熊本地震から7年、地元コミュニティラジオ局は「情報の中継地点」に

熊本シティエフエムの長生修さん ©RKBラジオ

北部九州・山口災害情報パートナーシップを結ぶコミュニティFM各局とRKBによるコラボ番組『ローカる!』。地域密着のコミュニティFM局のパーソナリティにとっておきの街ネタを紹介してもらう。4月は熊本県熊本市にある「熊本シティエフエム」とのコラボでお送りした。9日の放送では熊本地震から7年というテーマ、地震発生時に熊本シティエフエムはどのように放送していたのか、熊本シティエフエムの長生修さんに話を聞いた。(報告:『ローカる!』ディレクター荒木風花)

2016年4月14日、16日、最大震度7を観測した熊本地震が起きた。その時、熊本市唯一のコミュニティFM局である熊本シティエフエムはどのように市民に訴え続けていたのだろうか。当時、放送に携わった長生さんはこう語る。

長生さん:1995年、阪神淡路大震災を機に熊本シティエフエムは開局しました。開局当時から掲げている3つの理念は「地域密着」「市民参加」「防災」です。

熊本地震発生当時の4月14日21時26分は、ちょうど当時の新入社員の歓迎会の二次会を開いていました。横揺れを感じて、お酒が入っているボトルがお店の棚から倒れました。一瞬、何が起こったのか分からない状況でしたが、地震と分かった瞬間すぐに会社に向かいました。会社に着いた時、その時は東京の衛星放送局の番組を放送していたので、第一報は東京のパーソナリティのよびかけということになります。その後、緊急割り込みという形で、21時41分に放送を開始しました。余震が頻繁にあっていたので、そのたびに情報を伝え、避難所の情報なども発信していました。翌日15日の朝、熊本市内の公共交通機関は通常通りに戻っていました。夜避難した人も自分の家に帰っていくという姿も見られたため、放送では「災害ゴミ」の出し方を中心に放送していました。認識としては「揺れて大変だったけど、これで終わりだよね」という感じで、まさかその後にさらに大きな地震が来るとは思ってもいませんでした。

熊本シティエフエムは熊本市が防災体制に入っている時は24時間誰か会社にいなくてはいけない状況だったのですが、本震前である午後11時頃は余震も落ち着いて流す情報がなかったので、スタジオではなくオフィスでニュースをチェックしているという状況でした。後に本震と言われる4月16日午前1時25分には、僕と技術担当と、パーソナリティが待機していましたが、「ドォーン」と下から突き上げるような揺れを30秒ぐらいだったのですが大変長く感じました。さらに停電になって、モノが倒れて…という状況の中でオフィスにいるメンバーの無事を確認し一安心したのもつかの間、ラジオ放送が聞こえないことに気づきました。アンテナがダメなのか、このスタジオに原因があるのか探ったところ、スタジオに原因があることが分かりました。すぐに倉庫にある発電機を回して、いつもサッカー中継で使っているミキサー卓とマイクをマスターと呼ばれる放送の心臓部分につなげて放送できる準備に取り掛かりました。放送開始できたのは地震発生から40分後でした。

パーソナリティの村上が発した第一声は「まずは命を守る行動をしてください。避難してください。安全なところに逃げてください」でした。停電しているため、実際にどのくらいの被害があったのか等何も分からない状況だったので、この3つを言い続けました。その後、朝6時頃からいろんな情報が分かってきたので、避難所の情報などを伝え始めました。

リスナーさんから多くのメールが届く

避難所や余震の状況などはもちろん、リスナーさんからは「水がない」「食事がない」「開いているスーパーはどこ?」といった情報が寄せられました。それを反映してラジオ放送では生活情報を中心に発信しました。「ガソリンはどこで入れられますか?というメールがありましたが、どなたか知っている人はいませんか?」と呼び掛けたところ、リスナーさんからいくつか情報が届いて、それを発信したところ数時間後に「無事○○でガソリンを入れることができました。ありがとうございました。」というメールが来たんです。リスナーさんとの情報のキャッチボールができて、情報の中継地点になれるということを身に染みて感じたんです。

リスナーさんからの情報が違うリスナーさんへ伝わる

その後だんだん状況も落ち着いてきたので、夜は音楽リクエストをかけるようになりました。社員総出でリクエスト対応し、車の中で避難している人や慣れない避難所生活をしている人に「癒し」を与えられたかなと思います。

長生さんは自身の経験を生かして、各地のコミュニティFM局を中心に災害放送についての講演活動を行っている。

長生さん:「右手にスマホ、左手にラジオ」を持って逃げてくださいと伝えています。スマホはいざという時の連絡手段として有効ですが、すぐに電池がなくなってしまいます。なので、ラジオで情報を取ってくださいと呼びかけています。地震が起こった時にどうするのかも常に考えるべきだと思います。東日本大震災の時に車中泊で避難している人が、テレビで夜情報を取っていると、明かりになってしまい周りに迷惑をかけてしまうため、ラジオをつかっていたという声もありました。不安だからこそ、誰かの声を聞いていたいという思いもあったんだと思います。

「ラジオ」という選択肢があることを私たちは伝え続けなければならないと痛感した放送回となった。

熊本シティエフエム公式ホームページ

ローカる!
放送局:RKBラジオ
放送日時:毎週日曜 11時00分~11時15分
出演者:荒木風花
番組ホームページ
公式Twitter
公式Instagram

※放送情報は変更となる場合があります。