新型コロナ~米・LAとNYの明暗を分けた外出自粛要請「1週間」の差

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月6日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカの新型コロナウイルスの感染状況について解説した。

「中国ウイルス」を正当化 2020年3月17日、米ワシントンのホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(中央)(UPI=共同) ©共同通信社

アメリカ一転~マスク着用を推進

アメリカの疾病対策センター(CDC)は、新型コロナウイルスの対策で「マスクは不要」という従来の見解を修正し、着用を勧める新たな方針を発表した。これに対しトランプ大統領は「あくまでも自主的な措置だ」として、自らは着用しないとしている。

飯田)ツイッターでも反響がありました。欧米はあまりマスクを着用しないではないですか。元自衛官の方や、佐世保に住んでいる方がツイートしてくれるのですが、「何があってもマスクをしないアメリカの人たちが、いまはマスクをしているのですよ。びっくり」といただいています。

須田)文化や習慣の違いで、アメリカでは感染症にかかっている人や、医療関係者だけがマスクをするのが通常でした。マスクをしているということは、「私は重篤な感染症にかかっています」ということを示すので、マスクをする習慣がないのです。ただ、そうは言っても新型コロナウイルスの蔓延で、特にアメリカは地域によって集中しています。例えば東海岸ではニューヨーク。それもニューヨーク州ではなく、ニューヨーク市と言われている5つの区です。なかでもマンハッタンでは、爆発的に感染が拡大しています。さすがにマスクを着用する人が増えているのですが、いまマンハッタンのスーパーマーケットへ行くと、マスクや消毒液は完売で、入荷の見込みはないという状況になっています。

飯田)マスクに関しては感染予防ではなく、無症状や軽症で感染している人が周りへ拡げないためにやるものだと、日本でも言われています。

須田)アメリカ人、なかでもニューヨーカーは自己主張が強いです。しかし、いまはスーパーマーケットへ行っても入場制限で行列ができているのですが、2メートルの間隔を開けることを守っているのですよ。

飯田)線が引かれているようですね。

新型コロナ/閑散としたニューヨークの街並み=2020年3月17日 ©時事通信

アジア系人種への差別が深刻化

須田)しかも、少しでも近づくと「近い」と怒鳴られるらしいです。きちんと秩序だった行動をしてマスクを着用するという、いままでとは違った行動をしていて、それだけ恐怖心があるのだろうと思います。アジア系の人は差別の対象になっていて、殴られるならまだしも、ナイフで刺されるという事例まで出ているようです。

飯田)いまは旅行に行けませんが、現地に住んでいるアジア系の方も多いです。

須田)ほとんど外へ出られない状況になっているようです。治安の悪化している地域へ行くと、町中を歩いている人は麻薬中毒者などの精神がおかしい人だけで、買い物すら行けないようです。そういうところは、もともと警察がパトロールしている場所ではありませんから、ますます治安が悪化しています。そういう治安対策も、なかなか難しい部分なのだと思います。

米疾病対策センター(CDC)を視察するトランプ大統領=2020年3月6日、米ジョージア州アトランタ(ロイター=共同) ©共同通信社

西海岸と東海岸、明暗を分けたのは「1週間」の差

飯田)一方で西海岸はというと、ロサンゼルスに住んでいる方からメールをいただきました。“いつもなら女子ランナー”さんから、「ロサンゼルスは3月上旬に自粛生活を余儀なくされています。開いているのはスーパー、レストランのテイクアウト、郵便、配達業務、病院といったところです。朝のニュース番組のMCは自宅から出演。もちろんゲストも自宅から。MC2人とゲスト1人の映像が、3枚の自画像を並べたようなギャラリーとして、テレビ画面に映し出されています。ときどき出て来るプロデューサーも自宅からの映像でした。このように、かなりの対策がされています。一方で、お1人の高齢者に対して『買い物をしますよ』『話し相手になりますよ』というボランティアが増えています。スーパーに並んでいるときには、従業員が画用紙とペンで言葉遊びのクイズをしたりして、飽きさせないように努力もされているようです」といただきました。

須田)カリフォルニア…ロサンゼルス、サンフランシスコはそういった点で言うと、まだまだ事態が悪化せずに感染者数も抑え込みができている状況です。東海岸とカリフォルニアでどう違ったのかというと、半ば強制力を伴った外出自粛要請をかけた1週間の差です。カリフォルニアのほうが1週間早かったのです。その差は非常に大きかった。いまニューヨークの人たちに話を聞くと、「現在ニューヨークで起こっていることは、2週間後の東京なのですよ」と。東京も大阪と比べると、週末の外出自粛要請が1週間遅れています。ここへ来ての感染拡大を考えると、この1週間の遅れが取り戻せるのか。もっと大きな枠組みで見ると、緊急事態宣言をなかなか出さないという状況が、後になって悪い影響を及ぼさなければいいなという、強い危機感を持っています。

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抗インフルエンザ薬「アビガン」~開発への2つのポイント

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(4月6日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。抗インフルエンザ薬「アビガン」を30ヵ国に無償提供するというニュースについて解説した。

アビガンに米政権関心 アビガンの錠剤(ロイター=共同)=2020年4月1日 ©共同通信社

「アビガン」30ヵ国に無償提供

菅官房長官は3日、新型コロナウイルスの感染拡大に関して抗インフルエンザ薬「アビガン」を希望する国に無償で供与することを表明した。外交ルートを通じて、現時点でおよそ30ヵ国から要請があるという。

飯田)一方で国内では、備蓄200万人分を目指すということも報じられています。

須田)なぜ200万人分を確保するのかというと、SARSのときの苦い経験があるのです。結果的にSARSは収束に向かい、その際にワクチンや治療薬の研究がストップしてしまったという経緯があります。なぜストップするのかというと、収束すれば買い手がいなくなるからです。アビガンについては、もし万が一収束へ向かったとしても、200万人分は買うということです。だからどんどん治験をしてください、開発を進めてくださいという意味があるのだと思います。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

アビガン開発の2つのポイント

須田)ポイントは2つあります。1つは資金面で、政府がどういった資金的なバックアップをするのか。メーカーは商業ベースでないと後ろ向きになってしまったり、スピードが遅れたりしてしまうので、資金的なバックアップは絶対に必要です。これは緊急経済対策に盛り込まれるということなので、その点はクリアしています。もう1つは、治験のプロセスです。これも日本の場合には、ものすごく時間がかかると言われて来ましたから、スピードアップをどう図るのか。安全性を確保してのスピードアップが求められると思います。

飯田)偽薬を使って比較するなど細かい治験をして、万が一にも副作用で人が亡くなることがないと証明しなければいけないので、時間がかかるという話がありますね。

新型コロナウイルス感染症対策専門家会議=2020年2月24日午前、東京都千代田区 ©産経新聞社

新型コロナの治療薬とワクチンの開発が急務

須田)もともとは新型インフルエンザの治療薬として開発されて来たのですが、「まだできていなかったのか」というところもあります。もちろん副作用もあるので、慌ててやるということも問題なのですが、ここはスピードアップが必要です。もう1つ必要なのは、ワクチンです。治療薬に加えて、ワクチンの開発も全力で取り組んで欲しいところではあります。

飯田)見出しにあった30ヵ国に無償提供ということですが、求めている国が多いということでしょうか?

須田)新型コロナウイルスのいちばんの問題点は、ワクチンと治療薬がないということです。重症になったとしても対症療法しかないので、今後は発展途上国を中心に感染拡大が見込まれているなか、日本だけの問題ではなく、国際社会も治療薬を強く求めています。

飯田)これを日本国内で囲い込むのではなく、求める国には出して行く。日本の存在感という面でも、いろいろな効果がありそうですね。

須田)国際貢献の一環として、治療薬については日本も主導的役割を果たすべきだと思います。

G20首脳のテレビ会議に臨む安倍晋三首相(右)=2020年3月26日夜、首相官邸[内閣広報室提供] ©時事通信

継続的な治験、諸外国との協力も必要

飯田)中国はアビガンの有効性を書いた論文を取り下げましたが、その理由がよくわからない。それもあって、日本国内では治験を続けて行くようです。

須田)治験については国際協調という枠組みが必要だと思います。アビガンについては国内の治験ということになっていますが、それ以外にも有用性が予想されるような治療薬については、例えばアメリカとの共同治験にも動いていますから、そういう国際協調の仕組みが必要なのだと思います。

飯田)いまは患者が増えていて、治験で助かる命もあるかもしれないし、情報も集まります。

須田)1度これが緊急事態宣言などで収束へ向かったとしても、再流行する可能性を秘めているだけに、治療薬の開発は積極的にするべきです。

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