黒田征太郎「野坂昭如に見せたい」戦争童話と実物の“戦地からの手紙”で朗読劇

戦地からの手紙で埋め尽くされた幕 ©RKB毎日放送

「戦争童話集」。少年時に過酷な体験をした作家・野坂昭如(あきゆき)が出版した。この本にほれ込んだ、元劇団員の居酒屋女将が、自らの叔父が戦地から送ってきた実物の手紙やハガキを盛り込んで、朗読劇を作った。RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』に出演したRKBの神戸金史(かんべ・かねぶみ)解説委員が、公開稽古の様子を紹介した。

黒田征太郎さんが描いた朗読劇のチラシ

『イノチノコト 忘れてはいけない物語』と題した朗読劇が今週末の8月7日(日)に、福岡アジア美術館・あじびホールで上演されることになりました。公開稽古を取材してきましたので、その様子をお聴きください。

リュンコ:野坂昭如作「戦争童話集」より「ソルジャーズ・ファミリー」。昭和20年8月15日、南の大きな島の浜辺に、取り残された兵士が倒れていました。

 

男声:島の辺りの空も海も、アメリカ軍が見張っていて、近づけばたちまち、やっつけられてしまいます。

 

リュンコ:いわば、敵にも味方にも見放され、しごく平和と言えば平和。1年近くも身近に銃声や爆音も聞かず……しかしもっと、恐ろしい敵がいました。

 

2人:それは、飢えです!(ジャーン!)

リュンコさん ©RKB毎日放送

朗読の中心は、リュンコさん。福岡市の博多区古門戸町で「博多うまか遊び庵」という居酒屋を経営している女将さん、森温子さん(68)です。「リュンコ」というのは、若い頃に劇団で舞台に立っていた時の芸名なんです。リュンコさんは、昭和の作家・野坂昭如さんの大ファンで、小説の中にちょっとだけ出てくる端役のお姉さんの名前なんだそうです。

 

今回、その野坂さんが書いた「戦争童話集」を朗読しようということになりました。野坂さん自身があの戦争を体験して「火垂るの墓」などいろいろな名作を書いていますけれども、「戦争童話集」は12の作品を書いた1冊の本です。このうち2作品を朗読します。童話の内容を引用しながら物語は進んでいくんですけれども、時々こんな男性の声が挟まってきます。

「拝啓 森三助様、軍事郵便 検閲済。昭和18年」

 

「本年に入ってから度々の作戦変更で、家へも満足に手紙を出していられない。自分はこの度、動員令により、師団の七三六七部隊に編入され、南方の戦線に派遣される事となりました。小隊長は鈴木中尉であります。ですから、これから暫くお便りは第七三六七部隊気付、鈴木隊にお送りください。また、内地の新聞を送ってください」

軍事郵便

「森三助」というのは、リュンコさんの実のおじいさんです。戦地から軍事郵便を送ってきたのは、伯父の邦生(くにお)さん。父親の三助さん宛てのハガキや手紙が200通近く残っていたんです。リュンコさんはこのことを知って、何か表現できないかと考えたわけです。

 

邦生さんの墓石には「昭和19年7月7日、インドのアッサム州で亡くなった」と刻まれていたんですが、詳しいことは何も家族から聞いていなかった。邦生さんの肉筆を見て、リュンコさんは「会ったことのない伯父さんは、どんな人なんだろう」「26歳で亡くなったというが、どんなふうに亡くなったんだろう」と考えていきました。

 

インドのアッサム州で亡くなったということは、多くの犠牲を出したインパール作戦に参加していたということでした。軍歴を取り寄せてみたんだそうです。本籍地のある自治体に家族が言うと、取り寄せることができるんですね。何年にどこの部隊に行ったとか、戦地で病院にかかっていたとか、いろいろなことが書かれていたんですが、最後に「右大腿部に砲弾を受けて戦死」とありました。それを見て「急に叔父の姿がリアルに感じるようになった」とリュンコさんはおっしゃっていました。

 

朗読劇の中では、野坂さんの小説を朗読していく中に、森三助さん宛ての軍事郵便の内容も盛り込まれています。構成・演出は、藤村信一さん。太宰府市にあるジャズバー「ドルフィーズ」のマスターです。アングラ演劇や舞台監督などを長く続けてきた、演劇経験の豊かな方です。つまり、野坂さんの「フィクション」と、軍事郵便の現物をベースにした「ファクト」とが、入り乱れていくような感じなんですね。

 

森三助さん宛ての手紙を見ましたけども、リアルなんです。絵も上手で、現地の風物や、緑の山々を描いている絵が載っています。舞台の後ろに幕を立てて、背景にするんですが、コピーしたハガキをペタペタ貼って、その前で演じていこうと考えました。その幕を、北九州市門司区在住のグラフィックデザイナー、黒田征太郎さんに「この上に何か描いてくれませんか」とお願いをしに行きました。幕を持っていく時に、私も同行して、見てきました。黒田さんのアトリエでの様子、お聴きください。

黒田征太郎:これが物語っていますよね。星のマークで「軍事郵便」とあって、検閲済みというマークが押されているのが、何とも憎たらしいですね。ねえ!」

 

リュンコ:そう思います。1枚たりとて、ないものはない。ここまで検閲するのか。

 

黒田:徹底的ですね。この星のマークが刺さってくる気がしますよ。これをバックに、野坂さんの書かれた物語を演じられるのを、野坂さんに僕は見せたい。

 

リュンコ:ああー! 見ていただきたかったですね。

 

黒田:僕は一番、それができたら…

グラフィックデザイナー・黒田征太郎さん

黒田征太郎さんは、実は野坂さんと極めて親しい関係で、若いころ東京でずっと一緒に活動したり、飲んだりしてたんだそうです。「表現者としてのあり方を教わった」と黒田さんはおっしゃっていました。リュンコさんは、バック幕の上に大きな文字や絵を描いてほしいとお願いをしたんですが、黒田さんは「この上に僕は描けないよ」とおっしゃいました。そこでハガキがずらっと張ってある、合間にいろんな思いを描き入れていくような形に変えています。

黒田さんは公開稽古にも来られていまして、野坂昭如という人や「戦争童話集」が蘇る意味、そして森三助さん宛ての「軍事郵便 検閲済み」とハンコを押されたハガキが一つの作品になっていくことの意味を、強く語ったんです。

公開稽古の様子 ©RKB毎日放送

劇中の音楽はオリジナルです。一緒にやっている方々が作曲し、その場でリアルで演奏していきます。演出した藤村さんは、BGMのように音楽をつけるのではなく「音が朗読する」ようにしてみたい、と。「声の朗読」「音の朗読」が一つになって世界を作っていくのを目指している朗読劇なんだそうです。戦地の記録は、生き残った人がどうしても書けないことがいっぱいあるわけです。

 

書き残す人自体も、少ない。そこに生きた人に、どんなことが起きたのか。書かれたものをリアルに演じるだけではなくて、想像していく方が事実に近くなる可能性、僕は高いと思うんです。飢えに苦しんでいる兵隊が妄想する。「どうやったら日本に帰れるだろう」「コウノトリ乗ってたらいいんじゃないか」「亀の背中に乗せてもらったらどうなんだろうか」。もちろん、亡くなってしまっていますし、記録には残っていません。でも、こんなことがあってもおかしくないんじゃないか、と野坂さんも考え、童話集を作りました。最期に兵士が思った気持ちが、朗読されています。

兵士:日本人だから、日本へ帰るんです。日本人の声が聴きたいし、日本の山や川が懐かしいんです。

 

冒険ダン吉:ここには、カヌーしかないし。

 

兵士:カヌーでけっこうです、一隻与えてください。僕が漕いで、日本へ戻ります!

夢のような世界に、冒険ダン吉が出てくる。どうしても帰りたいから、カヌーを貸してくれと、うつらうつらと夢の中で兵士は求めていく。こんな気持ち、おそらく亡くなっていった方々はみんな持っていたんじゃないですか。そんなふうにも思わせる朗読劇でした。

 

今度の週末の日曜日に2回公演があるんですが、午後6時半からの公演のみ、チケットが残っているそうです。

 

 

 

『イノチノコト 忘れてはいけない物語 野坂昭如作「戦争童話集」より』

8月7日 夜公演(午後6時半~)

福岡アジア美術館あじびホール

前売:2,500円/当日:3,000円

予約:080(5602)4564

 

中公文庫「戦争童話集」(野坂昭如著、中央公論新社、税込565円)

https://www.chuko.co.jp/bunko/2003/02/204165.html

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、武田伊央、神戸金史
番組ホームページ
公式Twitter
公式Instagram

※放送情報は変更となる場合があります。

乃木坂46 与田祐希が真っ直ぐな目で言った“一言”を久保史緒里&佐藤璃果が称賛「カッケーな!」

4月17日(水)深夜、乃木坂46で3期生の久保史緒里がパーソナリティを務めるラジオ番組「乃木坂46のオールナイトニッポン」(ニッポン放送・毎週水曜25時~27時)に、ゲストとして3期生の与田祐希、4期生の佐藤璃果が生出演。3人で、それぞれの“ぐうたら”ぶりを確認しあった。

乃木坂46 久保史緒里、佐藤璃果、与田祐希

今回の放送内では、「だらしないな」と自覚していることをカミングアウトする番組コーナー『堕落の懺悔室!人間失格!!』を展開。2022年12月7日の同コーナーで久保と与田が、同期の梅澤美波からその“ぐうたら”ぶりを𠮟り飛ばされていたことを振り返ったが、与田は「私たちが堕落してるんじゃなくて、梅ちゃんがすごいんだよ」と言うと、久保がすかさず、与田が残したという名言を明かした。

久保:さっき打ち合わせのときに、「私は人間らしいだけです」って真っ直ぐな目で言ってた。

与田:(笑)

久保:私、カッケーな!と思って。

佐藤:マジで輝いてました。カッコいいです。

与田:恥ずっ(笑)

久保:顔真っ赤じゃないか(笑)

与田:やめて、恥ずかしい(笑)

佐藤:与田さん、一生ついていきます。

久保:あのとき、真っ直ぐな目をしてたよ。

与田:想像すると、めっちゃ恥ずかしいじゃん。

久保:本当に、撮っとけばよかった(笑)

与田:自分の言動には気をつけよう……。

久保:与田(の堕落っぷり)については分かってたんだけど、璃果は? 几帳面? だらしない?

佐藤:几帳面……と言いたいです。

久保:そっちのイメージだったけどね。

与田:きれい好きとか。

佐藤:いや、本当にダメです……。

意外と“堕落”サイドなのではないかという佐藤の一面について触れた久保は、早速チェックタイムに突入。「仕事が忙しい時期に部屋が荒れる?」「ベッドの上で飲み物は飲む?」などの質問には、3人とも「YES」という結果に。コーナーが進むにつれて、実は佐藤が一番“堕落”レベルが高いのではないかといった疑惑が浮上し、久保や与田から詰められてタジタジになる場面もあった。

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