韓国映画「WALK UP」は究極にミニマムな作り!?

クリエイティブプロデューサー・三好剛平氏 ©RKBラジオ

福岡では7月5日(金)よりKBCシネマで公開される韓国映画『WALK UP』。この映画、今では新作を撮れば必ず国際映画祭に招待される名監督ホン・サンスによる新作だが、究極にミニマム(最小限)なつくりの映画でありながら、見ているあいだ中ずっと面白いだけでなく、見終えた後にはどうしてこんな映画が作れてしまうのかと、その達人ぶりに圧倒されるような見事な一本になっていると、RKBラジオ「田畑竜介GrooooowUp」に出演したクリエイティブプロデューサーの三好剛平さんは熱弁した。

映画『WALK UP』について

まずは今日ご紹介する『WALK UP』のあらすじからご紹介したいと思います。

 

主人公は映画監督のビョンスという男。ビョンスは、インテリア関係の仕事を志望する娘と一緒に、インテリアデザイナーとして活躍する旧友の女性・ヘオクが所有する小洒落たアパートを訪ねます。そのアパートは、1階がレストラン、2階がレストラン兼料理教室、3階が賃貸住宅、4階が芸術家向けのアトリエ、地下がヘオクの作業場になっていて、レストランや屋上を備えたこの建物には、ビルが立ち並ぶ都会の一角でちょっと小洒落たエアポケットのような雰囲気が漂います。

さて、そんなアパート1階のレストランで3人が和やかにワイン片手に語り合っていると、ビョンスのもとに仕事の電話が入り、娘とヘオクを残してその場を一時離れることになるわけですが、そこから映画は不思議な展開を見せていきます。アパートのひとつひとつのフロアごとで繰り広げられ始める物語が、いつしかビョンスと彼を取り巻く女性たちとの4つのエピソードへと枝分かれしていきます。果たしてこれはビョンスの“もしもの人生”を提示したパラレルワールドなのか、それとも——?

 

ということでこの映画、なんと舞台はアパート一棟だけ。出演者も数名のみという驚くほどミニマムな構成のモノクロ作品なわけですが、そうしたことがまるで問題にならないくらい、とにかく抜群に面白く、最後には「なんか人生見ちゃったかも」となるような滋味深い気持ちで劇場をあとに出来る作品になっている。どうしてそこまで凄いものになってしまったか、と言えばやはりこれは監督ホン・サンスの名人芸によるものでしかない、ということで、ここからそのホン・サンスとはどういう人か、という点を少しご紹介したいと思います。

映画の達人、ホン・サンス

監督ホン・サンスは1961年生まれ。96年に『豚が井戸に落ちた日』という映画で長編監督デビューを果たしロッテルダム国際映画祭で最高賞を受賞して以来、そこからコンスタントに映画制作を続けてはほぼすべての作品がカンヌやベルリン、ヴェネチアをはじめ主要国際映画祭で上映され続け、2010年代以降にはそこで受賞まで重ねていく名匠へと育っていきます。監督の映画づくりとその作風には一貫した特徴があり、まずはその究極に身軽でミニマムな体制での映画づくりです。ホン・サンス自身が製作・監督・脚本・編集・音楽を手がけ、近年はそれに加えて撮影まで自身で手がけるようになってもいるため、現場は監督と数名の技術スタッフと出演者のみ、という超ミニマム体制。さらに、監督は事前に完成した脚本を用意せず、毎回撮影日の朝ごとにその日撮る分のシナリオを役者に渡す方法で映画づくりを続けています。

 

加えてその作風にも一貫性があり、監督の映画のほとんどが、登場人物が酒やタバコを共にしながら会話を重ねていく長回しの会話シーンをメインに構成されており、映画ファンなら「お約束」ともいうべきそうした会話シーンや独特のカメラワークや音楽使いなどを見ると、ああ私は今、ホン・サンスの新作を見ているなあ、という喜びを感じるものになっています。

 

でもだからと言ってホン・サンスの映画づくりがユルユルでいい加減に作られていて、なんとなく良い映画になっているか、といえばそうでもありません。本作で主演を務めた韓国の名優クォン・へヒョ(ドラマ『冬のソナタ』のキム次長役をはじめあらゆる韓国映画のバイプレイヤーを務める名優です)のインタビューで、監督の映画では演技においてはアドリブは一切存在せず、あくまで監督から当日朝に渡される台本通りに演じることが求められる、と語ります。ときには15分以上に及ぶ長回しの会話シーンも、実際にお酒やご飯を食べながらも、完璧に台本の中身まで理解し、相手の動きやセリフに耳を傾けながら、真摯に反応を返す。作品を見た時に感じる肩の力の抜けた洒脱な印象に加え当日朝の台本など、ユルく作られているようでいて、実はかなりな集中力と、とんでもない監督と演者たちの技の応酬によって作られた映画であることがわかります。

 

そうなってくると、監督の映画の魅力の核を成すものは脚本なのだと言えるかもしれません。この映画でも、各フロアごとで繰り広げられる10分以上の長回しの会話シーンを積み上げて主人公ビョンスの人生を描いていくわけで、そうなると、各場面ごとでどんな会話を展開するかが一番重要になってくる。なのだがこの映画は例えば、そこで良い豚肉買ってきたから屋上でご飯にしようか、とか、コンビニでタバコ売ってたから買ってきたんだけどさ、みたいな、途方もなく無駄に思えるようなやりとりを延々と積み上げていく。だけど、そのやりとりを重ねていくなかにこそ、ふと現れる振る舞いや、ちょっとした瞬間みたいなものが現れる。そこに主人公と相手の関係やドラマが立ち起こってくるもので、非常に上手いばかりか、とにかくその延々続く会話が一切ダレることなくずっと面白い。正直誰も真似できない名人芸だと思います。

 

ホン・サンスはそうやって敢えて「お約束」を繰り返していく監督として、有名な哲学者の著書タイトルをもじって「“反復と差異”の映画作家」なんていうふうに紹介されたりもしますが、まさしくそうやって繰り返し(「反復」)を積み上げるうちにこそ、ささやかな「差異」が際立ち、観客に「まだこんな驚きが映画に、そして人生に見つけられるのか!」という爽やかな驚きを与えてくれる監督でもあります。

本当に抜群に面白くも圧倒的な達人芸を堪能できる映画『WALK UP』は、7/5(金)よりKBCシネマにて、そして8/23からは佐賀シアター・シエマなどでも上映されます。

是非ご覧ください。

 

映画『WALK UP』

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、田中みずき、三好剛平
番組ホームページ
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※放送情報は変更となる場合があります。

話題の異色タッグが生放送でオトナの音楽を熱く語る!『堺正章&Rockon Social Clubの オールナイトニッポンGOLD』

スペシャルなパーソナリティが登場する『オールナイトニッポンGOLD』。1月29日(水)は、今日22日に新曲を配信リリースした異色のタッグ、堺正章&Rockon Social Clubが担当することが決定。120分の生放送でオトナの音楽について熱く語る。

堺正章と、元男闘呼組のメンバーを中心とする6人組バンドRockon Social Clubという異色の組み合わせが話題となっているコラボレーション曲「プンスカピン!」。当日は堺とRockon Social Clubのメンバーが生登場し、今回のコラボの経緯や、「プンスカピン!」制作の裏側、さらには今後の活動へ向けた意気込みなど、音楽にまつわる話を中心に語り尽くす。

先月、Rockon Social Clubのメンバーでもある成田昭次、寺岡呼人、青山英樹で構成された3ピースバンド・NARITA THOMAS SIMPSONのライブに、堺がサプライズ登場してこの「プンスカピン!」を初披露した際には、ライブならではのハプニングもあり、堺の流石の切り返しが話題となったが、ラジオでその時の裏話などが明らかになるのか、ファンからも注目が集まりそうだ。

一夜限りの特別番組『堺正章&Rockon Social ClubのオールナイトニッポンGOLD』は1月29日(水)22時からニッポン放送をキーステーションに全国ネットで生放送。

■コメント

【堺正章】
Rockon Social Clubとコラボして楽曲が出来上がり、歌える喜びを感じています!! このラジオでもう一つ盛り上げたいと思います♪

【成田昭次】
アーティストとして、人生の先輩として心から尊敬している堺正章さん。2時間たっぷりとお話が伺えるこの機会を誰よりも僕が楽しみにしています。

【番組概要】
■番組タイトル「堺正章&Rockon Social ClubのオールナイトニッポンGOLD」
■放送日時:2025年1月29日(水) 22時~24時
※ニッポン放送をキーステーションに全国ネットで生放送
■出演者:堺正章、Rockon Social Club(成田昭次、高橋和也、岡本健一、前田耕陽、寺岡呼人、青山英樹)
■番組メールアドレス:sakairsc@allnightnippon.com
■番組ハッシュタグ:#堺ロックオンANNG

 

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