東ちづる率いる「まぜこぜ一座」のエンタメ舞台は“刺激的な完成型”

俳優の東ちづるさんが率いる「まぜこぜ一座」の公演『歌雪姫と七人のこびとーず』が3月5日、東京・渋谷で1日限りの幕を上げた。車いすのダンサーや性的少数者など、様々なマイノリティがパフォーマンスを披露する唯一無二のエンターテインメントショーだ。東さんの取材を続けてきたRKB毎日放送の神戸金史解説委員が観劇。魅力の一部をRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で紹介した。

「まぜこぜの社会」を可視化する

俳優の東ちづるさんといえば、若いころから人気を博して、ドラマの若女将シリーズでも知られますが、ボランティア活動を30年にわたって続けています。一般社団法人「Get in touch」の代表を務めていて、誰も排除しない「まぜこぜの社会を」と呼びかけています。

東ちづるさん(Get in totch提供)

社会には様々な人たちが暮らしているのだけど、普段の生活ではなかなか見えません。でも「実際には、この社会はまぜこぜなんだ」「まぜこぜの姿を明らかにしていこうじゃないか」ということで、2017年からエンターテインメントショーを開いています。

義足のダンサー、車椅子ダンサー、全盲のシンガーソングライター、こびとレスラー……普段、一堂に会することがない、多様な個性をもつパフォーマーがそろって「まぜこぜ一座」を結成、「月夜のからくりハウス」を上演してきました。今回は5回目で、演題は「歌雪姫と七人のこびとーず」です。

自分たちを「小人」と言って何が悪い?

「歌雪姫と七人のこびとーず」では、盲目の落語家、桂福点さんのこんな口上が披露されます。

盲目の落語家・桂福点(Get in totch提供)

桂福点:生まれいでたるこの姿。ケダモノなのか化け物なのか、異星人か妖怪か? はたまた妖精か天使か、悪魔か魔女なのか……御用とお急ぎでない方は、一度はこの見世物公開まで、ずずずいーっとお立ち寄り! 寄ってらっしゃい、見ていらっしゃい! 寄ってらっしゃい、見ていらっしゃい……ほな、行こか。

見世物小屋、というトーンなんです。身長が1mちょっとの「小人さん」が勢ぞろいします。昔は「こびとプロレス」という催しがあったんですが、今はテレビに出てくることもほとんどありません。でも、こういう低身長の人たちはいまも存在しています。その姿をきちんと見てほしい。彼らは「私達は小人だ」と言ってはばかりません。

小人たち:ようこそ、こびとーずの王国へ! これより先は、妖(あやかし)の都。現し世(うつしよ)は夢、夜の夢こそ真! 「いい」は悪いで、「悪い」はいい。「きれい」は汚い、「汚い」はきれい!

圧倒的な表現

小人たちのステージ(Get in totch提供)

すごくきらびやかな衣装に、照明も音楽もあって、舞台はとても華やかです。登場人物が小人さんなので、最初はみんなびっくりするかもしれません。でも、楽しく歌い踊る姿に次第に気にならなくなってきます。

障害のあるなしに関わらず、素晴らしいパフォーマンスを披露するタレントが集まっているからなんですね。この歌声を聞いてみてください。

Amazing Grace, How sweet the sound,

盲目のシンガーソングライター(Get in totch提供)

この歌声は、佐藤ひらりさん。盲目のシンガーソングライターです。2001年生まれの21歳、東京パラリンピックでは国歌斉唱の重責を担いました。この歌に合わせて、片足のない義足のダンサーが踊っています。

義足のダンサー(Get in totch提供)

そもそも東さん自身「自分も見世物なんです」と言っています。障害のあるなしに関わらず、この素敵なパフォーマンスを見てほしい。それが「月夜のからくりハウス」。パフォーマーが活躍する舞台を作って、障害者のイメージを変えていたい。普段は見えないけれど「今の社会は、もう“まぜこぜの社会”なんだよ」と知ってもらいたい、ということなのです。

令和の「毒りんご」はインターネットで

舞台の物語では、非常に評判になっていて、多くの人が憧れる「歌雪姫」に嫉妬する、ドラァグクイーンが出てきます。ドラァグクイーンとは、どぎつい女装やメークに身を包んだ表現者です。

ドラァグクイーンのドリアン(Get in totch提供)

ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダ:鏡よ鏡よ、鏡さん。この世で一番美しいのはだーれ?

鏡:この世で一番美しいのは……歌雪姫でございます。

ドリアン:何ですって? 何なのよ、この女! 全然知らない……後ろ姿しか映ってないじゃない! 絶対ウラがあるに決まってんだけど……。(スマホで検索し始めて)じゃ、「歌雪姫、性悪」。……出てこないわね。じゃ、枕営業してんじゃないの? …うーん、それらしいの出てこない! 出てこないなら……作ればいいのよ。ふふふ。「歌雪姫は、逮捕歴がある」んじゃないかしら! 令和の時代に“毒りんご”なんてもう古いわよね。「毒もインターネットの時代」でございますから。ほほほほ、はははは……

今回の舞台のテーマは「ネット上の攻撃」なんです。デマとか中傷が世の中に広がって、止めようがないくらいですよね、今。ごく一部の人だと思いますけど、あることないことを書いて、意図を持って誰かを攻撃する。それが事実かどうかは関係がない。そういう社会の一面があるわけです。それを物語で表現しています。

謎が謎を呼ぶ展開…きわどいエロスも

でも「歌雪姫」とは、一体誰なのか? 舞台にいつまでも出てこないんです。「7人のこびとーず」と言うのに、6人しかいない。「7人目はどうなってるんだろう?」と謎を呼びながらストーリーは展開していくんですが、その間に様々なパフォーマーが入ってきます。障害のある方、ない方……女性がきれいなボディーラインを見せたり、驚くようなエロスも入ってきたりして、今までの「まぜこぜ一座」の舞台で一番エッジがかなり効いている気がしました。

心を打つ叫び……車いすダンサーとともに

このラップは、コミュニケーション能力に障害が起きている「自閉症」を持つ青年、GOMESSです。

自閉症のラッパーGOMESS(Get in totch提供)

あなたのことを思いながら 俺は言葉を探し続けている

影が延びていくと同時に 俺は光を怖がるようになり

また誰かが正しいと言ったそれを 呪いだと思い

俺はのろいスピードのまま 地の上を歩く

空には決して追いつけないだろう

しかしあなたが星屑に変わってしまう頃

俺は現実に生きていたことを思い出す

今呼吸をしているのになぜ 生きてるのに

Life time you living

Life time you living

Life time you living

今 生きる それが歌になる

明日には忘れる 昨日には死んでる

明日には忘れる 今を歌える

明日には忘れる 昨日には死んでる

今に you living for the poetry

フェイクやデマへの明確なメッセージ

歌雪姫が誰なのか、7人目の小人は誰なのか――。謎が明かされると、「え!」と思います。そのメッセージ性がすごく強い。ネット上のフェイクニュース、デマに対する明確なメッセージだからです。そしてクライマックスがきます。

いくら泣いても あとの祭りよ

わっしょい わっしょい

MAZEKOZE!

にぎやかに、華やかにエンディングを迎えていきます。会場では映像を撮影していました。いずれ映画のような形で公開する可能性があるので撮影しているというので、楽しみだなと思いました。

東さんたちの活動についてご興味のある方は、YouTubeで「MAZEKOZEアイランドツアー」と検索すると見ることができます。東京オリンピック・パラリンピックの際に、日本から世界に発信する公式映像として、東さんたちが企画して制作した映像です。

MAZEKOZEアイランドツアー

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◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。最新作は、東ちづるさんの活動に密着した長編ドキュメンタリー「まぜこぜちづる」。

田畑竜介 Grooooow Up
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週月曜~木曜 6時30分~9時00分
出演者:田畑竜介、武田伊央、神戸金史
番組ホームページ
公式X
公式Instagram

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※放送情報は変更となる場合があります。

参院選後の石破政権はどうなる?

7月11日(金)、ニュースキャスター・長野智子がパーソナリティを務めるラジオ番組「長野智子アップデート」(文化放送・15時30分~17時)が放送。午後4時台「ニュースアップデート」のコーナーでは、「参院選後の石破政権、どうなるのか?」というテーマで、ジャーナリストの鈴木哲夫氏に話を伺った。

長野智子「今回の参議院選、普通は参議院選挙っていうのは原則として政権選択選挙にはあたらないんですけれども、今回は国民が今の政権を信任するかどうかを示すことを含めて、あとは衆議院が少数与党というのも含めて、実質的な政権選択選挙につながるのではないかといわれております」

鈴木哲夫「そう言ってもいいですよね。だから本当は政権選択選挙は衆議院議員選挙、総選挙なんだけれども、そもそも衆議院のほうで既に少数与党で逆転しちゃっているわけですよね」

長野「そうなんですよね」

鈴木「自民党・公明党にしてみれば、かろうじて参議院のほうは数が多いから『衆議院で何かがあっても参議院で否決すりゃあいい』って、なんとか保っているんだけど、今度の選挙で参議院も自公が少数になっちゃったら、衆参両方で数少ないんだから、そもそも“与党”って言い方していいのかどうか、自民党は比較第一党ですよね?」

長野「そういうことになりますね」

鈴木「だからそういう意味では、おそらく今度の参議院もひっくり返っちゃうようなことになったら、その後の政権はどういう枠組みになるのかとか、野党が一つ結束すれば別の総理が誕生する可能性があるし。それから自民党が強かだから、別の連立で勧誘して『一緒にやろうや』みたいな、そこで総理を決める時には石破さんとか自民党じゃなくて野党の誰かに……」

長野「連立組んだ人から出てきちゃうかもしれないからね?」

鈴木「そう、そう。かつて“自社さ政権”っていうのがありましたよね?あの時は自民党がいちばん数が多くて、社会党は少なかったんだけどね。あとは、(新党)さきがけでしょ?でも、総理大臣は社会党の村山さん。これは当時の自民党の永田町的な人いっぱいいるじゃないですか、亀井静香さんだとか森喜朗さんだとかいっぱいいたんだけど、それが要するに、『数が多い自民党が出張っていったらまとまらない。我々がいちばんバックヤードに回って、社会党を立てて、それでまとめていくんだ』みたいな、当時取材してて『うわぁ』って思ったけど、いま考えたら『これも茶番だな』って思うんだけど(笑)」

長野「そうですねぇ」

鈴木「でも、そういうことも起きる。何が起きるかはわからないわけです。今度の参議院選で自公が過半数割れしたらね。そういう意味ではやっぱり政権の形を決める選挙」

長野「特別な参議院選挙ということになりますか?」

鈴木「かなり特別だと思いますよ」

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