20年と続く

宮家)当初アメリカは中国をいい意味で資本主義化して投資をして、中国社会が変わるのを待ったのだけれど、中国社会が変わらなかった。だったら話は別だということで、こうした逆の動きが始まってしまった。中国はもう少し上手くやれば中国社会が良くなったかもしれないと思うのだけれども、こんなことをやられたら、中国人で無くても頭に来ると思いますから、なかなか降りる、譲歩すると言わない。ここで降り方を間違えたら、習近平さんの国内的な、政治的な権威にも関わる話ですから。ガチンコが当分続くということですね。これはあと10年、20年続くといつも言っておりますけれど、ますますその様相を呈して来たと思います。

飯田)第3国は草刈り場になる可能性がある。既に中国陣営に傾いているのかな、みたいな国もありますよね。

宮家)ええ。ヨーロッパにもいますけれどね。イタリアなどは一帯一路に流れて行ってしまった。しかしヨーロッパにもカギになる国があります。例えばドイツとかフランスがどう動くかは極めて重要だと思います。ドイツも必ずしもアメリカに同調してはいません。アメリカも一昔前に比べたらやり方が滅茶苦茶ですからね。だからどっちもどっちです。そういうデジタルの囲い込みと言うか、デジタル経済ブロック化が進んではいけないのだけれども、それを何とか回避できないかと。なかなか難しいですね。

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