哲学者・千葉雅也さんが提案する「センス」とは?

クリエイティブプロデューサー・三好剛平氏

毎週木曜日、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演するクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんは様々なジャンルの文化芸術などを紹介している。今週は哲学者・小説家の千葉雅也さんが4月に発刊された『センスの哲学』という本を紹介した。毎週映画やアートをご紹介しているこのコーナーをお聞きの方にこそ、ぜひ一読してほしい本だと語る。

「センスの哲学」を紹介する三好剛平さん(中央) ©RKBラジオ

千葉雅也さんとは

まずは著者の千葉雅也さんのご紹介から。1978年栃木県生まれの哲学者であり、現在、立命館大学で教授も務めていらっしゃいます。小説家としてもこれまで2度も芥川賞候補に選出されていたり、SNSではそぞろにピアノ演奏なども披露されているマルチな方ですが、千葉さんはなんといっても哲学者。その独自の切り口から発される著書がどれも面白いのです。

 

これまで、インターネットやSNSとの「接続過剰」からどう逃れることが可能か、ということを現代思想と結びつけた『動きすぎてはいけない—ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』や、私たちはなぜ勉強するのか、勉強とはそもそも何なのかをこれまた哲学・現代思想を織り交ぜながら展開した『勉強の哲学—来たるべきバカのために』などを発表されてきました。そしてなんといっても千葉さんの名前が日本の人文学界に轟くきっかけとなったのが、2022年に発表された新書『現代思想入門』です。

 

この本は1960年代から90年代を中心に主にフランスで展開された「ポスト構造主義」という哲学分野のなかでも難解ド真ん中にあたるような現代思想を、やはり私たちの日常や生活とどのように繋がりがあって、また使いこなすことが出来るのか、ということを、不思議と読みやすい文章とともに軽やかに教えてくれる本でした。これが2023年10月時点で15万部を超えるベストセラーとなり、2023年の新書大賞も受賞(人文書で15万部ってちょっと耳を疑う記録です)。このように千葉さんというのは、一貫して彼の専門分野である哲学や現代思想が、私たちの日々の生活や人生と具体的なつながりがあるものかを教えてくれる人であり、僕は彼の本を読むたびに、なるほど世界はこういうふうにも捉えることが出来るのか、こんな風に知の巨人たちも言ってたからきっと大丈夫だぞ、とか、またひとつ自分の人生の色んな場面で使える武器が増えたぞ、というような感覚を覚えます。

 

ということで今回ご紹介するのは『センスの哲学』。これは先ほど紹介した『勉強の哲学』そして『現代思想入門』と連なる、千葉さんの入門書的な哲学三部作の3番目と位置付けられる本ということで、ご自身の言葉をお借りすれば『勉強の哲学』は思考について、『現代思想入門』は倫理について、そして今回の『センスの哲学』は美的判断の問題について、それぞれ考えていく本なのだとご紹介されています。

「センス」とは何なのか?

ということで『センスの哲学』です。本書の帯には「生活と芸術をつなぐ万人のための方法」と書かれておりまして、この本は「センス」という言葉を入り口にして、映画や芸術の見方・鑑賞方法を経由し、ついには私たちが「世界をどのように捉え・楽しんで生きていけるか」というようなところまで提案してくれる、楽しくてためになる、とても面白い本になっています。

 

ここでご質問。お二人は「センスが良い」「センスが悪い」とかいう時の「センス」って、詰まるところどういうものだと思いますか?

 

まず、この本ではセンスというものを「ものごとを直観的に把握する」能力だと定義します。ものごとを「一挙に」「全体的に」「総合的に」捉えられること。「深く考えずにわかること」。ここでいう「わかる」というのは「理解力」や「判断力」、あるいは「分別力・識別力」ともいえるものです。

 

ただ、じゃあそうした「直観的な判断力」が身についている状態とはどういう状態なのか?例えば絵画鑑賞という場面において「センスの良い」鑑賞が出来ている状態とはどういうものかというと、まずは勿論、その絵が何を言いたいのか、何のために描かれた絵なのか、という意味や目的を引き取れること、があるわけです。しかしこの本が面白いのは、それに加えてもう一つのポイントとして、そうした意味や目的に捉われない「絵そのものを把握出来ている」状態がセットで実現出来ることが重要なのだ、と展開する点です。

 

先ほどの絵画鑑賞の例でいけば、「何のために描かれたか」だけではなく「画面に何が描かれているか」それ自体を即物的に捉えられることが重要なのだというわけです。それは、単なる意味・目的だけに捉われた狭い鑑賞状態でなく、画面に配置された、それひとつ一つではまだ「意味」を成す以前の様々な形や色、触感などをまずきちんと引き取って、その相互の関係のなかに生まれている意味の動線やリズム、サスペンスを見つけられて、楽しめる/戯れられるようになったらすごいぞ、というわけです。言い換えるとそれは、絵画を「何が書いてある絵なのね」と目的思考で見る見方と、「これ何が書いてあるんだ?何でこんな書き方したんだ?何でこの色の横にこの色を置いたんだ?」というような問いに満ちた宙吊り状態自体を楽しむという見方があって、その両方を持ち合わせることが大切なのだということです。

 

なるほど、じゃあこの本は詰まるところ、美術や映画鑑賞の方法を教えてくれる本なのね、といえばその限りではありません。タイトルに『センスの哲学』と、私たちの生活全般に及ぶ「センス」にまで広げたその風呂敷が、ここまでお話しした美術や映画鑑賞への姿勢とどう繋がってくるのか?点が問題になってきます。私たちは答えに辿り着くだけのために絵画や映画を見るのか。否。途中であれこれ迷う時間も含めてそれらを見ているはず。そしてそのように、迷いながらも少しずつ答えを手繰り寄せていくような「宙吊り状態」と戯れ、楽しみ方を見出していく態度こそが、そのまま私たちが自分の人生をどう生きるか?ということにも繋がってくるのではないか、というようなことにも思いが至っていくわけです。

 

という具合でここでご紹介したのは、本書で展開されているお話のほんの一部。続きはぜひ実際に本を手に取ってご一読いただければと思います。特に「意味がわからん」と言われがちな難解な映画や抽象的な絵画の楽しみ方・見方が分からない、と感じているような方には、絶好の指南書になると思います。

非常に読みやすい本になっているので、ぜひお気軽に手に取ってお楽しみください!

 

『センスの哲学』千葉雅也 著(文藝春秋)

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、三好剛平
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※放送情報は変更となる場合があります。

「日本に来た父と温泉に行きました」SEVENTEEN・DINOが語る日本ドームツアーの思い出

“セブチ”の愛称で親しまれている韓国発の13人組ボーイズグループ・SEVENTEEN(セブンティーン)のDINO(DINO)がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK! SEVENTEEN LOCKS!」(毎月第2週目 月曜~木曜22:15頃~放送)。1月14日(火)の放送では、2024年に愛知・東京・大阪・福岡の全国4都市・10公演をおこなったSEVENTEENのワールドツアーの日本公演「SEVENTEEN [RIGHT HERE] WORLD TOUR IN JAPAN」を振り返りました。


SEVENTEEN



DINO:今日はそんなJAPANツアーを振り返っていきます。僕が日本に来てまず何をしたかと言いますと……運動をしました。運動をして温泉に行った記憶があります。日本でのツアーを通して温泉にたくさん行くんですよ。そして運動もするんですけどね。

実は、両親が日本に遊びに来ていたんです。父と温泉に一緒に行ったのが記憶に残っています。両親が日本に来たことは以前もありましたが、ここまで充実した時間を過ごしたことは初めてでした。そして、今回の日本でのライブではみなさんに、僕たちは変わらないというところを見せたかったんです。

僕たちはとても大きいスタジアムやドームでやってきましたが、それでもステージ1つには変わらないということを、見てくださる観客のみなさんに、大きな感動と幸せを与えたいという気持ちで挑みました。

福岡の公演を終えて、「本当にご苦労さま」と思いました。ツアーというのは長い期間おこなわれますよね。韓国のツアーを終えて日本のツアーをやっているとき、心を強く持って挑んだんですけど、「もうこんな時間が過ぎたの?」と思いました。 公演一つひとつを一生懸命やった自分自身に、「ありがとう」と「おつかれ」という気持ちが大きかったです。

そして、福岡でのライブではピアノも演奏したんですよね。アドリブで演奏したのでとても緊張したんですが、かわいく見てくれたらいいなと思います。楽しかったです。

<番組概要>
番組名:SCHOOL OF LOCK!
パーソナリティ:こもり校長(小森隼・GENERATIONS from EXILE TRIBE)、COCO教頭(CRAZY COCO)/月曜~火曜、アンジー教頭(アンジェリーナ1/3・Gacharic Spin)/水曜~金曜
放送日時:月曜~木曜 22:00~23:55/金曜 22:00~22:55
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/lock/

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